日本原子力学会シニアネットワーク連絡会
報告
学生・教員・市民とシニアの対話会

学生とシニアの対話
in 東北大学2025(第19 回)報告書

日本原子力学会シニアネットワーク連絡会(SNW)
世話役:阿部 勝憲
報告書取り纏め:中谷 力雄
東北大学大学院工学研究科 量子エネルギー工学科専攻 校舎前景
(2025年12月11日撮影)
大学院生が幹事役を務め、学生、シニア双方ともに有益な対話会となった

例年通り大学院生が幹事役を務め、企画、参加者募集、事前質問とりまとめ、プログラム案作成、当日の進行役など責任を持って対応してくれ、学生、シニア双方ともに有益な対話会となった。 東北大学との対話会は、今回で19回目となる。参加学生数は10人で、3班に分かれて、各班とも二つのテーマで二度対話した。事前質問と講演資料等を基に対話を行い、比較的少人数グループで行ったので率直な意見交換ができ、「日本の原子力利用の歴史や、シニアの方々のさまざまな経験に基づく知見を学ぶことができ、私にとって非常に有意義な時間でした」などの感想もあり、学生、シニア双方ともに有益な対話会となった。

 

1.講演と対話会の概要

(1)日時

2025年 12月11 日(木) 13:00 ~ 17:30

(2)場所

東北大学青葉山キャンパス 量子本館 1F量子セミナー室(1)

(3)世話役

大学側: 大学院生(博士課程1年)
(サポート加田渉准教授)
シニア側: 阿部勝憲 (サポート本田一明/中谷力雄)

(4)参加者

教員:東北大学大学院工学研究科 量子エネルギー工学専攻長 松山成男教授
同上     量子エネルギー工学専攻   加田渉准教授
学生:10名
量子エネルギー工学専攻 (学部3年1名、修士1年7名、修士2年1名、博士1年1名)
シニア: 6 名
(シニアネットワーク連絡会) 星野 知彦
(シニアネットワーク東北) 阿部勝憲、加賀谷秀樹、本田一明、古川榮一、中谷力雄

(5)開会の挨拶(松山量子エネルギー工学専攻長 )

以下の趣旨のご挨拶があった。

我が国の原子力発電についての歴史を講演で聞いてもらい、3・11以降でようやく再稼働が進められている中(至近では女川2号機や島根2号機)、皆さんがそれらをこれから支えることになる。戦力になるにはハードルが高いところもあると思うが、先輩シニアの方と意見交換し、理解を深めて欲しい。
対話会に原子力関係業務経験があるシニアの方々にお越し頂き感謝申し上げる。

(6)基調講演

講演者名:星野 知彦
講演題目:「わが国の原子力発電導入から今日まで」
講演概要:
わが国の原子力導入から今日までを振り返ると、官民挙げて原子力発電所を輸入、改良標準化計画でトラブル克服、作業被ばく低減や効率改善を推進した結果、ついには日本型の原子力発電所を手に入れた。
しかし、福島第一原子力発電所事故は、これらの実績をも根底から覆した。 日本は事故の教訓を踏まえ、安全に対する考え方を根本から見直したが、事故後10年以上経っても新規建設はおろか、未だに再稼働できない発電所もある。これまでの蓄積がゼロになったわけではないが、時の経過に伴い人の経験が失われていくのは事実。原子力停滞の間に原子力から撤退する企業も増え、以前のように海外依存に戻ってしまうかもしれない。
日本の原子力を再スタートさせる今、これまでの経験を将来に活かすかどうかは若い世代にかかっている。

2.対話会の詳細

(1)グループ1(報告者:古川榮一)

1) 参加者
学生 : 4名(量子エネルギー工学専攻:修士1年4名(県内1名、県外3名))
シニア : 中谷力雄、古川榮一
2)主な対話内容
学生、シニアで自己紹介を行った。学生は、核融合ないしは放射性廃棄物処分をテーマに研究を進めており、原子力に関する充分な知識を有していた。
第1回テーマ:「バックエンド」
事前質問の地層処分等の社会的受容・合意形成について、NIMBY(Not In My Back Yard)の思いから継続的な課題であることを共有した。これへの対応として、次の意見が示された。
  1. ・若者の意識が大事
  2. ・有名な俳優やユーチューバーによるCMやSNSなどを活用することが、考えるきっかけになる。
  3. ・教科書の記載が少なく、受験に関係ない現状にあるが、学校教育に含めていくことが大事。
  4. ・HLWの処分地選定に当っては、自治体が手を挙げずらいことを踏まえ、例えば国が処分地候補を指定すれば、モデルケースとして議論が進むのではないか。(北欧の例を踏まえ)
第2回テーマ:「原子力の将来」
運転期間の制限に関して、質問があり、以下の説明を行った。
  1. ・東日本大震災当時は、高経年化の技術的評価を行うことが定められており、期間は規定されていなかった。
  2. ・東日本大震災を踏まえ、安全規制が強化され、運転期間として40年+最大20年が示された。
  3. ・法の改正が行われ、最大60年の期間に震災後の一部期間(稼働していない期間)を除外することとなった。
  4. ・原子炉圧力容器の脆化のモニタリング・評価により、技術的には60年を越えての運転は可能。米国では、技術的理由ではなく、経済的理由により廃炉が行われている。
  5. 第7次エネルギー基本計画の実現に向けて、再生可能エネルギーと電気の同時同量について解説した後、今後のエネルギー供給について対話を進め、以下の意見が示された。
  6. ・エネルギー供給に当り、再生可能エネルギーを踏まえた電力需給調整を考えると原子力は必要。
  7. ・近い将来の運転期間制限による原子力停止を考えると、原子力の新増設が必要。
  8. ・新規立地の地元理解の困難さを考えると既設発電所のリプレースが現実的。

(2)グループ2(報告者:加賀谷秀樹)

1)参加者
学生:3名(量子エネルギー工学専攻:修士1年2名、博士1年1名)
シニア:加賀谷秀樹、本田一明
2)主な対話内容
第1回テーマ:「原子力と地域共生、関連法規と規制」
はじめにそれぞれ自己紹介を行った。研究は中性子の核データ、加速器を用いた材料の改良、核融合関する研究、出身地も茨城県、愛媛県、東京都とバラエティーに富んでいた。
第1回対話テーマは「原子力と地域共生、関連法規と規制」。 事前に何項目か質問を頂いていたが、質問者とグループ分けは一致しておらず、質問者はこのグループにいないということだったので、第2回対話の共通テーマである「原子力の将来について」、基調講演の内容と併せ、テーマに拘らず学生の関心事について対話を行った。
地域共生に関連し、学生3人の体験(一人は茨城・東海村出身で幼少の頃から原子力施設があることを自然に受け入れていた。愛媛県出身者は両親が当地の原子力発電所を見学したら反って電力会社への就職はやめろと言われたこと、東京都出身者も同じ経験があること)、及び福井南高校ゼミのアンケート(原子力施設に近いほうが情報量多く原子力に肯定的)を紹介し、原子力施設の社会的受容について意見交換。
原子力発電所の再稼働に当たっては地元同意が必要となっているが、女川の地元との信頼関係については困難な漁業補償交渉などを経て構築され、その後も、原子力防災訓練なども含め日ごろからの広報活動・地域対応活動を通じ住民理解を深めていったことを紹介。
就職希望先は3人とも研究職、メーカーを希望しており、電力会社は就職先として考えてないようだ。原子力の将来にとって大事なこととして、福島第一原子力発電所事故以降弱体化した産業界の人材育成強化と原子力産業基盤の強化について意見交換。 電力業界は事故以降の電力システム改革(電力自由化)で総括原価方式がなくなり投資回収の予見性が難しくなったこと、経営体力が弱まったことで、発電所の新増設が思うに任せない。英国のRAB方式のような投資回収の仕組みが日本にも必要と解説。
基調講演に関連し、各国の原子力開発は1953年国連総会での米国大統領アイゼンハワーが「Atoms for Peace(原子力の平和利用)」演説から始まったこと、日本ではそれを受けて翌年に後の首相となる中曽根氏が「ウラン235」に絡ませた2億3千五百万円の予算を付けたことから始まると紹介。 シニアの子供時代には「鉄腕アトム」という漫画があり人気を博したが、ご存知かと問いかけたところ、学生はアトムの名前は知っているものの妹のウランちゃんや兄のコバルトは全く知らず、いわんやライバルのプルートをや。シニアには今の若者との時代の違いを多いに感じさせられた。原子力回帰にはこの素晴らしい漫画の復古も面白いのではないか?
第7次エネルギー基本計画では、エネルギー需給の見通しとして原子力が2割程度と見込まれる一方で、再エネが4~5割程度とされている。しかし再エネの太陽光発電は巨大な森林開発や釧路湿原などでの開発が問題視されて規制が強化される。風力発電についても騒音や自然破壊などの課題に加え、資機材の高騰という逆風が吹いている。次回エネ計画の見直しでは再エネから原子力への比重が確実に高まってくるのではないか。ただ再稼働が進んでも60年の運転期間しか動かせないこともあり、2050年という脱炭素の目標年次までには発電所の新増設が必須であり、そのための原子力に関する国民の理解促進と原子力事業環境整備は大事であるとなった。
次世代革新炉について学生に尋ねると高温ガス炉は期待できそうだが、小型炉はコスト的にダメだという判定。核融合炉については3人全員が2030年代実証炉には否定的であった。日経(25.12.9)「ヘリカルフュージョンが30年代から電力販売」という記事を見せたが、その記事にも納得できないという感じ。
核燃料サイクル政策については、再処理による高レベル放射性廃棄物の地層処分よりは使用済み核燃料のままの保管の方が良いという考え方も出された。
マスコミの報道について原子力施設の場合は地震時や水漏れでも報道される。報道されるのは危険だからだと県民に思われるので、発電所情報の開示については社会受容の観点から十分検討したらという意見が述べられた。
後半の時間も少なくなり本来のテーマである「原子力と地域共生、関連法規と規制」については『事前質問への回答』を手渡しその概要を説明した。また事前質問の中にある『青森県等・・・共生の将来像に関する共創会議』とは異なるが、2009年女川3号機プルサーマル計画について、県・市町が一体となって基調講演会と対話フォーラムを開催し、地域住民への社会受容に努めた記録を手渡しした。
最後に原子力の将来に不安はあるかと問いかけたところ、「不安はない。現在の火力発電の代替は原子力発電しかない。太陽光、風力は変動電源であり、調整力としての火力が必要。安定電源である水力は限界に近い・・・云々」とエネルギーミックスを良く理解し、力強い意見を頂き、心強く思った。 皆さん積極的であり、話題豊富な中で双方向の充実した対話が出来た。

(3)グループ3(報告者:阿部 勝憲)

1)参加者
学生:3名(M2 1名、M1 1名、B3 1名)
シニア:2名(星野知彦、阿部勝憲)
2)主な対話内容
学生司会により自己紹介のあと対話を進めた。修士研究テーマはプラズマの放電と計測関係で、学部生の希望は高速炉であった。参加グループは各自の研究分野や事前質問と関係なく編成されていた。第一回としてグループテーマに関連した対話を行い、第二回として共通テーマについて意見交換を行い、主なトピックスは以下の通り:
第1回対話:次世代革新炉開発
  1. ・革新炉のうち高速炉開発における国内外の比較について議論。我が国では実験炉常陽から原型炉もんじゅに進んだがナトリウム事故は技術的には対策可能であったが情報対応でブレーキ。米国は高速炉の先陣で世界初の原子力発電はEBR-Iで歴史あるが中断。ロシアでは実証炉が運転中で中国でも開発進む。
  2. ・革新軽水炉は我が国で実績のある軽水炉の改造であり安全性向上で実現には予算の見通しが必要、建設地は廃炉跡利用か。関電/美浜で三菱重工/PWRが先行。その他、輸出計画は、BWRはなど。
  3. ・SMRは米英で具体的な計画あり、投資もある。SMRについて日本は技術的な参加になるか。一般論で米国は投資で進み、日本は国の予算化が牽引。
  4. ・次世代炉でもサイトは海岸かの質問から軽水炉以外の冷却方式について議論。日本初の商業発電炉は炭酸ガス冷却で、開発中の高温ガス炉はヘリウムガス冷却で熱利用による水素製造試験。高速炉はナトリウム冷却であり、ナトリウム冷却型のSMR設計も。
第2回対話:原子力の将来
  1. ・省エネが進んでも国内外で電力需要は増加の見込み。原子力は日本では基幹電源として割合を増やす方針で将来とも原子力産業は重要。エネルギー利用で革新軽水炉から核融合まであり、放射線利用でも医療応用など広く、将来にわたり面白い技術が生まれる可能性ある。
  2. ・社会の理解について、宮城県南地域では年配者は若い世代よりも帰還困難などの問題で抵抗が大きいか。安全対策が理解されてないのでもっと広報が必要。
  3. ・核融合開発においてITER計画では主要機器開発で日本がリード。最近では米国でベンチャー企業が主導し投資も活発、日本でもベンチャーが参入し大学から移ったメンバーが開発スピードに驚いていた。面白いプロジェクトに投資が向かい人も集まる。この好循環の可能性あり、他の革新炉でもそうなってほしい。
  4. ・資源の無い日本だから燃料を増殖できる高速炉に興味をもった。Puを取り出す再処理事業は時間がかかっているが安全対策工事も進んで完成に向かっている。
対話を通して、原子力をめぐる課題と将来について、学生諸君は自分の研究テーマとも関連して、抱えている疑問や意見をざっくばらんに話してくれた。これからますます原子力は必要で面白いと思うので、どうか自信をもって活躍してほしい。

3.講評 (本田 一明)

学生とシニアとの対話は2005年から始まり、今年で20周年を迎えました。 東北大学との対話会はこの対話会が始まった当初から行われ、今回で19回目となります。今年度も継続して対話が出来たことに対しましてご参加の皆様、そして取りまとめを行ってくださった学生幹事に御礼申し上げます。
今回の基調講演ではシニアネットワーク代表幹事の星野様から「我が国の原子力発電 導入から今日まで」との演題で、原子力発電所の現状、黎明期からの開発の歩みと改良標準化、福島第一原子力発電所事故とその対応、そして次世代革新炉と幅広くお話しいただきました。
それに続く対話では3グループに分かれて「バックエンド」、「地域共生」、「次世代革新炉」の個別テーマで、また、「原子力の将来」という共通テーマで議論・意見交換頂きました。 何れのグループも和気あいあいと、かつ熱心に双方向の対話が出来ていたように思いますし、只今の発表でも話題豊富で充実した対話であったことが窺われ良い対話ができたように感じました。
最近ではAIの進展によりインターネットを使って何でも調べることが出来、知識を得ることが出来ます。チャットGPTなど出始めの3年くらい前は疑問の回答が多かったのですが、この頃は科学的、専門的な質問にも的確に回答してくれるようになりました。 このような中で、対話会ではシニアの経験と知識を対面で伝えることを大事にしており、発表の様子からこの意図が果たせたのではないかと嬉しく思っているところです。
今回の対話会を通じて、我が国の将来を担う皆さんのエネルギー、原子力に対する考え、また、これからの進路を考える上で些かでもお役に立てましたら幸いです。

4.閉会挨拶 (阿部 勝憲)

以下の趣旨の挨拶があった。

本学との対話会の特徴は、学生が幹事役を務め、企画、参加者募集、事前質問の取り纏め、プログラム案作成、当日の進行役など責任を持って対応してくれることです。今回も博士の方にお世話になり感謝申し上げる。
対話では、第1回テーマ「バックエンド」、「原子力と地域共生、関連法規と規制」および「次世代革新炉開発」と第2回テーマ「原子力の将来について」でシニアと熱心な対話がなされ、それぞれに得るものがあったと思う。
是非これからも頑張ってください。

5.学生アンケートの集約結果 (古川 榮一)

参加学生1名で回収9名(回収率90%、1名通院のため途中退席)
基調講演は原子力の歴史と最近のエネルギー課題を概括した「我が国の原子力発電の歴史と将来の役割」であり、対話後のアンケートでは、講演について「とても満足」(44.4%)、「ある程度満足」(55.6%)で、参加者全員に満足頂けた。
対話の内容についても同様にすべての学生が「とても満足」(88.9%)、「ある程度満足」(11.1%)で全ての学生に満足頂けた。
講演と対話を通じて、「新しい知見が得られた」(88.9%)、「自分の将来の参考となった」(55.6%)との感想が得られた。
電源については、全員が原子力発電の必要性を認識しており、「再稼働を進めるべき」(44.4%)、「新増設、リプレースを進めるべき」(33.3%)、「20~30%を達成すべき」(22.2%)と回答。再エネ発電については、「利用拡大を進めるべき」(22.2%)に対し、「発電が天候に左右される」(33.3%)、「自然環境破壊につながる」(44.4%)理由で利用は抑制すべきと回答。
全体を通しての感想では、「日本の原子力の歴史を知ることができて良かった」、「シニアの経験を踏まえた知見を聞けて良かった」と好評であった。なお、「時間を短くすれば、参加者が増えると思う」との意見があった。
アンケート詳細については別添資料を参照下さい。

6.別添資料リスト

講演資料: 「わが国の原子力発電 導入から今日まで」
アンケート集約結果

(報告書作成:中谷 力雄 2025年 12月18日)