11回シンポジウム報告

我が国のこれからのエネルギー政策はどうあるべきか

〜原子力にどこまで期待できるか〜

2010/11/12

 

日時:201087日(土) 10001700

場所:東京大学武田先端知ビル5

主催:(社)原子力学会シニアネットワーク連絡会(SNW

共催:エネルギー問題に発言する会、エネルギー戦略研究会(EEE会議)

後援:日本原子力技術協会、日本原子力産業会議、日本原子力文化振興財団

参加者:約160

総合司会:林 勉

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プログラム

開会挨拶

SNW会長 宅間正夫

第一部 基調講演

(1)  原子力発電を中心に見た世界と日本

原子力委員 尾本 彰

(2)  原子力をめぐる内外の動向とわが国の政策

経済産業省 資源エネルギー庁原子力政策課長 三又裕生

第二部 パネル討論 原子力にどこまで期待できるか

座長 SNW代表幹事 金氏 

パネリストの問題提起

(3)  原子力の技術基盤、人材育成の視点から

北海道大学大学院教授 奈良林 直

(4)  事業者の立場から

電気事業連合会原子力部 部長 丸茂俊二

(5)  原子力安全規制の最適化 7回の海外調査より

IAEANEA ISOE委員会第7代議長 水町 渉

パネル討論

閉会挨拶

エネルギー戦略研究会会長 金子熊夫


シンポジウムの概要

 

開会挨拶

原子力学会シニアネットワーク会長 宅間正夫

 今年は太平洋戦争終戦65年目、昨日は広島で平和祈念式典がおこなわれた。過去最大の74ヶ国が参加、国連事務総長、米国、英国およびフランスの代表が初めて参加した。「核兵器のない世界に向けて」のオバマ大統領の意志が世界的に広がりつつある。これは原子力関係者にとって、1953年米アイゼンハワー大統領の国連総会演説「Atoms for Peace」、「平和のための原子力」の真の意味を今こそ実現すべき。平和利用一筋でやってきたわが国の出番である。

今、世界中で地球温暖化対策とエネルギー安定需給のために「原子力ルネサンス」といわれ、原子力の再評価と期待が高まっており、世界中が「真の平和に向けた原子力の使い方」に期待を寄せている。本日のシンポは、世界的に優れた技術と経験を持つわが国の原子力がこれに応えられるかを皆さんと共に考えようというものだ。

 かつて世界トップレベルの運転実績を誇ったわが国の原子力では、近年の異常なプラント利用率低迷に象徴され、あるいは「技術は優れているがビジネスに弱い」といわれるように、国際的なルールやプロセスとかけ離れた「ガラパゴス化」ともいえる特異なガバナンスが目立ってきた。なぜこのようになったのであろうか。

わが国は原子力による豊富・安価な電力へ期待し、「核兵器研究には決して向かわない」前提で原子力発電を導入した。その際、「放射線・放射能の安全」があればよしとして、社会的・精神的影響やそれへの洞察がそれほど深く論点になることなく社会が受け入れの方向だったと思われる。米仏などは原子力が既存体制に収まらないとし、新しいガバナンス体制を用意した。これに対しわが国は兵器開発への歯止めには万全を期したが、原子力発電には、既存の法制度・行政制度を変えずに原子力関連事項を付加して対応した。こうして原子力の推進も規制も既存の行政体制に沿った縦割りの法令や組織に分断して組み込また。アドバイザリー機能の原子力委員会・安全委員会が立案する政策も、行政的な実行において総合的なガバナンスの非効率となって現れ、半世紀経った今、グローバル化する原子力時代に適応できなくなってきたのではないか。さらに、安全協定に見る自治体と事業者の関係も、世界的には特異であり改善の余地無しとはいえない。

また民間産業においても、仏独では原子力プラント産業を輸出産業として育てたが、わが国では国内需要対応で事足れりとし、国際展開においてドライブがかからなかった。今となっては反省事項であろう。

 以上は私見であるが、本日のシンポジウムではより本質に迫る議論と課題解決への道を

探る実り有る討議を期待する。シニアネットワークは本音で語る会である。


 

第一部 基調講演

 

(1)原子力発電を中心に見た世界と日本

原子力委員 尾本彰

講演資料・・・クリックして下さい)

1.はじめに

原子力発電を中心に見た世界と日本について、過去6年間のIAEAの経験をもとに話したい。内容は世界の原子力発電と世界から見た日本の原子力発電である。

私の担当したIAEA原子力発電部では、1)既存原子炉施設と原子力発電導入計画の支援、2)イノベーションの刺激、3)加盟国の能力涵養支援、の3つをミッションとし、技術協力とVerificationSG)を行っている。

海外から見た日本といっても、必ずしも全部が見えたわけではないが、世界と乖離が多くあり、この乖離解消の必要性を感じた。この点をこれからも主張してゆきたい。

1.世界の原子力発電

近年起こっていることは、国境を前提とした国際化に留まらず国境を越えたグローバル化とネットワーク化。供給者、発電事業者、教育がグローバル化し、更に研究開発の地域協力の拡大や、欧州においては統一した安全基準の制定なども進みつつある。また、アジアでは原子力教育のための地域ネットワークもスタートしたが、日本が入っていないのが残念である。

原子力発電に対する期待は高く、原子力発電を行っていない68カ国がIAEAの導入支援を要請している。建設中の発電所も2005年以降上昇に転じており、供給国の市場獲得競争とともに、拡大と核不拡散の両立のために核燃料サイクルのグローバルな制度設計も論議されてきている。中国では2030150GWeと言われる拡大計画のもとでの原子力発電所設置が内陸部まで及んでおり、発電プラント設計では、中小型炉への期待がグリッドの規模が小さい途上国のみならず、米国でも拡大しており、そこに米国特有の理由があることは注目に値する。

IAEAでは原子力発電導入のための国の基盤整備指針を策定、段階的に基盤整備を行い3段階でのマイルストーン達成のための条件を明確化した。その上で、基盤整備状況評価のミッションを、すでにインドネシア、ベトナム、ヨルダンに派遣した。

この世界の動向の中で、核拡散とセキュリティーと安全のリスクを最小にしつつ、原子力発電利用の便益をどうやって最大化するかが大きな課題。

行動規範を設けることと長期的な制度設計に取り組むこと以外に燃料サービス供給体制を確立する必要があろう。関係者の間で、Responsible supply and responsible useの行動規範を普遍化する必要がある。従来、許認可はその国の主権に属する問題で、国内で許認可を受けた原子炉を国際市場にproven designとして売ることが当然とされてきた。しかし、チェルノブイル事故を未然に防止できなかった世界の原子力界は、その反省に立って、安全設計の国際パネルによるレビューを進めるべきである。

また、この点では、基盤の確立している先進国には先進国が原子炉を供給し、基盤の脆弱な途上国には中国、韓国、ロシア、インドが供給する体制が生まれて来つつあることを考慮する必要がある。

 

2.外から見た日本の原子力発電

日本の情報と人は国外からアクセスするのが困難なばかりでなく、日本からもIAEAに代表される国外へのアクセスが少ない。また、日本は理念や基準などの発信が少なく路線が硬直化し、その結果多くの国で当たり前に行われていることが行われていない。世界の標準的な慣行から乖離しているといえる。

このような事例として、

1)炉停止の発生頻度は低いが、一旦停止するとなかなか起動できず、燃料交換と点検保守のための停止期間も長く、結果として諸外国に比して大変稼働率が低い

2)原子力産業が経済成長と雇用との関連で見られていない

3)温暖化ガス放出削減への寄与という原子力の特徴が原子力推進の世論に繋がらない(IAEAが多数の国を対象とした世論調査で日本が特異であることが示された)

4)規制のダブルチェックと規制当局の職員の頻繁な移動

5)階層構造を欠いた基準類

6)地方自治体が施設運転を左右する大きな影響力

7)食品照射の適用範囲が極めて小さい

8)放射線による診断、治療が少ない(世界一のがん大国日本は世界でも類を見ないほど放射線治療をやらない、先進7カ国で日本以外はがんの死亡率が低下、と専門医が言っている)、などがあげられる。

原子力利用の戦略の確立、国民のリテラシー向上およびIAEAの積極的な活用をはかり世界標準との乖離を解消し、日本が世界の発展に寄与できる仕組みや基準をつくることを期待している。

 

3.まとめ

世界は、原子力でなければ達成できないこと、あるいは原子力によってより効率的効果的に達成できることを再び認識して原子力に回帰しつつあり、ますます国境を越えたグローバル化とネットワーク化が進み、協調と競合が同居している。

日本は国内で閉じずに国際関係の中で原子力科学・技術を利用した持続可能な発展を再び考える時。


 

(2)原子力発電をめぐる内外の動向とわが国の政策

経産省資源エネルギー庁原子力政策課長 三又裕生

講演資料・・・クリックして下さい)

世界の原子力新時代に日本が対応するため、昨年6月に「原子力発電推進行動計画」を総合資源エネルギー調査会電気事業分科会原子力部会が公表し、これを反映して今年6月18日に「エネルギー基本計画」が閣議決定された。そのポイントは、

(1)  原子力は供給安定性と経済性に優れた低炭素電源であり、基幹電源として利用を着実に推進させる。具体的には、

  原子力発電所(原子炉)の新増設を2020年までに9基、2030年までに少なくとも14基以上

  設備利用率を2020年までに約 85%、2030年までに約90

(2)  核燃料サイクルを「中長期的にブレない」確固たる国家戦略として着実に推進する。

(3)  世界のエネルギー安定供給等への貢献、技術・人材基盤の強化等の観点から、原子力産業の国際展開を推進する。

これらの計画を実現させるため、官民協力して努力を傾注したい。

新増設・リプレースおよび設備利用率向上のためには、地方自治体との間で原子力の政策的重要性の共有を深める。国の原子力公聴・広報のあり方については、国がより全面に出て双方向性を強化、事業の波及効果の向上を図るとともに、電源立地交付金の更なる改善を図る。また、設備利用率の向上には、事業者の不断の努力による安全・安定運転の実現が基本である。安全の確保と設備利用率の向上とはトレードオフの関係ではなく、表裏一体であることを理解すべきである。例えば、新検査制度の下で運転期間18カ月、定期検査期間2カ月となった場合には90%の設備稼働率が実現するはずである。

核燃料サイクルに関しては、まず六ヶ所再処理工場の竣工・操業開始のため、関係者が連携して技術課題に取り組むことが大切である。プルサーマルには地元理解活動の推進、中長期的には使用済み燃料の中間貯蔵容量の拡大、高速増殖炉サイクルの実用化に向けた研究開発プロジェクトの進め方の検討が必要であり、また高レベル廃棄物等の処分事業の推進をNUMO等と取り組み、地域や国民の理解を進めなければならない。ウラン燃料の安定供給のためには、事業者のウラン鉱山開発への支援、海外濃縮事業者との連携、国内濃縮能力の維持・強化等が必要である。

国際展開に関しては、世界的原子力ルネッサンスに対応して、国別のニーズに合わせた対応が必要である。米欧には公的金融支援のもとに新規建設への積極的支援、中国へは資機材の輸出を支援、インドには不拡散条件のものでの展開、東南アジアや中近東に対しては将来のビジネスチャンスのため、「システム」型の輸出が想定される。これらの活動を支援するため、核不拡散と原子力安全に向けた環境整備に早急に取り組まなければならない。特に最近の国内では景気低迷による電力需要の伸びが当分望めないため、優秀な原発技術を海外に展開するまたとない好機ととらえるべきである。

 


 

第二部 パネル討論 原子力にどこまで期待できるか?

 

まず始めに、金氏座長より、自己紹介、5人のパネリストの紹介に続き、基調講演で意見を述べた三又氏、尾本氏以外の3名のパネリストの意見を述べていただいた。

 

(3)原子力の技術基盤、人材育成の視点から

北海道大学大学院 工学研究院教授 奈良林 直

講演資料・・・クリックして下さい)

2020年までに米国、欧州、中国、アラブ諸国を中心に130150基、また2030年までにはアジアで200基以上の原子力発電所の建設が計画されている。このような計画に対処して原子力ルネッサンスを実現するには、人材不足が世界共通のネックとなると考えられる。

北海道大学でも2005年に原子力工学科は機械工学科と統合、原子力工学科の名称が消えたが、近年、原子力人材育成教育公募事業が開始され、教育支援プログラムを充実し、講義内容の改良も進めている。たとえばプロジェクト形式の演習教育も取り入れ、興味ある設計(駅ビル型原子力発電所、原子力船、洋上都市など)などを導入、その結果、学生の取り組みが活性化された。

発電所との連携授業や原子力関連機関、他大学との交流や学会発表なども、学生の視野を広め意識を高めるのに役立っている。

原子力産業に必要な人材は技術的に優れているとともに、プロジェクト推進力、国際性ならびに倫理感を併せ持つスーパーエンジニアである。このようなエンジニアの育成をねらいとし、北大では原子力グローバル教育システムを推進している。

 

(4)事業者の立場から

電気事業連合会 原子力部 部長 丸茂俊二

講演資料・・・クリックして下さい)

電気事業者は原子力を基幹電源とし、2030年以降も総発電量の3040%以上を原子力発電が担うという目標達成と、2020年度までに原子力を中心とする非化石燃料比率を50%とすることを目指している。原子力発電推進行動計画では、新増設原子力発電所を2020年までに9基、2030年までに少なくても14基以上、設備利用率は2020年までに約85%、2030年までに約90%とすることとしている。

既存原子力発電所は米国に比べ、自動停止回数が少ないが、設備利用率は低迷している。これは、

   米国ではプラント運転に支障を及ぼさない機器の点検を運転中に行うことで、プラント停止期間中の機器点検作業が軽減、燃料交換日数が短縮している。

   日本では計画外停止の際の再立ち上げまでの期間が長いこと等に起因している。

これらの改善のための一つの方策として、法制度の見直しや新しい基準取り込みなどの環境整備が必要である。具体的には設置許可や工認制度、検査制度の改善のための原子力法規制の検討を進めている。たとえば型式認定、プロセス型の確認検査、運転開始前の総合レビュー検査の導入などである。

国際水準を踏まえた実効的で信頼性のある法規制への見直しのもと、優れたハード技術に加え、ソフト面を改善し高いパフォーマンスを達成したいと考えている。

 

(5)原子力安全規制の最適化 7回の海外調査より

IAEANEA ISOE委員長 水町 渉

講演資料・・・クリックして下さい)

これまでの第1次〜第7次にわたり海外の原子力規制に関する調査を実施してきた。この成果として、フィンランドにおける予防保全や予備品の即時交換可能体制による世界最短の計画停止期間達成や、米国NRCの事業者の自主性を重んじた規制の成果など、学ぶべき好事例を紹介してきた。

またこの調査の結果、世界の検査制度の趨勢を日本の制度と比較し、日本の制度には次のような特徴があることを明らかにした。

@     定期検査制度は日本だけ。世界は燃料交換期間が定められているだけ。

A     世界では検査は運転中8割、燃料交換期間中2割。日本は逆で運転中2割、燃料交換期間中8割。

B     機器故障でプラントが停止すると原因究明するまで立ち上がらない。

C     安全系の運転中検査が許可されない。

D     検査官、審査官は2〜3年で他部署へ。専門性の醸成が難しい。

E     検査官は1週間に4日のみしか検査しない。

世界各国は、規制や検査制度に好事例や技術の進歩を取り入れ、科学的、合理的な制度に改善に取り組んでいる。

このようなことを積極的に推進するため、諸外国では、たとえばフランスのサルコジ大統領や米国のブッシュ前大統領のように確たる哲学にもとづくリーダーシップが大きく寄与している。わが国でも政策目標の設定や行動計画、制度の見直しが行われているか、その実現に向けては強いリーダーシップが必要である。

 

 

パネル討論

 

A 座長よりパネル討論の趣旨と論点、パネリストへの質問と回答

 

昨年88日の第10回シンポジウムでは、地球温暖化対策の中期目標として昨年6月に自民党麻生政権時代に2005年比15%減という目標を取り上げ、目標達成に於ける再生可能エネルギーや原子力の役割について識者の検討結果を伺い、意見交換等行った。その結果、原子力の役割が最も重要で、目標達成の成否は原子力にかかっていることを浮き彫りにした。

 その後約1年経ち、その間、政権交代した民主党政権は1990年比25%減、2005年比にすると30%減という非常に高い目標を掲げたが、その実現は誠に厳しく、世界各国も温暖化対策の方向が定まっていない。しかしながら、原子力の役割は温暖化対策としてだけでなく、エネルギー安全保障の観点からも、大変明確に認識されてきた。政・官・産・学とも、エネルギー政策、原子力政策として、具体的な目標、施策、戦略などが次々と策定され、大きな期待をされている。とはいえ現実とのギャップが非常に大きく、これらの実現は容易ではない。そこで、今年のシンポジウムは、我が国の原子力がこれらの期待に応えることができるのか、何が課題で、どうすれば良いのかに焦点を当てて、パネリストの皆様、フロアの皆様と討論をしたいと考えている。

 そこで、まず私から、3つの質問提起をさせていただく。

 

質問1:目標「原子力発電所の稼働率を2020年までに約85%2030年までに約90%」の実現可能性とその施策・課題(重要なもの3つ以内)

 

回答

【尾本氏】

実現可能性:既に安全に係る指標を改善しつつ90%稼働率での運転は、先進国では標準なので、一般的には、その慣行を適用することで実現可能。実際、国内でも伊方3のように90%超を達成している例もある。また2000年代初頭には全国平均80%超で、長期サイクル運転やオンライン保守によらずとも86%位は達成と電力は考えていた。

施策/課題(順位なし)

@    設備運営方法とその技術的基礎の確立(長期サイクル運転、燃料交換/検査期間の短縮、計画外停止時の再起動までの時間の短縮、オンライン保守)

A    (既に進んでいるが)新たな運営を可能にする制度制定

B    制度運用開始に向けた関係者間の合意形成、とりわけ国の安全規制への信頼

 

【三又氏】

米国の1980年代〜2000年代の経験からみても、実現可能。

実現のために必要な取組みと克服すべき課題は、次のとおり。

  安全・安定運転の継続とそれに基づく関係者(国民、立地地域住民、立地自治体関係者等)の理解。

  電気事業者による保安活動の改善(事業者間でのベストプラクティスやトラブル情報の共有、組織管理の改善などを通じて実現)。

  リスク情報の活用や品質保証の考え方の取り入れ、事業者との対話の深化などを通じた、科学的・合理的な安全規制の充実。

【奈良林氏】

米国は、199672%2002年に91%、わずか6年で達成している!ご提示のペースでは韓国に受注競争で勝てない。

北電の泊発電所の設備利用率87.3%をグッドプラクティスとして、わが国の設備利用率の向上を推進すべき。

規制の評価関数を安全優先を前提とした設備利用率にすべき。

【丸茂氏】

(1)  長期サイクル運転の実施及び保全の高度化

(2)  科学的・合理的な安全規制の検討

  設置許可の改善、工認の改善、検査制度の改善

  トピカルレポート制度の適用範囲の拡大、設計認証制度の導入検討

  リスク情報の活用(運転中保全、許認可変更要件等)

  規制当局と事業者間のコミュニケーションの改善

(3)  計画外停止後の立ち上げの円滑化

【水町氏】

世界の常識を採用することが必要

1.     運転中の保全を80%、燃料交換時の保全を20%に

@  状態監視保全(CBM)の実行

A  運転中保全(OLM)の採用

2.     アメとムチの検査の徹底

@  PIの国際標準での適用

A  成績の良いプラントは、最小限(BLI)の検査

3.     プラント停止の後の早期立ち上げ

@  ハードが復元すれば、即、立ち上げ、その後ゆっくりと原因究明(Root Cause Analysis)及び、水平展開

A  予備品の充実、同じ物なら工認は不要に

4.     100点満点の検査制度はなく、規制側は技術の進歩も取り入れ、民間の意見を謙虚に聞き、継続的に制度の改善を図る。

 

質問2:目標「原子力発電所の新規建設を2020年までに9基、2030年までに14基」の実現可能性とその施策・課題(重要なもの3つ以内)

回答

【尾本氏】

実現可能性:電力需要動向、既存炉の稼動性能、立地地域の合意形成、GHG排出権制度による低炭素社会移行への圧力 に依存

施策/課題

@    人口減少の中での産業構造革新による経済成長・雇用確保と電化率の向上(深夜電力主体であろうが輸送部門での電気の利用拡大も含め)

A    具体的な事例を積むことにより、新規立地が「地域の安定な雇用確保/拡大」、「生活しやすい環境の確保」、「経済活性化」に繋がるとの民意形成

(例)JAEAによる地域産業のシンクタンク活動など施設設置者の知財提供

発電所地元の安い電気を利用したデータセンター設置など起業

地域での大学教育や放射線医療施設への貢献など豊かな環境作り

B    低炭素社会実現に向け、様々なオプションの認識(限界削減費用比較など国民負担の議論も含め)に基づいた政治的な意思決定

【三又氏】

新増設:2020年までに9基、2030年までに少なくとも14基以上は、一定の条件のもとで、実現は可能であり、実現すべき。

「一定の条件」としては、次のことが挙げられる。

@  エネルギー安定供給や地球温暖化対策に引き続き高い政策的プライオリティが置かれていること。

A  電力(ベース)需要が長期的にみても著しく低下はしないこと。

B  電気事業者による新増設を後押しする政策(@低炭素化へのインセンティブ強化を含む投資環境の整備、A広域的運営に対する環境整備、B個別立地地点対策など)が実施されること。

【奈良林氏】

   地元やマスコミとの対話会を通じて理解促進を進めることで可能になると考える。

   怒号が飛び交うなかでも依頼があれば喜んで講師をお引き受けします。

【丸茂氏】

新増設における投資リスク低減の観点から、

(1)  技術的知見を踏まえた各種意志決定の早期化に向けた国と自治体、事業者の関係の適正化

(2)  許認可や検査に係る法制度の見直し(標準審査指針の制定による審査事項の明確化、重複審査の削減 等)

(3)  次世代軽水炉研究開発項目の先行反映 (SC構造PCVと原子炉建屋の独立並進工事、大型モジュール工法の高度化等)

【水町氏】

原子力発電所の新規建設を2020年までに9基、2030年までに14基について、以下の方策があるが、これらはずれも実現は容易ではない。

1.サルコジ大統領、ブッシュ大統領の哲学を日本の首相が示し、地方の非科学的な要求を、科学的、合理的に処理する。

2.原子力発電所の安全性評価は、国の専管事項とする。

3.原子力発電所の型式認可をし、サイト特有の事項のみ審査する。

私の提案:

@    サイト周辺10kmの電力料金を無料に。電力を使用する大工場を誘致し、地方の活性化にも繋げる。

A    既存プラントの出力アップを推進する。

 

質問3:目標「開発途上国の原子力発電所建設受注」の実現可能性とその施策・課題(重要なもの3つ以内)

回答

【尾本氏】

開発途上国は中印を含むか否かによる。大きなパイの獲得を目指すならば別目標のありうるところ。何故このテーマに拘るのか理解に苦しむが多分象徴なのでしょう。

実現可能性:アライアンスを組んだ企業と共同で実現可能であろう。

施策と課題

@    価格など契約条項以外に、国内市場だけでは駄目という危機感に裏打ちされたTeamwork, Passion, Commitment(韓国)。 Teamwork下での活動は、電力の関与(project management支援)と国の関与(二国間協定ほか)も含む。

A    設計が優れていることを運転実績で示すこと。

B    相手のニーズに応じた多面的なサービスの提供(国の発展のためのインフラ整備や原子力プラントを通じた国内産業育成支援、医療農業工業での放射線利用支援、更にはfrom cradle to graveの燃料サービスも考慮必要)。

【三又氏】

時期については相手国側の事情にも依存するため予断できないが、実現は可能。

そのための課題は次のとおり。

1.発電所建設のみならず運転保守・人材育成など幅広いニーズに応える「システム型輸出」を提供できる体制の構築(新会社「国際原子力開発(仮称)」の設立は一つの答え)。

2.途上国市場を見据えた価格競争力とリスク対応能力の向上。

3.原子力以外の分野での協力を含むパッケージ提案も念頭に置いた、官民連携の強化。

【奈良林氏】

大学は、留学生を通じた海外展開の布石として原子力人材育成を推進する。産・官・学の連携が必要。

【丸茂氏】

(1)  国内原子力発電所が海外に向けて優れたパフォーマンスを示すこと(建設コストの削減、設備利用率の向上、被ばく線量の低減 等)

(2)  新会社「国際原子力開発(仮称)」による顧客の多様なニーズへの迅速な対応

(3)  科学的・合理的な国際調和性のある安全規制の実現(国内規制の改善と実績作り、規制スキームもセットで国際展開)

【水町氏】

1.設計、建設、運転までの総合的な受注体制の確立(ベトナム)

2.ベトナム、インド、インドネシアは日本を熱望

3.中東は伊方、柏崎の海水淡水化付き原子力発電所を要望

4.クリーンな商談

個人的な懸念

1.インフラが整っておらず、コンクリート強度ですら心配

2.運転ミス、作業手順ミスも設計責任にされる可能性あり

3.ダーテイな商談 : 軍事その他との組み合わせの要求もあろう

当面の受注は、先進国のアメリカ、フィンランド、イギリス、開発途上国はベトナム、インドネシア。

 

B フロアからの意見と質疑

 

意見1(当日都合悪く欠席した方の意見を座長より紹介)

地球温暖化対策基本法案は閣議決定され衆議院を通過し、終盤国会で廃案になりましたが、「2020年までに1990年比で25%削減する。また、2050年までに1990年比で80%を削減する」ことが明記されております。

このわが国だけ突出した国際約束は、現在の状況ではとても実現は不可能であり、わが国の国益から云っても軌道修正すべきであるというのが私共会員の大部分の考えであります。

もう一点の問題点は、基本計画にも明記され現在検討が進んでいる、固定価格買取制度の構築についてであります。

エネルギー基本計画には「エネルギー価格は、国民生活や産業の競争力に大きな影響を及ぼすため、市場が適切に機能した効率的なエネルギー供給を実現することが重要である」とも謳っています。トン当たりの二酸化炭素削減効果としては他の対策に比べ自然エネルギー発電は極めて割高で、且つ現在の技術の延長線では量産化による価格低減効果も期待できないと考えられます。また、国民が長期に亘る借金を背負うことになり、先進実施国においても識者の間では失敗だった認めております。政府は自然エネルギーの利用促進により経済の活性化とGDPの伸びが可能であると称しておりますが、高いエネルギーを使っては経済の活性化は決して進まないことを肝に銘ずべきであります。

これ等の点につきましては、別途じっくり討論の機会を設ける必要があると考えますが、本日の主題はエネルギー問題解決の主軸と目される原子力について「原子力にどこまで期待できるか、それには何をなすべきか」ということだと思いますので。私共の立場だけ申し述べ、本日の議論の主題とはしないことを提案致します。

 

【意見2】 日本の原子力政策は遅れている。福島での維持基準採用、長期運転移行、国際的原子力発電所会社の発足などの例が示すように、外圧がないと腰をあげない。事業者も政策当局も先見性をもってやる気を示す必要がある。

回答

  日本の国民性によるものであろう。報道でも同様。外国(ワシントン)発の記事は過大に扱われる(報道される)傾向がある。(三又氏、丸茂氏)

 

【問1】 停止後のプラント再起動について

例えば「もんじゅ」は14年もかかって漸く再起動した。早期再起動するべきだったと思うが、どうすれば早期に再起動できたのか、どこに問題があったのか?

回答

  もんじゅは前例のない特殊例であり、また所有者、運転責任事業者が国の研究開発機関であるため、電力会社所有プラントのように早期の運転再開による電力売り上げに繋げるインセンテイブに疎いなども理由であろう。(三又氏)

  米国では、プラント機器故障による停止では、予備の新品に交換し早期に運転再開する方式である。その代わりに、故障した機器の根本原因を究明し、その結果を評価し重大な原因の場合は水平展開し、同様理由による故障での運転停止を回避するなどの対応を図っている。(水町氏)

 

【問2】 プラント稼働率について

我が国ではPWRBWRの設備利用率に差が大きい。これらを明確に区分して示す方が良いのではないか?

回答

  PWRBWRの相違は設計固有の問題でない。運転サイクルを適切に保証することが重要である。(尾本氏)

  設備利用率が低いプラントは高いプラントの良い点を学ぶべきである。特に地元対応。(金氏氏)

 

【問3】 国際情勢について

我が国から外国へのプラント売り込みに関して、国際情勢の綿密な評価と国からの適切な対処策が必要ではないのか?

回答

   今後多数の原発建設が期待されるインドと、米、仏、ロシアは原子力協定を締結済みであるが、我が国は国内の種々の理由により協定未締結である。したがって第1次の原発売り込み獲得は困難でかもしれないが、これら3国のプラント受注に際し、一部機器に下請けの形で参入を成功させれば、その後に直接受注獲得の機会が期待できるのではなかろうか。実行・成功させるべきである。(三又氏)

 

【意見3】 国民の理解を得るには広範囲・多数の原子力情報の公開を積極的に進めることと、政府の大きな方向性を示すことが重要だ。

回答

  国民多数の理解を得ることが大切であるとの考えに立って、国は情報公開の方針を国民に示すことが重要である。

但し、既に事業者、規制当局は多岐・広範囲の情報を公開している。しかしそれが適切に国民に伝えられているかどうか? 伝え方・受け取り方の双方に一層の工夫と努力が必要である。(三又氏)

  北海道では原子力(主に放射線)に関して、100回以上の先生方の勉強会を開き、理解促進に向け地道に努力している。(奈良林氏)

 

【問4】 CO2排出削減に原発は重要である。放射線や原子力の安全性について国民への理解のために、電力会社は結束して協力し、国を動かし国民に働きかけるべきではないか?これにより地域住民の心配も減少すると思う。

回答

  地域の意見は発電所立地地域と県中央とは異なっている。発電所立地地域は建設や運転などに伴う交付金や諸税金公課を期待し、安全を前提に早期実施を求め、一方、県中央はそうではない場合が多々見られる。電気事業者は情報公開を徹底し、また、法制度の見直しにより一層安全性・信頼性を向上し、パフォーマンスを上げることで、発電所立地地域と県中央の理解が得られるようしっかり取り組んで行くことが重要である。(丸茂氏)

 

【問5】 現在原子力ビジネスが世界規模に展開の時代となった。しかるに若い世代の人々は、海外へ出向くことに躊躇しがちである。国際マーケットでの出遅れ、敗退が懸念される。どのような対策を取るべきか?

回答

  世代を問わず、このような危機感を共有すべきで、学生には、時には一年間の海外武者修行を必須としているフランスの一部の大学院のように強制が必要である。(尾本氏)

  ゆとり世代の人々はこのような(海外展開への)努力はダサイと考える風潮が強い。教育制度にも関係するため、関係省庁連係しての改善が求められる。(奈良林氏)

  マスコミについて。市民が政治・政策決定に係わる度合いが漸増傾向にあり、マスメぢディアの動きが重要となりつつあることを考慮すると、メディア組織社会部へ理系卒の人材を増やして行くべきである。(奈良林氏)

【問6】 中国電力島根原発の点検漏れ問題について。どうしてそのようなことが発生するのか?

回答

  保全計画の策定、実施、点検結果の反映の各段階のミスに起因するもので、点検計画表を詳細に作成しすぎたことが背景にある。また、このような不適合が判明した段階でそれを改善する行為や報告する安全文化に問題があったことは反省すべきである。(丸茂氏)

 

【問7】食品照射は日本のガラパゴス化の象徴である。日本の放射線専門家や役所の考えを是正する方策はないのですか?原子力発電は経産省が一貫して力を入れているのに、食品照射分野の所管官庁にはその認識が無いようだが、どうしてか?

回答

  WHO加盟国で認可されているスパイスへの照射に関しスパイス協会から出された申請が、厚生労働省から根拠不十分と国民の理解がないことを理由に却下された。国民が選択するかどうかは諸費者の判断にまかせることとし、厚生労働省は科学的合理的な判断をすべきである。

  放射線教育は50年間実施されていない。昨年学習指導要領に組み込まれたが、教えられる教師がいないのが問題。よく監視してゆく必要がある。

 

【意見4】電気事業者から見た規制の見直しは当然実施すべきであるが、2重、3重の規制の体制や、国と地方の役割の明確化、電力会社毎に異なる運営管理などの見直しも急ぐべきである。

回答

  電事法(昭和10年から)にもとづく定期検査と、炉規法による審査の規制改革には、大きな力が必要であろう。

  何に着目するか、すなわち安全とはなにかを明確にする必要がある。異常時の原子炉の安全確保、設計上の安全要求を守ること基盤とする方向で検討を進めている。

 

【意見5】我が国の法規制が技術進歩を全く反映してないのが、日本の原子力の後進性の大きな要因である。

回答

  技術進歩の反映は国際的な動向で、検討段階では当然意識しており、前向きになっている。問題はどのくらいのスピードで取り組んでゆくかであろう。

 

【問8】日本において、米国のような科学的、合理的規制が進まない主要因は何か?

回答

  米国では安全は国の責任であることを、裁判で明確にした。この結果、NRCの責任体制のもとで、科学的・合理的な規制制度が確立した。

  科学的・合理的は安全に着目することであろう。安心は理屈ではなく心理的なものであり、社会全体でミニマイズしてゆくことが必要である。

 

【問9】先日の朝日新聞に尾本委員のインタビューで「再処理や濃縮のような機微な技術は国際管理の下で展開すべきだ」という趣旨のことを発言しておられたが、真意をお聞きしたい。六ヶ所再処理が微妙になると思うので。

回答

記事のタイトルに成っているが、六ヶ所ですぐにやるべきと述べた訳ではない。長期的に高速炉を利用した燃料サイクルが小さな国を含めて世界で一般化する時代のことも考えて、世界的な視点で検討すべきことだ、と申し上げた。(尾本氏)

【意見6】市民民主主義社会に変化していく中で、社会的影響の大きいマスメディアの科学部だけでなく、社会部等にもっと理工系の人材を投入すべきである。

 

【問10新しい規制制度に対応するにはリスク情報の活用が不可欠である。しかし、日本人はリスク活用の考え方が弱いと思われるので、これを改善する良い方策はありませんか?

 

【問11JCO事故を考えると、一般の大学工学部や高専、工業高校などでの原子力教育は今のままで良いのでしょうか?それとも、あれは学校教育以外から起きたことでしょうか?

回答

  原子力事業の従事者にも、危険な作業に対する事前の教育が必要。危険な作業が含まれている場合、不適切・不十分な作業に起因して事故が起こり、損傷に至る恐れありと予め教育する必要がある。作業員への安全教育がきちんと行われていれば、JCO事故は起こらなかったかもしれない。(奈良林氏)

  これまでの経験(出前講義等)から、大学でも教えれば学生は理解する。残念ながら教員が不足している。(奈良林氏)

  チェルノブイリ事故に際し堕胎の問題が提起されたが、ハンガリーでは公式記録によると堕胎ゼロである。これは、この程度の放射線では影響がないことを、先生がきちんと説明したから。放射線教育の重要性、必要性を示すものである。

【問12大学(工学部)に優秀な学生に入学してもらう為には、小中高の教員や教育内容に何を期待しますか?原子力に関係あるなしにかかわらず。

回答

  北海道ではエネルギーや放射線に関し、小中高の先生方の勉強会を行っている。これは全国ネットワークに発展しており、学校の先生もやっと動き出したところ。

  先生方がスイスの原子力発電所を見学の際、熱利用も実施していることをまの当たりに見た。こういったことを知ったら国民の認識が変わる。世界の事実を報道してもらいたい。(奈良林氏)

  放射線がこわいとの認識は「むつ」あたりから。事実が周知されていたら、放射線に対する恐怖心がなくなったかもしれない。

 

【意見7】提案されているような施策を実現する為には、 国民の原子力(核)アレルギーを無くさないといけない。国を挙げて教育、科学技術発展に取り組むべきだと思う。

 

【提案】沖の鳥島に実証機を作ったらどうか?原子力だけでなく海洋温度差発電も加え、エネルギー基地とすることも考えられる。

回答

  送電の問題はあるが、クローズした電源としてなら、北大の学生は実習として洋上原子力発電の設計もしているので、アイデアの具体化は可能である。小型炉のモデルには原子力船「むつ」の原子炉や「4S炉」(東芝)も活用できよう。

 

まとめ

  今後のキーワードとして、設備利用率が重要である。

例えば、韓国がUAEからの原発受注成功したのも、日本の設備利用率の低さがその理由の一つとされている。

一方、フィンランドはEPR建設に着手し、2009年運開予定であったが、2013年へと遅延した。彼らは日本製APWを希望している由。

いずれにしても、外国のプラントと比較しても遜色ないことが重要である。(水町氏)

  電事連では40以上の委員会を主催し、関係者と調整を図りつつ原子力政策や安全性・信頼性の向上などの諸課題に対応している。シニアからの意見にも期待する。(丸茂氏)

  世論形成においてマスコミの影響が大きい。正確な報道のためには、彼らとの対話が必要であり。これからも場所・時間に関係なくマスコミとの対話を積極的に推進して行くべきである。(奈良林氏)

  原子力を推進するうえで、好ましい状況が増えてきた。政策を実現するうえでは好機であり喜ばしい状況といえよう。(三又氏)

  原子力ルネッサンスと言われる今日、世界に向けて日本の力を発揮すべき時である。ここで話だけしていても始まらない。シニアネットワークの方々の貢献できる場所は世界に沢山ある。(尾本氏)

 

座長総括

座長:金氏 顯

まず、パネル討論の座長として、5人のパネリストの皆様が適切に且つ本音でまたご意見を伺い、質問にお答えいただいた。またフロアからのご質問、ご意見も約20件と多く、全て重要かつ的確なものばかりで、大変良い討論になりました。皆様のご協力に深く感謝いたします。

座長総括として、またSNW代表幹事として、3つのことを提言します。

一つ目は、我が国の原子力には、現行の制度、慣行、体制などに色々と課題、問題があることは十分に分かったと思われる。問題解決の答も海外もしくは過去に実績の中に見ることができる。答は分かっているので、もう議論することは止めて、ただちに実行に移していただきたい。昔我々シニアが現役の頃は技術的には今よりも未熟であったが、国、事業者、メーカー、地方、マスコミまで、皆が同じ土俵で切磋琢磨しながら原子力を築き上げてきた。その昔に戻ろうではありませんか。日本でも原子力ルネッサンスを起こそうではありませんか。

二つ目は、今日ここに集われた皆様には、原子力に関係する方々やステークホルダー(国、事業者、地方自治体、メーカー、大学、学協会、マスコミなど)に意見を言い対話することにより、コミュニケーションの継続と拡大をお願いしたい。

三つ目は、我々シニアもステークホルダーとのコミュニケーションとともに、次世代の若者や一般市民への啓発、教育、対話を継続し、拡大し、国民の意識改革を草の根的に行っていく。

本日は猛暑の中、長時間有難うございました。

 


 

閉会挨拶

エネルギー戦略研究会(EEE会議)会長 金子熊夫

本日のメインテーマは「原子力にどこまで期待できるか」である。この課題では原子力に直接携わってきた皆さんと一般の方々では認識に大きなギャップがある。一般市民にどう説明し、理解してもらうかが重要であり、これはシニアの役割といえよう。シニアの知恵と見識を最大限に活用してほしいと願っている。最近の事業仕分けでは、広報関係の事業がカットされるという事態も生じているが、関係省庁には、できるだけこのようなことが起こらないように努力していただきたい。また、マスコミに方々は、シニアはどんな質問にも答えられるので、ぜひともシニアを活用していただきたい。

今日のシンポジウムでは@新増設や稼働率の向上、A科学的・合理的な安全規制の充実等とともに、B原子力の国際展開が必要なことが指摘された。私の個人的な関心から言えば、Bが非常に重要な課題になっていると思う。

とくに現在、国際展開では、NPT非加盟のインドとの協力関係(具体的に言えば、原子力プラント輸出)が重要な問題になっている。明後日(8月9日)の長崎の原爆犠牲者慰霊祈念式典では長崎市長がインドとの原子力協定締結交渉に反対する意向が示されるようで、そのことを私も懸念している。

確かに日本は唯一の被爆国であり、核廃絶や核不拡散の問題は重要な問題であるが、原子力の平和利用の問題はNPTとか核廃絶の議論とは本質的に異なったものである。インドとの原子力協力がNPTの弱体化に繋がる、だから日本はインドとの原子力平和利用面での協力を一切行うべきではないという議論は、あまりにも短絡的で、偏っている。インドとの原子力協力を進めることと、日本の非核政策を堅持することとは決して矛盾するものではない。日印原子力問題はもっと広い視野で考えるべきである。シニアとしては、このことをきちんと日本国内で伝える必要がある。大きな声で発言してゆきたい。

一般国民に説明するには、難しい言葉を使わず、できるだけ分かり易く説明する必要がある。このために我々はもっと説明する技術を磨く必要がある。今日のようなシンポジウムではそういった角度からの指摘もあり、実りの多いものであった。我々も大いに勉強し、その成果を活用、役立ててゆきたい。

本日は、お忙しいなかこのシンポジウムに出席いただいた皆様、講師やパネリストをお引きうけいただいた皆様、シンポジウムの運営にお世話いただいた事務局の皆様に厚くお礼申し上げます。

どうもありがとうございます。

以上