学生とシニアの対話
in 岐阜工業高等専門学校2025年度(第2回)報告書
1.概要
(1)日時
- 基調講演:2025年4月24日(木) 9:00~10:30
- 対話会 :2025年5月1日(木) 9:00~10:30
(2)場所
- 独立行政法人 国立高等専門学校機構 岐阜工業高等専門学校
(3)参加者
- 参加学生
先端融合開発専攻:33名(専攻科1年32名、2年1名)- 指導教員:柴田欣秀 准教授
- 参加シニア
基調講演:野村茂雄
対話会:針山日出夫会長、大西祥作幹事、路次安憲、鈴木成光、田中治邦、野村茂雄 - 指導教員:柴田欣秀 准教授
(4)基調講演
- テーマ
- 「君はどう考える? 我が国のエネルギー・電力の確保」
- 講演概要
- 中長期のエネルギー・脱炭素電源(再エネ、原子力)の展望と課題を提示。これにより学生は知識を補強。6グループを編成し、各グループの個別テーマの選定を学生自らが行い、次週に向けた学習をグループごとに実施。各自、所定の様式(A41枚)に、学生自らが調査分析した過程での疑問点や自らの考えを記載し、対話会でSNW参加者にぶつけることにした。
(5)対話会スケジュール
- 9:00~9:10 はじめに (柴田先生、針山会長)
- 9:10~10:00 グループ対話(学生、シニア)[50分] 各グループ学生5~6名とSNW1名の割合で6グループ編成。あらかじめ設定したグループ単位のテーマで対話会を開始。それぞれグループリーダー(GL)が対話会を総括。
- 10:00~10:30 発表(GL)、講評(学生、柴田先生、大西、野村)
2.各班のテーマと講評
- 1班: 再生可能エネルギーの出力変動が与える影響(学生6名) 担当:路次
- 再エネには変動性(太陽光、風力)と変動の無いもの(水力、地熱、バイオマス)がある。
- 太陽光を例に、変動の内容(種類)を把握。瞬時的なもの、一日を通じた変動、年間変動、悪天候が持続した場合などコメント。
- 影響については、以下の認識を共有した。 ① 需要が供給を上回って系統(周波数)が動揺した場合に、火力などの回転発電機とは異なって太陽光には慣性力がないので、太陽光発電の割合が大きい場合には全停電につながりやすい。 ② 太陽光発電が需要を上回った場合は、火力出力低減(コスト悪化)、揚水のポンプアップ、系統連系(制限在り)で対応するが、究極の手段としては一部太陽光発電を停止させている。 ③ 長期的な天候不順対応では、蓄電池に期待したいが、現状ではコストを含めて見通しが立たないので火力の維持は不可欠。 ④ 洋上風力は概念としては期待大だが、我国ではコストがネック。ヨーロッパでは、遠浅な海域でうまくいっている国がある。
- 建築科の女子学生は、太陽光や風力は小水力とともに「地産地消」に適しているとして、そのような村の概念図を作っていたが、そこまで学習するのは立派なことだと思った。
- 2班: 原子炉の再稼働と廃炉の現状(学生6名) 担当:田中
- テーマが特殊であったため議論の参考データとして、最初の5分間で日本の原発建設実績(57基)、廃炉の実績(24基)、再稼働の現状(14基)のデータを与え、その上で対話に入った。
- 学生全員から次々と質問が出た。知りたいと思うことを聞いておこうとの熱意が凄く、質疑応答に時間を取られっ放しで、シニアの側から途中で打ち切りグループ発表の準備にかかるよう促したほどであった。
- 予めグループ毎のテーマを決めて学生達に関心のあるテーマを選択させたことが、シニアとの対話への意識を高めたものと想像する。この点では、大変に効果的な対話ができたと考える。
- 一方その結果として、当方が期待していた原子力の積極利用への賛否の議論には全く時間が取れなかった。勉強熱心な学生達が将来、原子力についてどのような意見を持つことになるかを考えると、来年以降はもう少し対話時間を延ばして欲しいと感じた次第である。
- 尚、グループ発表の中でリーダの学生は「原子力の安全基準をしっかり確保して、動かした方が良い」と意見を表明した。
- 3班: 再エネの製造や配置、廃棄に関する環境負荷の影響(学生6名) 担当:大西
- 事前調査結果並びにオンタイムのネット情報の検索もしつつ、議論を実施した。再生エネには、風力発電等もあるが、太陽光発電に絞った議論を展開した。
- 太陽光発電の各フェーズ(製造、設置場所・・)における課題、現状、対策、ガイドラインについてメンバー間の共有・議論を実施した。(課題の分析と解析、考察)
- また対話の中で自給率や第7次エネルギー基本計画等の基礎的知識についても紹介し、議論した。(知識の習得)
- 廃棄の手順、環境への配慮を法制化する動きがあることを理解。
- 4班: 企業のエネルギー施策について(学生5名) 担当:野村
- 再エネ変動電源には、強力なバッテリーでバックアップ。電気を貯めておくのが難しい理由を考え、物理的・機械的・化学的な手法を利用した蓄電方式を検討。
- 我が国の代表企業の取組みやグリーン製品を調査。JAEAの再エネと原子力(ガス炉など)のシナジー、トヨタや川重の水素、BYDのEV、ユーグレナのSAF(航空機燃料)などの事例を検討。課題は、コストや量産化などを取り上げたが、今後のビジネスとして有望との意見。
- トランプ政権でアメリカ社会のエネルギー施策が出されており、日本とは異なる自給率の高さを踏まえた理解が重要との意見。
- エネルギー効率を上げるため、環境との接点である建屋の密閉性をよくする建築設計が望ましとの意見が、建築専攻の学生から出た。
- 5班: 家庭における太陽光パネルの設置について(学生5名) 担当:鈴木
- 太陽光パネル設置に関わる費用と、設置によって得られる経済的メリットを比較して、耐用年数20年迄に元を取れるかどうかを定量的に評価する必要がある、との理解を深める議論を重ねた。
- 設置費用として、太陽光パネルの設置と維持管理費用に加えて、廃棄費用も想定する必要がある事を認識した。あらかじめ廃棄・リサイクル費用をオンすべきとの意見も出た。
- 経済的メリットとして、電気料金支払額の軽減と余剰電力の売電に加えて、再エネ賦課金の軽減もメリットである事を認識して貰った。
- なお、どの位の規模の太陽光パネルを設置するかについても、議論になった。設置する家の屋根の広さや日照条件にもよるが、出来るだけ大きい発電量を得られるようにした方が、メリットが大きくなるだろうとの認識となった。
- また、売電価格が低下傾向にあるので、蓄電池を併設して余剰電力を蓄え、発電出来ない時間帯の電力を賄う事も議論になった。災害による停電発生の場合にも、自分の家は必要な電気を使えるというメリットも重要であると理解した。
- 設置する地域の電気料金や補助金の有無などや、設置費用の将来的な見通しなども考慮する必要性を認識するとともに、太陽光パネルの販売者に相談する事も大きな助けになるのではないかという意見も出た。
- 6班:エネルギー自給率を向上させるための効果的手法について 学生(5名)担当:針山 学生からの活発な質問に答え、以下の話題に就いて意見交換した。
- 我が国のエネルギー自給率の変遷(1960~2024)と時代ごとの主力発電方式
- 主要国のエネルギー自給率と国勢(人口、平均年齢、総発電量、主力電源、CNコミット年)
- 自給率向上戦略(省エネ、原子力・再エネの活用、高性能火力発電技術の活用、ぶれない政策)
- 原子力の課題(原子力に対する国民の社会的受容性、HLW最終処分地選定、新増設の加速)
- 原子力を推進し、核融合も期待したいとの意見も出た。想像以上に活発な対話ができ、参加して良かった。
3.総括
日常的にはエネルギー問題に関心が薄いであろう学生に対して、大筋で現状と課題を考えさせるテーマ設定であった。参加学生は、学習意欲が旺盛であり、限られた時間内で各班からの発表もすばらしく、さらに学生からの質問も必ずあり、学生のレベルの高さを実感した素晴らしく実のある対話(学習)であった。
将来の活躍が期待される。開催に尽力頂いた柴田先生に感謝申し上げる。
4.学生アンケート結果の概要(回収率100%)
- 講演について、とても満足66%、ある程度満足34%。聞きたいことはほぼ聞けたとしているが、内容が難しかったとする意見が4名の学生からあった。多岐に渡る資料を紹介したので、説明を端折った箇所や質問時間が取れなかったのは反省点でもある。
- 対話会については、とても満足70%、ある程度満足30%。対話時間不足5名、内容が難しかった1名いたが、新しい知見が得られた、将来の参考になったなどの意見が大部分であった。
- 対話会への参加を進めたいとする意見が支配的で、その有効性が認識された。
- 放射線、放射能は量(レベル)に関係なく怖いとする学生が9名、生活に有用であることは知らないとする学生が2名いた。昨年実施した放射線・放射能の基礎について、学ぶ機会が必要と考える。
- 原子力発電や再エネの利用については、肯定的な意見が支配的。しかしあなたの住む地域や周辺地域で地層処分場の計画が起きたらどうしますか?について、反対すると思う学生が15名おり、NIMBY対策の重要性がここでも認識された。
- 詳細は別添の「事後アンケート結果」を参照ください