学生とシニアの対話
in 近畿大学2025年度(第9回) 報告書
日本原子力学会シニアネットワーク連絡会(SNW) 世話役: 針山日出夫
《近畿大学・東大阪キャンパス西門 ホームページより》
- 学生主体で9回目の対話会を対面で7年ぶりに再開
- 近畿大学との対話会は2018年12月開催の第8回以降は休止していたが、当方の熱意と学校側(渥美副学長、NEDE : 理工学部・エネルギー研究会)の目論見が噛み合い、今般再開することになった。今回の開催に当たっては学生が主体になり全体計画を進め、当日の会場設営・進行も学生側が担務した。
1.講演と対話会の概要
(1)日時
- 基調講演・対話会:令和7年8月7日(火) 13:20~17:00
(2)場所と対面方式
- 近畿大学・東大阪キャンパス 38号館 38-S204教室(多目的利用室) 対面
(3)参加者
- 学生: NEDE 8名(1年生4名、2年生2名、3年生2名)
- 先生: 武村祐一朗准教授 (理工学部 エネルギー物質学科)
- シニア:3名 大西祥作、松永健一、針山日出夫(世話役)
(4)基調講演
- 演題: 国際情勢と日本のエネルギー安全保障について
- 講師:針山日出夫
- 講演概要:
- 基調講演は、SNW対話会20周年の足跡を紹介した後、「エネルギー安全保障と原子力」の命題で、電力安定供給(国民生活・経済活動の維持発展の要)、脱炭素(資源貧国・日本にとっては、化石燃料との早期決着は苦しい選択)及びエネルギー安全保障と原子力の役割についての説明があった(約40分)。
2.対話会の詳細
(1)要旨
- NEDEから開会挨拶、講師から基調講演(約40分)があった後、2グループに分かれて対話テーマ4件(下記)を議論した(約140分)。対話が終了した時点で、参加者全員(学生、シニア、先生)から意見・本日の感想・今後の課題などを自由に発言した(約20分)。閉会後に事後アンケートを作成した。
対話テーマ:
-
① 次世代炉はどうあるべきか、核融合、新型革新炉他
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② 原子発電所の再稼働の課題と展望
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③ 原子力の社会的受容性の問題を考える
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④ 核燃料サイクルの必要性と課題
(2)グループ対話の概要
- ① グループ1 (報告者:大西祥作)
- 1)テーマ:上記4テーマ
- 2)参加者
- 学 生:4名(3年生1名、2年生1名、1年生2名)
- シニア:大西祥作、針山日出夫
- 3)主な対話内容
- 参加者全員が自己紹介をした後、対話の進め方や進行分担について学生間で協議してもらった後、具体的対話(議論)を進行役及びタイムキーパ役の学生のリードの下、実施した。尚、②と③は同じような内容であるとの学生意見より1つのテーマとして対話を実施した。対話は多目的利用室の機材(プロジェクター、スクリーン)を活用しシニア持参のPCで他校対話会の資料も参照しながら実施したため、より具体的な議論が出来た。また、技術論だけでなく、社会的課題や就職先のこと等テーマに関連して幅広く議論した。
主な対話内容は以下の通り(順不同)
- 核融合発電の要(エネルギー増倍率&ローソン条件、燃料の調達性)
- 核融合開発への参画(ITERへの就職)
- 次世代革新炉の開発現況(商用炉の革新軽水炉から原型炉の核融合まで)や開発スケジュール
- 再稼動や原子力の理解を得る方法について(信頼の醸成や国民の民度向上、総論賛成&各論反対)
- SNSの利用の心構え
- HLWの処分の仕方(なぜ地層処分?)
- 核燃料サイクルの目的(Puの有効利用やサイクルの完結(トイレ無きマンション)
- ② グループ2 (報告者:松永健一)
- 1)テーマ:上記4テーマ、国のエネルギー政策の弱点
- 2)参加者
- 学 生:4名(3年生1名<NEDE会長>、2年生1名<NEDE次期会長>、1年生2名)
- シニア:松永健一
- 3)主な対話内容
- 始める前に、この対話に何を期待するかを確認した。学生は生成AIの時代に仕事をしていかなければならない。生成AIに対抗するためには、情報の真偽を嗅ぎ分け、確かな情報を調査・分析して問題点を発見し、課題を設定して自ら解決策を提案できる能力が益々問われる。この対話は、その能力の訓練の場であり、学校以外に開かれた数少ない「自分の意見の検証」の場でもある、とシニアは提案した。異論はなかった。
- 学生から上記テーマ4件の趣旨(進路の核融合炉技術研究に関連、原子力の社会的受容性が基本問題と認識)の説明があった。全てのテーマの基本は国のエネルギー政策(エネルギー基本計画)を認識することとの共通認識となり、全員でその意見交換を行った。
- 内容は、データセンター(DC)などの将来の電力需要(一転急増傾向、省エネ技術の動向)、変動再エネ主力電源化への疑問(昼夜一定のDC電力需要に変動再エネで対応するミスマッチ、主力電源化で太陽光の統合コストが原子力の約2倍に急増、出力制御される再エネ電力量の増大、洋上風力の採算悪化、新型太陽光パネルの中国支配の再来懸念:歴史への反省がない)などであり、国のエネルギー政策(エネ基)の弱点・リスクについて議論した。その上で、核融合炉と原子力の社会的受容性を議論した。
- 学生には、新たな発見があったようであり、対話後の感想からそれが感じられた。
- 視聴覚設備の完備された会場であったにもかかわらずパソコン不携帯であったため、説明不足となった。後日、説明データを追加送付した。
3.学生アンケート結果の概要
(1)参加学生について
- 参加学生(8名)が回答。回収率は100%。
- 全員の学生がエネルギー物質学科であった。
- 進路(現状)は7名が進学の予定。(1名未回答)
- なお、アンケート母数が少ないが全員エネルギー問題に関心の高い学生であることを考慮
する必要あり。
(2)対話会について
- 基調講演の満足度は全員(100%)「とても満足」と回答があり。
基調講演以外で聞きたいものとして、原子力産業の歴史と今後や日本のエネルギーを向上させるための政治的視点等について知りたかったとの意見があった。
- 対話会の満足度は全員「とても満足」との回答があった。但し、対話内容が難しかったや自分の知識不足であまり対話できなかったとの意見もあり各1名からコメントあり。
今回の講演や対話会で全員が「新しい知見が得られた」と回答してくれた。また、87%(7名)の学生が自分の将来の参考になったとの回答をしてくれた。
- 対話会の必要性は「非常にある」が、100%であった。また、友達や後輩への対話会への参加を進めるかどうかについては、6名(75%)が「進めたい」と回答し「どちらともいえない」が2名居た。
(3)意識調査について
- 放射線、放射能については、「一定のレベルまでは恐れる必要はない」が100%であった。
- 原子力発電については、「必要性を認識しており再稼働を進めるべき」が75%、「新設、リプレースを進めるべき」が25%であった。
- 再エネ発電については、「環境にやさしく拡大すべき」が25%、「天候に左右されるので利用を抑制すべき」が75%となった。
- カーボンニュートラルとエネルギーについては、「地球温暖化や脱炭素社会の実現に関心」は「大いにある」と「少しある」を合わせて100%の回答であった。
「興味や関心があるのはどの項目でしょうか?」については幅広く関心を示したが「エネルギー資源の確保」が一番多かった。
「日本の2050年脱炭素化社会の実現可能性」については、「実現するとは思えない」が50%、「わからない」が37%となった。
「脱炭素に向けた電源の在り方」については、「化石燃料発電を最小とし原子力発電と再エネ発電の組み合わせが望ましい」が75%、「原子力発電、再エネ発電、化石燃料発電をほぼ均等に組み合わせることが望ましい」が25%となった。
- 高レベル廃棄物の最終処分については、「関心がある」と「少しある」を合わせて100%の回答であった。「近くに処分場の計画が起きたらどうするか」については「反対しないと思う」が87%、「わからない」が13%であった。「地層処分について興味や関心がある項目」については技術、制度、処分地の選定が多少の差はある問とほぼ均等に関心を示した。
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詳細は「学生とシニアの対話in近畿大学2025年度(第9回) 事後アンケート結果詳細R0」を参照してください。
4.別添資料リスト
(報告書作成:2025年8月17日)