日本原子力学会シニアネットワーク連絡会
報告
学生・教員・市民とシニアの対話会

SNW対話in静岡大学2022年度 前期報告書

日本原子力学会シニアネットワーク連絡会(SNW)世話役 田辺博三
《静岡大学静岡キャンパスと富士山》
学生間の対話を中心に実施
静岡大学対話会(前期)は、「放射線利用分析特論」を受講する理学専攻の修士1年生7名を対象に実施。大矢先生の、学生は自分の意見を積極発言し学生間で討論するように、シニアはそれをサポートしてほしいという意向に従い、学生が対話テーマを提案し、提案理由や問題意識等を説明し、その後、学生間で意見交換を行うという形式で実施した。シニアは、学生の発言を促すとともに、質問を行ったり、必要と思われる情報を提供することにより、ファシリテータとして対話を促進した。
学生は、提案したテーマに関して自分の提案理由の説明、相互の意見交換を行うことにより、自分の意見を明確にするとともに、問題の理解をより深める等、本形式により一定の成果をあげることができた。
対話会は、静岡大学の活動指針に基づき、コロナ対策を十分行った上で対面で実施した。

1. 講演と対話会の概要

(1)日時

基調講演  :なし
事前質疑応答 :なし
対 話 会  :令和4年7月4日(月) 12:45~16:00(対面)

(2)場所

静岡大学理学部A棟2F大会議室

(3)参加者

大学側世話役の先生
静岡大学 学術院理学領域 大矢恭久准教授
参加学生
「放射線利用分析特論」を受講する理学専攻の修士1年生7名
参加シニア:2グループ、4名
早瀬佑一、湯佐泰久、大野 崇、田辺博三(世話役)

(4)基調講演

なし

(5)事前質疑応答

なし

2.対話会の詳細

(1)開会あいさつ

学術院理学領域 大矢恭久准教授 殿

対話テーマは学生より提案し、シニアも交えてしっかりと対話してもらいたい、等の趣旨説明があった。

SNW世話役 田辺博三

対話会の進め方について、資料にもとづき、説明した。

(2)グループ対話の概要

グループ対話は、グループ1は3名の学生、グループ2は4名の学生に分かれ、各グループに2名のシニアが加わって行った。
大矢先生より、事前に、学生に対して、対話テーマを各自考えておくようにご指導があったことなどにより、対話テーマの提案、選定から対話まで、スムーズに進めることが出来た。
以下、各グループ対話の概要である。
1)グループ1
テーマ
学生より対話テーマの提案がなかったため、シニアが予め用意したテーマ案の中から選んでもらったところ、テーマ(1)原子力発電の現状と今後、テーマ(2)カーボンニュートラルについて、テーマ(3)ウクライナ問題と今後の社会、について対話することとなった。
参加者
学生:3名(修士1年)、うち、生化学のDNA研究が2名、核融合研究の金属ナトリウム研究が1名。
シニア:早瀬佑一(ファシリテータ)、湯佐泰久名
テーマ(1)
原子力発電の現状と今後
対話内容
東電福島第一原子力発電所の事故原因は津波対策の不備であった。事故の反省と教訓を活かし再稼働した原子力発電所は、同じ事故が起きないような対策を既に実施している。
今後の我が国のエネルギー需要は高まることが予想される。そのエネルギー確保のためには原子力発電も必要である。太陽光や風力などの再生可能エネルギーはコストが高い、また、変動があり安定しないなどの問題がある。したがって、原子力発電所の代替にはならない。
テーマ(2)
カーボンニュートラルについて
対話内容
カーボンニュートラル、すなわち、排出量と吸収量の合計で二酸化炭素ゼロにするのは、実際には実現困難なのではないか。
日本の二酸化炭素排出量は世界の中で約3%と少なく、日本の寄与率は小さい。この問題は政治的側面が強く、海外では対策を実施していない国も少なくない。なお、地球規模でみると、二酸化炭素吸収量が大きいのは森林と海である。
テーマ(3)
ウクライナ問題と今後の社会
対話内容
ロシアからの天然ガスが入手困難になる。また、世界的な価格高騰により、ロシア以外からも入手困難になる可能性がある。日本はエネルギー確保に苦慮する可能性が高い。
核兵器が使われる可能性はまったくないとは言えないのではないか。世界はそれを恐れている。
このロシア・ウクライナ戦争は食料・エネルギー問題だけでなく、さまざまな面にわたって世界的な影響を生じる。戦後の世界は大きく変化する可能性がある。
しかし、世界がどのように変わるか、日本への影響については予想できない。まずは、多くの事に関心を持ち、自分の考えを持つことが大切である。
2)グループ2
テーマ
学生より、対話テーマとして、テーマ(1)小型原子炉の実用化に関する問題点、テーマ(2)何故再稼働できないのか、テーマ(3)原子力発電の必要性、が提案された。
参加者
学生:4名(修士1年)、うち、DNA研究が2名、金属錯体による有害物除去研究が1名、核融合炉関連研究が1名。
シニア:大野 崇、田辺博三(ファシリテータ)
テーマ(1)
小型原子炉の実用化に関する問題点
対話内容
三菱のトラックに乗った小型炉の写真をみてコンパクトで運搬可能な小型炉に関心を持った。
大型炉の比べいろいろなニーズに対応できるのがメリット。
いろいろなところへ持っていくので危険ではないか。
経済性はあるのか。
結論
小型炉に経済的メリットはないが、今後のニーズに応じて様々な用途へ適用ができる。放熱で冷却するので安全性は確保される。
テーマ(2)
何故再稼働できないのか
対話内容
原子力はなぜ止まっているのかに疑問を抱いた。
(シニアより)基準が厳しくなりかつ地元住民の了解が再稼働条件となったことを説明。
もっと安全対策について知ってもらい正確な理解を得る必要がある。
安全と安心のバランスが大事。
結論
新規制をパスするためには新しく設備を建設する必要があり、お金も時間もかかる。また、地元住民からの了解を得るにはさらなる理解が必要である。
テーマ(3)
原子力発電の必要性
対話内容
核融合炉の研究をしている。原子力発電は核融合炉へのつなぎと思っている。
現在、エネルギー確保には多様電源の確保が必要で原子力もその一つで必要。
原子力発電は高レベル廃棄物の問題がついて回る。その処理が問題。
核融合炉は高レベル廃棄物の問題がない。
結論
今は原子力発電は必要であり、廃棄物は陸地処分の技術見通しが得られているが社会的受容性に難がある。将来的には核融合炉に期待。

(3)講評

グループ毎に対話会の結果をとりまとめ、各グループの代表学生より説明された。
参加シニアより、以下の講評があった。

シニアの基調講演なし、学生からの事前質問なしであったが、大矢先生の自分の意見を明確にして対話に臨むように、シニアは学生の討論をサポートするようにという指示が機能し、限られた時間内で実質的な対話が行われたというのが感想である。また、対話テーマを事前に決めずに始まったので、どうなるか心配したが、参加学生より積極的にテーマの提案があり、杞憂に終わった。ただし、対話会参加学生は、エネルギー関連の研究に従事していない学生もおり、原子力発電の知識が十分ではないことから、今回の対話テーマの内容やシニアから提供された情報の理解が十分出来ていない点があるように見受けられた。

今回の対話を通じて、幅広い問題に対し、事実・データを把握すること、自分の意見を持つこと、他人の意見に接することの大切さの一端を感じ取ったのではないかと思う。 今後の成長が楽しみである。

大矢准教授より、以下の講評があった。

対話会には敢えて参加しなかったが、学生の対話会結果のとりまとめを聞いたところ、予想以上の良い議論が出来たのではないかと思われる。

(4)閉会の挨拶

田辺博三(対話会世話役)

本日はどうもお疲れ様でした。実のある活発な対話会を開催することができました。これも大矢先生、学生諸君、シニアの熱意の賜物と感謝を申し上げます。ありがとうございました。

3.参加の先生とシニアの感想

報告書を参照ください

4.学生アンケート結果の概要

報告書を参照ください

5.別添資料リスト

(報告書作成:2022年7月28日)