日本原子力学会シニアネットワーク連絡会
報告
学生・教員・市民とシニアの対話会

学生とシニアの対話
in 全国複数大学2024(第15回)報告書

日本原子力学会シニアネットワーク連絡会(SNW)世話役 田辺博三
2024年11月12日作成
《全国複数大学対話会参加大学》
全国複数大学の学生と対話を実施
24年度の全国複数大学対話会は、学生連絡会が主催する「学生シンポジウム2024」の一部として、シンポジウムの最終日に開催した。
シニアより「核燃料サイクルにおける再処理」と「アクチノイドと高レベル放射性廃棄物」の講演を行い、核燃料サイクルの意義とマイナーアクチノイドの分離・変換が地層処分を含む核燃料サイクルにどのような影響を与えるかについて説明した。 その後、講演とシンポジウム全体を通じた学びを基に、参加学生による「将来の原子力政策」に関する対話が行われた。学生には原子力系・非原子力系の学生が含まれていたが、将来のエネルギーと原子力に関して活発な意見交換が行われた。

1.講演と対話会の概要

日本原子力学会学生連絡会が主催する2024年度全国複数大学対話会は、「学生シンポジウム2024」(開催日時:令和6年 10 月 29 日から 10 月 31 日、開催場所:京都大学複合原子力科学研究所事務棟会議室(写真省略))の一部として開催した。具体的には、シンポジウムの3日目(10 月 31 日)に、「核燃料サイクルにおける再処理」と「アクチノイドと高レベル放射性廃棄物」の講演をSNWが行い、その後、講演とシンポジウム全体を通じた学びを基に、全国から応募した約25名の参加学生による「将来の原子力政策」に関する対話が行われ、SNWが協力した。

(1)日時

基調講演  :令和6年10月31日(木)9:30~10:15、10:30 - 11:15
対話会   :令和6年10月31日(木) 11:15 - 12:00

(2)場所

京都大学複合原子力科学研究所事務棟会議室(〒590-0458大阪府泉南郡熊取町朝代西2丁目1010)

(3)参加者

主催:日本原子力学会学生連絡会 3名
学生:約25名(全国から応募した原子力系、非原子力系の学部から大学院までの学生(京都大学、広島大学、静岡大学、大阪大学、長岡技術科学大学、東京理科大学、福井工業大学、福井大学、北海道大学、名古屋大学))
SNW:2名(田中邦治、田辺博三(世話役))
後援:京都大学複合原子力科学研究所:三澤副所長
共催:日本原子力産業協会:河野課長、坂上課長
共催:関西原子力懇談会:金島課長

(4)開会の挨拶

学生連絡会より対話会開催の趣旨説明と参加シニアの紹介及びスケジュールの紹介があった。

(5)基調講演

1)基調講演1
講演者:田中治邦
講演題目:「核燃料サイクルにおける再処理」
講演概要:現代社会のエネルギー需要は留まることなく増え続けている。原子力も核燃料リサイクルを行わなければ「可採年数」の観点で他の化石燃料と比べ優位性が無い。六ヶ所再処理のようなプルサーマルだけでなく、高速炉でフルリサイクルすれば数千年分のエネルギー資源となる。但し軽水炉の廃炉ピッチに合わせて高速炉を導入して行くと大量の炉外Puの蓄積が必要となるので、これを分離Pu保有量にカウントする必要が無いよう、再処理段階で燃料物質と共にマイナーアクチナイドを回収し炉内で燃焼すれば核不拡散性を高め、一方、高レベル廃棄物の崩壊熱が下がるので処分の効率を高め、第二処分場の必要時期を遅らせて経済性も高まることとなる。
2)基調講演2
講演者:田辺博三
講演題目:「アクチノイドと高レベル放射性廃棄物」
講演概要:高レベル廃棄物とはどのようなものかをまず説明した後、地層処分の仕組みと安全確保について説明した。次に、事務局からの要望を踏まえて、国の高速増殖炉開発目標等においてマイナーアクチノイド(MA)についてどのように言及しているかを紹介し、MAの分離変換は地層処分等の核燃料サイクルにどのような影響を与えるのかについて日本とフランスの評価事例を紹介した。最後に、私見として、日本の地層処分の課題についてコメントした。

2.対話の詳細

参加学生約25人を5グループに分割して対話を実施。最初の15分間は学生だけで将来の原子力エネルギーなどについて自由に対話。シニアが順番に回って対話の内容を質問し、適宜コメントや情報を提供。残りの15分間で学生はさらに対話を行い、最後に、グループ毎の対話における主な意見が紹介された。

(1)テーマ

「将来の原子力政策」

(2)主な対話内容

グループ1:軽水炉を継続するとともに、様々な原子炉をやっていくべきだ。他のエネルギーとのミックスについても議論した。
グループ2:原子力を続けていかないといけない。しかし続けるためには運転、廃炉、建設をやっていく人材を増やしていくことが大前提である。
グループ3:軽水炉利用を続けていくべき。ただし、続けていくのであれば廃棄物問題、国民感情を解決することが必要。
グループ4:外国籍の学生もいた。中国では余剰Puは問題にならない。高速炉に向かっているとのこと。
グループ5:まずは軽水炉、段々と高速炉がよいが、軽水炉も残すべき。最終処分の改善が必要。福井大学では学生が増えている。

3.講評

特に行わなかった。


4.閉会の挨拶と学生からの感想

三澤副所長より京大炉用燃料を加工しているフランスFRAMATOMを訪問した感想として、毎年約2000人を新規採用(毎年20%は転職)していること、日本の原子力学生は年間4,5百人までだろうなど日仏の違いが述べられた。
SNW田辺博三より、感想として参加学生が非常に熱心に講義を聞いてくれたこと、対話も活発に行われたことなどを述べるとともに、これからの活躍に期待したいと述べた。
参加学生の一人から、学生中心の会であり、皆さんの考え方が分かって大変良かったなどの感想があった。
最後に、学生連絡会を代表して、副会長より、シンポジウムが成功裏に終えられたこと、共催団体、スポンサー団体、企業などへの謝辞が述べられた。

5.学生アンケート結果の集計

今回は、シンポジウムとして学生アンケートが行われ、シニアの対話会で通常実施するアンケートは行われなかった。
シニアの講演と対話会に関する学生アンケート結果の概要を以下に示す。
講演について過半数の学生が5段階評価の5、4と回答。感想として、良い未来になる可能性などを考える良い機会になった、原子力に対する世論形成など広い視点でのお話を聞くことができた、日本の原子力の概要を知れてよかったなどの感想があった一方、少し講演者の主観が強く客観性に欠けていたように感じたとの感想もあった。
対話について過半数の学生が5段階評価の5、4と回答。感想として、議論をすることで、実際の問題の自己認識を言語化でき、非常に面白かった、シンポジウムの学びを活かして議論が出来た、他大学の学生の意見を聞く機会は初めてだったので新鮮だったなどの感想があった一方、議論のテーマが少し難しかったなどの感想もあった。
詳細は別添の「事後アンケート結果」を参照して下さい。

6.別添資料リスト