ダイバーシティ推進に関する提言

1. はじめに

原子力を取り巻く環境は厳しくなっているが、その一方、地球温暖化への対応やエネルギーセキュリティ確保等の観点から、原子力に大きく期待されるところである。 このような状況で、原子力に関する研究・開発を確実に進め、その成果を持続可能な社会の構築・発展に貢献していくためには、柔軟な発想で、 新たな価値を創造していくことが重要であり、多様な人材が求められる。

また、少子高齢化から原子力業界においても担い手(若手)不足が問題となり、本会の人員構成にアンバランスが生じており、会員の高齢化に伴い会員減少の傾向が継続している。

このような状況から、人材育成は最重要課題であり、性別・国籍・年齢などの違いにとらわれず、多様性を認め合い、尊重しあう研究者、専門家の育成に取り組んでいく必要がある。

しかし、本会の女性会員については学生会員では14%程度と徐々に増加しているが、正会員では約4%にとどまるなど、本会のダイバーシティ推進はまだまだ進んでいない状況にある。 そこで、本会のダイバーシティを推進すべく、方針および当面の施策について、提言する。

2. ダイバーシティ推進方針

本会はダイバーシティ推進を目指し、以下の方針を掲げる。

・会員一人一人は、性別、国籍、年齢、障害の有無などに関わらず、多様な人材を受け入れ、その違いを認め尊重し、相互に学びあい・高めあう。

・本会は、多様な人々が入会しやすく、活躍できる環境を整備し、また、原子力界へ情報発信を積極的に行い、将来にわたって持続可能社会の構築・発展に貢献していく。

3. 当面の施策

〇多様な方が入会しやすい仕組み

学会活動は、各自の業務・家事等への+αで自発的に研鑽していく活動ということを認識し、特に若手や子育て世代にとって、 入会しやすく・活躍できる制度・仕組みを構築する必要がある。たとえば、学生会員からの移行期の会費優遇制度、子育て世代への会費優遇制度、シニア世代への会費優遇制度、 また、会員所属組織への働きかけ(学会活動の賞揚、会費補助制度の構築など)を検討し、会員が入会しやすい実効的な制度・仕組みを構築する。

また、様々なバックグランドをもつ会員が活き活きと活躍している姿は、入会する方々にとって心強く、入会へのモチベーションともなる。 このため、原子力業界で働く様々な皆様のロールモデル集のアップデートを継続実施するとともに、 小・中・高校生に(特に女子学生にも)原子力・放射線関係の研究・開発等の魅力を広くアピールしていく。


〇多様な方が活躍しやすい環境整備

学会では、会員は自身の研究成果を発表し、また、相互の情報交換を行うことを目的としており、そのために、研究成果の発表の場などに参加しやすい環境の整備が求められる。 また、学会に所属するものにとって、専門分野のみならず広くネットワークを構築でき、様々な意見交換を行うことが大きなメリットである。

至近では、年会・大会において託児所を設けるなど子育て世代へ配慮を進めてきたが、さらに参加しやすく、ネットワーク構築に資する環境整備を実現していく。 たとえば、至近の年会・大会でオンライン開催を実施したが、子育て世代の研究者から「ようやく発表に参加できた」との声もあり、今後ともオンライン化をより一層推進する。 例えば、現地開催の場合でも、オンライン発表を可能とし、そこでの意見交換の場を設定するなどハイブリット開催などを検討する。 また、年会・大会だけでなく、委員会・部会・支部等の研究発表会等のイベントにおいてもオンライン開催を行うなど、 学会活動への参加しやすい環境整備および学会員の交流する場(ネットワーク構築)に努めていく。

これら環境整備にあたっては、女性会員、若手会員、海外からの会員などの意見を聴く機会を設け、反映していくことに努める。

4. 学会としての情報発信

本会は、原子力に関する日本唯一の総合的な学会であり、産官学の各組織が賛助会員として参加し、また各組織に所属する6,000人に上る会員から構成される公益性を持つ団体である。 このため、本会は、これら会員に対して集う場を提供できるとともに、効果的な情報発信が可能である。

そこで、本会は 原子力界全体のダイバーシティをより一層推進するため、 交流の場、情報共有の場を用意し、大学、研究機関・産業界へ積極的な働きかけを行う。


以上


2021年5月24日
一般社団法人日本原子力学会
ダイバーシティ推進委員会



参考

原子力学会の年齢構成

2019年度末 6256名(正会員5795名)

若手(39歳まで)は約23%

大きな山の50代が今後10年間で定年退職を迎えていく

会員数の推移