日本原子力学会 新型炉部会
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日本原子力学会 新型炉部会(Advanced Reactor Division)の設立について

2010年7月6日

1.名称と範囲

 日本原子力学会新型炉部会を名称とする。新型炉部会の所掌する範囲は、高速増殖炉、高温ガス炉などの第4世代原子炉ならびに将来の原子力エネルギーシステム及び周辺核燃料関連技術の研究・開発の支援、国際活動ならびに研究者の交流と育成に関する事業とする。

2.設立の背景

(ア) 今日は新型炉開発の黎明期にある。高速炉開発計画(FaCT計画)などを含め、原子力発電の中長期的な開発シナリオと戦略、枢要技術開発のロードマップ作成、体系的な規格・基準類の構築、実用化に必要な試験施設計画立案、技術知の体系化と人材の育成が喫緊課題である。

(イ) 新型炉の開発を推進する国際的な組織としてGIF(第4世代原子炉国際フォーラム)があり、技術討議が行われる環境にある。一方、国内ではそれに対応する討議の機会が散逸している。現時点でナトリウム冷却炉、高温ガス炉、超臨界圧軽水炉、加速器駆動システム、鉛ビスマス冷却炉など、ナトリウム炉以外の研究開発も着実に進展している。

(ウ) 国外において次世代炉開発に係る研究・開発活動が活発化している。2009年12月には高速炉国際会議が18年ぶりに開催された。また欧米に加え、中国やインド、韓国は高速炉開発国として名乗りをあげた。これら諸国間の国際交流も大きく進展しつつある。また、関連する国際会議としてICAPP会議(International Congress on Advances in Nuclear Power Plants)もある。このように、新型炉に関する学会としての活動母体が求められる。

(エ) もんじゅが14年ぶりに運転再開し、運転経験の蓄積、発電技術としての課題の確認、信頼性の実証、実炉データの蓄積など、技術開発プロセスにおける重要な時期を迎えている。また、FaCT計画が進展し、革新技術採否判断時期を2010年に控える。このような将来のエネルギー源の中核を担うであろう技術について包括的かつ科学的に議論する場が必要がある。

(オ) 新型炉に関する研究者数、論文数、学会発表は多いにもかかわらず、原子力学会の関連研究者は、炉物理部会、核燃料部会、熱流動部会、材料部会、原子力発電部会などに分散している。関係活動を新型炉という視点から効果的に連携させる仕組み、情報交換の場、情報提供のチャンネル、学術的な広報活動の基盤、論文などの技術情報の集約がなされていない点を憂うべきところである。

(カ) 新型炉の開発は次世代の研究者や技術者を惹きつけるに足る研究課題である。また、新型炉の実用化に向けて、研究者・技術者の育成と技術伝承が重要かつ喫緊の課題である。しかし若年世代(特に学生)を新型炉研究に導く情報発信や動機付けといった活動が適切になされていないのではないかと懸念される。

以上を踏まえ、新型炉開発のロードマップ構築と連関する研究開発戦略の検討、国際的活動のカウンターパートとなるとともに、国家基幹技術である「高速増殖炉サイクル技術」の開発に学会として積極的に関与し、人材の育成や技術情報の集約といったインフラストラクチャの維持・構築を実施する学会内組織としての部会設立が求められる。

3.設立趣意書

 国際社会の持続的な成長と人類の福祉を維持するために、地球規模でのエネルギーならびに環境と経済発展との調和が全世界の注目と憂慮を集めるに至っている。温室効果ガスを国際的に大規模に削減する方向を志向するためには原子力発電技術の比較的大規模な利用を避けることはできず、新型炉はそれを長期にわたって可能ならしめるほとんど唯一の実効的かつ現実的な技術である。

 近年、国内ならびに国際的に新型炉開発に対する関心が高まり活動が活性化している。諸外国では、フランス、ロシア、インド、中国では高速炉の運転、建設が着実に行われ、米国も高温ガス炉や高速炉の開発に関心を示しつつある。国内では、「高速増殖炉サイクル技術」が国家基幹技術とされ、原子力政策大綱は、「高速増殖炉の実用化に向けた研究開発を着実に推進するべき」と指摘し、「もんじゅの運転の早期再開」、「発電プラントとしての信頼性実証」ならびに「ナトリウム取り扱い技術の確立」を求めている。また「高温ガス炉とこれによる水素製造技術の研究開発等を長期的視野にたって必要な取り組みを決め、推進する」としている。その他の炉型についても競争的資金などにより着実に研究開発が進められている。このような背景を受け、国際的な新型炉に関する学会の活動も活発化している。

 ここで、新型炉の研究・開発を実効的かつ効果的に進めるために、炉物理、熱流動、核燃料、材料、安全など各分野の新型炉に関する研究者が相互に連携し、新型炉の開発の研究リソースを集約しつつ、学会活動を円滑に進める必要性はかねてより指摘されていたところである。新型炉は原子力研究・開発の将来を開拓する技術分野であり、若い世代を原子力研究・開発へと惹きつけるもっとも魅力的な分野のひとつであり、またそのようにあるべきであろう。総合科学技術会議の国家機関技術の評価においても「長期的視点での人材育成および技術、技能の後継者への確実な継承」をすべきと指摘するところである。

 わが国における新型炉の研究開発を活性化し、人材を育成するとともに国際的活動との円滑な連携・協力を推進することは、原子力学会の重要なミッションであると認識し、新型炉に関連する日本原子力学会における活動を所掌する部会を設立する。

4.活動方針

 新型炉開発における中心的な学会組織として、研究開発、人材育成、国際的学究活動を推進し、わが国の新型炉開発に関する諸機関の研究者、技術者、実務者の交流の場、および社会への発信(アウトリーチング)の仕組みを提供するため以下の活動を行う。

(1) 定期的に、「部会報」を発行し、部会員の相互交流を深めるとともに、新型炉に関わる国内外の情報伝達を図る。

(2) 一般公衆を対象としたアウトリーチング活動を行い、新型炉に対する理解促進を推進する。

(3) 研究会、セミナー、講演会、講習会、見学会等を適宜開催する。

(4) 新型炉等に関わる国内外の関連学協会、諸機関と連絡をとり、必要に応じて研究会等を共催する。

(5) 本部会の活動に関連する他部会の活動に積極的に協力する。

(6) 新型炉等に関わる研究専門委員会、特別専門委員会等の活動に積極的に協力する。

(7) 特記すべき研究成果等については、学術研究的立場からの評価ならびにその発信を行う。

(8) 日本原子力学会の年会・大会、本部会の関与に関する研究会等で発表された本部会 員の論文等について、学会誌および論文誌への投稿を積極的に奨励する。

(9) その他、適切な事業を適宜、実施する。

5.組織

部会長    1名
副部会長  2名
部会には、複数の運営小委員会を設置し、その運営を行う。運営小委員会は以下の役割を担う。
総務、財務、企画・戦略、研究、国際関係、人材育成、広報、出版・編集、等

6.その他留意事項

 新型炉部会は、独自に新型炉に関する活動を行うだけでなく、核燃料サイクル、核不拡散、安全性などに関しては、関連する他部会と連携しつつ、実効的な活動を行う。関連部会は以下のとおりである。

7.これまでの経緯

平成21年10月 設立趣意書、規約、発起人の募集、運営幹事選定する
平成21年11月4日 原子力学会企画委員会で新部会設立提案する
平成22年1月 日本原子力学会理事会にて新部会設立提案する
平成22年3月2日 新型炉部会幹事会を開催する
平成22年3月26日 新型炉部会設立準備会を開催する
平成22年6月18日 日本原子力学会通常総会にて承認される
平成22年7月6日 新型炉部会設立総会を開催する