日本原子力学会シニアネットワーク連絡会
会長挨拶

会長就任にあたって

2021年6月17日 坪 谷 隆 夫

このたび、石井正則会長の後を受けて日本原子力学会シニアネットワーク連絡会(SNW)第7代会長を拝命し、身の引き締まる思いです。私は国の原子力研究開発機関の出身者として、SNWは原子力産業界のご出身の方々が会長の任に当たられるべきであるとの信念からこれまで石井会長のもとで副会長として応分の役目を果たせれば十分であると考えてきました。会長の責務を果たせるか若干の不安はありますが、幸い早瀨佑一副会長、早野睦彦代表幹事および幹事の皆さまにご留任頂きました。SNWは、多くの有識ある会員のご参加および会員の皆さまのボランティアに支えられた組織運営によって活動しております。その活動は、原子力開発の第一線における経験と知識に裏付けされているために教育関係者を初めとする多くの方々から支持を頂いております。多くの先輩、同輩、そして若い会員の皆さまにとともにSNWとしての社会的な役割を果たしていくよう努力して参りますのでよろしくご指導ご鞭撻のほどをお願い致します。会長就任にあたり若干の所信を申し述べさせていただきます。

 

関西電力美浜原子力発電所の原子の火が大阪万博に届けられたのは1970年のことでした。「プロメテウスの火」が日本に明かりをともしました。以来50年、脆弱なエネルギー供給構造であることを思い知らされた石油危機を経て原子力発電は日本の高度経済社会を支えるインフラとしての役割を果たしてきました。第2次世界大戦以前から永年の日本の悲願であるエネルギーの安全保障にとって原子力技術は、名実ともに重要な役割を果たしてきました。資源に乏しい日本にとって、原子力は技術の力で手にすることができる純国産のエネルギーと評価されています。そして、日本は非核保有国として唯一、核燃料サイクル技術を手にしています。いま、日本が直面している少子高齢化社会や高度情報社会には膨大で経済性に優れた電力の安定な供給が不可欠です。21世紀に世界が立ち向かう脱炭素社会の実現には、現実的な脱炭素エネルギーである原子力が極めて重要であることは、多くの識者や経済団体などが指摘しているとおりです。しかし、原子力事故から10年が経った今日、日本社会は原子力発電の安全性と高レベル放射性廃棄物の最終処分に不安を抱いたままに時を失っています。原子力利用に対する社会の信頼が揺らいだままでは、国民の生活基盤であるエネルギーの安全保障政策を描くことはできません。

 

私たちを取り巻くこのような環境にあって、会員それぞれが培ってきた知見と経験を活かし、これからも原子力の果たすべき役割について社会に向けて発言或いは 提言を行うとともに、世代間の対話と様々な交流を通した技術の伝承 ならびに人材育成に協力して行くとのSNWの活動方針に沿うよう微力を尽くして参ります。

以上
これまでの会長挨拶
石井正則会長退任挨拶(2018/5/17~2021/6/17)
河原暲会長(2016/5/18~2018/5/17)
小川博巳会長(2014/5/15~2016/5/18)