学生とシニアの対話
in 新潟工科大学2025年度(第1回) 報告書
日本原子力学会シニアネットワーク連絡会(SNW)
世話役 : 大西祥作
新潟工科大学 (2026年1月20日 大西撮影)
新潟工科大学にて初めて原子力安全・安心創造センター所属学生と対話会を実施
- 初めて新潟工科大学での対話会を実施した。機械システム学系の岡崎教授並びに原子力安全・安心創造センター佐藤センター長のご尽力により授業外で原子力安全・安心創造センター所属の学生との対話会となった。参加学生は、機械システム学系、建築都市学系、電子情報学系と幅広い分野の学生に参加してもらった。初めての対話会ということもあり、今回は基調講演を主体にし、質疑応答に少し時間を取った形で対話を実施した。 基調講演は、「日本のエネルギーセキュリティー」という大局的なテーマで実施されたが、その後の質疑は具体的なことについて議論を重ねることが出来、有益な対話会とすることが出来た。
1.講演の概要
(1)日時:
- 基調講演(含む質疑応答):令和8年1月20日(火) 13:00~15:10
(2)場所:
- 新潟工科大学 講義室
(3)参加者:
- 大学側
世話役: 岡崎正和 機械システム学系 教授
佐藤栄一 電子情報学系教授・原子力安全・安心創造センター長
参加: 樋口秀 建築都市学系 教授
寺島正二郎 機械システム学系 教授
高橋正子 地域産学交流センター リサーチ・アドミニストレータ
- 学生:原子力安全・安心創造センター所属研究室の学生
3年生&4年生 18名、修士1年生 2名 合計20名
(コース:知能情報通信、建築、都市防災、先進製造,ロボット・システム制御)
- 参加シニア:3名(早野睦彦、田中治邦、大西祥作(世話役))
(4)基調講演
- テーマ:「日本のエネルギーセキュリティー ~次世代に伝えておきたいこと~」
- 講師:早野睦彦
- 講演概要:そもそもエネルギーは生活に不可欠なものであり、空気、水、食料とともに生存に必須のものであるにもかかわらず十分に理解されていないため、エネルギーと文明の相関、エネルギーの種類と特徴など基本的な内容を説明した。そのうえで我が国は世界でも有数の資源小国であることから、エネルギー安全保障がとりわけ国家の喫緊の課題になりやすい。しかし、エネルギー安全保障を考えるうえでリスクについての冷静な理解と判断が大切であること、そして我が国にとって自前の技術を持つことがエネルギー安全保障そのものであることを話した。
2.対話会(深堀質疑)の内容
A. 深堀質疑応答(対話)の概要
-
ⅰ)原発に近接し、ましてや柏崎刈羽6号の再稼働を間近に控えた学生との質疑はエネルギー安全保障問題やリスク問題を凌ぐ身近な問題のようであった。
- ⅱ)「日本の周辺リスクに対してどうしたら良いと考えるか」等多様な視点からの課題について自分の意見を各自出してもらい議論した。
- ⅲ)近隣にある原子力発電所に対し感じることや思い、さらには原子力に係る情報の発信・受信についてグループ内で意見出しし議論した。
B. 対話内容
- (1)第一グループ(報告者:早野 睦彦)
- 1)参加者:
- 学生:7名 (B3:1名、B4:5名、M1:1名)なお教員2名が陪席
- シニア:早野睦彦
- 2)対話のサブタイトル:
- 原子力に対する好悪、再稼働の意味、ご利益(経済効果)についての議論
- 3)主な対話内容
- 基調講演でエネルギーについての説明は分かったが、原発立地住民として目の前の原発に対して好悪感情があるのは当然である。再稼働しても地元への経済効果がさほどあるわけでもなくむしろ首都圏の経済に貢献しているとの考え方もある。
- もっと小さい時からのエネルギー教育が必要だ。原子力は負のイメージ、再エネは正のイメージだけで事が済まないことをもっと教育する必要がある。メディアの影響も大きい。
- 原子力には興味があり、原発が必要であることは理解できるしまたゼロリスクがないのも分かるが、東日本大震災を見ても地震による原発被害のイメージはなかなか消え難い。
- 4)所感
- 原発がすぐ近くにある学生と対話できたことはシニアにとって意味のある事であった。基調講演でエネルギー安全保障やリスクについて一般論を語ったものの人類問題、天下国家は頭でわかっても原発に近接する者たちにとって再稼働のリスクやその経済性について身近な課題が先行しがちである。ましてや柏崎刈羽6号の再稼働当日にあっては当然であろうと思った次第である。
- (2)第二グループ(報告者:田中 治邦)
- 1)参加者
- 学生 : 7名(院生1名、学部6名)、なお教員2名が陪席
- シニア : 田中治邦
- 2)対話のサブタイトル :
- 多様な視点からのエネルギー問題について
- 3)主な対話会内容
- 基調講演の後45分間で「エネルギーセキュリティー」をテーマに意見交換。シニアから7つの話題を示し、全員に意見を発言して貰いつつ、用意した回答用紙へ記録を求めた。一人当たりほぼ4回発言。最後の取り纏めを行う時間は無かったが、学生の意見は概ね以下の通りに一致していた。
- 日本の周辺リスクに対してどうしたら良いと考えるか
⇒過度に反応すべきではないが、国を守る力やエネルギー自給は大切
- カーボンニュートラルをどう考えるか
⇒実現は難しいが、努力は継続すべき
- 太陽光と風力をどう考えるか
⇒問題点も多く全てを依存する訳には行かないが、使って行くことは必要
- 水素・アンモニア・合成燃料をどう考えるか
⇒課題が多く、頼れないのではないか
- CO2の地下貯蔵をどう考えるか
⇒問題の先送り感が強く、発生量の抑制を重視すべき
- 火力発電をどうすべきだと考えるか
⇒無くすことなど不可能
- 原子力発電をどう考えるか
⇒使って行くべきで賛成するが、安全対策を怠らないように
- 4)所感
- 参加学生全員が自分で考え自らの意見を形成できるように予め論点を示して考えを文字に起こすようにさせた。7名の学生が記述した内容(添付)は極めて理性的な理解と意見であり、原子力には全員が肯定的であった。原発立地地域の大学であるが、安全性向上対策に関する知識はやや具体性に欠けている印象があった。これは専門的内容で事業者の広報の不足に原因があるが、どの技術も完璧なものは無くゼロリスクは有り得ないとの理解が共通していたことは、将来地域の科学技術を担う人材として大変に頼もしいものであった。
- (3)第三グループ(報告者:大西 祥作)
- 1)参加者
- 学生:6名 (B3:1名、B4:5名) なお教員1名が陪席
- シニア:大西祥作
- 2)対話のサブタイトル:
- 近隣にある原子力発電所に対し感じること、原子力に係る情報の発信・受信について
- 3)主な対話会内容
- 柏崎刈羽原子力発電所があることに対する思いやこのことに対する大学の位置付けに
ついて議論を実施した。エネルギー問題は重要であるとの認識は持っているが近隣に原子力発
電所があることやこれに対する大学の関係性については特に興味がないとの意見が多かった。
- なお、原子力発電所が近隣にあることにより間接的に便利である(交通網の整備等)とは感じているとの意見があった。またデメリットは感じないとのことであった。
- 小学生のころから原子力に関する講話等が時々あったが、現場で働いている人たちからの原子力発電所に関する具体的な説明や情報がなく何をしているのかが良く分からないといった意見もあり。
- シニアの就職先を決めた時の動機や就職後どう感じたか等について一つの事例として紹介した。
- 4)所感
- 対話の始めにアイスブレークとして簡単な自己紹介をしたが、会話に中々弾みがつかな
かったのが残念である。また、対話の時間が短いこともあり十分議論が出来なかった。尚、しっかり自分の意見を言う学生もいた。
- 情報不足等により身近な存在として原子力発電所を捉えていないため、小さなころから
の教育や情報提供の重要性を改めて認識した。
- 正直に対話会の目的を再確認する学生がいたがこれは氷山の一角であると感じた。対話会のスコープや難易度についても学生の側のことも考えるべきと再認識した。
3.学生アンケート結果の概要
(1)参加学生について
- 参加学生(20名)の内、85%の17名が回答。残り3名は授業の都合により途中退席の為、アンケートには未回答であった。
- 全員が原子力系専攻以外の学生であった。
- 進路は就職80%、進学20%であった。
(2)対話会について
- 基調講演の満足度は「とても満足」、「ある程度満足」を合わせて76%であった。希望内容が聞けなかった、内容が難しかった、質問時間不足等の意見があり。基調講演以外で聞きたいものとして「原子力発電の設置要件や具体的リスク」や「エネルギーミックスや各発電方法の比較」等具体的なことについて聞きたかったとの要望があった。
- 対話会の満足度は「とても満足」、「ある程度満足」を合わせて65%であった。程度の差はあるものの質疑応答が出来なかったが35%あった。対話に於いても内容が難しい、時間不足に加え、シニアの話しが長いとの意見が多かった。
- 今回の講演や対話会で「新しい知見が得られた」が76%、「マスコミ情報と講演や対話の情報に違いがあった」が23%あった。
- 対話会の必要性は「非常にある」、「ややある」を合わせて82%であった。また、友達や後輩へ対話会への参加を薦めるかどうかについては、10名(59%)が「薦めたい」と回答し「薦めたいとは思わない&どちらともいえない」が7名(41%)であった。薦めたいと思わない理由として「意味がない」等対話会内容について工夫が必要と思われる意見もあった。
(3)意識調査について
- 放射線、放射能については、「一定のレベルまでは恐れる必要はない」が82%であった。一方「怖い」は3名(18%)あり。
- 原子力発電については、「必要性を認識しており再稼働を進めるべき」が65%、「新設、リプレースを進めるべき」が12%あり、「2040年目標を達成すべき」は18%であった。
- 再エネ発電については、「環境にやさしく拡大すべき」が47%であった。尚、「自然環境破壊につながるので利用は抑制的にすべき」、「天候に左右されるので利用を抑制的にすべき」はそれぞれ35%、6%あった。
- カーボンニュートラルとエネルギーについては、「地球温暖化や脱炭素社会の実現に関心」は「大いにある」と「少しある」を合わせて82%の回答であった。尚、3名(18%)は、関心がないあるいはあまりないとの回答であった。。
別添資料リスト
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基調講演 テーマ:「日本のエネルギーセキュリティー ~次世代に伝えておきたいこと~」
- 学生アンケート結果詳細
(報告書作成:大西祥作 2026年 2月3日)