日本原子力学会シニアネットワーク連絡会
報告
学生・教員・市民とシニアの対話会

学生とシニアの対話
in 福井工業大学2025年度(第20回)報告書

日本原子力学会シニアネットワーク連絡会(SNW)
世話役・報告書作成: 鈴木成光
<福井工業大学 福井キャンパス校舎>
今回で20回目となる対話会を、福井工大、福井キャンパスで開催
今回の参加者は、教員・学生・シニア総勢25名。従来よりも参加した学生の人数が少なかったが、全体と して充実した対話会であった。各グループの担当シニアから、学生からの発言はとても優秀であったとの 報告もあり、対話後の学生からの発表や質疑応答もしっかりとしたものであった。

Ⅰ.対話会概要

1.日時:

令和7(2025)年12月13日(土)午後13時~17時半

2.場所:

福井工業大学 福井キャンパス(対面開催) FUTタワー15階会議室

3.参加者:

[教員] 野村教授、松浦教授、西澤教授(原子力技術応用工学科教員)、 中安客員教授
[学生] 12名 (原子力技術応用工学科学生 2年生、3年生、4年生)
[シニア] 西郷正雄、針山日出夫、大塔容弘、三谷信次、中村進、長谷川信、 嶋田和真、川合將義、鈴木成光 計9名

4.プログラム概要

【1】 基調講演: 講演時間 各約30分

(その1)演題 「放射線の人体影響とリスク」、 講師 川合將義
放射線による被ばく影響と、放射線作業時に受ける低線量の被ばく基準とリスクについて説明
(その2)演題 「原子力発電所の廃棄物対策」、 講師 長谷川信
「原子力発電所のライフサイクル」、次に各論として「原子力発電所の廃止措置」、「クリアランス制度と廃棄物対策」、及び原子力ビジネスとしての「集中クリアランス処理事業」について説明

【2】学生との対話:(昨年同様のテーマ) 対話時間 約2時間

グループ① 次世代革新炉について (学生2名、担当シニア:西郷正雄、針山日出夫)
日本で開発中の革新炉(革新軽水炉、小型炉、高温ガス炉、高速炉、核融合炉)に着目して、日本 にどのような価値をもたらすと考えるか、国民一般の原子力への不安/不信がリセットできていない状況下でのゲームチェンジャーとなり得るか、などについて議論。
グループ② 核燃料サイクルの必要性と課題 (学生4名、担当シニア:大塔容弘、三谷信次)
六ケ所再処理施設設立の経緯と計画遅延の理由、使用済み燃料の貯蔵問題、軽水炉によるPuサーマル利用には限度があるので高速炉サイクルの導入を早める必要性などを議論。もんじゅを廃炉にしてしまったのは間違いだったのではないか、との意見も交わされた。
グループ③ 廃止措置とクリアランスについて (学生4名、担当シニア:中村進、長谷川信)
廃止措置の定義について理解を深めた上で、効率的に進めるための対策、及びクリアランスについての理解を進めるための方策や、日本の原子力規制の改善などについて議論。原子力の正しい理解を得るための初等教育の必要性についても意見が出された。
グループ④ 放射線の活用と防護について (学生2名、担当シニア:嶋田和真、川合將義)
放射線リスクについて一般人に適切に理解をしてもらうやり方、被ばく量の安全基準の設定の経緯、原発事故時の避難計画における線量基準の設定の重要性、交通事故など他のリスクとの比較について議論。福島第一事故後の甲状腺検査の適切性についても話題となった。また、放射線利用の現状と社会による受容における課題などについても議論。

【3】各グループの代表学生から結果発表と質疑応答

【4】全体講評:針山日出夫

【5】学生によるアンケート調査


Ⅱ.学生との対話内容の詳細

1.グループ① 次世代革新炉について (学生2名、担当シニア:西郷正雄、針山日出夫)

― 革新炉に対する国民の関心を引き付けることも重要であるが、その前に、国民にいかにしてエネルギー問題や原子力の現下の課題(有用性、安全性、放射線に対する知識、社会的受容性、等)について、関心を喚起するかが重要な問題である。(学生、シニア)
― 国はエネルギー問題の中での原子力のメリット/デメリットを腹括って分かり易く国民に問いかけ、説明する責任がある。(学生、シニア)
― 原爆資料館を見ると核の恐怖が視覚的に理解できる。それはそれで有意義であるが、恐怖心だけをそそるのは不合理で、核の平和利用の有益性についても同時に分るように展示の配慮をすべきではないか。(黒崎健先生のコメントを引用して、学生)
― 国民は欲しい情報を自から獲得できるよう、個人で情報環境を構築すべき。(シニア)
― 革新炉は夫々の目的で開発中であるが、エネルギーの安定供給・脱炭素の為の現実解としての社会実装の可能性は、革新軽水炉が最有力。(シニア)
― 原子力発電は実証済み技術をベースにしているが、新しい安全の仕組みや技術進化を政策的にアピールする事も肝要。革新炉の役割は大きい。(学生、シニア)
   
― 今、AIと言えば、その便利さ故、誰もが関心を持っている。しかし、その便利なAIが機能するのには、膨大な電気を消費している。そのことを知らしめることにより、エネルギー、中でも電気の作りこみがますます必要となることを国民に訴えるのが良い。その中でも、原子力発電が、脱炭素化する上で、大いに利用すべきであると、国民に訴えるのが良い。(シニア)

2.グループ② 核燃料サイクルの必要性と課題(学生4名、担当シニア:大塔容弘、三谷信次)

― 従来からの設計基準で完成間近の六ヶ所の再処理施設が、福島第一事故のあと原子力発電所と同列扱いで新規性基準の適用を要求されたため、当初予定から大幅に遅延せざるを得なかった理由について。
― 再稼働に伴い使用済核燃料が各プラントで増えてきて燃料プールは満杯に近い。中間貯蔵施設を設けて乾式保管するプラントが増えているが、若狭の関電のプラントは予定が立っていない。福井県知事は早く県外へ持って行けと冷たい。この問題どう考えるか。
― もんじゅは廃炉にすべきではなかった。Puを燃やす方法は今のところ軽水炉のPuサーマルしかないが、高速炉でないため消化仕切れない。我が国には余剰Puは持たないという趣旨の国際的ルール等がある。このため高速炉サイクルの構築が急ぎ必要ではないか。
― 英、仏と並び我が国は、使用済核燃料を再処理してガラス固化体にして地層処分する方式をとっている。そのため六ヶ所に再処理施設を作ったが、当初の青森県との約束で使用済核燃料はあと20年で県外に持ち出す約束になっている。この問題どうすればよいか。
― 原子力に関するマスメディアの論調は、新聞によって各種いろいろ。朝日、毎日、東京(中日)などは批判的なのに対して、産経、読売は好意的論調。福井新聞はどうか?

3.グループ③ 廃止措置とクリアランスについて (学生4名、担当シニア:中村進、長谷川信)

― 廃止措置という活動に対する考え方の整理に関して、IAEAの廃止措置の定義について、十分な理解が行われた。
― 廃止措置を効率に進めるため、今後多くの原発の廃止措置に対して、日本全体を見たスケジュール等のマネ^ジメントが必要。
― クリアランスの運用は廃止措置において大変重要であるため、クリアランスに対する理解活動をさらに進めるとともに、実績を積み上げて早急にフリーリリースに進むべき。
― 日本の原子力規制は世界で一番厳しい規制となっていることがクリアランスの推進にも影響しており、クリアランスを進めるための日本の原子力規制の改善について考える時期ではないか。
― クリアランス物のトレーサビリティーと風評被害に関して、現在は特定の自治体が理解活動を行っているが、フリーリリース後には理解活動を行っていない自治体にも関係することから、批判的な意見が出ないか心配。
― クリアランスを含め原子力の正しい理解を行うため、小学生低学年から正しい原子力教育を行うことが必要であり、そのためには教育指導要領の中にも原子力教育を含めるべき。
― 原子力リサイクルビジネスについて、福井県で進めている集中処理施設の展開はクリアランスの理解を進めるために重要であり、フリーリリースに向けても大変重要な活動で、これを日本ではじめて行う福井県は大変重要な役割を担っている。

4.グループ④ 放射線の活用と防護について   (学生2名、担当シニア:嶋田和真、川合將義)

― 「放射線」という言葉自体が忌避される場面があり、言葉の設計と伝え方が重要。がんや白血病に対する放射線の健康影響を「被ばく事故の話」だけでなく、ストレス、喫煙など日常の要因(活性酸素など)と並べて理解する切り口が有効ではないか。NK細胞など生物の話題は、一般の人に興味を持ってもらう入口になり得る。
― 東京電力 福島第一原発事故時、原爆被爆者の疫学データに基づいて構築された基準は信頼性が高いと考えられる一方で、当時の放射線測定や線量の細かな区分は十分に出来ず、「賠償の線引き問題」を避けるため町単位など一律の長期避難になり、結果として「不要な避難」「災害関連死」も生じた。基準値そのものよりも、「測定・区分・意思決定の運用設計」が社会影響(長期避難、生活破壊、補償対立)を左右する
― 福島第一原発事故では、緊急時の住民避難や除染作業において、防護の最適化を損なった基準が採用された経緯があり、これを教訓として今後の対応における適切な判断が重要である。
― 福島第一原発事故後の甲状腺検査において、甲状腺がんが見つかること自体が、放射線との因果に直結しない場合があるが、当事者になると不安が増幅し、過剰診断・過剰治療に近い社会現象が起き得る。
― 放射線リスクと他のリスクの比較において、交通事故との比較は一見わかりやすいが、責任の所在、受け止め方など性質が違うので、比較対象の選び方(例:自家用車ではなく公共交通など)も含め、比較の設計が必要。
― 放射線に関わるノーベル賞受賞者は、レントゲンやキュリー夫妻以外にも随分と多い。医療、材料、半導体、塗料、ゴム、ケーブル、外装材、滅菌、非破壊検査など、色々な分野で広く利用されているが、食品照射による殺菌・殺虫は海外では利用があるが、日本ではジャガイモの芽止め以外法的に規制されている。企業は、「放射線を使っている」と言うだけで消費者が離れる懸念があり、技術より先に言葉の壁がある。

Ⅲ.学生アンケート

1.参加学生について

   ・参加学生全員(12名)が回答
   ・参加学生の内訳
      所属:原子力応用技術工学科 学年:2年生-4名、3年生-7名 4年生-1名 原子力専攻:11名、原子力非専攻:1名

2.対話会について

基調講演の満足度は、2件とも「とても満足」、「ある程度満足」を合わせて100%であった。 但し、説明内容が難しかった、説明時間が不足、分かり難かった、希望内容が聞けなかった、質問時間が不足だった、というコメントがあった。
また、今回のテーマ以外に基調講演で聞きたいテーマとして、次のような要望があった。
 ― 原子力施設と地域との関わり
 ― 再稼働、新規建設に関わる建設候補地の方々との対話、理解
 ― 民間人への布教
 ― 核燃料サイクル
 ― 原子炉の小型化
 ― 中性子の利用
対話会の満足度は「とても満足」、「ある程度満足」を合わせて100%で、事前に対話したいと思っていたことが対話出来たかについても、「十分できた」、「ある程度出来た」が合わせて100%であった。 但し、対話時間が不足、対話内容が難しかった、というコメントあり。
今回の講演や対話会で92%の学生が「新しい知見が得られた」と回答してくれたほか、マスコミ情報と今回の情報に違いがあった、自分の将来の参考になった、教育指導の参考になった、という意見もあった。
対話会の必要性は「非常にある」、「ややある」を合わせて100%であった。また、友達や後輩へ対話への参加を薦めるかどうかについては、100%が「薦めたい」との回答であった。

3.意識調査について

放射線、放射能につては、「一定のレベルまでは恐れる必要はない」が100%で、「医療関係等で利用されており、生活に有用であることは知っている」も、100%であった。
原子力発電については、「必要性を認識しており再稼働を進めるべき」が50%、「必要性を認識しており将来に向け新増設、リプレースを進めるべき」は42%であった。
再エネ発電については、「環境にやさしい電源であり、利用拡大すべき」が58%、「天候に左右されるので利用は抑制的にすべき」が25%となった。
カーボンニュートラルとエネルギーについては、「地球温暖化や脱炭素社会の実現に関心」は、「大いにある」と「少しある」を合わせて92%の回答であった。
「興味や関心があるのはどの項目でしょうか?」については幅広く関心を示したが「エネルギー資源の確保」が42%、「脱炭素化実現のためのコスト」が33%、「主要国の動向」が33%、などの回答があった。(複数回答可)
「日本の2050年脱炭素化社会の実現可能性」については、「実現するとは思えない」が42%、「相当いいところまで到達する」が42%、「わからない」が17%となった。
脱炭素に向けた電源の在り方」については、「化石燃料発電を最小とし原子力発電と再エネ発電の組み合わせが望ましい」が33%、「原子力発電、再エネ発電、化石燃料発電をほぼ均等に組み合わせることが望ましい」が42%となった。
高レベル廃棄物の最終処分については、「関心がある」と「少しある」を合わせて100%の回答であった。「近くに処分場の計画が起きたらどうするか」については、「反対しないと思う」が83%、「反対する」が8%、「分からない」8%であった。「地層処分について興味や関心がある項目」については「技術」が50%、「制度」40%、「処分地の選定」が40%であった。(複数回答可)

4.感想・意見

現場で活躍されていた人などの話を聞けて、貴重な機会を持てました。
普段聞けないことが知れて良かった。考え方が広がった。
自分では思い至らない視点の話を聞けて良かった。
とても良かった、来年4年生でも参加したい。
詳細は「2025年度 福井工大学生対話会(第20回)後のアンケート調査結果」を参照して下さい。

Ⅳ.別添資料リスト

基調講演―1:「放射線の人体影響とリスク」、 講師:川合 將義
基調講演―2:「原子力発電所の廃止措置についてークリアランスと廃棄物対策ー」、 講師:長谷川 信
2025年度福井工大学生対話会(第20回、12月13日開催)後のアンケート調査結果

(報告書作成 : 鈴木成光 2025年12月28日)