学生とシニアの対話
in 福島工業高等専門学校2025 (第11回) 報告書
有意義な対話を実施
- はじめに、赤尾先生より、実務経験豊富なシニアの皆さんとの対話により、机上の学習では学べない貴重な体験を学んで欲しい旨の挨拶があった。3班に分かれ、それぞれ事前資料を作成していたが、学生諸君は良く勉強していたようだ。3班とも対話のスタイルが異なり、1班は新しいテーマ(遠隔技術)で話が弾んだようであり、2班はシニア1名がZoomによる参加(セッテングでは先生方に大変お世話になった)、3班が「みゆカフェ方式」(*1)での対話であった。それぞれ活発な対話が行われたが、対話時間が短く、また一部屋で3班の対話であり、Zoom参加も相まって、音が聞きにくい面もあった。一時間という短い時間ではあったが、学生諸君とはスムースに意見交換できたと思われ、有意義な対話会であった。
もし可能であれば、今後もう少し時間を取っていただければ、より充実した対話になると思われる。
1. 対話会の概要
(1) 日時: 2026年1月19日(月) 10:30~12:20
(2) 場所: 福島工業高等専門学校 機械システム工学科棟2階の多目的演習室
(3) 参加者:
- 教師: 赤尾尚洋教授、山口直也助教、(鈴木茂洋教授は海外出張中)
- 学生:14名 (機械システム工学科4年生)
- シニア:6名
SNW東北: 工藤昭雄、高橋實
SNW本部: 西郷正雄、三谷信次、幸浩子、中村進(Zoom参加)
(4) 開会の挨拶 (赤尾教授)
今日は、実務経験が豊富なシニアの皆さんが来てくれた。机上では色々学習しているが、短い時間ではあるが忌憚なくシニアの皆さんに日頃からの疑問点等ぶつけて理解を深める機会にして欲しい。
2.グループ対話会
(1)1班 (報告者:西郷 正雄)
- 対話テーマ:遠隔技術について
- 参加者:
- 学生 4名(機械システム工学科4年生)
- シニア 三谷信次、西郷正雄
- 対話概要:
- 本テーマは、学生が関心の高いものなので、今回初めて選ばれた。
- 学生とシニアの簡単な紹介の後、シニアより、プロジェクターを使って、シニアが用意している資料により、説明を行った。
- 説明が長くなりそうなので、途中に、学生より質問を取り入れることで、彼らの疑問点を聞き、対話を進めた。
- シニアから説明した内容と学生からの質問について
① 遠隔技術は、原発が造られた段階より、原子力には、放射線被ばくがあるために進められていたことを(ⅰ)監視・点検、(ii)運転・保守、(iii)廃炉・事故対応 の3領域に分けて、また、全体についての総合的なものとして、(iv) 管理・シミュレーション系の遠隔技術を説明した。その中で、BWRの制御棒駆動機構と水圧系に対して、国産化を進める際に遠隔自動化が進められたことなどの説明を行った。
② 福一の原発事故においては、ガレキの撤去に大型クレーンを複数台操作する上では、3Dプリンターでガレキを再現、撤去手順を検証し、解体中の建屋から500m離れた免震重要棟に遠隔操作室を設けて進めていることを説明した。
③ 原燃の再処理施設においてもほとんどの設備での操作は、遠隔自動化のもとに進められていることを説明した。
④ 更に、ロボットについては、犬型ロボットを能登半島地震では利用されずに、本物の犬に頼っているのは、嗅覚については、ロボットでは、難しいことなど、人型ロボットを含め、まだまだ得手不得手がある状況のことを説明した。
⑤ 学生からの質問では、例えば、無線を使っての操作には、タイムラグが発生しないのかと質問があった。
(2)2班 (報告者:高橋實)
- 対話テーマ: 通常炉の廃炉について
- 参加者:
- 学生 5名(機械システム工学科4年生)
- シニア 高橋實、中村進(Zoomで参加)
- 対話概要:
- 基調講演がないので、最初シニアから事前配布した資料に基づき概要を説明した。学生諸君は、事前に資料については、概略目を通しているようだった。各自に順繰りに、資料につき、疑問点等につき述べてもらい、シニアから回答した。主な質疑応答、意見は以下の通り。
- 廃炉の費用が号機によりかなり差があるが、その理由に疑問を持ったようだ。号機ごとの放射性物質の量や色々な要因があるが見積額である。想定費用は発電時に積立ててある旨説明すると納得したようだ。
- 放射性廃棄物を宇宙に打ち上げるとかはできないのかとの意見も出されたが、国際的に見て、技術的にもコスト的にも難しい旨答えた。
- クリアランスレベル以下の廃棄物がほとんどということは理解したようだが、その再利用については社会的に容認されるかが問題(NIMBY意識)という点に関し、小中学校からの教育が大事との意見があった。これは高レベル放射性廃棄物処分にも共通しているが、自然界よりはるかに低い放射線レベルに対する教育が大事という認識を持ってくれたようだ。
- 廃炉跡地については、現実的には、原子力発電所のリプレ-スが良いとの意見が主流だった。
- 1Fの廃炉については、ごく微量のデブリの調査がまだ始まったばかりで、予定通りの行程で進むのは大変難しい旨理解したようだが、ロボット技術等今後R&Dを多方面にも応用できるので、皆さん地元に夢を持って欲しい旨要望した。廃炉跡地に原子力記念館のようなものを作ればとのアイデアもあった。
- 多方面に話は及び、学生諸君は、熱心に対話に参加し、4年生と言うこともあり、今後の進路の参考にもなったと思われる。
- Zoomの設定には、先生方に大変お世話になった。ただ、一部屋で3グループの対話が実施されていたので、音が混じって各グループとも若干聞きにくいことがあったようだ。
(3)3班 (報告者:幸浩子)
- 対話テーマ: 高レベル放射性廃棄物処理・処分について
- 参加者:
- 学生 5名(機械システム工学科4年生)
- シニア 工藤 昭雄、幸 浩子
- 対話概要:
- 福島工業高等専門学校において、「高レベル放射性廃棄物処理・処分について」をテーマとした。
- 実施方式としては、3班では、「みゆカフェ方式」(対話型学習) を実施した。参加者は学生5名、シニア2名であり、事前に資料はデータで配布されていたが、当日は印刷資料を用いながら簡単な説明を行った後、対話を中心とした学習を進めた。全体80分のうち、約15分を講義、約60分をみゆカフェ方式による対話、最後に簡単な発表練習の時間とした。
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本対話では、ポスターに書き込む方式により、学生から多数の意見や問いが提示され、それらを整理した結果、議論は主に以下の三つのテーマに集約・整理された。
① 「化石燃料に代わるエネルギー資源/地層処分場の選定と化石エネルギーのタイムリミット」
・本ポスターでは、化石燃料が有限であり、いずれ枯渇するという前提に立ち、エネルギー転換には時間的制約が存在することが強く意識されていた。将来的にウランに代わる新たな燃料が発見される可能性についても言及があったが、「発見されるかもしれない」という不確実性に依存することの危うさが指摘されている。
・また、原子力を利用し続ける以上、高レベル放射性廃棄物を含む廃棄物処理から逃れることはできず、「地層処分場の選定は将来世代に先送りできない現実的課題である」という認識が示された。技術論にとどまらず、資源制約、時間軸、世代間責任を重ねて捉えようとする視点が特徴的である。
② 「地層処分予定地に住む人々の理解を得るには/地層処分を国民に理解してもらうためには」
・本ポスターでは、地層処分は技術的に成立していても、それだけでは社会的に進まないという問題意識が中心に据えられている。住民や国民の理解を得るためには、単なる説明ではなく、その土地をよく知る人による説明、データの継続的な開示、メリット・デメリットの双方を隠さず提示する姿勢が不可欠であると整理された。
・さらに、理解形成を一時的なものに終わらせないためには、義務教育や学校教育を通じた長期的な取り組みが重要であり、将来世代を「当事者」として育てる視点が必要であることが示されている。「反対意見を説得する」という構図ではなく、対話・信頼・時間の積み重ねを重視する姿勢が明確であった。
③ 「発電方法を理解してもらうために」
・本ポスターでは、原子力発電のみを切り離して議論するのではなく、発電方法全体を比較する必要性が強調された。各発電方法の特徴、燃料量、発電量、安定供給の可否などを総合的に捉えることで、日本のエネルギー事情を理解することが重要であると整理されている。
・東日本大震災以降、原子力発電に対して負のイメージが強い現状を踏まえつつ、安全性や高効率性といった側面が十分に理解されていない点も指摘された。日本国内に限らず、海外の成功事例を含めた情報提供の必要性が示され、エネルギーをライフサイクル全体で捉える視点が明確に表れている。 - みゆカフェ方式での対話後の分析と評価
- 本対話を通じて、学生の思考は単なる「賛成・反対」の枠組みを超え、資源制約、時間軸(50年、100年、将来世代)、社会制度、教育といった多層的な視点へと広がっていった。技術的合理性と社会的現実の両立を模索し、「完全な安全は存在しない」ことを前提に、どのように管理し、どのように説明し続けるかを考えようとする姿勢が見られた点は、高専生らしい成熟した特徴である。
- みゆカフェ方式により、発言量の多寡に左右されることなく、全員が思考に参加できたこと、他者の意見を読みながら自身の考えを更新する様子が確認できたこと、「問いが問いを呼ぶ構造」が可視化されたことは、本手法の有効性を示している。
- 本みゆカフェ方式では、高レベル放射性廃棄物処理・処分を、技術課題にとどめず、資源制約、社会的合意、教育の問題として多角的に捉える議論が行われた。特に、将来世代を視野に入れた思考が学生から自発的に生まれている点は、対話型学習として極めて重要な成果である。
- 学生からは「地層処分のメリット・デメリットを詳しく知ることができた」「これからは自分たちが真剣にエネルギーや発電について考える必要があると感じた」といった感想が寄せられており、本対話が主体的な学びにつながったことがうかがえる。
- 以上より、本実践は、地層処分を「見えない場所の問題」とせず、将来にわたり考え続けるべき社会課題として捉え直す上で、有効な教育的・対話的手法であったと評価できる。
- 注記: みゆカフェ方式
- 「みゆカフェ方式」とはブレインストーミング型のアクティブラーニング手法であり、参加者がポスター用紙に示されたテーマを囲みながら、同時に自分の意見や疑問を書き込み、他者の記述を読み取って反応することで、参加者間で活発な議論を行うことが可能な対話手法である。また、要所要所において、シニアの有識者・先生・講師等が各小グループに加わり、議論のポイントについて知見の共有や補足的な説明、疑問の投げかけを行うことで、参加者の理解をより深めていくことを特徴としている。発言の得手不得手に左右されることなく、全員が「考える過程」に参加できる点が特徴であり、他者の考えに触れながら対話を深めていく、対話型の活動である。
3. 講評 (高橋實)
3班とも、それぞれ異なった形での特徴のある対話会となった。、学生諸君は事前資料をよく勉強していたようであり、短い時間ではあったが、充実した対話であったと思う。これを機により深くエネルギー問題、原子力問題を考えて欲しい。
4. 閉会挨拶 (山口助教)
わざわざ現地まで足を運んだシニアへの感謝とともに、学生諸君には、今回学んだシニアの実務経験を、就職を考える上でも生かすよう期待する旨述べられた。
5. 学生アンケート結果の概要 (工藤昭雄)
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(1)参加学生について
- 参加学生全員(14名)が回答。回収率は100% 。
- 全員の学生が機械システム工学科の4年生。
- 進路は6名が就職、8名が進学の予定。
- (2)対話会について
- 基調講演は、行っていない(但し対話の冒頭に各班でテーマの説明を行っている)ことからアンケート項目からは除外した。
- 対話の満足度は「とても満足」(83%)、「やや不満」(7%)でほとんど全員から満足頂けた。肯定的な意見は、14人全員(100%)が「新しい知見が得られた」とし、6人(43%)が「自分の将来の参考となった」ことが挙げられた。一方で、少数ながら不満の感想もあり、理由として、「希望内容について対話出来なかった」、「対話内容が難しかった」、「時間不足」、「シニアの話が長かった」ことが挙げられており、今後の改善に生かしたい。
- 「学生とシニアの対話」の必要性については、「非常にある」(79%)、「ややある」21%)と全員から評価頂いた。
- 「対話会への参加を勧めるか」については、「勧めたいと思う」が(86%)であった。
- (3)意識調査について
- ① 放射線・エネルギー・環境について
- 放射線・放射能の危険性については「一定レベルまで恐れる必要はない」が93%、また放射線・放射能の生活における有用性についても「知っている」100%で、認知されていた。
- 原子力発電についてはほとんど全員が必要性を認識しており、「再稼働を進めるべき」(64%)、「将来に向け新増設リプレースを進めるべき」(14%)であった。
- また、再エネ発電については、「環境にやさしく利用拡大」(71%)、「天候に左右されたり、自然破壊につながるので抑制すべき」とする意見が29%であった。
- ② カーボンニュートラルとエネルギーについて
- 2050年カーボンニュートラル(脱炭素)について、関心や興味が「大いにある」(71%)、「少しはある」(29%)で、関心項目としては、「エネルギー資源の確保」、「脱炭素化の技術開発、イノベーション」、」「原子力発電や再生可能エネルギーの役割」であり、「我が国の環境政策全般」などがこれに続いた。
- 日本の2050年脱炭素化社会の実現可能性については、「実現するとは思えない」(43%)、「相当いいところまで到達する」(14%)、「分からない」(43%)であった。
- また、脱炭素に向けた電源の在り方については、「原子力発電と化石燃料発電を最小とし、再エネ中心」(46%)が最も多く、「原子力発電、再エネ発電、化石燃料発電をほぼ均等」(31%)、「原子力と再エネの組合せ」(15%)であった。
- ③ 高レベル放射性廃棄物の最終処分について
- 高レベル廃棄物の最終処分については、「関心や興味が大いにある」(36%)、「少しある(57%)、「あまりない」(7%)で皆さん大いに関心を示していた。「近くに処分場の計画が起きたらどうするか」については、「反対しないと思う」が50%、「反対すると思う」が21%、「分からない」が29%であり、半数が反対しないとの考えであった。「地層処分について興味や関心がある項目」については「技術」が最も大きく、次いで「処分地の選定」、「制度」、の順であった。
- 対話会全体についての感想、意見として、「現場に立った方の、生きた学びを得ることができたので非常に有意義な時間だったと思います。」「初めて知ることが多く、非常に面白い内容で時間が足りないほどでした。機会があればまたお伺いしたいと思っております。」、「私は恥ずかしながら原子力の知識がお世辞にもあるとは言えない状態であったのですが、丁寧に解説していただき、また今まで知らなかったような事をたくさん学べました。 今回の講義を受けて廃炉の理解を得るために最も重視すべきなのは次世代の原子力への正しい教育であるなと強く感じました」などの好意的な感想を多数頂いた。
- 一方で「3つのグループの音が混ざって、声が聞き取りにくかった」との感想を頂いており、今後の運営に当たっての改善点としたい。
- アンケート結果詳細については別添資料を参照下さい。
- アンケート集約結果