日本原子力学会シニアネットワーク連絡会
報告
学生・教員・市民とシニアの対話会

学生とシニアの対話
in長岡技術科学大学2025(第17回)報告書

日本原子力学会シニアネットワーク連絡会(SNW)
世話役: 本田一明
長岡技術科学大学

高レベル放射性廃棄物の処理・処分方法について学生自らが考える対話

参加学生は鈴木先生の講座「核燃料サイクル工学」の授業を受けている修士1年生と2年生。放射性廃棄物に関する知識があり、問題意識もある。 シニア側も廃棄物の専門家が参加して応えた。留学生が多いことから講演は英語で行い、対話テーマは、高レベル放射性廃棄物の処分方法について学生が考えて提案するという内容でシニアがサポート。
 学生の皆さんは積極的であり、和気あいあいの雰囲気の中、双方向の対話を行うことができた。


1.講演と対話会の概要

(1)日時

2025年12月16日(火)8:50~12:25

(2)場所

長岡技術科学大学 原子力安全・システム安全棟3階301号室

(3)参加者

学生:20 名(うち7名が留学生)
教員:鈴木達也教授(量子・原子力系)
   太田朋子准教授(量子・原子力系)
SNWシニア: 9 名 、 電気事業連合会: 1 名
   SNW連絡会(5名):石川博久、大塔容弘、武田清悦、田辺博三、中村民平
   SNW東北(4名):工藤昭雄、馬場 礎、高橋 實、本田一明(世話役)
    電気事業連合会:堂野 寛(オブザーバー)

(4)開会の挨拶

(鈴木先生)
開会に当たり、以下の趣旨のご挨拶があった。
本日は特別講義で、原子力学会シニアネットワークの皆さんに来ていただいています。長年原子力発電、核燃料サイクル、放射性廃棄物処分など原子力関係の仕事に携わってきた人達で、ディスカッションのサポートをしてくれます。   なんでも聞けば教えてくれるので、遠慮なく対話し高レベル放射性廃棄物の処分方法について考えて下さい。
このシニアとの対話会は本学の推進している「多文化共修プログラム」という日本人学生と外国人留学生が互いの文化や考え方の違いを活かしながら協働して学ぶ共修教育の一つに認定されており、そのモデルになるべくおこなって行きたいと考えています。
(大塔容弘)
日本は国内的に再処理事業が完備するまでの間、原子力発電所からの使用済燃料は英仏での再処理委託の政策を採用していました。そして、再処理の結果発生する高レベル放射性廃棄物のガラス固化体を引き取ることになります。1995年4月25日、最初のガラス固化体がフランスから保管先の日本原燃(株)六ケ所再処理施設のある青森県六ケ所村のむつ小川原港に送られてきました。
 ガラス固化体の搬入が近いとの報道があると、当時の青森県の北村知事は科学技術庁田中真知子長官から文書をもらいました。その中の一文に、「日本原燃により貯蔵管理されるガラス固化体については、管理期間は30年間から50年間とされ、管理期間終了時点では、電気事業者が最終的に処分に向けて搬出することとしています。」とあります。本年4月25日に30年目を迎えましたが、六ケ所村内では大きな動きはありませんでしたが、20年後には50年目を迎えます。 それまでに処分先が完成するとの見通しはついておりません。
 本日の講演内容は、まさにガラス固化体の処分問題です。20年後、皆さん方は40代半ばで、人生の最大活躍世代です。本日の講演内容をしっかりと頭に入れて、20年後を迎えて欲しいと願っております。

(5)基調講演

講演者名: 石川博久
講演題目:
"How should we dispose of high-level radioactive waste (HLW)?" 「高レベル放射性廃棄物(HLW)をどのように処分すべきか?」
講演概要:
留学生も多い同大学の方針に沿って講演は英語で行った。 対話テーマについての学生の議論を積極的に進めさせることを意図し、地層処分の技術的及び社会的な事項を俯瞰的に紹介するとともに処分地選定について日本の最近の文献調査の動向、海外の状況について紹介した。
先ず放射性廃棄物に関する背景情報として、放射性廃棄物管理の原則、廃棄物の分類と処分方法から始まり、廃棄物処分施設の類型、核燃料サイクルの選択肢(直接処分、軽水炉サイクル+再処理、高速炉サイクル、再処理+分離変換)とその選択肢について資源有効性、廃棄物量、放射能減衰期間、コストの観点からの比較について説明。次に、処分場閉鎖後の制度的管理、可逆性・回収可能性、分離・変換技術の導入と処分への効果について解説。
続いてわが国の地層処分の状況について社会経済課題と対応として、信頼の醸成と全国的な対話活動に言及。 最近の文献調査地域での対話集会、北海道2自治体及び佐賀県玄海町の文献調査の動きと最近の状況、あわせて、最終処分の実現に向けた原子力発電利用の各国の状況を紹介。
最後に、日頃、学生の皆さんが関心を持つ課題について、まず関連情報を収集して内容を熟読・理解した上で、可能であれば同僚と意見を交換し、自身の見解をまとめ表明できるようになること願っている。そうすることで情報は自身の生きた知識となる。
 最終処分は100年以上にわたるプロジェクトであるため、あなたと次世代の後継者たちがこの取り組みを継続されることを願っています、と結んだ。

2.対話会の詳細

対話テーマは各班共通で、先生から与えられた「使用済み燃料の処理処分について直接処分、再処理後ガラス固化して地層処分、再処理+分離変換して地層処分、その他の方法について廃棄物管理・経済性、市民の受容性等の観点からどのようにしたら良いか提案してください」との内容。

(1)A班(報告者:馬場 礎)

1)参加者
学生:6名(修士1年6名。うち中国からの留学生2名)
シニア: 石川博久、馬場礎 
2)主な対話内容
「使用済み燃料の処理・処分システムについて、4つのオプションを廃棄物管理、経済性、市民の受容性等の観点から、シニアの助言を得ながら学生が議論し、グループとしての最善策を提案する。というテーマに沿って実施。
(主な意見)
 ・フィンランドが先行し、一方、日本が遅れているのは国民の理解が得られているかどうかに
  かかっている。
 ・処理処分のオプションの選択において、受容性の評価が支配的。
 ・フィンランドを成功事例としてモデルにするのは有効。
 ・国民の理解と施設候補地の住民の理解には差がある。
 ・組織、団体の代表だけでなく、住民の先進地視察が有効。
 ・日本国民は放射能に対し、潜在的に嫌悪感を持っている。リスク・ベネフィッからの説明・
  理解が必要。
 ・Aグループには中国留学生が二人おり、中国国民の原子力に対する考え方、理解を尋ねる場面
  もあり、貴重であった。
(まとめ)
  Aグループは「再処理+分離変換後に地層処分」が最善とのまとめとなった。

B班(報告者:高橋 實)

1)参加者
学生:5名(修士1年5名。うち中国からの留学生2名)
シニア: 大塔容弘、高橋 實
2)主な対話内容
最初に参加者の名前のみの自己紹介、その後シニア(大塔氏)から、事前作成資料に沿って、群分離、核変換の概要を説明、また青森県六カ所におけるHLWの保管状況、50年後までに県外持ち出し約束が国と青森県の間である等の政治的な背景についても説明した。
学生からは、フィンランドやスエーデンのような北欧は地盤が良いが、日本は地震が多いのでリスクが大きいのではないかトの疑問あり。、シニアからこれまでの研究により、オーバーパックで1万7千年程度閉じ込め機能を維持する可能性が示唆されている等、科学的には安全性は担保できるが、直接処分や回収可能性の担保など色々な意見があることを述べた。
学生から社会的受容性の確保のため、HLW処分地受け入れのメリット等をもっと積極的に情報提供すべきとの意見があった。また、小学校、中学校から、メリットも含めて、きちんと放射線やHLW処分地等の教育を充実していけば、すぐではなくても、20年というオーダーでは、結果が出てくるのではないかとの意見があり、結構皆が賛同していた。
シニアから、今の処分地選定のプロセスの中で、安全性やメリットの説明を行っているつもりではあるが、なかなか受け入れてはもらえない現状を説明した。また、北海道は、道条例でHLW処分地の受け入れに反対しており、難しい面がある旨説明した。
中国の学生も、なかなか日本語では議論できなかったが、翻訳ソフトを使ってもっとメリットについて説明すべき旨語っていた。
学生諸君は積極的に議論に参加し、HLW最終処分を含め、原子力について考える良い機会になったと思う。中国の学生については、日本語と英語が入り交じりあやふやな点もあったが、それぞれ意思疎通に努力していた。

(3)C班(報告者:田辺博三)

1)参加者
学生: 学生4名(修士1年4名。うち中国からの留学生1名)
シニア:工藤昭雄、田辺博三
2)主な対話内容
対話テーマは、(各班共通で先生から提示された)「使用済み燃料の処理処分について直接処分、再処理後ガラス固化して地層処分、再処理+分離変換して地層処分などの方法について、廃棄物管理・経済性、市民の受容性等の観点からどのようにしたら良いか提案してください」との内容。 シニアの助言を得ながら学生が議論し、最善案を提案することを目標に議論を行った。
対話に当たり、学生の中からファシリテーター、対話内容筆記係、対話結果発表者を選んだ。
学生紹介
参加学生4名の内、1名の中国留学生と2名は原子力、核融合を研究、1名は原子力以外(ゴムの研究)を行っているとの自己紹介があった。
学生の主な意見
-地層処分の技術的見通しはどうか。
-福島事故は地層処分サイト選定に社会学的な影響があるだろう。
-現在の軽水炉にとどまらず高速炉などの研究をして行けば、ロボットなどの新しい技術が伸びて
 いく効果もある。
-返還高レベル廃棄物や福島除染土の保管のように、地元との話で期限が区切られている制約も
 考えなければならないが、事故が起きた場合の責任があいまいではないか。
-再処理工場の竣工が何度も遅れているが何故なのか。
シニアからの情報提供
-地層処分の技術開発、法律制定などの経緯 
-再処理工場の稼働に対する福島事故などの影響
-原子力を学んでいない学生には一般市民の立場で意見を述べて欲しい
対話の結論として以下の発表が行われた
-対話の前後で、4名とも意見は変わらなかった。
-「FBRなどの理想の技術開発は進めつつ、今できることはやっていく(プルサーマルと現状の計画の地層処分)」を選択。
-理由として、市民の受容性(現実的な意見が受け入れやすい)、制約の問題(中間貯蔵のように時間制限がある)、FBRはメリットが多い、様々な分野の関連技術の発達。
-最終処分を受け入れてもらうには、教育に取り入れること(偏った情報ではなく正しい知識を知ったうえで判断してほしい)。
-無人島はどうか?
-海外の例は参考にすべきだが日本でもうまくいくとは限らない。

(4)Dグループ(報告者:武田精悦)

1)対話参加者
学生:5名(修士1年4名、修士2年1名。うち中国からの留学生1名、ベトナムからの留学生1名)
シニア:中村民平、武田精悦、本田一明(世話役)
2)対話テーマ
「使用済み燃料の処理処分には、直接処分、再処理後にガラス固化して地層処分、再処理+分離・変換後に地層処分などがある。どのようにしたらいいかを提案すること。」
3)対話内容
上記3つのオプションについて議論した。
議論の進め方は学生の一人が進行を務め、必要に応じてシニアがそれをサポートするというものだった。学生たちには事前に講演資料が配布されていなかったとのことだが、基礎知識を十分もっており、活発な意見交換が行われた。必要に応じ日本語のほかに英語でのやり取りも行われた。
最後の全体報告会の中で、進行役の学生が取りまとめ結果を報告した。その主な内容は以下のとおり。
 結論:高速炉の開発と並行しながらガラス固化体の処分を進めるべき 
(出された主な意見)
 ・国や事業者に対する信頼が重要
 ・次世代に向けた教育が大事
 ・「原子力は必要」する全体の意見の中で「原子力は必要悪」する意見もあり
 ・原子力発電の電気料金が安いことをわかりやすく伝える必要がある
上記の進行役による取りまとめ結果の他に、出された主な意見は次のとおり。
 ・直接処分は原子力発電が少ない国、国土面積が広い国に多い
 ・ガラス固化体ではなくセラミックを使うことは考えられないか
 ・高速炉開発については2022年に新たな計画(戦略ロードマップ)が策定されている
 ・高速炉開発をやっても廃棄物は少なくなるが、地層処分は必要
 ・次世代革新炉はコストの面からみて民間独自の開発は難しく、国の支援が必要

3.講評(田辺博三)

長岡技術科学大学対話会は、コロナ禍の影響で、2020、2021年の2年間中断されていましたが、2022年から再会できました。以降、鈴木教授のご指導により、核燃料サイクルのオプションと高レベル放射性廃棄物の最終処分をどうするのがよいかを軸とした対話会になりました。本日の基調講演では、石川さんより「高レベル放射性廃棄物の処分はどうすべきか、どうするのがよいか」についてオプションや課題について国内外の情報を中心にご説明しました。興味のある事項については自ら検索して学んで欲しいと思います。
 対話会は1,2,3,4の4グループに分かれて行いました。わたし自身が所属した3グループでの学生さん同士の議論や、終了後の各班からのご提案を見ますと、学生さん同士が意見を出し合い、熱心に意見を交換したことが伺えました。本日の講演と対話が、今後の皆様の研究や仕事に役立つことを期待しております。
 本日はありがとうございました。

4.学生アンケート結果の概要(本田一明)

(1)参加学生について
参加学生20名(うち留学生7名)の全員から回答を頂いた。 回収率 100%。
原子力系専攻が12名。原子力系専攻以外が8名。 また、進路は4名が進学、16名が就職希望。
(2)対話会について
基調講演は、「とても満足」(65%)、「ある程度満足」(30%)であり、ほとんどの方に満足頂けた。
対話の満足度も「とても満足」(85%)、「ある程度満足」(15%)で全員から満足頂けた。肯定的な意見は、「新しい知見が得られた」、「自分の将来の参考となった」ことが挙げられた。一方で、不満の感想もあり、理由として、講演については、「内容が難しかった」、「説明が分かり難かった」、「時間不足」が挙げられ、また、対話では「希望内容について対話出来なかった」、「対話内容が難しかった」ことが挙げられており、今後の改善に生かしたい。
「学生とシニアの対話」の必要性については、「非常にある」(80%)、「ややある」20%)と全員から評価頂いた。
「対話会への参加を勧めるか」については、「勧めたいと思う」が(78.9%)であった。 
(2) 意識調査について
①  放射線・エネルギー・環境について
放射線・放射能の危険性については「一定レベルまで恐れる必要はない」が90%、また放射線・放射能の生活における有用性についても「知っている」100%で、認知されていた。
原子力発電についてはほとんど全員が必要性を認識しており、「再稼働を進めるべき」(65%)、「将来に向け新増設リプレースを進めるべき」(25%)であった。
また、再エネ発電については、「環境にやさしく利用拡大」(60%)、「天候に左右されたり、自然破壊につながるので抑制すべき」とする意見が35%であった。
②  カーボンニュートラルとエネルギーについて
2050年カーボンニュートラル(脱炭素)について、関心や興味が「大いにある」(40%)、「少しはある」(50%)、「あまりない」(10%)で、関心項目としては、「エネルギー資源の確保」、「原子力発電や再生可能エネルギーの役割」であり、「我が国の環境政策全般」がこれに続いた。
日本の2050年脱炭素化社会の実現可能性については、「実現するとは思えない」(55%)、「相当いいところまで到達する」(25%)、「分からない」(20%)であった。
また、脱炭素に向けた電源の在り方については、「原子力発電、再エネ発電、化石燃料発電をほぼ均等」(45%)、「再エネ中心」(20%)、「原子力と再エネの組合せ」(30%)であった。
③  高レベル放射性廃棄物の最終処分について
高レベル廃棄物の最終処分については、「関心や興味が大いにある」(40%)、「少しある(55%)、「あまりない」が5%でさすがに皆さん大いに関心を示していた。「近くに処分場の計画が起きたらどうするか」については、「反対しないと思う」が55%、「反対すると思う」が15%、「分からない」が30%であり、大半が反対しないとの考えで最終処分に関する理解があった。「地層処分について興味や関心がある項目」については「技術」が最も大きく、次いで「処分地の選定」、「制度」、の順であった。
対話会全体について、「有識者の方を交えての意見交流させていただくことができ、とても貴重な経験をすることができました。ありがとうございました。」、「This discussion is very meaningful, and I have learned something that I can't learn in school. Thank you very much.」などの感想を頂いた。

アンケート詳細については別添資料を参照。

5.別添資料リスト

基調講演:"How should we dispose of high-level radioactive waste (HLW)?"
アンケート結果詳細
(報告書作成:本田一明 2025年12月 23日)