学生とシニアの対話
in 静岡大学浜松キャンパス学部学生との対話会 2025年度(第1回) 報告書
- 静岡大学対話会(前期浜松キャンパス)は、連続講義「エネルギーと環境」を受講する工学部、情報学部の学生61名 (学部3年生:56名、4年生:5名)および社会人2名を対象に実施した。
- 「エネルギーと環境」は、エネルギー、環境、セキュリティ、地球温暖化、原子力発電、放射性廃棄物等の幅広い分野にわたって講義が行われている。今回の対話会もその一環として開催されており、対話のテーマは講義に関連するテーマとした。
- グループ1:エネルギー・環境問題、グループ2および3:エネルギーセキュリティー、グループ4:核融合、グループ5および6:原子力発電、グループ7および8:原子力防災の計5テーマを8グループに分け実施した
- 対話では、対話概要のとりまとめと発表を行う学生を指名してスタートした。シニアはファシリテータとして、学生の対話を促進した。
- まず、学生から対話テーマに関してどのような関心があるのか、何を意見交換したいのか等を提案してもらい、その中からいくつかの関心事に絞って対話を行った。
- 学生は、関心事に関して自分の意見を述べ、相互の意見交換を行うことにより、自分の意見を明確にするとともに、問題の理解をより深める等、一定の成果をあげることができた。
1. 講演と対話会の概要
日時
- 基調講演:なし
- 対話会:2025年6月20日(金) 10:20~11:50
場所
- 静岡大学浜松キャンパス
- 共51教室(共通講義棟5階)、5-23教室(5号館2階)、6-11教室および6-12教室(6号館1階)
参加者
- 大学側世話役の先生
学術院理学領域 大矢恭久准教授- 参加学生 : 61名 (学部3年生:56名、4年生:5名)
工学部 電子物質科学科、機械工学科、電気電子工学科、化学バイオ工学、数理システム工学科
情報学部 情報科学科、行動情報学科- 参加社会人:2名
- 参加シニア : 8グループ、8名+世話役3名
中江延男、田中治邦、鈴木成光、森本泰臣(世話役兼)、星野知彦、デフランコ真子(世話役兼)、船橋俊博、曽佐 豊、田辺博三(世話役)- 基調講演:なし
- 参加学生 : 61名 (学部3年生:56名、4年生:5名)
対話会の詳細
- 開会あいさつ
- 参加学生数が多く、8つの対話グループに分かれてそれぞれの教室にて開催した。そのため、全員の会合は開かず、各教室において、対話グループ毎にシニアから対話方法の説明を行い、シニアと学生の自己紹介から始めた。
- グループ対話の概要
- 静岡大学対話会(前期浜松キャンパス)は、連続講義「エネルギーと環境」を受講する工学部、情報学部の学生61名 (学部3年生:56名、4年生:5名)および社会人2名を対象に実施した。
- 浜松キャンパスの講義「エネルギーと環境」は4月から7月まで15回にわたって、エネルギー、環境、セキュリティ、地球温暖化、原子力発電、放射性廃棄物等の幅広い講義が行われている。今回の対話会もその一環として開催されており、対話のテーマは講義に関連する以下の計5テーマを8グループに分け実施した。
- グループ1:エネルギー・環境問題
- グループ2および3:エネルギーセキュリティー
- グループ4:核融合
- グループ5および6:原子力発電
- グループ7および8:原子力防災
- 対話では、対話概要のとりまとめと発表を行う学生を指名してスタートした。シニアはファシリテータとして学生の対話を促進した。
- まず、学生から対話テーマに関してどのような関心があるのか、何を意見交換したいのか等を提案してもらい、その中からいくつかの関心事に絞って対話を行った。
- 学生は関心事に関して自分の意見を述べ、相互の意見交換を行うことにより、自分の意見を明確にするとともに問題の理解をより深める等、一定の成果をあげることができた。
2.各班のテーマと講評
グループ1: エネルギー・環境問題
- 参加者
- 学生:12名 工学部 電子物質科学科(2)、工学部 機械工学科(4)、工学部 電気電子工学科(2)、工学部 化学バイオ工学科(1)、情報学部 情報科学科(2)、情報学部 行動情報学科(1)
- シニア:中江延男
- 会場
- 共51教室(共通講義棟5階)
- 対話内容
- ファシリテータ中江のもと、対話概要まとめ役として学生の西村あずきさんにお願いし、自己紹介(本テーマを選択した理由や知りたい点等の情報を含む)後、対話会を進めた。
- 学生からの質問事項等を整理し、下記7項目をサブテーマとして討議した。なお、サブテーマについては参加学生全員の合意により決定された。
- サブテーマ1 3Eのトリレンマ解決方策について
- サブテーマ2 電源ミックスの考え方について
- サブテーマ3 新しい効率的な電源について(核融合、エネルギー・ロスの最小化方策)
- サブテーマ4 浜岡原発での重大事故の影響について
- サブテーマ5 マイクロプラスチック(MP)問題について
- サブテーマ6 原子力に関するデータとその活用方策について
- サブテーマ7 エネルギー源が断たれた場合の生活様式などについて
- 上記サブテーマ毎に数名の学生から意見や考え方を紹介して貰いその他の学生と議論した。
討議の結果概要は以下のとおりであった。 - サブテーマ1 1つの電源だけで3Eを解決するのは難しい。各電源の特徴を考慮すること。
- サブテーマ2 例えば再エネだけを100%とする考え方は適切ではない。組み合わせが必要。
- サブテーマ3 核融合は将来有望な電源となる可能性がある。超伝導素材の開発は重要。
- サブテーマ4 1F事故後対策が取られており重大事故の起きる可能性は低い(ない)と思う。
- サブテーマ5 現在解決策を検討しているところである。有害物質を含有しないMPの開発。
- サブテーマ6 多くのデータについて認識。データの活用が重要。原子力生成AIに興味あり。
- サブテーマ7 バイオマスの利用は1つのアイデア。高速炉サイクル開発は1つの解決策。
- 対話概要の纏めが学生代表の西村さんから紹介され、参加した学生から纏めへの賛同と本対話会が有意義であったとの感謝の意が伝えられた。
対話概要は以下のとおり - 「エネルギーは人類の持続可能性にとって必要不可欠である。」は共通認識。
- 火力が減少していく中、安定供給を支えるエネルギー源として原子力と再エネの重要性が高まっている。
- 高速炉は、使用済み燃料や劣化ウランを再利用できるリサイクル型の原子炉。燃料の有効利用が進めば、廃棄物の削減と資源の最大活用が可能になる。
- 再エネの不安定さを補いながら、CO₂を出さずに発電できる原子力の役割は大きい。今後の課題は、「安全性の向上」「社会的合意」「技術開発」の3点。
- 持続可能な社会のために、「技術 × 社会 × 環境」のバランスが鍵。
- 蓄電・送電の効率化のための技術開発。
- 原子力、特に高レベル放射性廃棄物処理・処分では社会的な合意は永遠の課題である。⇒危ないと考えられているものを受け入れてもらうには、安全性や対策などを説明していく。ただし、説明したところで簡単にわかってもらえるものではない。
- シニアからの感想
- もう少し時間をかけて対話の内容を充実させれば学生の理解が進み自らの考え方を確立するのではないかと思われた。
- 大学にもよるが学生は非常に素直で新しい知識を柔軟に受け入れる。
- 今回初めての経験であったが有意義な機会を得ることができた。
グループ2: エネルギーセキュリティ
- 参加者
- 学生:4名
- K君 情報学部行動情報学科(取り纏め発表担当)
- O君 工学部電子物質科学科
- Y君 工学部機械工学科
- B君 工学部化学バイオ工学科
- シニア:田中治邦
- 対話内容
- B君: 原発事故のことを聞きたい。
- Y君: プラごみ問題が心配。生分解性プラスチックはコストが高い。
- O君: エネルギーセキュリティとは何のことか。
- K君: 原子力には世の中の抵抗感が強い。しかしエネルギーの海外依存の状況は小学生で習ったが大学生になっても全く変わっていない。
- O君: 日本は資源が無く、太陽光・風力のための平地も乏しい。各エネルギーにはそれぞれ障壁があり、現状の姿となっている。
- B君: 福島事故で放射線による健康影響が無かったとは知らなかった。震災関連死を発生させない対策が重要。静岡県内の浜岡原発は事故を起こした福島原発より遥かに安全性が高まっていることを理解。
- O君: 原子力には国民理解が必要だが、どうやって理解を高めて行くか、いつまで経っても変わらない。どの世代が反対しているのか。アンケート調査結果で少しは改善しているのか。
- K君: 原子力については被害の様子しか報道しない。放射線に関する教育の充実が必要だ。賛否の間で揺れる中間層への教育が大切。
- O君: 目に見えないリスクは恐怖心を呼ぶ。食物にも入っている等の知識を持ち正しく怖がることが必要。
- K君: 原子力を増やすのに技術的難しさがあるのでなく、感情的な世論が壁になっているのであれば、何とか解決できるのではないか。
- O君: 米露日は原発事故を起こした点で同じ。日本はそれに加え原爆を経験したことが大きいのではないか。
- Y君: 原発に過剰なコストをかけるよりは、それを日常的な環境問題解決に欠けるべきではないか。
- シニアからの感想
- (1) 最初に事前質問への回答と解説・話題提供資料を配り(説明は省略)、進め方は再質問、新たな話題提起、意見交換など何でも自由に行うよう指示。議論の中でシニアからは原子力が良いとの説明は控えたが、3名の学生は再エネの主力と目される太陽光と風力だけではダメで、原子力が必要と主張。1名は原子力について一切触れず、もっぱらプラスチックゴミの環境問題が心配との話題に集中していた。
- (2) 学生達の発言の骨子は以下の通り
- (3) 纏めの発表(K君が報告)
- グループ内での意見交換の骨子を報告した上で、原子力への国民理解を高めるために教育とメディア放送の役割が重要と言うことを結論とした。
人数が少なかった為に発言機会は多く、1時間強の意見交換は充実していた。 出された質問にはシニアが全て答え、学生達は素直に受け取り自らの思考の中で意見を組み立てて行った。 原子力のお仕着せは極力避けたが、工学系の学生達は原子力を必要と感じており、再エネだけではどうにもならないと理解しているのは頼もしく感じた。
グループ3: エネルギーセキュリティ
- 参加者
- 学生: 7名(工学部化学バイオ工学科、工学部数理システム工学科など)
- シニア: 鈴木 成光
- 対話内容
- (1) 対話会の初めにシニアより、質問に加えて意見などを積極的に発言して欲しい旨学生に要請したが、対話会全体を通して学生からの発言が非常に少なかった。
- (2) このため、事前の質問に対して準備した回答をベースに、シニアから説明を行い質問を促すように進めたが、なかなか質問さえも出ず、シニアが説明を展開することとなった。
- (3) 対話会の初めの自己紹介に併せて、エネルギーセキュリティーというテーマについてどのような議論をしたいかについて発言してもらったところ、エネルギーセキュリティーという言葉自体に実感を持っていない、という意見が数人から出された。
- (4) エネルギーセキュリティーが確保出来なかった事例を挙げられないかとシニアから学生にボールを投げたら、福島第一原発事故は大きな影響を与えたという意見が出た。その他に意見が出なかったので、シニアから国際的な事例として、1970年代の中東紛争による石油ショック、ロシアによるウクライナ侵攻による影響、今年発生したスペインでの大停電についてシニアより話をした。
- (5) 隣国からの電力網のない日本がエネルギーセキュリティーを確保するには、国際的な影響を少なくするためエネルギー自給率を高めることが必要であることを理解してもらい、併せて第7次エネルギー基本計画についてシニアから説明し、再エネ発電の課題や火力発電のCNに向けての取り組み、原発の安全性強化などに展開した。その中で次のような意見が学生から出された。
- ① 2040年までに再エネの発電容量を4割まで増やすことが出来るのだろうか?
- ② 再エネを主要電源にするのではなく、原子力発電を主要電源として拡大すべきではないか?
- ③ 北海道の襟裳の出身だが、原発の建設に適していると思う。
- (6)対話会後に学生が纏めたスライドの内容が、対話会の内容と全く異なることに驚いた。
- (注1) 事前にグループ3として質問をもらったメンバーと異なる学生がいた。
- (注2) 対話会開始時間に間に合わない学生が2名いた。10:30まで待ったが1名が遅れており、学生6名で対話会を開始した。
グループ4: 核融合
- 参加者
- 工学部 機械工学科(6名)、工学部 電気電子工学科(1名)、工学部 数理システム工学科(2名)、情報学部 行動情報学科(2名)、社会人(2名) 計13名
- シニア: 森本 泰臣
- 対話内容
- 事前質問をベースに本対話会で掘り下げたい領域を議論。核融合の将来・実現性についての意見が多かったことから、掘り下げるテーマとして選定した。
- 核融合の将来・実現性を議論する上で必要な項目として、第7次エネルギー基本計画における方針、核融合炉の安全性、核融合エネルギー、核融合炉実現に向けた開発課題、等について、ハイレベルではあるが、解説した。
- 核融合炉はいつ実現するかとの問いに対して、
- 10年後に実現:0名
- 20年後に実現:12名
- 30年後に実現:1名との結果
- 日本が掲げる目標として、2039年発電実証。発電が実証されているのだから20年後には商用炉が運転しているのでは?
- 浜松なので、浜松フォトニクスで開発しているレーザー技術のイノベーションが起こり核融合も実現するのでは?のでは?
- 核融合炉の施工面での課題、実現するための課題は何か?核融合材料開発が重要であると解説し、その結果として、20年後には実現しているのではという意見が出された。
- 核融合が実現したら、社会がどのように変化するか?
- 化石燃料が不要となり、石油会社がなくなっている。化石燃料に頼らない世界
- 電気料金が安くなり、自由に電気が使用できる社会。
- 新たな産業が発生する
- ガンダムが実現するなら、宇宙開発も飛躍的に進歩するのではないか
- 海水があれば無尽蔵にエネルギーを得ることができる社会
- 対話会で議論した内容を受けての学生からの意見
- 核融合を利用した未来像がはっきりし、その実現が意外と身近と感じた。核融合の実現はS+3Eのトリレンマの解決につながるのではないか。
- 軍事転用などの可能性についても考えたい。デメリットも考えると無条件に良い技術であるとは言えないのでは。
- 核融合技術はかつての産業革命に匹敵する。大きな力を得た際に人間としてどう行動するのか、考える必要がある。エネルギー格差が今以上に国と国との間で顕著になるだろう。
- 所感
- 人数が多かったこともあり、少なくとも自由討論のほかに、強制的に喋ってもらう機会を設けた。
- 対話会の最後に各自に意見を言ってもらった。きちんと他の人の意見も踏まえながら意見をまとめて述べていた。
- 対話、という切り口で言えば、10名程度が最大数とすべきと感じた。
根拠は以下の通り
グループ5: 原子力発電
- 参加者
- 学生: 9名 工学部機械工学科、電気電子工学科、電子物質科学科
- シニア: 星野知彦
- 対話内容
- グループ5の学生が選んだ興味のある分野は今回のテーマの「原子力発電」の他「エネルギー・環境問題」「核融合」で、各学生の選んだ理由等について事前に先生から情報をいただいた。学生相互の対話内容を「原子力発電」という大きなテーマから絞り込むため、それらの中から共通するキーワードをシニアから8つ示し、学生たちが社会を牽引する世代(中堅世代)になった時の理想の日本の姿を語ってもらった。(キーワード:資源、世界、浜岡原発、福島事故、原発安全性、再稼働、汚染水・処理水、気候変動)
- 時間内で学生たちの理想の日本の姿は一つに纏まらなかったが、次の二つに集約された。
- 原子力発電に一定の割合を担わせる。福島事故を起こさないように設備、管理に万全を期す。
- 万全を期しても福島事故が起きるリスクはなくならないので、再生エネルギー等にシフトしていきたい。再生エネルギーのデメリット(不安定さ)の克服は必要。
- 以下のような個別意見があった。
- 国民の理解が無ければ一定の原子力比率を維持するのは困難。継続した理解活動が必要。小中学校からの教育も必要ではないか。(これに対して、原発立地地域出身の学生が、小学校の時から避難訓練に参加するなど、原子力に接する機会があったと紹介。)
- 原発の必要性は頭では理解できるが、近くに発電所ができるのは嫌。
- (学生が社会を牽引する)20年後、原子力中心、再エネ中心、いずれにしても技術的な課題が多すぎる。解決できるのだろうか?
- 中国はどんどん原発を作っている。日本は技術的に世界に取り残されてしまわないか?
- シニア感想
できるだけ自分事として捉えられるよう自分たちが社会を牽引する世代になる頃をイメージして意見を述べてもらった。結論は一つに纏まらなかったが、むしろ一人ひとりが率直に意見を交わすことができたのではないか。シニアがいなくても学生同士で意見を交わす場が増えることを期待する。
グループ6: 原子力発電
- 参加者
- 学生:9名 学部3年
- シニア:デフランコ真子
- 対話内容
- 事前にいただいていた学生各位の質問も含め、原子力発電についての疑問や考えを参加者で共有した。
- 議論のテーマとして、浜岡原子力発電所の地震・津波対策、発電所立地に適する条件や住民感情、原子力発電の将来ニーズ等について話し合った。最後に本日学んだこと、気づき、感想などを学生参加者の皆さんよりいただいた。
- 核融合発電が実現すれば、核融合ですべてが賄えると思ったがInputの電源が必要であることが分かった。
- 海外の発電の原子力やその他の手法の割合などについて興味を持ったので今後自分でも調べてみたい。
- 原子力の再稼働について、NIMBY問題や地元の気持ちについて考えるきっかけとなった
- 核融合のデメリットについてもわかった
- フランスや各国と日本の社会受容の差があり、日本としてできること考えたい
- 発電所を受け入れる地元のメリットについて考えるきっかけになった。研究施設だと良いが浜岡のように5基もの発電所があるのはどうか。
- 中東の政情などを考慮すると、安定電源としての原子力のメリットは分かった。リスク、メリット、デメリットを正確に評価して共有することが重要。
- 原子力発電所誘致のメリットについても考えることができた。人が増えて経済が活性化する。
- 海外のエコ対策等はネットとかでしか確認してきていないが、今日少し話を聞いて面白かった。今後もっと直接聞く機会も得たい。
- シニアの感想
原子力発電について強い賛成でも強い反対でもなく、中立的な立場の学生さんが多かった。今回の対話は、今後の日本のエネルギー供給の在り方について、各発電手法のメリットとデメリットをより詳しく学び自分で判断したい、と考えるきっかけになったのではないかと思う。
グループ7: 原子力防災
- 参加者
- 学生: 工学部 5名
- シニア: 船橋俊博
- 対話内容
- 簡単な自己紹介を行ない、学生側の発表者、書記をあらかじめ決定してから対話を開始した。尚、対話参加者が当初の7名から5名に変更になっていた。
- 対話のテーマは学生側で話し合い、「原子力・核エネルギーの危険性を踏まえて、どのように安全に扱うか」に設定した。テーマ選定の背景に、核エネルギー自体の持つエネルギーの危険性と、昨今の国際情勢を意識して、外部からの攻撃に対する危険性への考慮も必要との認識が参加者にあった。
以下に学生の主な発言を記載する。 - (1)危険性について
- 放射性物質が1番危険なのではないか。
- テロ攻撃の標的になる可能性がある。
- (2)安全な使い方について
- 最大限の努力をして、できる限り安全に使うのがベスト。
- 他の発電方法で賄えるのなら、無理して使う必要はないのではないか。だから日本国内では原子力発電はそこまで受け入れられてはないのではないか
- 原子力発電所の自然災害対策を近隣住民に知らせる。
- 人がたくさん住んでいるところに原子力発電所を作るから被害が大きくなってしまう、無人島などの人がいないところに作れば良いのではないか。テロ攻撃への対策もとれる
- (3)まとめ
- 日本から遠く離れた無人島や小島に原子力発電所を建設することで、万が一事故が起きた際に、日本への放射性物質などの影響は比較的抑えられるし、テロ攻撃時のリスクも避けられる。
- 日本本土に原子力発電所を建設する場合は、近隣住民に、どれほど厳重に自然災害へのリスク管理が行われているかということについて説明することが大切である。
- シニアの感想
- 参加者
- 学生: 5名(機械工学科1名、数理システム工学科2名、電気電子工学科2名)
- シニア:曽佐豊
- 対話内容
- 学生側の書記と発表者を決定後に、自己紹介と関心事、聞きたいこと、疑問に思ったことを発言してもらい対話会を進めた。
- 関心事、聞きたいこと、疑問点として挙げられた福島事故後に強化された規制基準・防災対策と世界の原子力発電に対する世論についてシニアが簡単な説明を行った後、学生側で自由に討議を進めた。
- 自由討議を通してテーマは、原子力発電の安全とリスク及び防災対策について理解を深めるかに絞られていった。
- 各自がメモしていた討議内容について、学生全員で再度質疑を行い、現状認識と課題をまとめた。
- 当グループのテーマは原子力防災であったが、対話の中で福島事故後に規制基準や原子力防災対策が強化されたが自分たちも含めてよく理解していないのではないか。説明が専門的すぎて一般の人にはわかりづらい等の課題をまとめた。改善効果を具体的に示すことや、情報伝達手段を若者や一般の人々へ向けての適切に選ぶなど、解決するための課題について対話を進めることができた。
- 原子力防災について対話を行った7班とグループ発表と質疑を行った。
- (1)参加学生について
- 連続講義「エネルギーと環境」の講義を受講する情報学部、工学部の3年生を中心に 63名(学生61名と社会人2名)を対象に実施した。 参加学生と社会人63名のうち62名(学生61名、社会人1名)が回答。回収率は98.4%。 学生は理系63名、文系1名との回答があった。これは、複数の学生が原子力系以外と教育系以外の両方に該当すると回答したためである。 進路は21%が就職、79%が進学を希望。
- (2)対話会について
- 対話会の満足度は「とても満足」、「ある程度満足」が合わせて95.2%、「やや不満」は4.8%。ポシティブな意見は新しい知見が得られたが最も大きく、次いで将来の参考になった、マスコミと対話の情報が違いがあった、教育指導の参考になったが挙げられた。また、最後の本企画を通した感想にもポジティブな意見が述べられてる。一方、ネガティブな意見として、対話時間不足が最も大きく、次いで対話内容が難しかった、学生の発言が少ないが挙げられた。今後の改善の参考にしたい。対話時間に与えられた時間は授業一コマ分(90分)に制約されており、今回は自己紹介等の所要時間を短縮し対話時間を60分強に増やした。引き続き改善方法を模索したい。対話会の必要性は「非常にある」、「ややある」が合わせて100%であり、「あまりない」、「全くない」は0%。ネガティブな意見はなかった。
- (3)意識調査について
- 放射線・放射能については、「有用であることを知っている」が91.9%であったが、「有用であることを知らない」が8.1%であったが「恐れる必要はない」は77.4%であり、22.6%は「放射線レベルに関係なく怖い」と回答した。
- 原子力発電については、「原子力発電の必要性を理解あるいは認識している」学生が91.9%であった。危険だから早期に削減、撤退すべきは1.6%、分からないは6.5%であった。
- 再エネ発電については、「環境にやさしく拡大すべき」が最も大きく62.9%、次いで「天候に影響を受けるので利用抑制すべき」が21.0%、「環境破壊につながるの利用抑制すべき」が8.1%であり、8.1%は分からないと回答した。
- カーボンニュートラルとエネルギーについては、「地球温暖化や脱炭素社会の実現の関心」は36.1%は「大いにある」、63.9%は「少しある」と回答した。「興味や関心があるのはどの項目でしょうか?(複数回答可)」については幅広い関心を示した。なかでも、エネルギー資源の確保、温暖化の影響と対策、脱炭素の技術開発、イノベーションの関心が高かった。
- 「日本の2050年脱炭素化社会の実現可能性について」は、「実現するとは思えない」が最も大きく40.3%、「相当いいところまで到達する」が33.9%、「分からない」が25.8%であり、拮抗していた。
- 「脱炭素に向けた電源の在り方」については、「化石燃料発電を最小とし原子力発電と再エネ発電の組み合わせが望ましい」が最も大きく55.7%であり、次いで「原子力発電、再エネ発電、化石燃料発電をほぼ均等に組み合わせることが望ましい」が32.8%、「原子力発電と化石燃料発電を最小とし、再エネ中心が望ましい」が9.8%、「分からない」が1.6%であった。
- 高レベル廃棄物の最終処分については、「関心や興味が大いにある」が9.7%、「少しある」が合わせて56.5%であり、「あまりない」が33.9%であった。「近くに処分場の計画が起きたらどうするか」については「反対しないと思う」が37.1%、「反対すると思う」が32.3%、「分からない」が30.6%とほぼ拮抗している。「地層処分について興味や関心がある項目」については「技術」が最も大きく66.1%、次いで「処分地の選定」が35.6%、「制度」が22.0%であった。
- 詳細は別添の「事後アンケート結果」を参照して下さい。
シニアは事前質問に関して補足程度の簡単な説明を行い、対話は学生側の進行に委ねた。遠隔の無人島や小島の場合、運転員の生活環境をどうするか等多くの課題は残るが、工学的な課題に対話を通じて解決策を考え結論を短時間でまとめていた。