学生とシニアの対話in静岡大学2024年度静岡キャンパス学部学生(後期)報告書

- 学生の関心事の対話を中心に実施
静岡大学静岡キャンパス学部学生(後期)対話会は、連続講義「エネルギーと環境」を受講する人文社会科学部、教育学部、理学部、農学部の2年生、3年生と市民開放講座参加者1名の計84名を対象に実施した。
連続講義「エネルギーと環境」では、エネルギー・環境問題と社会との関わり、エネルギーセキュリティ、原子力発電の仕組みと課題、放射性廃棄物の処理処分、地球温暖化の科学、温室効果ガス削減の取組、核融合炉、放射線測定と影響等の幅広い分野にわたって講義が行われている。今回の対話会はその一環として開催されており、対話のテーマは世話役の教官と相談のうえで、講義に関連する①エネルギー・環境問題、②エネルギーセキュリティ、③核融合、④原子力発電、⑤原子力防災の5テーマとし、計8グループとした。
学生のグループ分けは、世話役の教官の事前アンケートで把握された学生の関心テーマに基づいて行われた。人数の関係上、4教室、各教室2グループに分かれて対話を行った。< br >
対話では、対話概要のとりまとめと発表を行う学生を指名してスタートした。シニアはファシリテータとして、学生の対話を促進した。
まず、学生から対話テーマに関してどのような関心があるのか、何を意見交換したいのか等を提案してもらい、その中からいくつかの関心事に絞って対話を行った。
学生は、関心事に関して自分の意見を述べ、相互の意見交換を行うことにより、自分の意見を明確にするとともに、問題の理解をより深める等、一定の成果をあげることができた。
1.講演と対話会の概要
(1)日時
- 基調講演 :なし
- 対話会 :令和7年1月14日(火) 10:20~11:50
(2)場所
- 静岡大学理学部B棟210教室、213教室、201教室、A棟大会議室
(3)参加者
- 大学側世話役の先生
学術院理学領域 大矢恭久准教授 - 参加学生
人文社会科学部学生2年14名、3年3名、教育学部学生2年1名、理学部学生2年32名、3年3名、農学部学生2年生20名、3年生6名、学部不明4名、市民開放講座参加者1名の合計84名 - 参加シニア:8グループ、8名+世話役1名
早坂房次、湯佐泰久、田中治邦、デフランコ真子、星野知彦、佐藤俊文、大野 崇、曽佐 豊、田辺博三(世話役)
(4)基調講演
- なし
2.対話会の詳細
(1)開会あいさつ
- 参加学生数が多かったため、4教室、各教室2グループとして8つの対話グループに分かれて開催した。このため、全員の会合は開かず、各教室において、対話グループ毎にシニアから対話方法の説明を行い、シニアと学生の自己紹介から始めた。また、学生のまとめの発表も教室毎に2グループの間で行った。
(2)グループ対話の概要
- 静岡大学静岡キャンパス前期学部学生対話会は、連続講義「エネルギーと環境」を受講する人文社会科学部、教育学部、理学部、農学部の2年生、3年生と市民開放講座参加者1名の合計84名を対象に実施した。市民の参加はここ数年の間では初めてである。
- 「エネルギーと環境」では、エネルギー・環境問題と社会との関わり、エネルギーセキュリティ、原子力発電の仕組みと課題、放射性廃棄物の処理処分、地球温暖化の科学、温室効果ガス削減の取組、核融合炉、放射線測定と影響等の幅広い分野にわたって講義が行われている。今回の対話会はその一環として開催されており、対話のテーマは世話役の先生と相談し、講義に関連する講義に関連する①エネルギー・環境問題、②エネルギーセキュリティ、③核融合、④原子力発電、⑤原子力防災の5テーマとした。世話役の先生により行われた事前の参加学生の関心事アンケートの結果に基づき、8グループに分かれて開催した。
- 対話では、対話内容のとりまとめと発表を行う学生を指名してスタートした。シニアはファシリテータとして、学生の対話を促進した。
- まず、学生から事前の関心事アンケートに基づき対話テーマに関してどのような関心があるのか、何を意見交換したいのか等を提案してもらい、その中からいくつかの関心事に絞って対話を行った。
- 学生は、関心事に関して自分の意見を述べ、相互の意見交換を行うことにより、自分の意見を明確にするとともに、問題の理解をより深める等、一定の成果をあげることができた。
- 学生はグループ毎に対話内容をまとめた。
- 最後に、教室毎に2グループの学生が相互に発表を行い、意見交換を行うことでより理解が深められたものと思う。
以下、各グループ対話の概要である。
- 1)グループ1
- テーマ
- エネルギー・環境問題
- 参加者
- 学生:11名(人文社会科学部2名、理学部4名、農学部5名)
- シニア:早坂房次
- 対話内容
- シニアの自己紹介の後、学生からの自己紹介を志望動機・疑問を中心に述べてもらった。
- 時間短縮のために同封の「エネルギーと環境」①グループ資料.pdfを大矢先生経由でteamsにて配布いただいていたが学生は見ていなかった模様。(当日紙にても配布)
- 事前質問では農学部学生より「農学部と環境」とは何かというものが多かったので、逆に個人的印象では農業は森林を伐採し、単一種類の作物を栽培、機械化農業や化学肥料では化石燃料などのエネルギー投入が行われ、特に畑作授業では化石水などの灌漑農業がおこなわれているが、四大古代文明も黄河文明以外は気候変動や塩害などによる農業生産性の低下で崩壊した旨を配布資料なども使って説明し、授業ではどう扱っているか逆質問した。しかし、学生からは初めて聞く話のようだった。
- 放射線・放射性物質・放射能について1Fやチョリノービリの例を出し、報道と現実の差が結果的に無辜の生命を奪った話などもした。
- 学生数が11名と多いわりに時間が1時間と短く、各学生に2回ずつ発言してもらうのがやっとだった。従って、学生側の討論は実質的に殆どなかった。
- 土地柄(愛知県出身者も複数いた)南海トラフ地震に対する関心は高く、浜岡は津波対策がされているが火力対策がほとんどなく、被害想定では2年間は火力は動かない可能性があると話したが、衝撃であったようだ。自動車産業に関係がある土地柄もあり、世界の半分を占める中国市場は6割はEVなど新エネ車で日本の自動車メーカーは壊滅的状況にあり、北米頼みになっていると、将来の化石燃料輸入が懸念される旨話したらショックを受けているようであった。
- 日本の人口が減るのでそれでいいと主張する向きがあり、世界人口は少なくとも今世紀後半までは増加し、相対的に日本は国力が低下し現在の生活水準は今のようなエネルギー政策などが続けば維持できない旨を述べた。その一人以外はそれでは困ると認識したようであった。
- その一人の学生(農学部)も授業でESGというのは科研費が取りやすいからだと教員が言っていたようで「科学者は学生時代は’真理の追求’を求めるが、研究者になると’生活のため’になってしまう面はよく見る」と話したら納得し、そのほかの私の話にも同感してくれていた。
- 他の学生(特に5人いた女子学生)は終了後簡単に感想を聞いたが、感心いただけていたようであった。
- シニアの感想:過去のアンケートからシニアは発言を控え学生の討論を促せという方針だったが現在の枠組みでは学生も2年生中心で専門的知識に乏しく、発言はまだよくわからないという趣旨が目立った。また、原子力の必要性や放射線への理解は授業を受け、ある程度あるようであった。(高校まで受けてきた授業との乖離、あるいは初めて聞いたという意見も聞かれた)
- 2)グループ2
- テーマ
- エネルギー・環境問題
- 参加者
- 学生:10名(人文社会科学部4名、理学部2名、農学部4名)
- シニア:湯佐泰久
- 対話内容
- 下記の4点に絞って対話した。学生の間で意見交換や情報交換が進められた。シニアは情報の追加や修正を行なったり、学生に追加説明を求めたりした。対話の要点を以下に示す。
- 国立公園の地域や温泉の地域となっている所が多く開発に限界がある。
- 地域と協力して開発を進めている地域もある。ただ、主要電源になることは難しい。
- 安定電源で、脱炭素電源でもある。
- 地元の人によく理解をしてもらう必要がある。日本としては頼らざるを得ない。
- 世界的に協力して開発が進んでいる。
- 解決すべき技術的問題が多い。商業用発電が実現する時期は明確ではない。
- これからも、研究は続けるべきである。
- 3E+Sのように、エネルギー問題と環境問題を合わせて議論する必要がある。
- シニアの感想:学生の発言は一応、継続したので安堵した。ただ、問題の一面だけでなく、(短所と長所のように、)多面的に情報・意見交換するように促した。短時間であったが、比較的多くの発言があり、意見交換できた対話会であったと考える。
- 3)グループ3
- テーマ
- エネルギーセキュリティ
- 参加者
- 学生:9名(人文社会科学部2名、理学部5名、農学部1名、市民開放講座参加者1名)
- シニア:田中治邦
- 対話内容
- 日本のエネルギーセキュリティ確保の難しさについて、第7次エネ基でのNDC案、2040年エネ需給見通し、基本政策分科会資料など事前に用意したものを配布し、論点を10分弱で説明。
- 以降、全員に順番に意見発言を求め3周まわした。シニアの発言は最小限。
- 学生達は、2040年にもエネルギー自給率を3割程度までしか高められない見通しであること、カーボンニュートラルも現実的な目標に再設定すべきこと、あらゆる努力をするしかないこと、原子力も使わざるを得ないので国民理解の獲得が重要であることを良く理解したと見え、有意義な意見交換がなされたと考える。
- 学生によるとりまとめ
- 2050年カーボンニュートラルは極めて難しい。
- 現在までの実績を見るとどこの国もうまく行ってない。
- しかし、企業も個人も目標を理解し、優先順位を付けて取り組むことが必要。
- エネルギーセキュリティの重要性について、現在の国民の理解向上と、次世代の子供たちへの教育が重要である。
- 4)グループ4
- テーマ
- 核融合
- 参加者
- 学生:10名(理学部6名、農学部4名)
- シニア:デフランコ 真子
- 対話内容
- 学生の皆さんが核融合の授業の後に感じた疑問点について、解説を交えて意見交換した。学生の気づき事項や意見を踏まえて以下の通りとりまとめた。
- -プラズマ閉じ込めの原理や方式について、トカマク以外にもヘリカルやレーザーがあり、その違いと日本でこれらの方式が研究されていることが良く分かった。
- -核融合発電は原子力発電所に代わるものと考えていたが、核融合プラントの運転に膨大な電力が必要ではないか。だとしたら、核融合炉に電気を供給する低炭素電源がずっと必要。
- -核融合発電実証が今世紀中葉なら、核融合が発電プラントとして実現できるのは随分先と理解した。まだまだ開発課題が多数あり、世代を超えて開発を継続していかないといけない。
- -核融合は軽水炉より安全と言われるが、何か起きるとすぐ反応が止まってしまうということの裏がえしでもある。ただし超長寿命廃棄物が出ない、使用する唯一の放射性物質がトリチウム、という点で安全対策は軽水炉よりも合理的に行える部分がある。
- -トリチウムは炉内で作ると聞いたが、ものすごく複雑な反応で驚いた。また初期装荷分は必ず必要であり、それをどう調達するかも課題だと思った。
- -核融合の技術や開発の重要性を国民にもっと伝えて、国が開発を後押しすることをみんなにサポートしてもらう必要があると思う。
- -核融合発電でも人、環境へのリスクはもちろんある。リスクというものは有る無しで語れず、高い低いで語るものだと理解できた。科学技術にリスクはつきもの、これは自分の勉強する分野にも共通することだと思った。
- シニア所感:学生が漠然と感じていた核融合に対する熱い期待を少しクールダウンしてしまったかもしれないが、技術の現状やいつ頃できるかなど、よりクリアなイメージをもっていただけたと思う。海外生活で感じたことを聞かれ「母国語で母国の大学で高いレベルの研究や勉強ができる日本は世界的に恵まれている。ぜひこの恵まれた環境に感謝し勉強に励んでほしい」と伝えた。
- 5)グループ5
- テーマ
- 原子力発電
- 参加者
- 学生:10名(人文社会科学部2名、理学部4名、農学部4名)
- シニア:星野知彦
- 対話内容
- 事前のアンケートでは、将来の日本のエネルギーにおける原子力発電の位置付け、安全対策の状況、国民への理解活動などについて話を聞きたいとの要望があったが、それに拘らず学生ひとりずつから原子力発電に関して関心のあること、知りたいこと等を紹介してもらい、意見交換することとした。
- 学生から紹介された関心ごとを大まかに整理すると以下の通り。
- -福島事故に伴う農作物、海産物に対する風評被害について
- -クリアランス物の利用、活用が進まないことについて
- -フランスなどの原子力発電積極利用の国と日本における国民意識の違いについて
- 意見を交わしていくにつれ、これらの課題に共通する問題点が次の通り整理されてきた。
- -国民に正しい情報が伝わっていないのではないか?
- -正しい情報はどこにあるのか?
- -国民が正しい理解をするにはどうすればよいか?
- それに対して次のような議論が交わされた。
- -高齢の人はテレビ、新聞が主な情報源。情報収集意欲はあるものの、そこから得られた情報を信じてしまいがち。若い世代はインターネットを用いて多種多様な情報に接することができるものの、そもそも興味がなければ情報を収集しにいかないこと、収集しようとしても正しい情報の選別が課題。
- -風評問題、放射性廃棄物に対する嫌悪感が存在するのは理解できる。それを払拭するには国民が自ら学習していくことが大事であるが、やはり教育として組み込んでいく必要があるのではないか。
- シニアの感想:今回の対話では、学生一人ひとりに関心のある事を話してもらい、風評問題、クリアランスの課題など一見バラバラのテーマの議論となるのではないかと思ったが、いずれも国民がいかに正しい情報に触れ、正しく理解するにはどうすればよいか、というところに落ち着き、安堵した。最後にシニアから、「昔は何か調べるのにも図書館に出向いたりしなければ情報に辿り着けなかったが、若い世代の皆さんはデジタルツールで容易に大量の情報に触れることができる。少しでも疑問に感じたら、自ら調べ、情報を収集し、正しい情報を選別してほしい。間違っていると思う情報に対しては自らの意見を言えるようになってほしい。」と締めくくった。
- 6)グループ6
- テーマ
- 原子力発電
- 参加者
- 学生:10名(理学部5名、農学部3名、当日追加参加2名(学部不明))
- シニア:佐藤俊文
- 対話内容
- はじめに学生の皆さんから順番に原子力発電について知りたいこと、関心事項について発言してもらった。また、PCを持っていた1名に記録をお願いし、発表者を選出してもらった。
- 関心事項等は、廃棄物処理、原子力発電、反対理由、日本が世界のように原子力を進められない理由、福島第一原子力発電所事故後の安全対策、原子力発電の効率向上とコスト削減、原子力発電へのAI活用などであった。
- 原子力発電に対する賛成、反対を確認したところ、消極的な賛成、積極的な賛成の違いはあったが、全員が原子力発電の活用に賛成であった。学生間の意見交換により、「日本で原子力発電を普及させるには」がテーマとなった。本テーマについての学生たちの議論の中で、当方は質問等に応えるとともに、ファシリテータとして対話を促進した。対話の要点を以下に示す。
- -海外では原子力発電を推進しているが、日本では停滞している。
- 今後は日本でもデータセンター等の需要が期待され、さらに電気が必要。
- -再生可能エネルギーは安定した供給ができないため、他でバランスを取る必要がある。
- -太陽光発電、風力発電、地熱発電等でも環境問題がある。
- -原子力発電は安定したエネルギー供給ができ、燃料輸入の問題も少ない。
- -原子力発電は反対意見が多い→正しい情報が伝わらない、情報を得る機会が少ない。
- -海外は原子力発電を推進している → 安全が証明されているからなのか。地震が少ないからなのか。
- -核融合が利用できるまで、原子力発電を代替として利用する。
- -福島第一原子力発電所の事故のイメージが大きい→正しい情報の普及が必要。(皆、地震で発電所が壊れたと思っている。津波が原因だと知らない。)
- -浜岡原子力発電の近隣住民でも正しい情報が伝えられない。
- -反対意見の人が多い。
- -正しい情報が伝わっていない。
- -原子力発電や他の発電方法のメリット、デメリットが知られていない。
- -原子力発電に対して隠蔽のイメージがある。
- -原子力発電所の建設には時間がかかる。
- -電力会社や政府など関わる組織が多く、役割が縦割りで、うまく機能していない。
- -小学校、中学校の授業などで原子力発電に関する正しい情報を学べるようにする。
- -影響力のあるメディア、著名人(インフルエンサー)から原子力発電に関する正しい情報を発信できるようにする。(TVを見ていると答えたのは10人中2人であり、TVの影響力の低下についての意見があった。)
- -様々な発電方法の事実を伝える(賛成、反対を述べない)
- -YouTubeなどSNSを活用して情報を発信する。(YouTubeでは自分の関心事しか検索しないので、情報発信の難しさについても意見があった。)
- -年代が若返れば、自然と原子力の推進派が増えるのではないか。
- シニアの感想:最初は学生の自発的な発言が無かったため、順番に発言を求めた。議論が進む中でテーマも学生が選定し、自発的な意見も出てきたことで、とても良い検討会になったと思う。
- 7)グループ7
- テーマ
- 原子力防災
- 参加者
- 学生:11名(農学部1名、人文社会科学部3名、理学部4名、当日追加参加3名(学部不明))
- シニア:大野 崇
- 対話内容
- 最初に学生側の書記、発表担当者を決めた後、簡単な自己紹介並びに原子力防災に関する質問、関心事を述べてもらい対話会に入った。
- 学生は、学部、学年も異なるため、共通の認識を持ってもらうため、最初に、シニアよりこれまで世界で起こった原子炉事故の紹介と原子力防災の必要性、原子力防災の全体像のおさらいを行なった。
- 学生の積極的な対話会参加が目的であるので、学生からの質問、意見等の発言を促すとともに、シニアから逆質問や説明を交え以下について活発な対話がなされた。
- Q 放射線がどのように遺伝子に影響をあたえ障害をもたらすのか?
- A 皮膚や臓器の細胞の再生機能が失われる急性障害と、遺伝子異常に伴う晩発性障害(がん)をもたらす。
- Q 事故時に許容される放射線量は?
- A 国際基準は年間20~100ミリシーベルト。各国が選択。福島事故では年間20ミリシーベルト以上の地域を避難対象と決めた。過去の基準は1事故当たり10ミリシーベルト以上の地域が避難対象。どこまで除染すればよいかについては5ミリシーベルト、1ミリシーベルトと議論がなされたが1ミリシーベルトが選定された。
- Q 海の汚染は?汚染した魚を摂取することは問題ではないか?
- A 海で放射性物質が薄まるので基準値を超えることはなかったが、風評被害で魚が売れず、漁業関係者は最後までトリチウム水放出に反対。風評被害は数値の問題でなく気持ちの問題なので、漁業関係者の苦労は並大抵のものではなかった。
- Q 津波対策は?浜岡は高い防潮堤を設置と聞くが他の発電所でも対策をしているか?
- A 浜岡は28メートルの防潮堤を設置。他の発電所も地形に応じた防波堤や防潮堤により津波対策を実施。津波対策以外にも、福島事故が電源が失われ冷却ができなくなったことから電源車や水源車を設け、冷却機能等の強化を図った。外国では強化されていたのに日本では事故は起こらないという安全神話が災いし反映していなかった。原子力は止めるべきという声もあるが、電力を賄えずやはり原子力は不可欠。上記以外に、アメリカで航空機テロにより原子力発電所も狙われたことから、100メートル以上離れた位置から原子炉や格納容器を冷却できるテロ対策設備も新たに設置された。
- Q 発電所職員の避難対応はどうなっているのか?
- A 事故対策要員が問題。緊急時対策所(シェルター)に避難するが現場作業は被ばく量を減らすため交代制で行う。
- Q 住民の避難対策はどうなっているのか?
- A 自治体により異なる。避難用のバスを何台も用意できないので自家用車避難となるが道路の混雑、道路整備、弱者避難などの課題は日頃の訓練で改善していくこととなる。避難計画が十分でないので原発反対の意見は建設的ではない。
- シニアの感想:学生のまとめ、発表能力には隔世の感がある。学生数が11人と多くかつ時間が60分と限られていたので全員発言というわけにいかなかった。やはり全員発言の工夫が欲しい。原子力防災を授業に取り入れている学校は静岡大ぐらいで防災の意識の高さを感じた。
①地熱発電について
②原子力発電について
③核融合発電について
④エネルギー問題と環境問題の両立
①海外と日本の比較、今後の電気
②発電に関する学生の意見
③原子力発電が普及しない理由
④解決方法の提案(原子力発電の正しい知識を広めるために)
- 8)グループ8
- テーマ
- 原子力防災
- 参加者
- 学生:13名(人文社会科学部2名、理学部4名、農学部1名、当日追加参加6名(学部不明)
- シニア:曽佐 豊
- 対話内容
- 学生側の書記と発表者を決定後に、自己紹介と関心事、聞きたいこと、疑問に思ったことを発言してもらい対話会を進めた。
- 関心事、聞きたいこと、疑問点についてシニアが簡単な説明を行い、一巡後に学生側で自由に討議を進めた。自由討議を通してテーマは、原子力発電の安全とリスク、リスクとして地震対策及び防災対策に絞られていった。急遽学生の参加者が2名追加となったため、自己紹介や各自の関心事等の説明に時間をとられてしまい、シニアの質問回答を時間的制約のため簡素化せざるを得なかった。学生が作成した報告書を読むと、誤解や理解が不十分な点があり反省点である。
- 書記がまとめた討議内容について、学生全員で再度質疑を行い、追加事項を加え、現状認識と課題をまとめた。
- 当グループのテーマは原子力防災であったが、対話の中で原子力利用のメリットとリスクについて自分たちも含めてよく理解していないのではないか、特にリスクについて具体的にイメージできないことが不安を大きくしているのではないかとの認識に至り、中学生や一般の人々への教育の必要性など、解決するための課題について対話を進めることができた。
- 原子力防災について対話を行ったグループ7とグループ発表と質疑を行った。
3.講評、閉会のあいさつ
- 参加者は初めから最後まで2つの教室に分かれて対話会を行っため、全体での講評、閉会のあいさつは行えなかったが、教室毎のグループ間の相互発表、意見交換などを行うことでより理解が深められたものと思う。
4.学生アンケート結果の概要
(1)参加学生について
- 静岡大学静岡キャンパス前期学部学生対話会は、連続講義「エネルギーと環境」を受講する人文社会科学部、教育学部、理学部、農学部の2年生、3年生と市民開放講座参加者1名の合計84名が対話会に参加。
- 参加学生84名のうち79名が回答。回収率は94%。
- 学生は理系72名、文系21名との回答があった。
- 進路は約51%が就職、約49%が進学を希望。
(2)対話会について
- 対話会の満足度は「とても満足」、「ある程度満足」が合わせて95%、「やや不満」、「大いに不満」は5%。ポシティブな意見は新しい知見が得られたが最も大きく、次いでマスコミと対話の情報に違いがあった、将来の参考になったが挙げられ、若干名が教育指導の参考となった、みんなの考えの違いを知れたを挙げた。また、最後の本企画を通した感想にもポジティブな意見が述べられている。一方、ネガティブな意見として、対話内容が難しかったが最も大きく、次いで、対話時間不足、次いで、希望内容が対話出来なかった、シニアの話が長かったが挙げられており、若干名であるが、一人一人順に回答していく方式だったので順番が来るまで発言できない雰囲気があった、全員発言してなかったが挙げられた。今後の改善の参考にしたい。対話時間に与えられた時間は授業一コマ分(90分)に制約されており、今回は自己紹介等の所要時間を短縮し対話時間を60分増やしたが、参加学生の人数が多く、改善は難しかった。引き続き改善方法を模索したい。
- 対話会の必要性は「非常にある」、「ややある」が合わせて約97%であり、「あまりない」は3%。1名から必要性があまりない理由として、様々な発電方法についてデメリットだけでなくメリットや夢も語って欲しい等があった。今後の対話の注意点としたい。
(3)意識調査について
- 放射線・放射能については、「有用であることを知っている」が98.7%であったが、「恐れる必要はない」は92.4%で、7.6%の回答は「放射線レベルに関係なく怖い」という回答であった。
- 原子力発電については、「原子力発電の必要性を理解あるいは認識している」学生が大半であった。危険だから早期に削減、撤退すべきが1.3%(1名)であった。
- 再エネ発電については、「環境にやさしく拡大すべき」が最も大きく63.3%、次いで「天候に影響を受けるので利用抑制すべき」が15.2%、「環境破壊につながるので利用抑制すべき」が12.7%であり、8.9%は分からないと回答した。
- カーボンニュートラルとエネルギーについては、「地球温暖化や脱炭素社会の実現の関心」は殆どの学生が「大いにある」、「少しある」と回答した。「興味や関心があるのはどの項目でしょうか?(複数回答可)」については幅広い関心を示した。「日本の2050年脱炭素化社会の実現可能性について」は、「実現するとは思えない」が最も大きく52.6%であり、「分からない」が24.4%、「相当いいところまで到達する」が23.1%と、拮抗していた。「脱炭素に向けた電源の在り方」については、「化石燃料発電を最小とし原子力発電と再エネ発電の組み合わせが望ましい」が最も大きく46.2%であり、次いで「原子力発電、再エネ発電、化石燃料発電をほぼ均等に組み合わせることが望ましい」が28.2%、「原子力発電と化石燃料発電を最小とし、再エネ中心が望ましい」が20.5%、「分からない」が5.1%であった。
- 高レベル廃棄物の最終処分については、「関心や興味が大いにある」、「少しある」が合わせて81.0%、「あまりない」、「ない」が合わせて19.0%であった。「近くに処分場の計画が起きたらどうするか」については「反対しないと思う」が53.2%であり、「反対すると思う」が24.1%、「分からない」が22.8%とほぼ拮抗している。「地層処分について興味や関心がある項目」については「技術」が最も大きく75.9%、次いで「処分地の選定」が30.4%、「制度」が29.1%とほぼ均衡していた。