SNW対話 in 福井工業大学2022(第17回)概要報告書

2022年12月17日(土)に福井工業大学・福井キャンパスにて今回で第17回目となる学生とSNWシニアによる対話会が開催された。参加者は学生11名(全員が原子力技術応用工学科専攻で自主参加)、教員5名(全員が原子力技術応用工学科)、SNWシニア8名の計24名であった。参加予定の1年生11名が急な学内事情で参加できず対話会計画の一部が実現しなかったのが残念であった。然し、対話のためのグループテーマを軸に世代を超えた双方向対話が機能し学生とシニアがお互いに学びあう融和的で充実した雰囲気の中で対話会が進められた。尚、基調講演については今回の新規試みとして、全員集合での講演をするのではなく予め音声解説入りの講演資料(音声付PPT)を学校側へ送付し学生の都合に合わせて適宜講演を視聴するスタイルとした。
今後も対話会を継続する事が確認された。
1.講演と対話会の概要
(1)開催日時
- 対話会 :2022年12月17日(土)13時~17時10分 対面方式
- 基調講演 :学内にて音声解説付き講演資料で適宜実施
(2)開催場所と世話役
- 福井工大・福井キャンパス 5号館7階教室、3号館実験室
- 大学側 :野村准教授(原子力技術応用工学科)
- シニア : 針山日出夫(SNW,エネ会)
(3)参加者
- 学生 :原子力技術応用工学科2~4年、修士(11名、当日参加予定の1年生11名は学校行事の都合で急遽欠席)
- 教員 :福井工大 原子力技術応用工学科の先生方 計5名
(野村先生・岩永先生・砂川先生・松浦先生・青木先生) - シニア:中村威、川合将義、大石晃嗣、松永健一、幸浩子、宮川俊晴、大西祥作、針山日出夫
計8名
(4)基調講演(後記参照)
- 演題:世界主要国のエネルギー政策の最新動向 約45分
- 講師 :SNW針山日出夫
大学側で学生都合などを勘案し適宜実施(12月10日までに終了)
(5)グループ対話テーマの概要とシニアの担当
- ❐Gr1 日本の電源構成(昨年同様)シニア:松永健一、大西祥作
- ❐Gr2 原発の安全対策 シニア:中村威
- ❐Gr3 放射線利用(医学への応用・がん治療)シニア:川合将義、大石晃嗣
- ❐Gr4 新型炉開発 シニア:針山日出夫
- ❐Gr5 高レベル放射性廃棄物の地層処分シニア:幸浩子/宮川俊晴
(当グループは参加予定の1年生の学校行事の都合で実施できず。)
2.基調講演の概要
<講演の狙いと背景状況>
- 2022年2月のロシアのウクライナ侵略という蛮行により国際秩序が破壊された結果、世界はエネルギー危機・人道危機・食糧危機に包まれている。ウクライナ侵略は長期化の様相を呈しておりエネルギー資源確保の不確定性と経済混乱は一層混迷を深めそうである。この様な状況下で、欧米主要国は「脱炭素政策」と「エネルギーの自立化政策(エネルギーの脱ロシア依存)」の両立に苦悩している。日本はエネルギー危機と世界の分断の実情/虚像を見極める透徹した姿勢で真の課題と冷静沈着に向き合い果敢に政策発動することが問われている。 今回の福井工大での貴重講演では、最近の世界主要国のエネルギー政策を俯瞰しつつ、併せて日本のエネルギー政策の課題・選択の論点を概説したもの。(講演時間は約50分)
<講演構成と要点>
- ― 学生諸君に知ってほしい最近の世界のエネルギー関連重要事態の紹介
(脱炭素の不透明感・欧州発エネルギー危機への対応・世界の原発回帰気運) - ① 日本のエネルギーの実情と電力逼迫
- ― 燃料資源の高騰・海外依存、最近の原子力政策の大転換の背景、電力逼迫の構造的理由と対策の在り方を概説
プロローグ:この1年の世界動向全貌
3.テーマ別グループ対話
<Gr① 対話概要報告 報告者 大西 祥作>
- 対話テーマ:日本の電源構成
- 参加メンバー:(学生)3年生3名 (シニア) 松永健一、大西祥作
- 対話概要:
- 対話での主な話題(順不同)
- ➀希望進路
- 3人とも希望進路として電力会社や原子力関連企業への就職を希望しているとのこと。
- ➁対話に希望すること
- ➂原子力発電の再稼働等に対する理解
- ④ドイツのエネルギー戦略の失敗
- ⑤エネルギー資源確保に対するリスク回避
アイスブレークとして参加している学生からそれぞれ自己紹介(氏名、出身地)、希望進路及 び対話に希望することを話してもらった。その後事前配布のミニレクチャー資料を用い、日本 の電源構成、各電源の動向や特徴、更には原子力発電所の新設・リプレース及び2050年カー ボンニュートラル達成に向けた電源構成比について説明した。説明の途中で学生からの質問、 シニアからの回答並びにそれを受けた意見交換を実施した後、2050年に向けた電源構成につ いて意見交換を実施した。
2050年カーボンニュートラルに出来るのか? 日本の資源の確保は可能か?2050年より更に 先を見据えて考えたい等エネルギー&電源問題を俯瞰的にとらえた発言があり。
昨年度と同様、原子力発電が電源構成の一部を担うためには技術的問題ではなくマスコミや 国民への説明や理解を得る必要があるとの意見が出た。
ロシアのウクライナ侵略に伴うドイツのエネルギー戦略の失敗について意見交換がなされた。 また日本とドイツの状況が違うことも議論された。
日本は大半のエネルギーを輸入しており、その中でもオーストラリアからかなりの割合でエネルギー資源を輸入している事実が共有された。現在オーストラリアは自由主義圏内の友好国であるが、日本としてエネルギー資源確保のためのリスク回避策を真剣に考える必要があることも議論された。
Gr② 対話概要報告 報告者 中村 威>
- 対話テーマ:原子力発電の安全について
- 参加メンバー:(学生)3名 (シニア)中村威
- 対話概要:
- 以上のような現状においてこれからの技術者の果たす役割は大きいが、その基本は“止める、冷やす、閉じ込める” であり、確実にそれをやってもらいたいものである。 上記のような事項について、経験してきた者として、学生達と対話してきたが、その基本を忘れないようにとお願いして終了。学生諸君ありがとうございました。
先に行われた針山氏による基調講演「世界主要国のエネルギー政策の最新動向~脱炭素・エネルギー危機の中で日本の選択は?」 に関連して、「原子力発電の安全について」のテーマで討論資料を作成、約1週間前に資料を送付、野村先生を通じて事前配布していただき、当日対面で参加学生に説明することにした。
当日、週末冷たい雨の降る中、3名の学生が参加、大学院生1名、4年生2名に小生を加えて計4名で対話を開始した。世界における地環境問題、エネルギー問題 またロシアによるウクライナ侵略など複雑化する中で我が国でも原子力発電エネルギーの利用の拡大が取り上げられはじめて来た。
このような情勢を背景として、2011年に発生した東京電力福島第1発電所事故の経験を踏まえて、これからの原子力にどのように活かしていくのか、安全をどのように確保して行けば良いのかを資料に基づき説明、対話を行った。 原子力エネルギーの基本は、安全の確保が最優先されることであり、発電設備の設計、建設、運転に当たっては、その基本となる考えは “止める、冷やす、閉じ込める” ことである。
すなわち、まず核分裂を停止、次いで安全に燃料を冷やすことにより、放射性物質の外部への放散をなくすことで、周辺環境、住民への放射線による被曝を与えないことであるという極めて当たり前のことを実行できるかどうかと言うことである。
福島事故は、そのうち、大津波により各種電源が使用不可となり、原子炉内の燃料の冷却継続が不可能になったことにより、燃料が破損、放射性物質が大気に放出し、住民避難などという事態になったものである。
この事故を受け、時の政権による原子力発電の停止、さらに2013年の新規制の発出などにより各種事故対策の強化、設備の追加など格段の安全強化が計られるようになったが、その審査の長期化などにより、停止を余儀なくされている発電所が多く、現時点ではPWR型炉の数基にとどまっている。この状態が続けば、電力不足など、生活、産業などに多大の影響が出ることになる。
原子力発電所の早期運転開始が望まれるが、その安全確保はその運営者にとって最大の課題であり、設備の強化は当然のことながら、それらを運転、保守管理する人の育成、能力の向上などが重要な課題になってくる。さらに原子力発電所の長期利用となると設備の健全性維持のための日常的、定期的健全性保全がその運用に当たって重要な事項となってくる。
<Gr③ 対話概要報 報告者 大石 晃嗣>
- 対話テーマ:放射線利用(医学への応用・がん治療を含む)
- 参加メンバー:(学生) 2年生2名、3年生1名 (シニア) 川合将義、大石晃嗣
- 対話概要:
- ①参加学生からそれぞれ自己紹介(氏名、希望進路)及び対話に希望することを話してもらった。
- ②川合氏から事前配布のミニレクチャー資料を用い、
- 放射線の基礎
- 放射線の学術利用を含めた利用及び経済規模
- がんを対象とした放射線医療全般
- に関するレクチャーがあった。福井工大の学生諸君はすでに学部の講義で受けている内容であったが、見方の違う観点からのレクチャーでより理解が深まったとの感想であった。
- 対話での主な話題:
- ➀希望進路
- 電力会社、行政、研究関係など放射線医療関連を目指している学生はいなかったが、放射線医療に対して強い関心を持っており、知識として社会での業務に生かしていく意気込みは強く感じられた。また、2名は大学院進学希望であった。
- ➁対話内容
- 外科手術、薬物、放射線治療の長所・短所を討議した。「がん」が原発性で小さいものならば、内視鏡を用いた手術が有利であるが、切除により臓器の機能が失われるような場合は、術後のQOLを考えた場合、放射線治療が非常に有利である。
- 放射線治療の課題の一つに、がん細胞に与える吸収線量が40~50Gyと高線量であるので、精度が高い治療計画が必須であるが、最近は高精度のソフトが開発されており、課題はほぼ解決されている。
- 特にBNCT治療は、神経細胞の近くに発生した「がん」など、外科手術では治療が困難な症例に非常に適しており、学生たちの関心も高かった。
- 放射線治療が海外と比較して日本では進まない理由は、日本の医学界では相変わらず外科医が主導権を握っていることが大きな原因であることを説明した。また、将来医学物理士への挑戦も、社会貢献度が高いこともアドバイスした。
Gr➃ 対話概要報告 報告者 針山日出夫>
- 対話テーマ:次世代炉(革新炉)について
- 参加メンバー:(学生)3年生1名、4年生名(計2名) (シニア)針山
- 対話概要:
- それぞれ自己紹介の後、事前配布したミニレクチャー資料に沿って約50分説明。説明途中と説明後のフリートークで意見交換を実施。
- 対話での主な話題(順不同)
- ➀ 日本の最近のエネルギー政策の大転換
- 日本はなぜ今ここにきて原子力回帰へ政策転換したのか。
その背景と狙いは何か。 - ➁ 世界の主要国でのエネルギー環境政策の政策動向
- ロシアのウクライナ侵略で加速されたエネルギー危機や脱炭素政策やエネルギーの脱ロシアの状況下で各主要国は具体的にどのような政策を掲げているのか。その特徴と原発の評価かどうなのか。
- ③ 内外における革新炉開発の状況と展望
- 大型革新軽水炉・小型炉(SMR)・高温ガス炉・高速炉・核融合炉の内外における開発動向はどうなっているか。今後の展望はどうか。
- ④ 日本における革新炉開発・建設の意義
- エネルギー安定供給・原子力の基幹電源としての位置付け・産業界から見た原子力の不透明性の解消・安全規制審査の予見性等の観点からの意義について。
- ⑤ 革新炉開発が成功するための要件
- 政策の司令塔の在り方、各種炉型の開発・建設優先順位、予算のつけ方、電力会社の新設方針等の観点から成功要因の吟味。
4.参加シニアの感想(グループ担当順)
- 全体報告書を参照ください
5.講評と閉会挨拶
<講評 SNW中村 威>
本日の対話会、福井らしい天候の中、学生諸君、また、先生方、シニアの参加のもと執り行われ無事終了。世の中、地球温暖化、人口増加問題等難しくなりつつある中でエネルギー問題、原発の安全問題、放射線利用、新規原子炉などをテーマにそれぞれ、現状やこれからについての課題や問題点などについて対話がなされ、学生達にとっていい機会が与えられたとともに、また新たにいろいろの課題についても学ぶことが出来たのではないかと考えます。さらに、現在原子力利用の未解決の高レベル放射性廃棄物の地層処分に関して、放射線の見える化や埋設時のベントナイトの吸水性実験など目に見える実験など楽しく勉強できたのではと思います。このような機会を提供していただいた関係者に感謝する次第です。
<閉会挨拶 SNW川合将義>
皆さん、お疲れ様でした。今日の対話会では、それぞれの班のテーマや原子力業界のことなどについてシニアからいろいろな情報を得られたことと思います。短時間の対話で全てを理解することは難しいかも知れませんが、どの班もうまくまとめて報告されたと思います。一方、各班の報告の後の質疑では、シニアから報告された内容に加えて知って欲しいことについてコメントが出されました。その情報も含めて、今回得られた情報を友人や家族を含めて周りの人に伝えて頂きたく、お願いいたします。
なお高レベル廃棄物の地層処分場の問題について一言お伝えしたく思います。この問題についてはNUMOが各地で説明会を開催していますが、なかなか国民の理解が得られず、皆さんも懸念されていることと思います。それは事業のことばかりを示すため、共感を呼ばないと考えます。この福井県美浜町には関西電力美浜1号機があり、1970年8月にそこで発電された電気が一般利用目的で初めて送られて大阪万博会場を照らしました。それから50年以上原発は稼働しており、日本の産業と我々の生活を支えてきたと言えます。1970年代に2度起きた中東戦争により石油危機が起きましたが、原発があったお陰で早期に収まり、日本は世界有数の経済大国になりました。その結果、高レベル放射性廃棄物を持つ使用済み核燃料が溜まったわけです。従って、その処分問題は、その恩恵を受けた我々世代共通の問題として捉えていただけるようになったら良いと考えます。今後も原子力に頼るとすれば、全ての世代の問題とも言えます。そうすれば、処分場提供を検討してくれる 町に感謝の気持ちが生まれることでしょう。とにかく、国民の共感を得るためには、もっと考え、賛否を問わず対話を重ねることだと思います。原子力を志す若い皆さんの頑張りもお願いします。どうも有難うございました。
6.事後アンケート集約と纏め(事後アンケートの集約者:松永健一)
- 全体報告書を参照ください