学生とシニアの対話
in 鹿児島大学2025年度(第5回)報告書
- (1)日 時
- 基調講演:2025年7月10日(木)8:50~12:00
- 対 話 会:2025年7月31日(木) 8:50~12:00
- (2)場 所
- 鹿児島大学工学部(郡元キャンパス:〒890-0065 鹿児島市郡元一丁目21-40)共通棟202番講義室
- (3)参加者
- 大学側世話役:佐藤紘一教授 (大学大学院学術研究院・理工学域工学系機械工学プログラム
- 参加学生:学部生(B4)5名 (工学部先進工学科・機械工学プログラム)
院生(M1)19名 (大学院理工学研究科工学専攻機械工学プログラム) - 参加シニア: 6名
古藤健司、山崎智英、松永健一、大西祥作、石隈和雄、針山日出夫
・オブザーバー:1名 風間章光(電事連・広報部) - (4)基調講演
- 講演(1):古藤健司 (8:50~10:20)(90分)
「原子力発電について ~固有安全性、核燃料サイクル/廃棄物処理処分、核融合開発の現状と展望~」 - 講演(2):松永健一 (10:30~12:00)(90分)
「将来の電力需要予測の弱点 ~電気自動車は環境に優しいか、データセンターの省電力技術~」 - 講演概要:
講演(1)は、講演(2)の「原子力の役割」へ繋がるプロローグとして、原子力発電についての正しい基礎知識(特に原子炉の自己制御性など)と技術的諸問題とその対応について、基本的ではあるが理工系学生としての蘊蓄となる事柄を述べた。また、最近の話題:核融合開発の現状と展望についても述べた。講演(2)では、将来の電力需要予測を幾つかの切り口で解析し、派生するあるいは潜在する諸問題を洗い出し検討した。両講演を通じて、将来のエネルギー全般に対する学生諸君の興味を喚起し、世界・日本のエネルギー事情と政策に占める「原子力の役割」の重要性をより深く理解してもらうことに留意した。 - 1)参加者
- 学 生:学部生(B4)4名、院生(M1)3名 計7名
- シニア:大西 祥作
- 2)テーマ
- メインテーマ:高レベル放射性廃棄物処理処分:地層処分の安全で安心できる科学的根拠は?
- サブテーマ:CNの切り札は「原子力」!:次世代原子力発電:新型軽水炉、高温ガス炉、高速増殖炉実用化への現状と展望
- 3)対話内容
- シニアも含めアイスブレークとして自己紹介(名前、出身地、趣味)をまず実施した。対話に入る前に対話の進め方及び発表準備として分担を学生間で相談してもらった。事前質問に対する回答のポイントをシニアから説明しそれに対する追加質疑応答をすることとなり進行役の学生にバトンを渡した。
- HLW処分場に対する想定外事象(未知の活断層等)に対す安全性担保について:国民の理解を得ようとするためか、事故評価の設定条件が保守的になりすぎているのではないかとの議論あり。
- HLW処分場設置のための住民理解の取り組みについて:原発の再稼動も同じような課題があるが、安全性を理解してもらった上で安心をしてもらうための活動が必要ではないかとの議論となったが、妙案が出なかった。
- 次世代原子力発電所の比較評価:現実的な原子力発電所は革新軽水炉であり、先日関西電力が具体的な検討を開始したことを共有した。しかし種々の課題があり、そう簡単な話ではないことも共有した。
- 1)参加者
- 学 生:学部生(B4)1名、院生(M1)6名 計7名
- シニア:針山 日出夫、山崎 智英
- 2)テーマ
- メインテーマ:カーボンニュートラルの切り札は原子力?太陽光、風力、他大規模蓄電?
- サブテーマ:九州の電力事情・ベストミックスを考える
- 3)対話内容
- 参加者全員が自己紹介をした後、事前質問と回答骨子の内容確認を行った。
- その上で、今回のグループ2のテーマ照らして、CNの取り組みの考え方や電源構成の在り方などについて熱心に意見交換した。
- 主な対話内容は以下の通り。
―先の衆議院選挙での学生の投票の視点、判断基準などについて
―九州における再エネの使用割合が想定よりも低いのはなぜか
―太陽光発電設備の設備利用率の実績について
―九州における電源別発電実績、九州電力の発電容量の精査
―再エネを増やすことによる電力系統安定性・統合コストを勘案した経済性・自然条件等
による導入限界の想定(特に、九州地区での再エネ出力制限の頻度、その必要性につい
て)
―再エネと原子力の利害得失について
―気球温暖化に係わるファクトの精査(地球平均気温のトレンド、大気中CO2濃度のトレ
ンド)
―世界主要国のカーボンニュートラル挑戦年とCO2濃度・平均気温の低下目途について
―日本全体としての電源ベストミックスの在り方について
―日本が進むべき「電力安定供給」と「脱炭素」のこれからの道筋と論点について - 1)参加者
- 学 生:院生(M1)6名
- シニア:石隈 和雄
- 2)テーマ
- メインテーマ:九州の電力事情:九州の電力網、他地域との送受電、電力料金の違いは?九州の電源ベストミックスは?
- サブテーマ:CNの切り札は「原子力」!:次世代原子力発電:新型軽水炉、高温ガス炉、高速増殖炉実用化への現状と展望
- 3)対話内容
- 最初に全員が自己紹介(名前、研究分野など)をして関心分野などを紹介した。グループ対話の内容発表のために、リーダーを中心に、記録係、発表者を予めグループ内で相談してもらって、進行はリーダーにお願いした。
- テーマに沿って事前質問が提出されていたので、その内容に沿って3つのテーマへの回答をもとに意見交換を進めてもらった。
①九州電力の需給状況と出力抑制
事前に良く調査・学習されていて、「需要と供給は常に一致していなくてはならない」という電気の特質を理解したうえで、再生可能エネルギー特に太陽光の普及により、春と秋に出力抑制が必要なことを、どう改善するかとの課題意識があった。余剰な電力をいかにして有効に活用するか、家庭内での節電やエコキュートなど電力利用の改善や、太陽光と蓄電池の活用、他地域への送電、連系線の増強などについて意見交換していた。
②新型原子炉について
福島第一事故をふまえて、安全性・信頼性を高めた革新炉について、事前回答の内容を説明し、リプリースの新型軽水炉について理解を深めていた。
水素利用を研究テーマにしている学生も居り、高速炉や高温ガス炉による水素製造などのテーマも対話ができた。
③ベストミックスと社会的受容性
九州電力の電源構成は、火力、原子力、水力・再エネが概ね3分の1であることから、2050年カーボンニュートラルにおける日本の電源構成の将来像を示しているのではないか、課題解決への道筋を先取りしているのではないか、などの意見交換があった。CNの切り札となる原子力の社会的受容性をどう高めるか話し合った。 学生の皆さんから、安全性の正しい認識を持ってもらう必要性があり、少人数での対話や、わかりやすい説明の繰り返し、発電所の見学会や映像を用いた説明など理解活動を進めて信頼関係を築くための地道な活動が大切との意見があった。 - 1)参加者
- 学 生:院生(M1)4名
- シニア:松永 健一
- 2)テーマ
- メインテーマ:CNの本領?:EV、水素自動車などの二次エネルギー革命が起こりえるのか
- サブテーマ:我国のエネルギー自給率の推移と将来戦略:昭和から令和そして将来に向けて
- 3)対話内容
- 参加学生とシニアの自己紹介(研究内容、会社経験)を行った。学生は半導体製造技術・強度や破壊力学に係る研究を行っている。シニアは、3次元熱流動解析は試験検証なしでは当てにならないなどの会社経験を述べた。
- テーマ対話を始める前に、この対話に何を期待するかを確認した。学生は生成AIの時代に仕事をしていかなければならない。生成AIに対抗するためには、情報の真偽を嗅ぎ分け、確かな情報を調査・分析して問題点を発見し、課題を設定して自ら解決策を提案できる能力が益々問われる。この対話は、その能力の訓練の場であり、学校以外に開かれた数少ない「自分の意見の検証」の場でもある、とシニアは提案した。異論はなかった。これを、対話成果の一つとして学生は発表した。
- 後半30分程は、シニアが退席。学生だけで議論して、発表内容を自主的にまとめた。内容を詰める過程の学生間の議論は、かなり有効なものであったようだ。学生質問に対する回答やミニレクチャー資料をシニアは事前に提示しているので、学生だけの議論の時間をさらに長くした方が、「課題解決能力の研鑽」の有効性はさらに増すかもしれない。
- 1)参加者
- 学 生:学部生(B4)1名、院生(M1)3名 計4名
シニア:古藤 健司 - 2)テーマ
- メインテーマ:核融合開発の現状と展望:実用化に向けたBreak-throughは何か?
- サブテーマ:高レベル放射性廃棄物処理処分:地層処分の安全で安心できる科学的根拠は?
- 3)対話内容
- 自己紹介(出身、趣味、卒論・修論テーマ、進路等)の後に、事前問答についての補足説明をし、問答の内容をベースに対話テーマを柱としてディスカッションを展開した。
- とにかく、磁場閉じ込め方式、慣性閉じ込め方式にしろ、Q値>>1のHTプラズマ燃焼条件の炉工学的達成が大前提である。
- 高温・中性子高フラックスに耐えうる炉壁材料、レーザー核融合であれば高温・中性子高フラックスに耐えうるレーザー窓材(ガラス?)、そして水素透過や水素脆性の心配の少ない(金属)材料の開発が必須である。
- 燃料であるトリチウム問題:融合炉プラント材料からの水素透過と環境漏洩への技術的・政策的対策も必須であり、初期燃料装荷量の確保は実用炉稼働の前提である。
- 「第3の核融合」のベンチャー企業開発プロジェクトの行方は?磁場反転配位型プラズマ方式(FRC)は正にアドベンチャー!?
- 核融合炉開発の実用化にはまだまだ多くのBreak-through が必要であり次世代の研究者・技術者の活躍に期待されている。
- 高レベル放射性廃棄物地層処分:300m以上の深地下岩盤にガラス固化体として埋設するという方針には、廃棄放射性核種の岩盤水中の地表までの移動速度と放射能減衰速度との関係に基づいていることを認識した。
- 難しい課題でシニアが誘導する対話が多かったが、深堀した事前質問を投げかけ高エネルギー材料問題については専門的なディスカッションができた。卒論研究・修論研究を通じて更なる成長が期待でき、楽しみである。
- (1)参加学生について
- アンケート回答者は29名。
- 22名が就職、7名が進学の予定。
- (2)対話会について
- 対話の内容は、「とても満足」が82.8%、「ある程度満足」が17.2%であった。
- 対話会の必要性は、「非常にある」が79.3%、「ややある」が20.8%であった。また、友達や後輩に対話会への参加を勧めるかについては、「勧めたい」が100%であった。
- (3)意識調査について
- 放射線・放射能については、「一定のレベルまでは恐れる必要はない」が82.8%、「レベルに関係なく怖い」が17.2%であった。
- 原子力については、「再稼働を進めるべき」が44.8%、「新増設、リプレースを進めるべき」が31%、「2030年度目標(20~22%)を達成すべき」が24.1%であった。
- 脱炭素化に向けた電源のあり方については、「原子力発電と火力発電を最小とし再エネ中心が望ましい」が31%、「火力発電を最小とし原子力発電と再エネの組み合わせ」が34.3%、「原子力発電、再エネ、火力発電をほぼ均等」が27.6%、「分からない」が6.9%であった。
- 地層処分について関心や興味があるについては、「大いにある」が44.8%、「少しある」が41.4%、「あまりない」が13.8%であった。
- 講演(1)資料:原子力発電について~固有安全性、核燃料サイクル/廃棄物処理処分,核融合開発の現状と展望~(古藤健司)
- 講演(2)資料:将来の電力需要予測の弱点~電気自動車は環境に優しいか、データセンターの省電力技術~(松永健一)
- 「対話in鹿児島大学2025」事後アンケート結果
機械工学プログラムの学部4年生および院生との第5回目となる対話会を実施
本年度の鹿児島大学対話会は、昨年度同様、大学院学術研究院理工学域工学系機械工学プログラムの佐藤紘一教授の大学院担当科目「高エネルギー材料工学特論」の4コマを基調講演(1)(2)と対話会に運用して頂き、工学部4年生6名、院生(理工学研究科工学専攻機械工学プログラム)22名、計28名の学生諸君の参加を得て開催に至った。対話会への導入として、基調講演(1)では原子力発電を正しく理解してほしい基本事項、講演(2)では「将来の電力需要予想の弱点:データセンターなどの省電力技術、電気自動車は環境に優しいか」について講義を行い、原子力発電を含め電力問題についての客観的な知識・情報を提供し、機械系学生のエネルギー全般に対する興味を喚起することとした。
対話会への参加シニア6名に加え、オブザーバー参加者(電事連・広報部から)1名があり、計7名となった。対話会は5グループに分かれ、シニアと学生グループで設定したテーマについて議論するのであるが、学生からシニアへ事前質問を行いシニアが回答をする:事前問答を対話会の導入として行った。事前質問については、ネット検索なので情報調査・検討した上で深堀した質問内容とすること、従って3件以内/Gに絞り込むことを課せた。結果として、どのグループも活発かつ充実した議論が展開された。
1.講演と対話会の概要
2.対話会の詳細
(1)グループ1
(2)グループ2
(3)グループ3
(4)グループ 4
(5)グループ5
3.学生アンケートの概要
アンケート結果の詳細は別添資料を参照こと。