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倫理規程

前文・憲章・行動の手引

日本原子力学会倫理規程
                          2018年1月31日 第6回理事会承認

 日本原子力学会倫理規程は,日本原子力学会会員が,研究,開発,利用,教育等のさまざまな活動を実施するにあたり,会員一人ひとりが持つべき心構えと言行の規範を書き示したものである。会員は,原子力の平和利用と安全確保に携わることに誇りと使命感を持ち,その責務を果たすため,常に本規程を自分の言葉に置きなおし,自ら考え,自律ある行動をとる。

 現代は,人類生存の質の向上と地球環境の保全が課題となっており,さまざまな技術が開発され進歩している。しかし,どのような技術にも必ず正の側面と負の側面が存在している。会員は,自らの携わる技術が,正の側面によってより社会貢献するために,原子力事故をはじめとして,自らの携わる技術特有の社会に及ぼす影響等負の側面について,絶えず思い起こすと同時に,技術だけでは解決できない問題があることを,強く認識する。もって常に現状に慢心せず,広く学ぶ姿勢と俯瞰的な視野を持ち,チャレンジ精神と不断の努力をもって,より高い安全を追求し,豊かで安心できる社会の実現に向けて,積極的に行動する。

 本規程は,日本原子力学会の個人および組織の会員を対象としているが,原子力の安全確保と平和利用のために,本規程がより多くの原子力関係者に共有され,本規程に則った行動がとられることが必要である。このため,我々会員は,本規程を満たすように自ら率先して行動するとともに,会員,非会員を問わず,原子力に関わるすべての個人および組織が本規程に示した精神と行動規範を尊重し,実践するように牽引する。


憲章
1.(行動原理)
会員は,人類の生存の質の向上および地球環境の保全に貢献することを責務と認識し,行動する。


2.(公衆優先原則・持続性原則)
会員は,公衆の安全をすべてに優先させて原子力および放射線の平和利用の発展に積極的に取り組む。


3.(真実性原則)
会員は,最新の知見を積極的に追究するとともに,常に事実を尊重し,自らの意思をもって判断し行動する。


4.(誠実性原則・正直性原則)
会員は,法令や社会の規範を遵守し,自らの業務を誠実に遂行するとともに,社会に対する説明責任を果たし,社会の信頼を得るように努める。


5.(専門性原則)
会員は,原子力の専門家として誇りを持ち,携わる技術の影響を深く認識して研鑽に励む。また,その成果を積極的に社会に発信し,かつ交流して技術の発展に努めるとともに,人材の育成と活性化に取り組む。


6.(有能性原則)
会員は,原子力が総合的な技術を要することを常に意識し,自らの専門能力に対してその限界を謙虚に認識するとともに,自らの専門分野以外の分野についても理解を深め,常に協調の精神で臨む。


7.(組織文化の醸成)
会員は,所属する組織の個人が本倫理規程を尊重して行動できる組織文化の醸成に取り組む。



行動の手引
 行動の手引は、倫理規程前文および憲章に基づき、日本原子力学会会員の活動における心構えと言行の規範について書き示したものである。我々はここに記述した条項すべてを同時に守りえない場面に遭遇することも認識している。そのような状況において、一つの条項の遵守だけにこだわり、より大切な条項を無視しないよう注意することが肝要である。多くの条項を教条主義的に信じるのではなく、倫理的によりよい行動を探索し、実行することが重要である。また、個々の会員の倫理観は細部に至るまで完全に一致しているわけではなく、ある程度の多様性は許容されるものである。また、規範は時代とともに変化することも念頭に置くことが重要である。

※憲章と行動の手引のつながりの分かり易さの観点から,各憲章を関連する行動の手引群の前に再掲しています。


1.(行動原理)
会員は,人類の生存の質の向上および地球環境の保全に貢献することを責務と認識し,行動する。
(原子力利用の基本方針)
1-1.原子力は,エネルギーだけでなく,医療・農業・工業などでの放射線利用まで幅広く利用されている。会員は,人類の生存の質の向上や地球環境の保全に貢献することに誇りと理想を持ち,専門性と自律ある行動により原子力の適切な発展を図る。

(不断の努力とチャレンジ精神の醸成)
1-2.会員は,研究,開発,利用,教育等における諸課題の解決のために不断の努力を払うとともに、常に更なる向上を目指し俯瞰的な視野を持って,新たな可能性にチャレンジする。

(リーダーシップの発揮)
1-3.会員は,一人ひとりが自身の責任や役割を明確にし,積極的な態度及び行動を示すことにより,それぞれの階層でリーダーシップを発揮する。
(技術者の行動による信頼)
1-4.会員は,技術の安全性を高めるだけでなく,技術を扱う者の行動によって社会から信頼が得られるように心掛ける。

2.(公衆優先原則・持続性原則)
会員は,公衆の安全をすべてに優先させて原子力および放射線の平和利用の発展に積極的に取り組む。
(原子力利用と安全確保の両立)
2-1.会員は,過去に起きた原子力をはじめとするさまざまな事故や災害を絶えず思い起こし,携わる技術の潜在的な危険性や,どのような安全策を講じてもリスクが残ることを,強く認識する。その上で,常により高い安全レベルを目指し,その確保に務める。

(平和利用への限定)
2-2.原子力の利用は平和目的に限定する。会員は,自らの尊厳と名誉に基づき,核兵器の研究・開発・製造・取得・使用に一切参加しない。加えて,自らの行動が結果として核拡散に加担することがないように,接触する団体や情報管理等に最大限の注意を払う。

(核セキュリティ確保への注意)
2-3.会員は,核物質や放射性物質がテロリズムに用いられる恐れがあることを認識し,核セキュリティの確保に十分な注意を払う。

(地球環境保全との調和)
2-4.会員は,原子力発電は炭酸ガス排出の低減などで環境問題の解決の一助となりうる一方,放射性廃棄物の処理と長期にわたる埋設の課題があることを認識し,この解決に努める。

(労働安全の確保)
2-5.会員は,常に原子力施設で働く人々の安全確保と災害の防止に努める。

(経済性優先への戒め)
2-6.会員は,原子力施設の設計・建設・運転・保守等の管理にあたり,経済性を安全性に優先させない。

(効率優先への戒め)
2-7.会員は,原子力施設において,安全性の十分な確認を行うことなく設備や作業の効率化を行わない。

(規制適合が目的化することへの戒め)
2-8.会員は,原子力の研究、開発、利用、教育等において,法令・規則への適合のみで満足することなく,専門家として,更なる安全性向上を目指して弛まぬ努力をする。

(技術成熟の過信への戒め)
2-9.会員は,原子力の安全性を過信することなく、今後とも新たな技術的問題が出ることがありうるとして,緊張感を持って新しい事象が発生することに対して警戒心を維持するとともに、事前の備えを尽くす。

3.(真実性原則)
会員は,最新の知見を積極的に追究するとともに,常に事実を尊重し,自らの意思をもって判断し行動する。
(最新知見の追究)
3-1.会員は,自己の業務遂行に関わる知見が常に最新の状態となるよう,広く国内外の情報収集に努める。特に安全にかかる情報は,公衆や環境に大きな影響を与える可能性があると心得て慎重に確認する。

(科学的事実の尊重)
3-2.会員は,事実を尊重し,科学的に明白な間違いに対しては毅然とした態度でその間違いを指摘し,是正するよう働きかける。
(自らの判断に基づく行動)
3-3.会員は,与えられた情報を無批判に受け入れることなく,誤った集団思考に陥ることのないように,常に正確な情報の取得に務め,関連する専門能力により自ら判断し,行動する。

4.(誠実性原則・正直性原則)
会員は,法令や社会の規範を遵守し,自らの業務を誠実に遂行するとともに,社会に対する説明責任を果たし,社会の信頼を得るように努める。
(誠実な行動)
4-1.会員は,誠実に業務を実施する。また,他の団体または個人に不利益をもたらす恐れのある場合は,事前に雇用者あるいは依頼者に説明をおこなう。

(契約に関する注意)
4-2.会員は,法令に違反するおそれのある契約を締結してはならない。また,利益相反のおそれのある業務については,雇用者または依頼者にその事実を開示するとともに、第三者に対しても明確な説明ができる場合を除き,その業務に従事しない。

(ルール遵守と形骸化の防止)
4-3.会員は法令・規則(以下ルール)を誠実に遵守する。その一方で,常にルールの妥当性確認や改定に努め,各種ルールの規定と実態との乖離によって起こるルールの形骸化を防止する。

(社会との調和)
4-4.会員は,常に社会からの声に幅広く耳を傾け,双方向のコミュニケーションを心がけて社会との調和に努める。

(社会からの付託)
4-5.会員は,原子力技術を扱う集団・技術者として,一般社会から一種の付託を受けており,特別の責任・倫理観が求められていることを常に念頭に行動する。

(会員の安心への戒め)
4-6.会員は,安全の状態を過信し,自らがそのことで安心してはならない。公衆の信頼は,原子力技術を扱う者がその危険性を十分に認識し,緊張感を保って行動すること,他の意見・批判をよく聴くこと等,不断の努力によって得られるものと認識する。

(情報の公開)
4-7.会員は,原子力の安全にかかる情報について、積極的な公開に努める。特に公衆の安全上必要不可欠な情報については,所属する組織にその情報を速やかに公開するように働きかけ,公衆の安全確保を優先させる。

(隠蔽の戒めと非公開情報の取り扱い)
4-8.会員は,情報の隠蔽は社会との良好な関係を破壊することを認識し,適切かつ積極的に公開するように努める。ただし,核不拡散や核物質防護等,公衆の安全・利益のために公開することが不適切と判断されるものについては,公開できない理由を説明できるようにする。

(説明責任)
4-9.会員は,専門活動の目的・方法・成果等について,常に相手の立場に立ち,専門家ではない者にも分かりやすく,かつタイムリーに説明する責任がある。

5.(専門性原則)
会員は,原子力の専門家として誇りを持ち,携わる技術の影響を深く認識して研鑽に励む。また,その成果を積極的に社会に発信し,かつ交流して技術の発展に努めるとともに,人材の育成と活性化に取り組む。
(専門分野等の研鑚と協調)
5-1.会員は,未知の領域の探求など,自己研鑚に励むとともに,関連分野の理解も深め,これを尊重して業務の遂行にあたり,常に協調を図る。もって,得られる経験や知見により,原子力に関わる学術及び技術の改善と発展に貢献する。

(専門能力)
5-2.会員は,求められる専門能力や倫理的行動に必要な能力が,社会とともに変化することを自覚し,常に社会の要請に応える能力を備えるよう努める。

(新知識の取得)
5-3.会員は,日々進歩する学術や技術のほか,関係する法令・規則を学び,専門能力を磨く。古い知識や慣習などをもって専門家として行動することは慎む。

(正確な知識、安全知識・技術の習得と伝達)
5-4.会員は,原子力専門分野に関わる活動においては,法令・規則の遵守はもちろん,安全の確保に必要な専門知識・技術の向上に努める。さらに,常に正確な知識の獲得と伝達に努める。

(経験からの学習と共有・継承)
5-5.会員は,経験から教訓を学び取る。特に事故や故障については,失敗事例のみならず良好事例にも着目・研究し,再発防止や類似事態の発生防止に努めるとともに,情報を共有・継承する。

(関係者の専門能力向上と環境整備)
5-6.会員は,自己研鑚のみならず,専門能力を有すべき周囲の者,特に監督下にある者に研鑽の機会を与えることで,能力向上のための環境整備に努める。

(科学的事実の分かりやすい提供)
5-7. 会員は,公衆が科学的事実や専門知識を正確に理解し、判断できるように分かりやすい形で提供することに努める。

(国際社会への貢献)
5-8.我が国は原子力平和利用に豊富な実績がある一方,原子力災害の当事国である。会員は,この経験から知見・教訓を深く学びとり,我が国のみならず世界の原子力の安全と技術の向上に貢献する。

6.(有能性原則)
会員は,原子力が総合的な技術を要することを常に意識し,自らの専門能力に対してその限界を謙虚に認識するとともに,自らの専門分野以外の分野についても理解を深め,常に協調の精神で臨む。
(学際的な取り組みの必要性)
6-1.会員は原子力が様々な専門分野を含む総合科学技術であることを十分に認識し,原子力安全を確保するためにはこれらの専門分野との境界に隙間ができないように総合的な視点から取り組むように努める。

(自己能力の把握)
6-2.会員は,遂行しようとしている業務が自らの能力不足のために安全を損なう恐れがないか,常に謙虚に自問する。

(俯瞰的な視点を有する人材の育成)
6-3.会員は,所属する組織において,専門的知識だけでなく,俯瞰的な視点を有する人材を育成する観点からも環境を整備し,維持に努める。

7.(組織文化の醸成)
会員は,所属する組織の個人が本倫理規程を尊重して行動できる組織文化の醸成に取り組む。
(組織の中の個人のとるべき行動の基本原則)
7-1.会員は,所属する組織において,倫理及び安全に関わる問題を自由に話し合い,行動できる組織文化の醸成に努める。不十分なときは組織・体制も含め組織文化(風土,雰囲気)を変革するよう努める。

(組織内における課題解決)
7-2.会員は,それぞれの責任と権限に応じてその役割の重さを自覚し,安全性向上に最大限の努力を払う。安全性の損なわれた状態を自らの権限で改善できない場合には,権限を有する者を含む利害関係者へ働きかけ,改善されるよう努める。

(組織内における環境整備の重要性と継続的改善)
7-3.組織運営に責任を有する会員は,本倫理規程の意義と重要性を認識し,組織に所属する個人(会員および非会員)が本倫理規程に基づいて行動することができるように伝え,その環境を整える。また,組織内の活動状況を絶えず注視するとともに,本倫理規程に基づく活動を阻害する要因を積極的に排除するなど,環境の継続的な改善・向上に努める。

(組織内における申し出に対する適切な運用)
7-4.組織の運営に責任を有する会員は,会員からの原子力安全等に関わる申し出に対し,組織として適切に対応するために,申し出をした者が不利益を被ることのないような配慮,申し出内容に対する迅速な調査,情報公開等の適切な手順を定めて,運用する。

(労働環境等の確保)
7-5.組織の運営に責任を有する会員は,安全確保のために活動の基盤となる労働環境等を含めた環境整備に努める。

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