学生とシニアの対話
in 九州大学2025年度(第1回)報告書
日本原子力学会シニアネットワーク連絡会(SNW)
世話役 : 山崎智英
九州大学 伊都キャンパス
- 対話を実施
- 九州大学大学院工学研究院機械工学部門の学生と初めて対話会を行いました。基調講演は行わず、「日本のエネルギー2024」(資源エネルギー庁)を事前配布して、対話会テーマの選定を行い、事前質問に対する回答を行った。事前質問に対する疑問点を中心として対話会を実施した。
1.対話会の概要
(1)日時
- ・対話会:2025年11月19日(水)14:00~17:10
(2)場所
- 九州大学伊都キャンパス
(3)参加者
- 大学側世話役の先生:大学院工学部研究院機械工学部門 熱流体物理研究室 宮崎康次教授
- 参加学生:熱流体物理研究室:9名
- 参加シニア:3グループ
田中治邦、早坂房次、古藤健司、井上政春、廣瀬友紀、山崎智英
2.対話会の詳細
(1)グループ対話の概要
- 1)グループ1
- テーマ
- カーボンニュートラル
- 参加者
- 学 生:3名(修士2年生2名、学部4年生1名)
- シニア:田中治邦、早坂房次
- 対話内容
- シニア及び学生の自己紹介の後、シニアより学生に何か質問がないか問いかけ。学生側リーダーの学生が自分の質問について議論。シニア側は学生の見解に同意。第7次エネ基作成者も今回から2050年CNを成し遂げるための“バックキャスティング手法”を取っており、達成できない場合の予防線を張っている旨回答。石破政権から高市政権に変わり自民党政権内でもエネルギー政策(特に再エネ政策)に変化があり、再エネへの疑念が明示的になってきている。国の審議会を視聴していても経済産業省ではその前からその予兆が伺える旨説明。原子力発電所・送配電に民間の金融機関と公的機関が協調融資する仕組みなども検討されているなどの動きも紹介したが学生の心に残ったようだった。
- CNに関しては、温暖化懐疑説についても言及。やや学生には強い印象を残した模様。一方で安い化石燃料には限りがある事をロシアのウクライナ侵攻が思い出させたというシニアの指摘には学生側も強く同意していた。
- 日本の2050年のCNに向けては、オンスケジュールのように見えるがこれは鉄鋼の高炉廃止によるもの。日本の電気代は原子力発電所の停止、再生可能エネルギー発電促進賦課金によって高くなっている。その結果、天然ガスとの相対COPが3以上ないと熱利用におけるヒートポンプ化が進まない。
- また、シニア側に水素事業関係者がいた一方、九州大学が水素利用に熱心なため質問外だが学生が高い関心を示した。シニア側より水素は二次エネルギーであり、水電解水素に至っては3次エネルギーで理論限界(3.7kWh/Nm3)がある旨説明。水(化学)熱分解は高温ガス炉により原子力研究開発機構で研究が進められているが、来年度から計画されている水素製造ではメタン改質。九大もメタン改質によるグレー水素と思われる。一次エネルギーたる天然(ホワイト)水素はまだ資源としてみることができるか不確定な状況。水素直接還元製鉄も公式には鉄鋼会社は研究を進めているが①水素は危険であり②コストが高い③吸熱反応であるため本音では難しいと考えている旨説明。
- 2)グループ2
- テーマ
- 原子力と電力
- 参加者
- 学 生:3名(修士2年生1名、学部4年生2名)
- シニア:シニア:古藤健司、井上政春
- 対話内容
- シニア及び学生の自己紹介の後、シニアより事前質問に対する回答の簡単な紹介を行い、学生たちの疑問について確認した。なお、学生たちは、事前に回答を十分に読み込んでおり、スムーズに対話に移ることができた。
- また、当グループには留学生も2名いて、テーマの原子力から離れた再エネ等の施策に関する事前質問が多く出されていたが、当日は原子力発電のベストミックスに対する課題やなぜそうなのかを、積極的に質問してもらい、活発で有意義な対話となった。
- 「原子力発電は火力発電を代替するベース電源に成り得るか」、「再生エネルギーだけで大丈夫か」といった観点で、「原子力」、「再エネ」、「新技術」の課題を確認しながら対話を行った。その後、学生たちで、日本のエネルギー政策におけるベストミックスの在り方について議論を行い、報告内容を次のように取り纏めた。
- 日本のエネルギー政策(原子力)の状況として、ベストミックス目標(再エネ50%、火力30%、原子力20%)を把握し、メリット(脱炭素、安定供給、安価な燃料コスト)及びデメリット(福島事故からの安全性への不安、老朽化、高レベル廃棄物、地元合意の難しさ)を抽出した。
- そこから得られた日本の課題としては、以下の2点を挙げた。
-
・自然との調和:台風・地震・津波などの自然災害リスク、再エネ導入時の系統安定化、海底ケーブル等の電力網の強化。
-
・市民理解の課題:安全性がわからないことによる安心できないという心理的壁、地元自治体の合意、事故時のリスク説明と透明性確保など。
- また、新技術に対する国の政策、企業の取り組みについても理解した上で、「安全性・コスト・市民理解」の同時追求が必要であるとした。
- 結論として、原子力は「危険だからやめる」とか、「必要だから続ける」ではなく、限定的活用+技術革新+社会的合意が必要である。日本の原子力の課題は、自然災害リスクと市民理解の壁であると結論付けた。
- 3)グループ3
- テーマ
- 福島第一原発の事故
- 参加者
- 学生:3名(学部4年生)
- シニア:山崎智英、廣瀬友紀
- 対話内容
- シニア、学生それぞれの自己紹介の後、事前質問に対する回答について更なる疑問やコメントを基に意見交換を行った。また、シニアから学生に質問を投げかけており、対話会当日に学生の考えを確認した。
- 福島第一原子力発電所の事故を教訓とした、新規制基準の採用により従来と比較して安全性が向上している。
- 高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定の課題については、必要性は理解しているが自分の身の回りに設置されると反対する感情があるため、国民の理解が不可欠。特に若年層についてはオールドメディアに触れる機会はない。このため、対話会、大学祭、出前授業やタレントとのコラボを通じて理解を促進する必要がある。
3.学生アンケートの概要
(1)参加学生について
- アンケート回答者は9名。
- 3名が就職、6名が進学の予定。
(2)対話会について
- 対話会の満足度は、「とても満足」が33.3%、「ある程度満足」が66.7%、合わせて100%であった。
- 対話会の必要性は、「非常にある」が44.4%、「ややある」が55.6%、合わせて100%であった。また、友達や後輩に対話会への参加を勧めるかについては、「勧めたい」が88.9%、「どちらともいえない」が11.1%であった。
(3)意識調査について
- 放射線・放射能については、「一定のレベルまでは恐れる必要はない」が66.7%、「レベルに関係なく怖い」が33.3%であった。
- 原子力については、「再稼働を進めるべき」が60%、「新増設、リプレースを進めるべき」が15%、「2030年度目標(20~22%)を達成すべき」が25%であった。
- 再エネについては、「利用拡大を進めるべき」が88.9%、「利用は抑制的にすべき(天候に左右される)」が11.1%であった。
- 脱炭素化に向けた電源のあり方については、「原子力発電と火力発電を最小とし再エネ中心が望ましい」が22.2%、「火力発電を最小とし原子力発電と再エネの組み合わせ」が44.4%、「原子力発電、再エネ、火力発電をほぼ均等」が22.2%であった。
- 地層処分について関心や興味があるについては、「大いにある」が33.3%、「少しある」が66.7%%であった。
- アンケート結果の詳細は、別添資料を参照ください。
4.別添資料リスト