日本原子力学会シニアネットワーク連絡会
報告
学生・教員・市民とシニアの対話会

学生とシニアの対話
in 北海道教育大学函館校2025(第8回)報告書

          日本原子力学会シニアネットワーク連絡会(SNW) 世話役: 星野知彦
                          報告書作成  令和7年8月26日
北海道教育大学函館校キャンパス
「環境と放射線」受講学生を対象としたシニアによる講演と対話会
講演と対話会は、北海道教育大学函館校の公開講座「環境と放射線」を受講している国際地域学科の学生を対象に行われた。
講演はWEB方式で112名の学生が参加、講演の5週間後に対面方式で93名の学生が11のグループに分かれシニアとの熱心な対話を行った。
講演では、どうしても報道などで単発的・限定的に情報が入りがちな原子力発電について、発電のしくみ、導入から今日までの流れ、現場の管理、福島第一原子力発電所事故の原因と対策、そして将来にむけて開発中の革新炉までを通して解説した。対話は、学生が事前に提出した講演に対する質問に沿ったテーマで行われた。
学生にとって、原子力発電の黎明期から現在に至る流れを理解した上で、将来に向けての課題や期待について各自考えるよい機会となった。

1.講演の概要

(1)概要

昨年度はGX、高レベル廃棄物埋設処分の2つのテーマで講演を実施したが、今年度は1つのテーマに十分時間を取れるよう単独テーマとした。教育大学の学生であり、これまで必ずしも原子力発電を基礎から学ぶ機会を得ていたわけではないため、原子力発電の基礎から最新の状況までをカバーするテーマを選定した。

(2)日時

6月 3日(火):講演資料を学生へ配信
6月18日(水)13:10~14:40 (90分間):講演(WEB方式)

(3)場所

北海道教育大学函館校 講義室

(4)参加者

学生:112名(国際地域学科、「環境と放射線」を受講する学生)
担当教員:北海道教育大学函館校 国際地域学科 中村秀夫教授

(5)講演会の詳細

演 題:わが国の原子力発電導入から今日まで
     ~国内初の商用原子力発電所運転開始から59年 経験を将来に活かすことができるのか?~
講演者:星野知彦
概 要:日本の原子力導入からの経緯を振り返ると、官民挙げて原子力発電所を輸入、改良標準化計画でトラブル克服、作業被ばく低減や効率改善を推進した結果、ついには日本型の原子力発電所を手にしたが、福島第一原子力発電所事故は、これまでの実績をも根底から覆した。日本は事故の教訓を踏まえ、安全に対する考え方を根本から見直したが、事故後10年以上経っても新規建設はおろか、未だに再稼働できない発電所もある。これまでの蓄積がゼロになったわけではないが、時の経過に伴い人の経験が失われていくのは事実。原子力停滞の間に原子力から撤退する企業も増え、以前のように海外依存に戻ってしまうかもしれない。日本の原子力を再スタートさせる今、これまでの経験を将来に活かすかどうかは若い世代にかかっている。

2.対話会の概要

(1)国際地域学科の93名の学生が参加

対話は対面で実施し参加学生をあらかじめ11グループに分けた。
基調講演内容を踏まえた事前質問に対し、シニアが回答を作成し、対話会に先立ち学生に確認をしてもらった。
対話テーマは事前質問及び回答に沿ったものとし、具体的には対話当日グループ毎に協議・決定した。
対話会は参加学生の興味がある事項について深い議論が展開された
事後アンケートは、参加学生全員が回答してくれた。
また、感想等の自由記述を半数以上の学生が回答してくれており参加学生のエネルギーや原子力に関する関心の高さが伺えた。

(2)日時

6月18日(水):講演会(WEB) 
6月23日(月):学生からシニアへの質問 
7月17日(木):シニアから学生への回答
7月23日(水)12:40~14:30(110分):対面による対話会を開催 

(3)場所

北海道教育大学函館校 講義室

(4)参加者

学生:93名(国際地域学科、「環境と放射線」を受講する学生)
担当教員:北海道教育大学函館校 国際地域学科 中村秀夫教授
シニア:16名(50音順、※はSNW東北)
     阿部勝憲※、井上 茂※、大塔容弘、大西祥作、西郷正雄、佐藤信俊※、鈴木成光、高橋 實※、
     田中治邦、中村 進、船橋俊博、古川榮一※、星野知彦、本田一明※、三谷信次、幸 浩子
グループ数:11(各グループ 学生8~9名/シニア1~2名)

3.対話会の詳細

(1)グループ1(報告 大西祥作)

 1) 参加者
学生:8名 (地域協働専攻の国際協働グループ4名(2年×2名、4年×2名) 地域政策グループ2名(2年、3年×各1名)、地域環境グループ2名(2年×1名))
シニア:大西祥作
 2) 主な対話内容
具体的対話に入る前にアイスブレークとしてシニアも含め自己紹介を実施し た。また対話の進め方や発表を踏まえた役割分担について学生間で相談しても らった。
事前質問項目を含め参加学生が特に興味を持っている事柄について学生からの質問に対しシニアがまず答え、それに対し学生が追加質問をするというピンポン対話を展開した。技術的・工学的なことから社会科学的な事柄まで幅広い範囲の対話を実施することにより原子力に対する理解度が向上したものと思われる。なお、実質70分間の対話であったため、もう少し議論を深堀する時間が欲しかった。
主な対話内容は以下の通り
 ・再稼動をするための住民の理解取得活動について
 ・内陸部への原子力発電所建設の可否について
 ・初等教育における原子力教育の必要性について
 ・出力制御のための制御棒の特徴について
 ・化石燃料価格と電気代の関係について
 ・原子力の理解における家族の影響について

(2)グループ2(報告 船橋俊博)

 1) 参加者
学生:9名 (事前質問提示者:8名 当日質問者1名)
シニア:船橋俊博(ファシリテータ)
 2) 主な対話内容
簡単な自己紹介の後、対話後の発表者を決めてグループ対話を開始 した。
質問件数が多く(事前質問21件、当日質問1件の計22件)、内容的には日頃疑問に思っている点や基調講演に啓発されて自ら疑問に思った点が質問として提示されていた。全体としては原子力の必要性の観点からの質問が多かった。
質問項目として多かったのは、 東電福島第一原子力発電所(1Fと略す)事故後の原子力安全の状況。 再稼働が進まない理由。 周辺の住民感情と世間一般の住民感情。 国民理解を得るためのコミュニケーションの現状。 今後の原子力を支える人材確保の取り組み。
学生は事前に配布された回答を読んでおり、補足的に上記の現状と課題について対話を行なった。
対話の終了後、学生からまとめとして、原子力は日本の電源の基盤として必要であり、1F事故のマイナスのイメージを払拭し住民の理解を得て、電力不足が生じない様に準備すべきであり、そのために技術の継承が重要であると思うとの報告があった。

(3)グループ3(報告 古川榮一)

 1) 参加者
学生:8名(4年2名、3年1名、2年4名、1年1名、 内 男性6名:女性2名)
シニア:古川 榮一
 2) 主な対話内容
学生及びシニアそれぞれ自己紹介を行った後、対話終了後の口頭発表 者、対話記録書記を決定した(じゃんけん)。 質問に対する回答を事前に配布していることから、電力の需要と供給 の関係と原子力発電の安全性の2点について解説・対話を行った後、個 別の質疑を行う旨の進め方を話した後、対話を開始した。
電力の需要と供給および電源の特性について
 事前配布の資料に基づき、電力は需要と生産の「同時同量」が必要で あることを北海道胆振地震時のブラックアウトの事例も踏まえ説明し た。また、各電源の特徴(品質、燃料、副生物等)について解説した。 その後、原子力の必要性について事前質問を行った学生3名にコメン トを求めたところ、電力の安定供給と環境適合性についてある程度理 解できたとの意見であった。
原子力発電の安全性について
 原子力の危険性は、放射性物質を内包することにあり、これを外部に 放出させない安全管理が必要。福島原子力発電所事故は、原子炉を「止 める」ことはできたが想定を超える津波により「冷やす」ことができな くなり、結果して「閉じ込める」ことに失敗したもの。その後の新規制 基準により想定外を許さない対策を進め、再稼働に至っていることを 解説した。学生からは、安全性が高まったことは理解できたが、国民の 理解が進んでいないのではとの意見があり、原子力慎重派の情報発信 や正しい理解のための情報収集等について意見交換した。
個別質疑
 個人毎に発言を求めたが、事前質問の内容が多く、個別に解説した。 最後に学生に対し、原子力に関しては、電力需給および日本のエネルギ ー情勢を踏まえた上で正しい情報を得て考えてほしい旨コメントして 対話を終えた。学生からは、グループ発表時に、電力および原子力に対 する理解に変化が生じた。今後とも情報を得て知識を広めたいとのコ メントがあった。

(4)グループ4(報告 三谷信次)

 1) 参加者
学生:8名、(地域政策Gr2名、国際協働Gr4名、 環境科学Gr2 名 各3~4年)
シニア:三谷 信次
 2) 主な対話内容
 星野幹事の事前に行われている基調講演に関して、今回対面している第4Grの学生達8名各人から事前質問を受けている。それに対する個別の回答もすでに事前送付してあり学生達もそれに目を通していて参加してきている。
最初に学生達各人の自己紹介を実施後、事前質問回答に基づき回答の内容の詳細な解説に入り双方向での対話を実施した。
 ・日本の原子力発電の現状1、「なぜ我が国エネルギーの自給率は低いままなのか?」
 ・日本の原子力発電の現状2、「福島事故後我が国では廃炉プラントが多い。新規プラントも無く、再稼働
  プラントも十分でない。新規制基準とはどんなものなのか?」
 ・日本の原子力発電の現状3、「チェルノブイリ事故と福島原発事故の根本的な違い」
 ・世界の原子力発電の現状、「世界の多くの国は、原子力の有益性、エネルギ-安全保障、地球温暖化対策等を
  勘案して原子力に指向」
 ・日本の原子力発電の強靭性「世界一の耐震技術」
 ・米、英の原子炉型式の違い、「英国ガス炉、米国軽水炉についての歴史的 経緯」
 ・BWRとPWRについて、「我が国各電力会社の選択の経緯とそれらの特徴、優劣」
 ・発電所の廃止措置。「廃炉跡地の有効利用、リプレース等」
 ・核融合炉について、「核分裂炉との仕組みの違い、放射性廃棄物は?」  
 ・日本の軽水炉の従業員被ばく低減、「軽水炉改良標準化の経緯の詳細」
 ・日本の原子力の再スタート、「世界最高レベルの我が国軽水炉技術」 「再スタートに必要な地域住民の
  理解の必要性」
 3) 所感
学生からの事前質問がどれも日本の原子力について悲観的な質問が多く散見された。対話を通して知ったことは、今回の対話の前に「多くの学生が「福島第一原発事故の被災地域住民からの体験談」を聞く機会が大学であり、それにかなりの影響を受けている」と考えられた。当大学に限らず20歳前後の学生達の原子力に対する認識(知識ではない)は、我が国社会の一般住民のそれとほとんど変わらないことが確認出来た。その意味で今回の対話は実に有意義であったと思われる。

(5)グループ5(報告 星野知彦)

 1) 参加者
学生:8名
シニア:星野知彦
 2) 主な対話内容
自己紹介後、報告担当を決め、学生からの事前質問への回答に対しての補足説明の要望や追加の質問についてシニアが対応した。
調べれば解が得られる質問もあれば、必ずしも解のないものもあるため、事前質問から後者に相当する以下の3つの問いを選びシニアが提示した。
  ① 日本の将来のエネルギー比率はどうあるべきか?
  ② ゼロにできない原子力発電の危険性を受け入れられるのか?
  ③ 技術、経験を継承するにはどうすればよいか?  
意見の一致よりも、将来の日本を背負う若者がエネルギー・原子力発電を自分の事として考え、意見を交わすことが今回の対話の目的の一つであることをシニアから伝え、対話を開始した。  
各問いについてファシリテータを決め、意見を交わした。ファシリテータは3年生が務めた。(時間の関係で①、②について実施)
  ✓「①日本の将来のエネルギー比率はどうあるべきか?」 CO2削減、燃料の海外依存度低下の
   ため火力を減らしていくのが好ましいことは全員一致。ただし、再エネは不安定なので火力
   を急激に減らすのは困難との認識。原子力依存度を上げる場合は、国民が原子力の安全性を
   理解することが前提との意見もあった。
  ✓「②ゼロにできない原子力発電の危険性を受け入れられるのか?」 頭では安全性を理解して
   いるものの近くに発電所があるのはいや、といういわゆるNIMBYの考えの学生が多かった。
   小学生の時に東北在住の学生の一人は、福島事故のニュースを見ていた両親が怖がっていた
   のが強く心に残っていると述べた。ほとんどの学生が安全性の理解活動をより積極的に行う
   べきとの意見を述べていた。   
今回の対話会では、他の学生の意見に引きずられることなくそれぞれが自分の意見を述べており、当初の目的は達成できたと考える。  

(6)グループ6(報告 阿部勝憲)

 1) 参加者
学生:8名(3年2名、2年5名、1年1名)
シニア:阿部勝憲(ファシリテータ)
 2) 主な対話内容
シニア、学生それぞれの自己紹介のあと、グループ報告担当を決めた。出身は北海道3、岩手2、青森・神奈川・愛媛各1。事前質問/回答について疑問があれば話題にしてもらうことにした。講演の内容に沿って対話テーマを決めるにあたり、質問が多岐にわたっていたことから、過去、現在、将来に分けて疑問や意見を話し合うことを提案し対話を進めた。主な内容は以下のとおり。  
過去(歴史も含めて)において、今では反対もある原子力を取り入れたのは何故かが話題となった:
  ① 60年以上前ならば原爆の記憶も強かっただろうから反対はなかったのか。原子力の平和利用
   について、米国大統領の宣言や国内の平和利用三原則の議論など踏まえたこと、原子力の
   可能性への期待について説明した。
  ② どうして日本が原子力を選んだのか。電力確保のため、ダム建設による水力発電、工場地帯
   への火力発電所建設を経て、先端技術として原子力発電へと進んできたこと、特に島国の
   日本で準国産電源としての役割を話した。
  ③ 福島事故の前後で大学の教育内容は変わったのか。八戸工大の経験は原子力エネルギー利用と
   放射線利用を変わらず講義するなかで、それぞれ原子力発電所の安全対策と環境放射能に
   ついて関心が高まったことを紹介。
現在の課題については多くの内容に関心が示された:
  ① 原子力発電所の安全対策について確認。
  ② 放射性廃棄物は産業廃棄物に比較して少量でレベル分けして管理。
  ③ BWR型とPWR型の理由とタービンの放射化の差、船や潜水艦にはPWR型を使用。
  ④ 美浜での新型炉検討の報道に関して隣県の了解要らないと思うとの意見。
  ⑤ 火力発電所のトラブルとの違い、など。
将来の原子力の再スタートに向けて学生諸君に提案してもらった: ① 社会の理解を広げるには、今度の講演や対話のように冷静に勉強でき る機会がほしい。子供たちに科学的に正しいことを伝える必要がある。 ② 止まっている発電所を動かして電気料金が抑えられることを見せる。 ③ 安全対策について知れた、安全対策のことをもっと社会に伝えるべ き。  
全体を通しての感想は、「これまで原子力に反対の情報を聞いていたが、今回は原子力のメリットや安全対策を知るいい機会になった」であった。  
最後に、百聞は一見に如かずと発電所やPR館の見学が有効と話した。  

(7)グループ7(報告 高橋實)

 1) 参加者
学生: 9名(1年生1名、2年生6名、3年生2名、男性3名、女性6名)
シニア: SNW西郷正雄(ファシリテイター)、SNW東北高橋實
 2) 主な対話内容
簡単な自己紹介から始めた。学生の出身地は、北海道5名、青森1,岩手1,宮城1,福島1であった。
福島県出身の学生は伊達市から来ており、東電F1事故を身近に経験、事故後毎年ホールボデイカウンターで体内被曝量を検査していたとのこと。他の学生は、ホールボデイカウンターを受けたこともなく、何なのかもわかっていなかった。 
学生諸君の今後の進路希望を聞いたところ、教員志望はこのグループにはいなかった。  
事前質問の回答について、疑問点、追加質問等につき、全員に発言してもらった。
発言内容は概略以下の通り。 ① F1事故後、世界的影響の具体例は。 ② 液体放射廃棄物は基準値以下にして海に放出しているとのことだが、どんなチェックをしているのか。 ③ 電力家庭用小売りも自由化されていると言うことだが、どんな基準で購入先を選べば良いのか。 ④ PWRとBWRを選んだ歴史的経緯。供給区域と立地地域の違いがあるのは何故か。 ⑤ 60年延長運転の実績はどうか、これからどうなるのか。 ⑥ F1事故以降、原子力事業者は、原子力発電所の改良、国民の理解を得るために何をやってきたのか。原子力の人材難に対して、具体的にどのように対処してきているか。
シニアより、それぞれについて、回答や見解をのべた。学生諸君が十分に回答書を読み込んでいないと感じられることもあったが、各自それなりに自分の意見を発言していた。
このような場を通じて、学生諸君がエネルギー問題を考えるきっかけにはなったと思うので、今後自発的に情報にアクセスし、理解を深めることを期待したい。
教育大の学生であるので、教鞭をとって、若い生徒にエネルギー問題を広めてもらいたいと思っていたが、就職先に教員志望がいないのは、誠に残念である。

(8)グループ8(報告 幸 浩子/本田 一明)

 1) 参加者
学生 : 9名 
シニア: 幸 浩子、本田 一明
 2) 主な対話内容
本班では、学生の課題(事前質問)に対して分担して対応するのではなく、両名のシニアが9名全員の質問に対して共通に回答する形式を取った。この方法により、全員の関心が共有される中で、班としての共通論点が浮かび上がった。   
学生の質問に対する回答を通して、単純なYes/Noで応答可能なものや、数値・データにより説明可能な問いだけでなく、それらの形式では答えるべきではない、または答えられないような貴重な論点も明らかとなった。9名の学生から提示されたこれらの論点として、以下の5つを選定した。
 1.原子力発電に対する理解・周知(教育的観点)
 2.発電のメカニズム、ライフサイクル、利点と欠点(エネルギーの基礎)
 3.経験と知識の継承(教育的観点)
 4.原子力技術の発展と日本が世界をリードするための課題(原子力および政策)
 5.次世代原子力および原子力発電所の安全性(原子力安全)  
これらの論点(対話テーマ)についての対話形式には「みゆカフェ方式」(注)を採用した。冒頭約15分間では、参加学生およびシニアの簡単な自己紹介と、当方式の説明、さらに前述の5つの論点について幸が概要を示し、本田が補足を加えた。  
前半の対話は、テーマごとに1〜2名の学生が参加する形で始まり、シニアが挙げられた問題、疑問について解説していたが、次第に3つの小班(1・2・3班)へと自然に移行し、各班3名ずつがより深く議論を展開し、意見交換することとなった。  
全9名の学生に等しく興味ある内容を届けるのは容易ではないが、一般に言われる「1/3は興味を持ち、1/3は聞き、1/3は聞いているふり」といった構造も、対話後半では明らかに変化が見られた。各テーマに関心を持つ学生が自然に集まったことで、シニアの語りかけが確実に届く場となっていた。学生側からの質問、提案、確認などが多く寄せられ、双方向的な対話が成立していた点は特筆に値する。
対話の最終段階では、全参加者が協力して5班分の討議内容をポスターにまとめ、発表を行った。討議内容のみならず、どのように議論を進めたかというプロセスについても共有され、各自が自発的に発言する姿勢が見られた。中には、自ら発表を希望する学生も複数おり、本対話が学生一人ひとりの内発的な関心と関与を喚起したことが確認された。

(注)【みゆカフェについて】

みゆカフェとは、特定のテーマに対して、参加者がポスター用紙に自由に意見や疑問、連想される考えや言葉などを同時に書き込み、それらに対して他者が連鎖的に反応しながら、対話と思考を深めていく対話促進型の学習手法です。一般的な討議方法;挙手して発言を求める方法とは異なり、全員が同時進行で発言できたり意見を知って考えを深めたりできる事は特筆すべきことと考えます。
発言が苦手な参加者でも書くことで意見を表明できるよう工夫されており、記述された考えが可視化されることで、参加者同士の気づきや共感、さらなる問いが自然に生まれます。特定の正解や結論、合意形成を目指すのではなく、多様な視点や考え方を尊重し合いながら、自由な思考の展開と対話の循環を重視します。
ここで挙げられた意見や疑問に対してシニアが解説・説明・問いかけを行うことで、双方向の納得性の高い対話が実現されます。限られた対話時間の中では、各テーマに対する予備知識を持ってもらうことが効果的であり、本対話会のような事前質問への回答も有効でした。これにより、学生がより深い対話を展開できる準備が整えられていました。
みゆカフェは、学年や専門性を問わず自発的な参加を促す仕掛けとして有効であり、他者との協働を通じて「考える力」を育む点に大きな特徴があります。議論を深めることも重要ですが、「考え続ける」姿勢を重視することが基本にあります。

(9)グループ9(報告 井上茂)

 1) 参加者
学生:9名(3年3名、2年5名、1年 1名)
シニア:鈴木成光、井上 茂
 2) 主な対話内容
グループの事前質問とシニアからの回答を学生が読んでいることを確認の上、テーマを定めず自由なテーマで対話を行った。グループ発表を担当した学生は非常に的確なまとめを行っており、その発表内容をもとに概要を以下に報告する。
① 気象変動問題への対応として、日本はエネルギーミックスやカーボンニュートラルの促進が必要。一方、電気料金の高騰も懸念され国民の理解を得るための活動が必要。
② 再エネは発電効率や供給の安定性に欠けているので、原子力は不可欠。しかし、福島事故の記憶が濃く残る中で、被災者を含め原子力の活用を再び推進、拡大することに反対する意見が根強い。
③ 国は原子力の活用、推進に関する情報を発信しているものの、若年層を含め多くの国民に届いていない。義務教育の段階から現状の課題や解決策について学ばせたり、アニメやYouTubeなど身近なメディアを活用して、日常的に情報に触れる機会を強化することが必要。
④ 福島事故の原因やその後の対策の効果について、国は説明を重ねて来たのだろうが、国民の理解は進んでいない。まずは、原子力に賛同する層や理解を示す人々を増やすことが原子力の推進、拡大の第一歩となるのでは。
事前に提示された質問は、「自分の意見を述べ、シニアの意見を聞く」という内容が多く、学生の意識の高さに驚かされた。対話も同様に質が高く、対話に参加した学生達は、地球環境問題や再エネの限界を踏まえたうえで、原子力の必要性を理解していた。一方、原子力政策や福島事故後の安全対策などの情報を得る機会が少ないことが、原子力の活用、推進を妨げていると指摘しており、今後は一層の理解促進活動が求められると強く感じた。

(10)グループ10(報告 田中治邦)

 1) 参加者
学生:9名 学年は3年生3名、2年生6名。性別は女子7名、男子2名。 所属は国際協働グループ5名、地域政策グループ4名。
シニア:中村進、田中治邦(ファシリテータ)
 2) 主な対話内容
学生同士も全員が知り合いではなく自己紹介から開始。
学生のリーダ(発表者)を決めるよう促したところ3年女子1名が挙手。議事録をとるサポート役が欲しいとの希望にやはり3年女子1名が引き受け。男女に差は無い雰囲気だが、女子リードで男子は発言が消極的な印象あり。  
事前質問への配布済み回答に対する追加の質問或いは意見が無いか一人ずつ尋ねた。全員が事前回答を読んでいた模様で対話が成立。
その後、議論のテーマとして「2050年カーボンニュートラルの実現性」を提案し全員が2回は発言。意見の違いで議論が沸騰するようなことは無くほぼ全員が実現は難しいとの考え。原子力は必要であるが国民理解が不足しており、1F事故の教訓を反映し現在は安全性が高まっていることをアピールするべきとの意見が主。時間の流れを実感。
学生は印刷物もノートも持たず机上でPCを開いて受講するのが標準スタイル。リーダの女子学生も発言しつつPCに打ち込み続け、議論終了時にはグループ発表の材料は出来あがっていた模様。
なお後日、対話のレベルに不足感あり、2012年出版の「とことん語る福島事故と原子力の明日」の活用を図ってはどうかとのシニア意見あり。

(11)グループ11(報告 大塔容弘) 

 1) 参加者
学生:9名
シニア:大塔容弘、佐藤信俊 
 2) 主な対話内容
今回の対話会終了後の各班の発表は、テーマ毎の対話内容の発表と各学生さんの質問事項に回答する形での発表の2通りであった。当11班の発表形式は、後者の各学生さんの質問事項に答える形式で発表した。 主な質問事項は以下の通りである。
多くの一般の人たちに原発についての正しい知識を持ってもらうにはどうしたらよいのか。
学生として、原発に対して正しい情報を得るためにはどうすればよいのか。 
原発が稼働するために必要な安全上の手続きはどのようなものか。
原発で働く人達の安全管理上の手法とその教育方法はどのようなものか。 
原発技術の継承の課題が浮き彫りになって来ている。その現実を踏まえて日本はどう対処したらよいのか。
原発と他の発電方式との比較の上で、原発のメリットは何か。
そうした中で、今後拡大が予想される再エネに対してどう対処すべきか。    
現在の世界情勢を想定した戦争被害が発生した場合、日本としてどう対処したらよいのか。  
これらの質問に対し、より理解を深めてもらうため、多くの参考シートを提示し、丁寧に説明を行った。その成果は、対話会終了後の第11班代表学生の発表に表れているとの印象を持った。    

4.学生アンケート結果の概要

(1)参加学生について
参加学生全員(93名)が回答。(1名個人アドレスでも回答あり)
参加学生の内訳
   地域協働専攻 国際協働グループ 37名
          地域政策グループ 33名
          地域環境科学グループ 19名
          グループ不明  4名
          1年生-6名、2年生-57名、3年生-24名 4年生-7名
(2)対話会について
基調講演の満足度は「とても満足」、「ある程度満足」を合わせて96%で あった。尚、やや不満、大いに不満は2%であるが、個別に確認すると内 容が難しかった、質問時間不足等24件のコメントがあり。基調講演以外 で聞きたいものとして、原子力に関する社会的受容性に関する事項や再生 可能エネルギー等技術的事項についてもっと詳しく知りたかったとの意見 があった。  
対話会の満足度は「とても満足」、「ある程度満足」を合わせて93%であった。但し5%の学生より「やや不満」、「大いに不満」と回答があり。対話時間不足やシニアの話が長かったとの意見があった。    
今回の講演や対話会で91%の学生が「新しい知見が得られた」と回答してくれた。  
対話会の必要性は「非常にある」、「ややある」を合わせて98%であった。また、友達や後輩への対話会への参加を進めるかどうかについては、83%が「進めたい」と回答し「どちらともいえない」が15%であった。  
(3)意識調査について
放射線、放射能につては、「一定のレベルまでは恐れる必要はない」が88%であった。一方「怖い」が12%あり。 
原子力発電については、「必要性を認識しており再稼働を進めるべき」が47%、「必要性を認識しており将来に向け新増設、リプレースを進めるべき」は32%であった。 
再エネ発電については、「環境にやさしく拡大すべき」が68%、「天候に左右される」が17%となった。  
カーボンニュートラルとエネルギーについては、「地球温暖化や脱炭素社会の実現に関心」は「大いにある」と「少しある」を合わせて96%の回答であった。 「興味や関心があるのはどの項目でしょうか?」については幅広く関心を示したが「温暖化の影響と対策」が54%もの学生から回答があった。 「日本の2050年脱炭素化社会の実現可能性」については、「実現するとは思えない」が61%、「相当いいところまで到達する」が19%、「わからない」が20%となった。 「脱炭素に向けた電源の在り方」については、「化石燃料発電を最小とし原子力発電と再エネ発電の組み合わせが望ましい」が64%、「原子力発電、再エネ発電、化石燃料発電をほぼ均等に組み合わせることが望ましい」が18%となった。   
高レベル廃棄物の最終処分については、「関心がある」と「少しある」を合わせて77%の回答であった。「近くに処分場の計画が起きたらどうするか」については「反対する」が30%、39%が「わからない」であった。「地層処分について興味や関心がある項目」については技術が58%と多かった。  
(4)感想・意見
対話会参加者の半数強の学生から色々な感想・意見を頂いた。 対話会で得られたことに対する感謝や改善点等についてコメント頂き、学生のエ ネルギーや原子力についてより広く&深く学ぼうとする姿勢を強く感じ取るこ とが出来た。  

詳細は「2025年度 北海道教育大学函館校 学生とシニア対話会(第8回)事後アンケート結果詳細」を
 参照してください。  


5.添付資料リスト

(報告書作成: 2025年8月26日)