header.jpg
倫理規程

前文・憲章・行動の手引

日本原子力学会倫理規程
                          平成26年5月28日 第7回理事会承認

 日本原子力学会倫理規程は,前文・憲章・行動の手引から構成されている。この倫理規程は,我々日本原子力学会会員が展開する諸活動において,会員一人ひとりが持つべき心構えと言行の規範について書き示したものである。会員は,原子力の平和利用に携わることに誇りと使命感を持ち,研究,開発,利用および教育等のさまざまな分野でその責務を果たすため,常に本規程を自分の言葉に置きなおし,自ら考え,自律ある行動をとる。

 人類の生存の質の向上と地球環境維持が課題となる現在,さまざまな技術が開発され進歩している。しかしながら,どのような技術にも,必ず正の側面と負の側面が存在していると同時に,会員の展開する諸活動には,技術だけでは解決できない問題も少なくない。会員は,過去の原子力災禍がもたらした社会への影響を絶えず思い起こし,原子力が潜在的に持っている危険性を十分に認識する。もって常に現状に慢心せず,過去の事例から広く学ぶ姿勢を持ち,チャレンジ精神とたゆまぬ努力をもって,より高次の安全と,豊かで安心できる社会の実現に向けて,積極的に行動する。

 本規程は,日本原子力学会の個人および組織の会員を対象としているが,原子力の安全確保と平和利用のためには,本規程がより多くの原子力技術従事者に共有され,本規程に基づいた行動がとられることが必要である。このため,我々会員は,本規程を満たすように自ら率先して行動するとともに,会員,非会員を問わず,原子力技術に携わるすべての個人および組織が本規程に示した精神と行動規範を尊重し,実践するように牽引する。


憲章
1.(行動原理)
会員は,人類の生存の質の向上および地球環境の保全に貢献することを責務と認識し,行動する。


2.(公衆優先原則・持続性原則)
会員は,公衆の安全をすべてに優先させて原子力および放射線の平和利用の発展に積極的に取り組む。


3.(真実性原則)
会員は,最新の知見を積極的に追究するとともに,常に事実を尊重し,公平・公正な態度で自らの意思をもって判断し行動する。


4.(誠実性原則・正直性原則)
会員は,法令や社会の規範を遵守し,自らの業務を誠実に遂行するとともに,社会に対する説明責任を果たし,社会の信頼を得るように努める。


5.(専門職原則)
会員は,専門とする技術の重要性を深く認識し,原子力の専門家として誇りを持って自ら研鑽に励む。また,その成果を積極的に社会に発信し,技術の発展に努めるとともに,人材の育成と活性化にも積極的に取り組む。


6.(有能性原則)
会員は,原子力が総合的な技術を要することを常に意識し,自らの専門能力に対してはその限界を謙虚に認識するとともに,自らの専門分野以外の分野についても理解を深め,常に協調の精神で望む。


7.(組織文化の醸成)
会員は,個人の行動が所属する組織の文化に影響されることを認識し,組織の中の個人が倫理規程に則った行動を取るように組織文化の醸成に積極的に取り組む。



行動の手引
 行動の手引は、倫理規程前文および憲章に基づき、日本原子力学会会員の専門活動における心構えと言行の規範について書き示したものである。我々はここに記述した条項すべてを同時に守りえない場面に遭遇することも認識している。そのような状況において、一つの条項の遵守だけにこだわり、より大切な条項を無視しないよう注意することが肝要である。多くの条項を教条主義的に信じるのではなく、倫理的によりよい行動を探索し、実行することが重要である。また、個々の会員の倫理観は細部に至るまで完全に一致しているわけではなく、ある程度の多様性は許容されるものである。また、規範は時代とともに変化することも念頭に置くことが重要である。

※憲章と行動の手引のつながりの分かり易さの観点から,各憲章を関連する行動の手引群の前に再掲しています。


1.(行動原理)
会員は,人類の生存の質の向上および地球環境の保全に貢献することを責務と認識し,行動する。
(原子力利用の基本方針)
1-1. 原子力利用は,原子力発電に関連するエネルギー分野だけでなく,医療・農業・工業等をはじめ放射線や同位体の利用技術に関連する分野まで,極めて多岐にわたる。会員は専門とする技術を通して人類の生存の質を向上させ,地球環境を維持することに誇りと理想を持ち,その英知と努力によって原子力・放射線分野の適切な発展・拡大を図る。

(チャレンジ精神の尊重)
1-2. 会員は,原子力利用の研究,開発,利用計画等において,常に更なる向上を目指し,総合的な視野を持って,新たな可能性にチャレンジするように努める。

(諸課題解決への努力)
1-3. 会員は原子力の研究,開発,利用計画等において直面している現在の課題および将来に遭遇する諸課題に対して,その解決に向けて不断の努力を積む。


2.(公衆優先原則・持続性原則)
会員は,公衆の安全をすべてに優先させて原子力および放射線の平和利用の発展に積極的に取り組む。
(原子力利用と安全確保の両立)
2-1. 会員は,過去の原子力災禍がもたらした社会への影響を絶えず思い起こし,原子力が潜在的に持っている危険性を十分に認識する。たとえ,平和利用であっても,社会に大きな影響を及ぼす恐れがあることを常に意識して安全確保のために最大限の努力を払う。

(平和利用への限定)
2-2. 原子力の利用は平和目的に限定する。会員は,自らの尊厳と名誉に基づき,核兵器の研究・開発・製造・取得・使用に一切参加しない。

(核拡散への注意)
2-3. 会員は,原子力技術が核兵器の研究・開発・製造等に結びつく恐れがあることを認識し,自らの行動が結果として核拡散に加担することがないように最大限の注意を払う。

(核セキュリティ確保への注意)
2-4. 会員は,核物質や放射性物質がテロリズムに用いられる恐れがあることを認識し,核セキュリティの確保に十分な注意を払う。

(地球環境保護との調和)
2-5. 会員は,原子力利用は炭酸ガス排出の低減などで環境問題の解決の一助となりうる一方,人類・地球への負の遺産となりうる放射性廃棄物処理・処分の課題があることを認識し,地球環境保護との調和に努める。

(経済性優先への戒め)
2-6. 会員は,原子力・放射線関連の施設の設計・建設・運転・保守等の管理にあたり,目先の経済性を安全性に優先させない。

(効率優先への戒め)
2-7. 会員は,原子力・放射線関連の施設において安全性の確認されていない効率化をおこなわない。効率化を進歩と誤解して,安全性の十分な確認をおこなうことなく設備や作業を変更しない。

(規制適合が目的化することへの戒め)
2-8. 会員は,原子力・放射線に関連する事業,研究,諸作業において,法令・規則への適合が目的化しないように常に注意を払い,専門家として,より高い安全性の確保を目指して自らの判断で行動する。

(技術成熟の過信への戒め)
2-9. 会員は,原子力技術が成熟したとして安全性を過信しない。原子力開発の歴史はいまだ1世紀に満たない。今後とも新たな技術的問題が出ることがありうるとして,緊張感を持って新しい事象が発生することに対し警戒心を維持する。

(労働安全の確保)
2-10. 会員は,常に原子力施設で働く人々の安全確保と災害の防止に努める。


3.(真実性原則)
会員は,最新の知見を積極的に追究するとともに,常に事実を尊重し,公平・公正な態度で自らの意思をもって判断し行動する。
(最新知見の追究と自らの判断)
3-1. 会員は,自己の業務遂行に関わる知見が常に最新のものであるべく広く国内外の情報収集に努めた上で,与えられた情報を無批判に受け入れることなく,それに関連する専門能力により自ら判断する。

(科学的事実の尊重)
3-2. 会員は,事実を尊重し,科学的に明白な間違いに対しては毅然とした態度でその間違いを指摘し,是正するよう努める。


4.(誠実性原則・正直性原則)
会員は,法令や社会の規範を遵守し,自らの業務を誠実に遂行するとともに,社会に対する説明責任を果たし,社会の信頼を得るように努める。
(誠実な行動)
4-1. 会員は,雇用者の代理人あるいは依頼者の受託者として業務に従事する場合,雇用者の代理人あるいは依頼者の受託者として,誠実に業務を実施する。また,他の団体または自らを含む個人に利益をもたらす恐れのある場合は,事前に雇用者あるいは依頼者に説明をおこなう。

(契約に関する注意)
4-2. 会員は,社会人として契約を尊重しなければならない。法律に違反する恐れのあるような契約は締結してならない。また,雇用者の代理人あるいは依頼者の受託者として業務をおこなう際,利害関係の相反の恐れのある業務については,雇用者または依頼者にその事実を開示するとともに,第三者に対しても明確な説明ができる場合を除き,その業務に従事しない。

(公的資格に関する法令遵守)
4-3. 会員は,公的資格を必要とする業務を資格なしでおこなわず,無資格者におこなわせない。

(ルール遵守と形骸化の防止)
4-4. 会員は法令・規則等(以下ルール)を誠実に遵守するとともに常にルールの妥当性確認や改定に努め,絶えざる研修等によってルール遵守の精紳を維持し,各種ルールの規定内容と職務実態との乖離によって起こるルールの形骸化を防止する。

(社会との調和)
4-5. 会員は,常に社会からの声にも幅広く耳を傾け,コミュニケーションを心がけるとともに,専門知識を説明するときは,一方的な価値観を押し付けることのないよう,他者の意見にも傾聴して社会との調和に努める。

(社会からの付託)
4-6. 会員は,原子力技術を扱う集団・技術者として,一般社会から一種の付託を受けている。それは,一般社会との無形の契約が成立していることであり,その契約のもとに,会員に特別の責任・倫理観を求めていることを常に念頭に置き,行動する。

(安心できる社会の構築)
4-7. 会員は,技術に対する安心が,技術の安全性だけでなく,技術を扱う者に対する信頼感によって醸成されることを,十分に理解し,安全の確保に努めるとともに,安心できる社会の構築に貢献する。

(会員の安心への戒め)
4-8. 会員は,安全を確保する努力を過信し,自らが安心してはならない。公衆の信頼は,原子力技術を扱う者がその危険性を十分に認識し,緊張感を保って行動すること,他の意見・批判をよく聴き,常に自ら考え行動することによって得られるものと認識する。

(情報の公開)
4-9. 会員は,情報の意図的隠蔽は社会との良好な関係を破壊することを認識し,適切かつ積極的に公開するように努める。特に,原子力の安全にかかる情報は,たとえその情報が自分自身や所属する組織に不利であっても積極的な公開に努める。

(守秘義務と情報公開)
4-10. 会員は,公衆の安全上必要不可欠な情報については,所属する組織にその情報を速やかに公開するように働きかけるとともに,必要な場合には,たとえ守秘義務違反にかかる情報であってもその情報を開示する等により,公衆の安全の確保を優先させる。

(非公開情報の取り扱い)
4-11. 原子力にかかる情報でも,核不拡散や核物質防護,公衆の安全・利益等のために公開することが不適切と判断されるものについては公開する必要はない。ただしその場合でも,必要に応じて,会員はそのことを明示し,公開できない理由を説明する。

(説明責任)
4-12. 会員は,専門活動の目的・方法・成果等について,常に相手の立場に立ち,専門家ではない周囲の者にも分かりやすく,タイムリーに説明する責任がある。

(慎重さの要求)
4-13. 会員は,原子力・放射線関連の作業においては,作業中気付いた点を放置せず,また独断を避けて関係者に確認するなど,常に慎重に振る舞う。これまで国内外の原子力施設において作業の完了を急いだり,手順を粗略にして大事故に至った例を想起し,教訓とする。

(正確な情報の取得と確認)
4-14. 会員は,専門家として正しい情報を取得し,その正しさを自ら確認する。特に安全にかかる情報は,公衆や環境に大きな影響を与える可能性があるので,その正確な取得と確認に入念な注意を払う。

(組織の私的利用)
4-15. 会員は,勤務時間内に本務以外の業務をおこなうことも含め,所属する組織の了承・許可なく,組織に帰属する人的・物的・知的資源等の財産権を侵さない。


5.(専門職原則)
会員は,専門とする技術の重要性を深く認識し,原子力の専門家として誇りを持って自ら研鑽に励む。また,その成果を積極的に社会に発信し,技術の発展に努めるとともに,人材の育成と活性化にも積極的に取り組む。
(専門分野等の研鑚と協調)
5-1. 会員は,専門とする分野について未知の領域の探求などチャレンジ精神を発揮し,自己研鑚に励むとともに,関連する専門分野について理解を深め,これを尊重し,業務の遂行にあたり常に協調の精神で臨む。 会員は,業務の実施により得られる経験や知見を,学術の発展に貢献できるよう常に心がける。

(専門能力)
5-2. ここでいう専門能力とは,原子力に関する技術的能力だけでなく,倫理的行動をとるために必要な能力も含む。また求められる専門能力は,社会とともに変化することを自覚し,常に社会から要請される能力を備えるよう努める。

(安全知識・技術の習得)
5-3. 会員は,原子力・放射線に関連する事業,研究,諸作業において,法令・規則を遵守することはもちろん,安全を確保するために必要な専門知識・技術の向上に努める。

(新知識の取得)
5-4. 会員は,専門家として常に自己研鑚に励み,関係する法令や規則,日々進歩する学問・技術を学び,自身の専門能力を磨く。古い定型的な知識や慣習などをもって専門家として行動することは慎む。

(経験からの学習と技術の継承)
5-5. 会員は,経験から教訓を学び取る。特に原子力施設の事故や故障の経験からは,失敗事例のみならず良好事例についても研究し,その再発防止および類似の事故や故障の未然防止に努めるとともに,情報を共有化し,技術・知見の向上に努める。

(関係者の専門能力向上と人材育成)
5-6. 会員は,専門家として自らが研鑚に励むだけではなく,専門能力を有すべき周囲の者,特に自らの監督下にある者の専門能力向上にも努力し,機会を与えるよう努める。

(正確な知識の獲得と伝達)
5-7. 会員は,常に正確な知識の獲得に努め,その知識を周囲の者に伝える。

(科学的事実の普及)
5-8. 会員は,専門知識を分かりやすい形で広め,公衆が理性的に自ら判断できるよう,情報を提供することに努める。

(国際社会への貢献)
5-9. 我が国は原子力平和利用に豊富な実績がある一方,原子力事故の当事国である。 会員は,これら経験から得た知見・教訓を広く普及させ,世界の原子力技術とその安全性の向上に貢献する。


6.(有能性原則)
会員は,原子力が総合的な技術を要することを常に意識し,自らの専門能力に対してはその限界を謙虚に認識するとともに,自らの専門分野以外の分野についても理解を深め,常に協調の精神で望む。
(学際的な取り組みの必要性)
6-1. 会員は原子力が様々な専門分野を含む総合科学技術であることを十分に認識し,原子力安全を確保するためにはこれらの専門分野との境界に隙間ができないように総合的な視点から取り組むように努める。

(自己能力の把握)
6-2. 会員は,遂行しようとしている業務が自らの能力不足のため安全を損なう恐れがないか,常に謙虚に自問する。

(俯瞰的な視点を有する人材の育成)
6-3. 会員は,所属する組織において,自分自身や周囲の者の専門的知識や能力ばかりでなく,俯瞰的な視点を有する人材の育成の観点も含めた能力向上ができる環境を整備し,維持に努める。


7.(組織文化の醸成)
会員は,個人の行動が所属する組織の文化に影響されることを認識し,組織の中の個人が倫理規程に則った行動を取るように組織文化の醸成に積極的に取り組む。
(組織の中の個人のとるべき行動の基本原則)
7-1. 会員は,所属する組織において,倫理に関わる問題を自由に話し合え,行動できる組織の文化の醸成に努める。不十分なときは組織・体制も含め組織の文化(風土,雰囲気)を変革するよう努める。

(組織内における課題解決)
7-2. 会員は,安全性の損なわれた状態を自らの権限で改善できない場合には,権限を有する者を含む利害関係者へ働きかけ,改善されるよう努める。 なお,原子力に関する諸活動において権限を有する者は,その職責の重さを自覚し,安全性向上に最大限の努力を払う。

(組織内における環境整備の重要性と活動促進)
7-3. 組織の運営に責任を有する会員は,この憲章の意義と重要性を認識し,組織に所属する個人(会員および非会員)がこの憲章に基づいて行動することができる環境を整えるとともに,組織内の個人(会員および非会員)に対し,倫理規程の重要性を積極的に啓蒙し,活動を促進するように積極的に働きかける。

(組織内における活動状況の把握と継続的改善)
7-4. 組織の運営に責任を有する会員は,組織に所属する個人(会員および非会員)がこの行動の手引に基づいて行動していることを絶えず注視する。また,組織に所属する個人(会員および非会員)の活動を阻害する要因を積極的に抽出し,排除するなど環境の継続的な改善・向上に努める。

(組織内における情報公開の手順と適切な運用)
7-5. 組織の運営に責任を有する会員は,会員からの原子力安全に関わる申し出に対し,組織として適切に対応するために情報公開の手順を定め,適切に運用する。

(労働環境等の確保)
7-6. 会員は,安全確保のために活動の基盤となる労働環境等を含めた環境整備に努める。

ページのトップへ

footer