日本原子力学会シニアネットワーク連絡会
報告
学生・教員・市民とシニアの対話会

学生とシニアの対話
in 宇部工業高等専門学校2025年度(第6回)報告書

                  日本原子力学会シニアネットワーク連絡会(SNW) 世話役: 大西祥作
                                    報告書作成 令和7年8月15日
《宇部工業高等専門学校正門》
対話会は宇部高専の第2学期のPBL授業(プロジェクト学習)の一部として実施された。

2020年度から開始され今回で6回目である。参加学生は複数の学科の2年生から4年生である。例年数人の参加者であるが今年は基調講演1(基礎講演)に23名、基調講演2と対話会に17名もの学生が参加してくれた。 また、新しい試みとして対話会は原子力発電の導入賛成&反対についてディベート形式により実施し、例年より活発な対話会となるとともに原子力発電のみならず再生可能エネルギー(太陽光発電や風力発電等)等各種エネルギー源の特徴や課題の理解向上を図ることが出来た。


1.日程並びに講演の概要

(1)日時

基調講演1(基礎講演) :令和7年6月11日(水)12:50~15:00(対面)
基調講演2       :令和7年6月27日(金) 10:40~12:00 (録画※を視聴)
対話会          :令和7年7月9日(水)12:50~15:30 (対面)
                  ※6月24日(火)松江高専での基調講演の録画を視聴

(2)場所

宇部工業高等専門学校 物質棟 1階教室(対面)

(3)参加者

高専側世話役の先生
      江原史朗:制御情報工学科教授
高専側先生 伊藤直樹:制御情報工学科教授
       ゴーシュ・シュワパンクメル准教授(一部):一般科目(物理)
参加学生: 23名(基調講演1(基礎講演))、17名(基調講演2&対話会) (機械工学科、電気工学科、制御情報工学科、物質工学科、経営情報学科) ×(2年、3年、4年、5年生)
参加シニア:櫻井三紀夫、山崎智英、大西祥作(世話役)

(4)基礎講演1(基礎講演)

テーマ:放射線とエネルギー・環境問題の基礎
講師:大西祥作
講演概要
エネルギー問題を考える上で必要な基礎的知識を伝授する目的であるので内容は、ほぼ昨年と同様な以下の内容とした。 第1部「環境問題」、第2部「エネルギー」及び第3部「放射線」の基礎から成る。第1部の内容は「地球環境問題とは?」「地球温暖化は本当か?」「地球のエネルギー収支は?」「地球温暖化対策は?」「オゾンホールが広がる!」「酸性雨とPM2.5の被害」「希少生物を保護しよう!」「ゴミ問題を考える」など。第2部の内容は「身の回りのいろいろなエネルギー」「エネルギーの種類、発電の種類」「色々な発電の仕組み」「日本のエネルギー事情と課題」。第3部の内容は「放射線の種類」「日常生活と放射線」「放射線の利用」「放射線の防護と人体への影響」。 なお、エネルギー問題を身近なこととして捉えてもらうために自宅の電気代の構成について説明し、自宅の電気代の調査を課題として出した。

(5)基調講演2

テーマ:「電気料金と原子力発電」
講師:櫻井三紀夫
講演概要
6月24日(火)松江高専での基調講演を録画し同じ内容を宇部高専の基調講演とした。電気料金の基礎知識、原発再稼働の有無と料金への影響、料金と産業競争力の関係などについての説明が行われた。

2.対話会の概要

(1)自宅電気代の調査結果の集約

参加学生の内、11名が自宅電気代を調査してきていた。調査結果を整理したところ、約半数が32円/kwhとなった。標本数が少ないが関西(某高専)より約5円/kwhほど高い結果となった。

(2)事前質問に対する回答の説明

基調講演1(基礎講演)及び基調講演2に対する学生質問への回答のポイントを担当シニアより説明した。学生質問は幅広い分野に対するものであった。

(3)グループ対話

計画では事前質問に関するテーマで対話を実施する計画であったが、参加学生が想定以上に多くなったため、高専側世話役と相談し、ディベートを実施することになった。 尚、参加シニアはディベートのファシリテート並びに作戦タイム時に各班に対して情報提供を実施した。
ディベートのテーマは、学生間で相談し、「原子力発電の賛成・反対」となった。
学生は4グループに分かれ、2グループ単位でディベートを実施した。
計画時点では6グループの予定であったが、当日の出席者が2班、3班は少なかった為、1班及び6班にそれぞれ合流した。
ディベートは、参加学生が初めてでもあり、以下のような組み合わせでシリーズに2回実施した。
計画時点では6グループの予定であったが、当日の出席者が2班、3班は少なかった為、1班及び6班にそれぞれ合流した。
   1回目: 賛成5班 VS 反対1班
   2回目: 賛成6班 VS 反対4班  
学生にとっては初ディベートであったが、結果的には例年より活発な論戦となった。また、議論の内容も多様な切り口からのやり取りとなり、参加学生の知識・理解は深まったと考えられる。(欲を言えばもう少し事前の準備が欲しかった) 参考にディベートで出た主なキーワードを以下に示す。
   1回目:温室効果ガス、電力供給が不安定、エネルギー密度、放射性廃棄物の発生 安全性(事故のリ
      スク)、使用済み燃料の再利用、地層処分
   2回目:エネルギー密度、廃棄物処分の目途、安定供給、ウラン資源量、海水からのウラン回 収、
      事故対応(事故は完全になくせない場合)
講評として櫻井シニアより、事実を踏まえて考え、議論して欲しいとのエールがあった。

3.学生アンケート結果の概要

(1)参加学生について
参加学生(17名)の内、全員が回答。
種々の学科の学生が参加してくれた。尚、1名が原子力系専攻と回答あり。
進路は全員が就職と回答あり。
(2)対話会について
基礎講演の満足度は「とても満足」、「ある程度満足」を合わせて100%。希望内容が聞けなかった、内容が難しかった、説明時間不足との意見があり。基礎講演以外で聞きたいものとして「議論の成立を促す方法」及び「日本の発電の仕組み」について詳しく知りたいとの要望もあり。
基調講演の満足度は「とても満足」、「ある程度満足」を合わせて100%。基礎講演と同じく、内容が難しかった、説明時間不足との意見があり。基調講演以外で聞きたいものとして「今後の日本がどのようにしていくべきなのかを講演してほしい」との要望があった。
対話会の満足度は「とても満足」、「ある程度満足」を合わせて100%。今回の講演や対話会で「新しい知見が得られた」が76%、「マスコミ情報と講演や対話の情報に違いがあった」及び「自分の将来の参考となった」がそれぞれ17%となった。
対話会の必要性は「非常にある」、「ややある」を合わせて94%であった。また、友達や後輩へ対話会への参加を薦めるかどうかについては、12名(70%)が「薦めたい」と回答し「どちらともいえない」が30%であった。対話会の満足度や必要性の割合と少し齟齬があると言える。
(3)意識調査について
放射線、放射能については、「一定のレベルまでは恐れる必要はない」が82%であった。一方「怖い」が18%あり。
原子力発電については、「必要性を認識しており再稼働を進めるべき」が29%、「新設、リプレースを進めるべき」が35%あり、「2030年目標を達成すべき」は23%であった。尚、危険だから早期に削減または撤退すべきとの意見が1名(6%)あり。
再エネ発電については、「環境にやさしく拡大すべき」が70%、「天候に左右されるや自然環境破壊につながるので利用を抑制すべき」がそれぞれ17%、12%となった。
カーボンニュートラルとエネルギーについては、「地球温暖化や脱炭素社会の実現に関心」は「大いにある」と「少しある」を合わせて76%の回答であった。尚、4名(23%)が、関心がない&あまりないとの回答であった。 「興味や関心があるのはどの項目でしょうか?」については幅広く関心を示したが「温暖化の影響と対策」、「エネルギー資源の確保」が多かった。 「日本の2050年脱炭素化社会の実現可能性」については、「実現するとは思えない」が41%、「相当いい所まで到達する」及び「わからない」がそれぞれ23%及び35%となった。 「脱炭素に向けた電源の在り方」については、「原子力発電と化石燃料発電を最小とし、再エネ中心が望ましい」は、6%、「化石燃料発電を最小とし原子力発電と再エネ発電の組み合わせが望ましい」が35%、「原子力発電、再エネ発電、化石燃料発電をほぼ均等に組み合わせることが望ましい」が41%となった。
高レベル廃棄物の最終処分については、「関心がある」と「少しある」を合わせて76%の回答であった。「近くに処分場の計画が起きたらどうするか」については、「反対しない」、「反対する」のそれぞれが29%、「わからない」が41%であった。「地層処分について興味や関心がある項目」については「技術」が71%、「制度」が29%、「処分地の選定」が23%であった。

詳細は別添資料(事後アンケート結果)を参照ください。 


4.別添資料リスト

(報告書作成: 2025年8月15日)