日本原子力学会シニアネットワーク連絡会
報告
学生・教員・市民とシニアの対話会

学生とシニアの対話in静岡大学2023年度前期浜松キャンパス報告書

 
日本原子力学会シニアネットワーク連絡会(SNW)世話役 田辺博三
報告書作成 2023年7月15日
《静岡大学浜松キャンパス》
学生の関心事の対話を中心に実施
静岡大学対話会(前期浜松キャンパス)は、連続講義「エネルギーと環境」を受講する工学部、情報学部の3年生と若干名の4年生の計61名を対象に実施した。
「エネルギーと環境」は、エネルギー、環境、セキュリティ、地球温暖化、原子力発電、放射性廃棄物等の幅広い分野にわたって講義が行われている。今回の対話会もその一環として開催されており、対話のテーマは講義に関連する➀エネルギー・環境問題、➁エネルギーセキュリティ、➂原子力発電、➃放射性廃棄物の4テーマとした。
対話では、対話概要のとりまとめと発表を行う学生を指名してスタートした。シニアはファシリテータとして、学生の対話を促進した。
まず、学生から対話テーマに関してどのような関心があるのか、何を意見交換したいのか等を提案してもらい、その中からいくつかの関心事に絞って対話を行った。
学生は、関心事に関して自分の意見を述べ、相互の意見交換を行うことにより、自分の意見を明確にするとともに、問題の理解をより深める等、一定の成果をあげることができた。

1.講演と対話会の概要

(1)日時

基調講演  :なし
対話会   :令和5年6月30日(金) 10:20~11:50

(2)場所

静岡大学工学部 5号館22号室、23号室、6号館11号室、12号室

(3)参加者

大学側世話役の先生
学術院理学領域 大矢恭久准教授
参加学生
工学部学生3年生40名、4年生2名、情報学部学生3年生19名、合計61名
参加シニア:8グループ、8名
早瀬佑一、早坂房次、田中治邦、若杉和彦、大野 崇、早野睦彦、石川博久、田辺博三
 

2.対話会の詳細

(1)開会あいさつ

参加学生数が多かったため、4つの教室で、8つの対話グループに分かれて開催した。このため、全員の会合は開かず、各教室において、シニアより開会あいさつを行った。

(2)グループ対話の概要

静岡大学対話会(前期浜松キャンパス)は、「エネルギーと環境」を受講する工学部、情報学部の3年生と若干名の4年生の計61名を対象に実施した。
浜松キャンパスの講義「エネルギーと環境」は4月から7月まで15回にわたって、エネルギー、環境、セキュリティ、地球温暖化、原子力発電、放射性廃棄物等の幅広い講義が行われている。今回の対話会もその一環として開催されており、対話のテーマは講義に関連する➀エネルギー・環境問題、➁エネルギーセキュリティ、➂原子力発電、➃放射性廃棄物の4テーマとした。世話役の先生により行われた、事前の参加学生の関心事アンケートの結果に基づき、2グループ/テーマ、合計8グループに分かれて開催した。
対話では、対話概要のとりまとめと発表を行う学生を指名してスタートした。シニアはファシリテータとして、学生の対話を促進した。
まず、学生から対話テーマに関してどのような関心があるのか、何を意見交換したいのか等を提案してもらい、その中からいくつかの関心事に絞って対話を行った。
学生は、関心事に関して自分の意見を述べ、相互の意見交換を行うことにより、自分の意見を明確にするとともに、問題の理解をより深める等、一定の成果をあげることができた。
以下、各グループ対話の概要である。
1)グループ1
テーマ
エネルギー・環境問題
参加者
学生:7名 (工学部3年5名、情報学部3年2名)
シニア:早瀬佑一
対話内容
【学生の意見、意見交換】
シニアと学生の自己紹介のあと、学生一人一人から、テーマ・エネルギー・環境問題に関する意見、疑問を述べてもらい、他の学生の見解、意見を聞いた。
  • 多くの問題があるが、自分たちに出来ることは何か。出来ることは節電程度。大きな貢献になっていない。
  • 3Eのトリレンマをいかにして解決するか。途上国の石炭利用に対し、日本は効果ある援助が出来るのか。毎年のように日本は「化石賞」を受賞しているのは情けない。波力、潮力発電が、火力の代替にならないか。
  • EV自動車が増えているが、充電電気が火力では、CO2は減らない。
  • 国民は、エネルギー問題の本質を分かっておらず、危機感が薄い。やっているのは節電くらい。教育、意識改革が必要。
【シニアからの若干の補足】
  • トリレンマ解決の連立方程式(変数は、再エネ、原子力、火力の電源比率)はなかなかの難問。国民生活と産業活動の生命線である電力安定供給(信頼度)の維持が大前提。国民の期待の大きい太陽光、風力発電をいかに活用するか。福島原発事故による原子力忌避感をいかに乗り越えるか。CO2を排出する火力は再エネ利用のバックアップとして欠かせない。
  • 国(政府、電力業界、国民)を挙げて、全力で取り組むことが肝要。SDGsのような身近な対策も重要であるが、連立方程式を解くために、国民の一人である皆さんも、事実をもとに自分で考え、行動に結び付けてほしい。
【学生のまとめ、発表】
  1. テーマ1.エネルギー環境問題の今の状況
  • 化石燃料の使用に伴うCO₂の排出量が多く、火力発電を一気に減らすというのは現実的ではない。
  • 再生可能エネルギーの導入を進めているが、安定供給の面において問題がある。
  • 発展途上国におけるCO₂排出量が多い。
  • 国民の環境問題やエネルギー問題に対する認識や危機感が甘い。
  1. テーマ2.今後考えられる対策
  • 再生可能エネルギーの導入はできる範囲で徐々に進めていく。
  • 政府が主体となって環境やエネルギーに関する法整備や設備の管理に力を入れる。
  • 国民自身が情報を仕入れ、自分で考え、環境問題に貢献できるような行動する。→世界の動きを見つつ、現実的な範囲でエネルギー問題に取り組む。
学生の意識、認識は高いが、対話時間が短かったため(50分)、突っ込み不足の感は否めない。次回は、出来れば90分は欲しい。アンケートからも伺える。専攻分野(電気、機械、情報)により、意識、認識に差があるのはやむを得ないか。
2)グループ2
テーマ
エネルギー・環境問題
参加者
学生:7名 (工学部3年4名、情報学部3年3名)
シニア:早坂房次
対話内容
【学生の意見、意見交換】(→はシニアからの補足説明)
シニアと学生の自己紹介のあと、学生一人一人から、テーマ・エネルギー・環境問題に関する意見、疑問を述べてもらった。
  • 今回の一連の講義を受講して今までと変わったことがあったかという質問を全員に最初に全員にしたが、高校までで学校で習ったことは再エネ最優先であったが、再エネの限界や火力・原子力の必要性を改めて認識したとの声が多かった。
  • 日本が経済成長をしていない(どんどん貧乏になっているという声すらあり)し、一度豊かな生活を知ってしまったら生活レベルを下げるのは無理。原子力発電所の再稼働を求める声が複数あった。→学習指導要領の問題もあるが、教員自体に恐らく認識不足がある。(同じキャンパスにある教育学部では別の事が教えられている?)
  • 日本の一次エネルギー供給で再エネの占める割合が低く風力や太陽光のように需給調整機能が必要な電源は主たる電源になりえないのではないか?
  • エネルギー密度の低さが環境負荷の大きさに繋がっていることは認識すべき。
  • 再エネで水力を別計上している理由は?→一般水力は戦後の極初期までは主力電源であり、大正期から再生可能エネルギーである水力が100%近い時期もあった。従って、つい最近まで再生可能エネルギーで圧倒的に大きく、新規電源とは区別されるケースもある。また、かつて民主党が政権にあった時代に「コンクリートから人へ」と言われ、「八ッ場ダム」建設が一時中止されたように、ダム開発にはイデオロギー的に反対する勢力もあることも背景にある。なお、国内の大規模な包蔵水力は開発されつくしており、中小水力しか開発余地がない事もあり、一般水力は30,000kW以上と未満で区別され、30,000kW未満は固定価格買取制度(FIT)の対象となっている。
  • 日本近海には資源があるという話を聞いたことがあるがどうなのか?→メタンハイドレードの事と思われるが、日本海の海台や太平洋の海溝部にメタンを水分子で囲ったシャーベット状の形で存在するもの。回収には①減圧法と②温水加温法があり、前者は採掘量が少なく、後者は加温に必要なエネルギーが採掘されるエネルギーより少なく、両者とも掘削も含めた採掘に必要な設備までのトータルの投入エネルギーより算出されるエネルギーが小さい(エネルギー収支比1未満)ので現実的ではない旨説明。国費を投入しプロジェクトがなされていたが、現在はあまり聞かれなくなった。喧伝されたのは研究費獲得のプロパガンダであった感は否めない。
【学生のまとめ、発表】
  • 物事の二面性を理解してバランスを取ることが重要、誤ってしまうと大変なことになってしまう。
  • 物事のいい面を見ているだけでは適切な判断は出来ない。
  • 経済と環境のジレンマ 物事の良い面を聞くことが多いが、自分たちで調べて欠点を見つけ選択していく必要がある。
3)グループ3
テーマ
エネルギーセキュリティ
参加者
学生:9名 (工学部3年5名、情報学部3年4名)
シニア:田中治邦
対話内容
事前に全員から質問・意見が提出されており、似通ったものをグループ化した上で、あらかじめ回答を作成し、その印刷を全員に配布し、当日の討論ではその説明はせず、その場での意見交換の時間を増やすように努めた。回答の印刷は皆急いで目を通していた。自己紹介を行った後、エネルギーセキュリティに関して関心事を述べ、意見交換を行った。
学生の主な関心事、意見交換の内容を以下に示す。
  • エネルギーセキュリティの観点で再エネと原子力をどう使って行けるかが課題である。 次世代炉は国民理解をどうやって得るかが課題であろう。
  • 地域に合った再エネの利用が必要だが、利用方法に課題がある。
  • 原子力はそのリスクを考えて反対する人がいる。遠方の辺鄙な所に作ることになろうが送電コストがかかる。
  • バッテリーを積んだ船で電気を輸送するというアイデアがあり、興味がある。
  • 日本は地熱発電を利用すべきだ。
  • 温泉地は観光産業に取り組むが、盛り上がらないケースがある。他に資源が無い以上、地熱発電をやるべきだ。
  • 火力発電は海外に依存するもので燃料の供給遮断があるとピンチだ。原子力が日本の将来にとって良い。
  • エネルギーの消費を減らすことも大切だ。
  • 地熱発電を増やしてもそれだけではダメだろう。貯めたり、使う量を減らしたりが大切ではないか。
  • 原子力は嫌だという人々の気持ちを変えるのは難しいだろう。再エネやバッテリーの研究に力を注ぐのが確実だと思う。
  • 温度設定を下げるとか、使わないときはコンセントを抜くとかの省エネは効果が小さい。呼びかけは大切だが、要請通り対応してくれるかは怪しい。エネルギー利用効率の高い(エネルギーをあまり使わない)機器の開発が重要である。
  • 新しい発電方法の開発が大切である。3Eと言うが工夫が必要である。例えば地熱発電は排出される熱水を温室暖房に使うなど。
  • 節約は今日の取り組みとして重要だが、将来に向け経済発展が続く限り不足してしまう。供給側を増やす取り組みが大切だ。
  • 日本は国土が狭く、それも殆どが山であり、一方GDPが世界第3位ということが余りにもアンバランスである。エネルギー自給は困難である。エネルギー資源の輸入をゼロにするというのは不可能である。
  • 自分も輸入ゼロは無理だと思う。「出来るだけ少なく」しかない。AIを使った効率的な利用が重要である。
  • 途上国が経済発展すると大変である。技術が重要。自国だけでの対応では困難ならば協力して取り組むしかない。西暦何年頃にどれだけエネルギーは必要になるかを把握し、エネルギー不足とならないようにする方法、あるいは経済発展の仕方を考えるべきである。
4月から「エネルギーと環境」と題する講義を選択して毎週受講している学生達だけに、対話会の前に行われた一連の授業の影響か、エネルギー問題に関する理解はあった。原子力については、静岡キャンパスの場合と異なり浜岡原発とは距離があるせいか特段の意見は無く、反発も無く、ただ国民の理解が得られず稼働が難しいという認識があった。現実にはエネルギーセキュリティの確保は大変に難しいということを良く理解している学生達であった。
当方は司会(ファシリテータ)の役目に徹し、意見表明や解説を出来る限り控え、学生間の意見交換を促した。学生同士で意見を戦わせるという雰囲気にはならなかったが、皆様々に考えて思いつくことは発言してくれるという様子で、今回の対話を通して、エネルギーセキュリティを確保することの難しさに関する認識が深まったと考える。
学生により発言の多寡は見られたが、全員が手を上げて発言をしてくれたので、参加できた意識は残ったものと考える。理系の学生であるためか、太陽光や風力に対する過度な期待は無く、省エネ・再エネ・エネルギー貯蔵・原子力をどれもやらないと足りないという理解に一致したと見える。
なお、最初に学生諸君の趣味を尋ねたが、屋外に出る活動(スポーツ、山登り等)は少なく、自室でパソコンに向かうゲームやパソコンやスマホを楽しむという趣味が目立った。読書や音楽鑑賞という言葉は無く、時代の流れを感じた次第である。
4)グループ4
テーマ
エネルギーセキュリティ
参加者
学生:7名 (工学部3年3名、情報学部3年4名)
シニア:若杉和彦
対話内容
自己紹介とともにエネルギーセキュリティー等に関する疑問やコメントを述べてもらい、それらを次のテーマに集約して議論した。
  • 原子力発電の導入への障壁
  • 原子力発電が確実に安全になるときはいつか
  • 継続的に原子力発電を使うためにはどうしたらよいか
  • 地球温暖化に向けてやるべきことは何か
  • エネルギーセキュリティーのために取るべき行動
  • 蓄電の可能性について知りたい
  • 他国に頼らずに(化石燃料の)使う量を維持するためにはどうしたらよいか
若杉から、エネ自給率の低い島国日本で脱炭素を目指すには原子力と再エネが必要であること、再エネはまだ経済的に自立していないのでコストがかさむこと等を解説した。また、学生から「もし原発が地元に設置されることになったらどう思うか」が提起され、全員で意見交換した。
若杉の解説とその後の全員の議論を受けて、学生は以下のように発表した。
  • エネルギーセキュリティー確保には、化石燃料輸入のための外交努力と多様な発電方法の採用が必要である。
  • 原発の国民理解のためには、福島原発事故原因の正確な説明や事故後の安全対策の充実をもっと一般に発信することが必要である。
  • 「地元に原発を設置されることになったら」については、雇用が生まれるなどの賛成意見、やはり不安感が拭えない等の反対意見の両方があった。
  • 再エネの導入が進みにくいのは、バックアップ電源が必要、蓄電設備が高価等が理由である。
国のエネルギーセキュリティーのために原子力発電が必要であることを、学生は良く理解していた。その上で原発の安全性と有用性をどうすれば一般に理解してもらえるのかが学生の主な関心事であった。異なる学部の学生が意見交換することにより相互理解が進み、対話テーマに関する知識を深めることが出来たと思う。
5)グループ5
テーマ
原子力発電
参加者
学生:学生8名  (工学部3年5名、4年1名、情報学部3年2名)
シニア:早野睦彦
対話内容
自己紹介とともに原子力に関する疑問やコメントを述べてもらい、それらをテーマに集約して議論した。
対話テーマ
  • どうして原子力発電の再稼働が進まないのか
  • どうして原子力発電の理解が進まないのか
  • 原子力発電を放棄する場合のリスクはないのか
  • 日本と世界の社会体制の違いが有るのではないか
早野から各テーマについて原子力に限らず再生可能エネルギーや化石燃料などエネルギー全般に対する知識が必要なこと、日本は資源小国でありドイツのように原子力を放棄した場合のリスクも考えてみることなどについて話をした。
早野の指摘を受けて、学生は以下のように考えて発表した。
  • 日本は民主主義国家であり、強力なリーダーの下での原子力の推進は難しい。従って原子力の理解活動が必要である。
  • 原子力の不安はあるが逆に、原子力を放棄した場合は資源小国の日本がどのような事態になるかを知ることが理解活動に結び付く。
  • 例えば、原子力発電を行っている電力会社の電気代と再稼働していない電力会社の電気代は大きく違ってきた。化石燃料も大気汚染による死者が多いし、太陽光や風力発電も自然条件に依存して不安定でそれぞれ一長一短があっていずれも問題があることを知ることが大切である。
さらにNIMBY問題まで言及して欲しかったが如何せん時間が短かかった。しかし、学生たちはヒントが得られたような表情を浮かべ、発表資料の作成で更なる議論も生まれていた。もっと時間が欲しいとの意見はその後のアンケートにも現れている。
6)グループ6
テーマ
原子力発電
参加者
学生:学生9名 (工学部3年6名、情報学部3年3名)
シニア:大野 崇
対話内容
大矢先生の意向に基づき、学生同士の議論に重きを置き、あらかじめ提出された以下の質問の趣旨を説明してもらい、その中から対話テーマを絞りそれについて意見を述べ合うという形をとった。
  1. ①原子力発電のサクセスストーリーをもっと主張すべきでないか
  2. ②原子力発電の将来はあるのか
  3. ③各国の原子力発電に対する考え方は
  4. ④原子力発電は再エネの調整電源としての役割を担えるか
  5. ⑤原子力発電はサステイナブルエネルギーとなりうるか
  6. ⑥津波以外の原子力発電の弱点は。(安全に一抹の不安)
  7. ⑦原子力発電に対するマイナスのイメージをなぜ払しょくできないのか
  8. ⑧住民の理解を得るには
  9. ⑨使用済み燃料の再利用とは
対話テーマ
  1. 結果、共通のテーマとして「原子力発電の受容性」について多面的にとらえ広く議論することとし、その後、他の関心の事項について最後に質疑の時間を設けた。
学生は以下のようにまとめて発表した。
    原子力の安全性
  1. 事故がなぜ起こるのか(起こったのか)
  2. (それまでは)事故がほとんど起こっていなかった、(事故は起こらないという)慢心があった→(今後は)事故は起こるだろうと考えて開発
  3. 津波以外の被害→日本が地震がよく起きるので地震、その他人間の心の緩みが考えられる。
  4. 運用終わったあとの土地→放射線レベルが下がるまで待ち、放射線物質の処理、取り壊し
    原子力の持続性
  1. 世の中の原子力への考え方の変化が重要
  2. 福島県だと原子力への意識が強い→(地元の)方が強い意識を持っているが(地元)以外はあまり持てていない
  3. 原発は事故のリスクがあるので被害者の方のことを考えると、運用は難しいという意見が多い
  4. 実際に電気料金などが高くなって、世論調査が原子力容認が半数を超えた結果、世論のイメージが変わってきている
    原子力の安全性について
  1. 原発は事故のリスクがあるので被害者の方のことを考えると、運用は難しいという意見が多い
    原子力の持続性について
  1. 基本的には使っていった方が良い→相当なお金がかかるのと被害の方がいるので国が進めていくのは難しい
終わって感じたことは、「原子力発電の仕組みと課題」についての授業はなされているがこうした対話形式で自分の意見を述べあうのは初めてのようで新鮮に感じたようであった。対話における積極発言と追加質問等の盛り上がりの雰囲気やアンケート結果からからも読み取れた。
7)グループ7
テーマ
放射性廃棄物
参加者
学生:7名 (工学部3年6名、情報学部3年1名)
シニア:石川博久
対話内容
自己紹介の後に各人から放射性廃棄物および処分場についてどのようなイメージがあるか述べてもらった。主な意見としては、
  • 中身がよくわからない。
  • 危険なもの。
  • 大雨などで漏れることはないか。
  • 長期にわたる場合の影響が不安。
  • 近くに来てほしくない。
次に放射性廃棄物を対話会のテーマとして選んだ理由を聞いた。
  • 低レベル放射性廃棄物の講義を聞いて興味を持った。
  • 放射能についてよくわからないので新しい知識を得るため。
  • 原子力の必要性はわかるが放射性廃棄物をどうするか知りたい。
放射性廃棄物処分についていくつかテーマを挙げて議論した。
    処分の考え方
  1. 地下へ埋めることの理由→地下はそもそも動きが少なく、変化しにくい。
  2. 日本は地殻変動が大きいが、それでも活断層や火山がない場所はある。
  3. 地上で人間が管理し続けることは非常に長期にわたっては困難。
    廃棄物の輸送時に事故が起きないか
  1. 輸送時の事故で漏れないか→日本では船で輸送することを考えている。
  2. 鉄道での輸送も可能性はあるが、重量物を安全に輸送する観点で船舶輸送を基本としている。
    処分場があることのメリット
  1. 処分場があることでメリットがあるか?→青森県六ケ所村では税金が村へ入ること、多くの雇用があり住民も増えている。また各地の原子力発電所サイトも税金と雇用でメリットがある。
全体に丁度議論が盛り上がってきたところで時間となり、さらに深堀した議論には至らなかった。授業で習ってはいるが、詳細には説明されていないか。放射性廃棄物についてはメディア等でも接する機会が少ないとの意見があり、情報を広めていく必要性を感じた。
8)グループ8
テーマ
放射性廃棄物
参加者
学生:7名 (工学部3年6名、情報学部3年1名)
シニア:田辺博三
対話内容
自己紹介とともに放射性廃棄物に関して学生間で対話したい関心事について述べてもらい、それらを以下のテーマに集約して議論した。
対話テーマ
  1. テーマ1.地域の理解
  2. テーマ2.将来の世代に発掘される危険性
  3. テーマ3.処分期間の短縮
田辺から各テーマについて現状の取り組みなどの情報提供を行った。また、少しでも反対者がいると進められないのではないかとの意見を持った学生に対して、首長が受け入れの判断をする際に住民の意見を踏まえることになるが、100%賛成ということは現実的ではなく、各国でも民主的に判断している、とコメントした。
学生は以下のように考えて発表した。
  1. テーマ1.地域の理解
  2. 安全性の担保だけでなく、お金など補助でメリットを設ける。
  3. 反対意見の尊重。過半数が賛成であれば満場一致でなくても進める、反対派をどのように納得させ賛成派を増やすかがポイント。
  4. 賛成派を増やすために原子力発電の再稼働でのメリット提示。
  5. 処分場を地域住民の働き場とする。税収増となる。
  6. もし地元だったら、教育費・医療費的補助(賛成)と観光業、交通量多い土地の場合つり合いが取れない(反対)について現状に対するメリットと比較。
  7. 知る機会を設けたり政府などが働きかける。
  8. 風評被害の原因にもなりかねない(反対)。
  9. 風評被害に対して、声の大きさ、被害に対する補助、安心させる努力をする、マスメディアを通して正しい情報を重ね重ね伝えるなどが重要である。
  1. テーマ2.将来の世代に発掘される危険性
  2. そこを掘る動機を減らすため、鉱脈、石油など資源がある場所を避ける。 処分場があるという記録をどう残すか、例えばモニュメントとして残す。
  1. テーマ3.処分期間の短縮
  2. 処分方法は埋める放射性廃棄物の危険性に応じて決める。放射能の最も大きい高レベル廃棄物は地下数百メートルの地層処分を行う。
  3. 放射性物質を変換して半減期をより短くする、毒性を減らす研究は行われている。インフラの整備などで実用化には至っていない。
自分が住む場所の近くで処分場の動きがあった場合、学生はどう思うかとの質問に対して、多くの学生が安全でメリットが大きければ反対しないとの意見であった。一方、風評被害が大きくメリットとバランスがとれなければ反対するという意見もあった。
理解に関連して、ほとんどの学生が日常では処分問題の情報を受けていないとの声があった。また、理解してもらうためには信頼にある人から正しい情報発信、マスメディアの発信、著名人からの発信、有名なインフルエンサーからの発信が重要であると述べていることは他の大学でも同様の意見があり、印象的であった。

3.講評、閉会のあいさつ

前述の通り、参加者は初めから最後まで4つの教室に分かれて対話会を行っため、全体での講評、閉会のあいさつは行えなかった。以下は、放射性廃棄物の教室での講評、閉会のあいさつ(シニア石川)である。
大矢先生はじめ本日参加の学生のみなさんありがとうございました。原子力について話題になることが多いこの頃ですが、放射性廃棄物についてはあまり話題になっていないと思います。重要なことにもかかわらず世の中であまり知られていないということは難しい問題です。今回の対話会で得られた知識についてぜひみなさんの周りにも広めてもらいたいと思います。少しでも話題になることがみんなの関心を呼ぶことになります。これからも関心を持ち続けてください。

4.学生アンケート結果の概要

(1)参加学生について

  • 工学部、情報学部の「エネルギーと環境」の講義を受けている3年生59名と4年生2名の計61名が対話会に参加。
  • 参加学生61名のうち61名が回答。回収率は100%。
  • ほとんどの学生が理系。
  • 進路は約6割が進学、約4割が就職を希望。

(2)対話会について

  • 対話会の満足度は「とても満足」、「ある程度満足」が合わせて95.1%、「やや不満」、「大いに不満」が4.1%。ポシティブな意見は新しい知見が得られたが最も大きく、次いでマスコミと対話の情報が違いがあった、将来の参考になったが挙げられた。また、最後の本企画を通した感想にもポジティブな意見が述べられてる。一方、ネガティブな意見として、対話時間不足が最も大きく、次いで対話内容が難しかった、希望内容が対話出来なかった、シニアの話が長かった、何をするか事前に聞いていなかったがあげられた。今後の改善の参考にしたい。
  • 対話会の必要性は「非常にある」、「ややある」が合わせて96.7%、「あまりない」、「全くない」が3.3%。ネガティブな意見として、特にメリットがなかったから、シラバスにも載っていない、があった。
  • 前回(22年度後期静岡キャンパス対話会)での学生のネガティブな意見(会場が狭く聞きづらい)を改善するため、世話役の先生にご相談して、会場を2倍に増やしたことから、同じ意見は出なかった。また、シニアとしても話しが聞こえやすかったと感じている。なお、学生との意見交換がより可能な少人数での対話、対話時間の拡張等については、大学側の都合もあるので、次回に向けて、引き続き、世話役の先生等と何が出来るか考えたい。

(3)意識調査について

  • 放射線・放射能については、「有用であることを知っている」が95.1%であったが、「恐れる必要はない」は86.9%とやや低く、13.4%の回答は「放射線レベルに関係なく怖い」という回答であった。
  • 原子力発電については、「原子力発電の必要性を理解あるいは認識している」学生が大半であった。危険だから早期に削減、撤退すべきは1名であった。
  • 再エネ発電については、「環境にやさしく拡大すべき」が最も大きく45.9%、次いで「天候に影響を受けるので利用抑制すべき」が37.7%、「環境破壊につながるの利用抑制すべき」が9.8%であり、4名は分からないと回答した。
  • カーボンニュートラルとエネルギーについては、「地球温暖化や脱炭素社会の実現の関心」は殆どの学生が「大いにある」、「少しある」と回答した。「興味や関心があるのはどの項目でしょうか?(複数回答可)」については幅広い関心を示した。「日本の2050年脱炭素化社会の実現可能性について」は、「実現するとは思えない」が最も大きく62.3%、「相当いいところまで到達する」が21.3%、「分からない」が16.4%であった。「脱炭素に向けた電源の在り方」については、「原子力発電、再エネ発電、化石燃料発電をバランスよく組み合わせることが望ましい」が最も大きく52.5%、次いで「化石燃料発電を最小とし原子力発電と再エネ発電の組み合わせが望ましい」が37.7%であり、「再エネ発電中心」と「分からない」が各々3名であった。
  • 高レベル廃棄物の最終処分については、「関心や興味が大いにある」、「少しある」が合わせて75.5%、「あまりない」が21.3%、「ない」が2名であった。「近くに処分場の計画が起きたらどうするか」については「反対しないと思う」が39.3%、「反対すると思う」が27.9%、「分からない」が32.8%とほぼ拮抗している。「地層処分について興味や関心がある項目」については「技術」が最も大きく66.7%、次いで「処分地の選定」が41.7%、「制度」が21.7%、「補助金」は1.7%であった。
詳細は別添の「事後アンケート結果」を参照して下さい。

5.別添資料リスト