溶融事故における核燃料関連の課題検討
ワーキンググループ報告
平成25年2月1日
核燃料部会
1.設立趣旨
平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)において、運転中であった東京電力(株)福島第一原子力発電所1〜3号機は自動停止したが、地震による影響で外部電源を喪失し、さらに津波による非常用電源の機能喪失により全交流電源の喪失に至った。全交流電源喪失(SBO)により、原子炉及び使用済燃料プール内の核燃料を冷やすことができなくなり、炉心の溶融および圧力容器の損傷を伴う極めて深刻な原子力事故となった。
この日本国内における最大規模の原子力事故における核燃料に関する課題を検討することは、核燃料の専門家としての我々の責務であり、福島第一原子力発電所における様々な取組に寄与できると考えられる。また、このような課題検討は、今後の原子力の安全性向上にも繋がるものと考えられる。
以上の認識のもと、原子力学会核燃料部会内に「溶融事故における核燃料関連の課題検討ワーキンググループ」(以下、WG)を設立し、核燃料の専門家の視点から溶融事故における核燃料関連の課題につき検討を進めるものとする。
2.WGの主査と委員
核燃料部会が中心となり本WGを開催する。WGの主査を、大阪大学大学院工学研究科の山中伸介教授にお願いする。本WGは添付の委員により発足し、WGの活動内容に応じて委員の見直しを検討する。
「溶融事故における核燃料関連の検討ワーキンググループ」メンバーリスト
3.活動内容
原子炉の溶融事故における核燃料関連の技術課題を検討するにあたって、昭和54年3月28日に発生した米国スリーマイル原子力発電所2号機(TMI−2)における炉心溶融事故後収得された核燃料関連の情報を調査する。
TMI−2事故を越えていると考えられる福島第一原子力発電所における炉心溶融について、核燃料の専門家として核燃料関連の様々な技術課題について幅広く検討を進める。具体的には、原子力発電所の使用済燃料(溶融燃料デブリを含む)の取出し、放射性廃棄物の管理、炉の廃止・処分に関わる技術課題、今回生じた事象把握に関する技術課題について検討する。この検討を進める上で、溶融事故における核燃料関連の技術に詳しい海外の専門家との国際交流も図る。
また、今後の原子炉の安全性を向上させるための、核燃料の対策/改良、炉心の冷却システムの構築に関する情報の検討も含める。
以上の学術的な検討の成果について、核燃料の専門家集団である核燃料部会の活動として、公開することを考える。
第三回 ワーキンググループ 議事録_補足
○ 第四回 ワーキンググループ 議事録
5.ワーキンググループ報告書(平成25年12月)
ワーキンググループが纏めた報告書を掲載します。
報告書内で引用されている資料は、「6.ワーキンググループ資料」と「7.核燃料セッションでの発表資料」をご覧ください。
目 次
1.はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
2.溶融事故における核燃料関連の課題検討ワーキンググループ活動報告 ・・・・ 6
3.溶融事故における核燃料関連の課題検討ワーキンググループ内に設置されたサブワーキンググループの活動報告 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24
4.成果の反映 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 37
○ 第一回ワーキンググループ(平成23年10月5日)資料
シビアアクシデントリスクの評価・管理・低減に向けた燃料及び炉内の放射性物質挙動に係る研究課題について −PSA研究の経験から−
村松 健(日本原子力研究開発機構)
○ 第二回ワーキンググループ(平成23年11月4日)資料
シビアアクシデント時の燃料からの放射性物質放出
工藤 保(日本原子力研究開発機構)
○ 第三回ワーキンググループ(平成24年2月20日)資料
シビアアクシデント進展解析コードMELCORについて
丸山 結(日本原子力研究開発機構)
○ 第四回ワーキンググループ(平成24年5月28日)資料-1
環境負荷低減を目指した燃料技術
鈴木 晶大(東京大学大学院工学研究科)
○ 第四回ワーキンググループ(平成24年7月30日)資料-2
福島第一原子力発電所事故について
姉川 尚史(東京電力株式会社)
○ 第五回ワーキンググループ(平成24年7月30日)資料
安全規制からみた燃料ふるまいと研究課題
上村 勝一郎(原子力安全基盤機構)
○ 第六回ワーキンググループ(平成24年10月15日)資料-1
デブリ特性の把握と処置方策の検討(概要報告)
矢野 公彦(日本原子力研究開発機構)
○ 第六回ワーキンググループ(平成24年10月15日)資料-2
模擬デブリを用いた溶融燃料の物性の研究
加藤氏(日本原子力研究開発機構)
○ 第六回ワーキンググループ(平成24年10月15日)資料-3
SiC材の原子炉への適用研究
檜木 達也(京都大学 エネルギー理工学研究所)
○ 第七回ワーキンググループ(平成24年12月3日)資料-1
大学におけるシビアアクシデント(SA)研究の動向
黒崎 健(大阪大学)
○ 第七回ワーキンググループ(平成24年12月3日)資料-2
シビアアクシデント研究開発に係る欧州・ロシア研究機関の訪問調査
倉田 正輝(日本原子力研究開発機構)
○ 第八回ワーキンググループ(平成25年3月13日)資料-1
海外における溶融燃料挙動に関する研究の現状
永瀬 文久(日本原子力研究開発機構)
○ 第八回ワーキンググループ(平成25年3月13日)資料-2
OECD/NEAでのATFに関するワークショップの概要と各国のSiC研究の現状
檜木 達也(京都大学 エネルギー理工学研究所)
1)日本原子力学会「2012年春の年会」 平成24年3月19日 福井大学文京キャンパス
○ 福島第一原子力発電所事故を踏まえた核燃料分野の課題と展望
三菱商事株式会社 安部田 貞昭
○ 日本におけるシビアアクシデント研究の経緯
京都大学 杉本純
○ 溶融燃料の形態及び特性
原子力機構 永瀬文久
○ 福島第一原子力発電所事故後の核燃料分野の役割
大阪大学 山中伸介
2)日本原子力学会「2013年春の年会」 2013年3月26日 近畿大学東大阪キャンパス
○ 溶融事故における核燃料関連の課題検討ワーキンググループ活動報告
大阪大学 山中伸介
○ 「燃料溶融事故を踏まえた軽水炉燃料に係る研究課題検討」サブワーキンググループ活動報告
東京大学 鈴木晶大
○ 海外における溶融燃料挙動に関する研究の現状
原子力機構 永瀬文久
○ 溶融燃料サブワーキンググループ活動報告
電中研 尾形孝成
3)日本原子力学会「2013年秋の大会」 2013年9月5日 八戸工業大学
○ 溶融事故における核燃料関連の課題検討ワーキンググループ活動報告
大阪大学 山中伸介
○ 溶融燃料サブワーキンググループ活動報告
電中研 尾形孝成
○ 「燃料溶融事故を踏まえた軽水炉燃料に係る研究課題検討」サブワーキンググループ活動報告
東京大学 鈴木晶大
以上