学生とシニアの対話
in 九州工業大学2025年度(第13回)報告書
- (1)日 時
- 基調講演:2025年6月27日(金)13:00~16:10
- 対話会:2025年7月22日(火)13:00~17:40
- (2)場 所
- 九州工大戸畑キャンパス(北九州市戸畑区仙水町1-1)
- 基調講演:教育研究1号館棟2階1-2C講義室
- 対話会:CYMLABO
- (3)参加者
- 大学教員:薦田亮介准教授(機械知能工学研究系)、赤星穂祐保浩教授(宇宙システム工学研究系)
- 参加学生:B4:17名、M1:16名、M2:5名 計 38名 (基調講演)
B4:16名、M1:14名、M2:2名 計 32名 (対話会) - 参加シニア:古藤健司、山崎智英、針山日出夫、松永健一、長谷川信、大西祥作、路次安憲 計7名
- (4)基調講演
- 講演 (1):古藤健司 (13:00~14:30)90分
「原子力発電について ~固有安全性、核燃料サイクル/廃棄物処理処分、核融合炉開発の現状と展望~」 - 講演 (2):針山 日出夫 (14:40~16:10)90分
「エネルギー安全保障と原子力の役割 ~脱炭素・エネルギー危機の中で日本の選択は?~」 - 講演概要:
講演(1)は、講演(2)の「原子力の役割」へ繋がるプロローグとして、原子力発電についての正しい知識:基本的ではあるが理工系学生としての蘊蓄となる事柄を述べた。また、学生の最近の興味:核融合や宇宙開発についても述べた。講演(2)では、世界・日本のエネルギー安全保障の現状と展望:最新の情報・データを示して解説し論じ、エネルギー全般に対する学生諸君の興味を喚起した。両講演を通じて、世界・日本のエネルギー事情と政策に占める「原子力の役割」の重要性をより深く理解してもらうことに留意した。 - 1)参加者
- 学 生:学部生(B4)4名、院生(M1)1名 計5名
- シニア:大西 祥作
- 2)テーマ
- メインテーマ:重工メーカーでの技術者の働き方、解析技術の活用、外部企業も含めたチームでの仕事法、大型プラント設計の方法と工学シミュレーション技術
- サブテーマ:CNの切り札は「原子力」?:新太陽パネル、新型風力、バイオ、大規模蓄電は?
- 3)対話内容
- 1)参加者
- 学 生:院生(M1)6名
- シニア:針山 日出夫
- 2)テーマ
- 宇宙と原子力~先端技術の可能性と展望 ~(小天体の衝突リスクと回避策の在り方)
- 3)対話内容
- 自己紹介(出身地・研究課題・将来進路・趣味)の後に事前質問を中心に次の事項について対話を行った。
― 天体衝突のリスク論
― 小宇宙物体の軌道予測精度と誤差
― 衝突回避のための軌道修正の方法と有効性
― NASAの惑星防衛調整室のミッションと国際協力について
― 核エネルギーによる軌道修正の影響評価(放射性物質の飛散と地球への影響など)
― 宇宙空間での核エネルギーの利用の論点と合意形成の枠組の在り方
― ジュネーブ追加議定書56条(原発などの攻撃禁止)と除外規定の意図するもの
― 「地球と人類のリスク管理」の観点からの各国同士の信頼醸成の課題
― 原発炉心溶融事故のリスクと天体衝突による都市消滅リスクの比較 - 1)参加者
- 学 生:学部生(B4)3名
- 教 員:赤星 保浩 教授(宇宙システム工学研究系)
- シニア:路次 安憲
- 2)テーマ
- メインテーマ:我国の電源ベストミックス考:EUや米国、中国などとの事情の違いは?
- サブテーマ:CNCNの技術?:火力発電の脱炭素化(水素発電、アンモニア発電、CCUS)を熟考!
- 3)対話内容
- どのような電源を重視するかは各国とも国情と国益に沿って判断している。ノルウェーなどは水力だけで自国の電力需要を満たして輸出もしているので、ノルウェーにとっては水力がベストと言える。日本は一つの電源に頼れる状況ではないので、語の全き意味でのベストミックスに近い。送電網の繋がったEUはEU全体でベストミックスを構成。中国はベストミックスと言うよりも石炭火力を含めてすべての電源をがむしゃらに追及中。
- 日本にとっては太陽光、風力の増強も重要。ただ、変動電源であること以外に、太陽光パネル、風力発電機とも中国のシェアが大きくエネルギー安全保障上の問題がある。日本発のペロブスカイト太陽電池の実用化促進が望まれる。
- 原子力の新設は重要だが時間がかかる。当面は既設発電所の再稼動と長期運用が重要。
- CCUS、水素発電、アンモニア発電を進めることは重要だが、どれも技術面、コスト面で一足飛びに進む状況ではない。火力の活用はまだまだ重要なので、CN前のめりではなく国益を考えながら進めるべき。
- シニアの路次が三菱電機と経産省に勤務していたことに学生たちが興味を示し、その経緯や官僚の仕事内容、三菱電機の原子力部門及びその他の部門(現在花形の宇宙・防衛部門など)に関する質問・話題も飛び交った。
- 1)参加者
- 学 生:学部生(B4)3名、院生(M1)1名 計4名
- シニア:松永 健一
- 2)テーマ
- メインテーマ:CNの本領?:EV、水素自動車などの二次エネルギー革命が起こりえるのか
- サブテーマ:CNの切り札は「原子力」?:新太陽パネル、新型風力、バイオ、大規模蓄電は
- 3)対話内容
- 学生は燃焼流やハイブリッドロケットに係る研究を行っている。シニアは、3次元熱流動解析は試験検証なしでは当てにならないなどの会社経験を述べた。
- テーマ対話を始める前に、この対話に何を期待するかを確認した。学生は生成AIの時代に仕事をしていかなければならない。生成AIに対抗するためには、情報の真偽を嗅ぎ分け、確かな情報を調査・分析して問題点を発見し、課題を設定して自ら解決策を提案できる能力が益々問われる。この対話は、その能力の訓練の場であり、学校以外に開かれた数少ない「自分の意見の検証」の場でもあるとシニアは提案した。異論はなかった。発表では、これを「背景に」として述べた。
- 最初に「対話テーマ」に関するミニレクチャー資料をシニアが15分程度説明し、事前の学生質問に対する意見を述べ議論した。その前提として「第7次エネルギー基本計画」の弱点を検討した。電力需要量(データセンターDCなどの需要、冷却技術開発の速さ、EVの需要が計画では考慮外など)の曖昧さ、電力供給策(変動再エネを主力電源として最大限導入すると統合コストが急増、昼夜一定のDC需要に変動再エネで対応する難しさ、ペロブスカイト太陽電池や洋上風力にもある産業競争力の中国リスクなど)の曖昧さなど。
- 質問が終了した後半(議論時間のほぼ半分)にシニアは退席。学生だけで議論して、発表内容を情報共有しながら自主的にまとめた。発表内容を詰める過程の学生間の議論とその進め方は当初の議論で「必要とした能力の訓練」にはかなり有効なものであった。
- 1)参加者
- 学 生:院生(M1)2名、(M2)2名 計4名
- シニア:長谷川 信
- 2)テーマ
- メインテーマ:CNの切り札は「原子力」!:次世代原子力発電:新型軽水炉、高温ガス炉、高速増殖炉の実用化や核融合開発の展望など
- サブテーマ:我国のエネルギー自給率の推移と将来戦略:昭和から令和そして将来に向けて
- 3)対話内容
- 高温ガス炉が開発された経緯について:
当初は高温エネルギーを工業地帯に供給して工業生産のエネルギーにすることを目的に開発、しかし現在は高温エネルギーで水素製造技術への応用も行い、それがCNに対して有効になることについて意見交換。 - 高温ガス炉の特徴について:
燃料として耐熱性・閉じ込め性を高めたセラミック被覆燃料、減速材として耐熱温度が高い黒鉛材料、冷却材に不活性なヘリウムを用いて、高温でも安定な原子炉を開発できたことについて意見交換。
スマートシティーで使う水素エネルギーを、高温ガス炉を用いて水素を供給することについて意見交換。 - 原子炉の開発の流れについて:
黎明期の第1世代炉から、現在使われている軽水炉の第2世代炉、改良された第3世代炉と進み、現在は次世代炉として第4世代炉の開発を各国の協力の下で推進、これについて意見交換。
高温ガス炉は第4世代炉として、日本は英国、ポーランド等と技術協力しながら進めていることについて意見交換。 - 軽水炉の構造的特徴、運転性能について:
運転条件から高温・圧力に耐えるため配管の肉厚が必要で、原子炉の重量が増加。Na冷却型のFBRでは圧力を高める必要はなく、また高速中性子を利用することで原子炉をコンパクトにできることについて意見交換。 - 日本におけるエネルギー自給率が現在約7%、その他エネルギーの多くは化石エネルギーとして輸入していることについて:
日本はエネルギーの自給率を上げるためには、原子力発電の割合を高める必要性があること、過去のオイルショックを半面教師として日本の自給率を高める理解が必要であること、日本のエネルギーは、地政学的見地を考慮して日本独自のべクトミックスにする必要があることについて意見交換。 - 1)参加者
- 学 生:院生(M1)4名
- シニア:山崎 智英
- 2)テーマ
- メインテーマ:世界のそして我国のエネルギー資源:自然エネルギーから原子力エネルギーまで。
- サブテーマ:九州の電源構成考:九州の電源網の現状、他地域と電力ネットワーク、電気料金の違いは?九州のベストミックスとは?
- 3)対話内容 自己紹介の後に事前質問を中心に対話を行った。
- 原子力発電の位置付け、日本や海外の政策の違い
- 日本のエネルギーのベストミックスとは
- 原子力を多くの方が受け入れてもらうためにはどのような方法が有効的であるか(日本全体と立地地域に分けて考える)。
- 再エネを主力電源化について考える。
- 1)参加者
- 学 生:学部生(B4)6名
- シニア:古藤 健司
- 2)テーマ
- メインテーマ:CNの技術?:火力発電の脱炭素化(水素発電、アンモニア発電、CCUS)を熟考!
- サブテーマ:CNの本領?:EV、水素自動車などの二次エネルギー革命が起こり得るか?
- 3)対話内容
- 水素火力発電:現在の水素は主として化石由来の「グレー水素・ブルー水素」である。非化石エネルギー(太陽光・風力等・原子力)由来の「グリーン水素」でなければCNではない。
- アンモニア発電は水素の液体燃料化であり水素の安全・簡便な取扱い方法:CN技術!である。金属材料の水素脆性の心配がない。
- CCUS:CO2回収にエネルギーを消費するしCO2を回収しないか?回収したCO2貯蔵廃棄は安定か?環境に優しいか?愚策にならないよう慎重に検討する必要あり。「焼き畑農法」や「野焼き」による炭素の固定化のほうがよっぽどCNではないか?
- EVの電源が石炭火力であれば「石炭自動車」。内燃エンジンはH2O+CO2を排出するが電源ベストミックスはEVをCNと見なせるか?
- 水素自動車:超高圧水素ボンベは安全か?爆発事故が起これば「ヒンデンブルグ号」の二の前にならぬか?燃料の水素が(水素火力発電と同様に)「グリーン」でなければCNではない。
- (1)参加学生について
- 基調講演聴講生 B4:17名、M1:16名、M2:5名 計 38名
- 対話会参加学生 B4:16名、M1:14名、M2:2名 計 32名
- アンケート回答 B4:16名、M1:11名、M2:2名 計 29名
- (2)基調講演について
- 講演内容については講演(1)(2)共に満足度100%(とても満足は2/3以上)
- 聞きたかったことについては、十分聞けたが2/3~3/4で、ある程度きけたたが1/3~1/4 であった。
- 「内容が難しい」が4~5票あった。
- (3)対話会について
- 対話の内容については、とても満足:77.8%、ある程度満足:22.2%であり、不満の意見はなかった。
- 「事前に対話したかったことができた」は、十分できたは約70%、ある程度できたは約30%であった。
- 「対話の内容が難しかった」は5票であった。
- (4)意識調査について
- 「学生とシニアの対話会」の必要性:必要性ありが100%で、内3/4以上が非常にあるであった。
- 「友達や後輩に対話会への参加を勧めたい」については、86.2%が勧めたいと思うであった。
- 放射線・放射能の危険性については、「放射線量に関係なく怖い」が13.8%であった。
- 講演(1)資料:原子力発電について~固有安全性、核燃料サイクル/廃棄物処理処分,核融合開発の現状と展望~(古藤健司)
- 講演(2)資料:エネルギー安全保障と原子力の役割 ~脱炭素・エネルギー危機の中で日本の選択は?~(針山 日出夫)
- 「対話in九工大2025」事後アンケート結果
機械系学部生および院生との第13回目となる対話会を実施
昨年度:2024年度の九州工業大学の対話会は諸般の事情によって開催されなかったが、本年度は、一昨年度の対話会に準じて、工学部機械知能工学科・宇宙システム工学科の4年生および大学院工学研究府工学専攻の院生の計38名の学生諸君と参加シニア7名とで基調講演・対話会を実施した。「対話in九州工大2025」を開催するにあたり、薦田亮介准教授(大学院工学研究院知能工学研究系)には鋭意ご尽力いただき謝意を尽くし得ない。対話への導入として基調講演(1):核融合も含めで原子力発電を正しく理解しいもらい、講演(2):エネルギー安全保障と原子力の役割について、各1コマずつ講演を行った。両講演を通じて、世界・日本のエネルギー事情と政策に占める「原子力の役割」の重要性を改めて理解してもらうことに留意した。
1.講演と対話会の概要
2.対話会の詳細
(1)グループA
シニアも含め自己紹介(出身地・趣味)の後、事前質問に対する回答の説明及び回答内容を踏まえた学生の追加質問について回答を実施した。具体的な議論に入る前に回答は一個人の例でありまた、個人のバイアスがかかっている前提で対話会に臨むようにお願いした。
【メインテーマ】
― 重工メーカーにおける設計プロセスの実情についての議論
・要求整理が最も重要/3現(現地、現物、現人)主義の履行/目的に応じた手法の
採用
・VV(検証と妥当性確認)が大切
・AI等これからの設計プロセスの進化に対応した設計者に求められるスキルと
は?
― 日本の技術力と国の施策
・日本の技術はトップクラスなのになぜ世界では負ける?
【サブテーマ】
― 再生可能エネルギー(太陽光、風力)対応としての蓄電池技術の現状と課題の理
解
・太陽電池の二の舞?/課題が多い
【学生の対話会に対する感想】
― 以下の感想がグループリーダよりあった。
・1例ではあったが、現場(8年前まで重工メーカーに在籍)における状況を
聞けたことはよかったとのことであった。
・エネルギーに関しては自分事として捉えることが大切であることを認識した。
(2)グループB
(3)グループC
自己紹介(将来の志望や趣味等)の後、対話テーマを中心に(それ以外についても幅広く)話し合った。次々に出される学生からの質問にシニアが答える形で進行(赤星教授が一部補足)。主な内容は以下のとおり。
(4)グループD
参加学生とシニアの自己紹介(研究内容、会社経験)を行った。
(5)グループE
(6)グループF
(7)グループG
自己紹介(出身、趣味、卒論テーマ、進路等)の後に、事前問答に対する補足説明をし、問答内容をベースに対話テーマを柱としてディスカッションを展開していった。
議論は上記に帰着した。B4だけのグループなのでシニアが誘導する対話が多かったが、卒論研究・発表の経験を積み院生となる次年度の成長が楽しみである。
3.学生アンケートの概要
基調講演および対話会については、「不満」の意見はなく、2/3~3/4が大いに満足であり、多少の忖度はあろうが、好評であったと評価できると考えられる。個別にみると、「内容が難かった」とか少数の意見や一部に「放射線・放射能について基本的に怖い」と感じる学生がいることもあるようであるが、理工学系の4年生・院生の思考・レベルに分布があって然るべきであり、健全なアンケート結果であったと思われる。
アンケート結果の詳細は別添資料を参照のこと。