14th PBNC 2004 特別セッション

Public Information and Outreach

-原子力と社会の関わり-



聴講報告


2004年5月12日

宮沢 龍雄


各タイトル名をクリックすると、それぞれの発表資料にリンクします。


セッションの最後に行われた共同議長の田中靖政先生の閉会挨拶はこちらです。

 

 

 

 

【 緒言 】

本報告は、2004年3月22日―3月26日に米国ハワイで開催された

環太平洋原子力会議(PBNC)で特別に企画された、「Public Information and Outreach」の特別セッションに出席し、そのセッションで提起された数々の事項を纏めたのでここに報告する。

この報告には、会議に参加した、東京大学 山路 氏による会議場での報告内容の記録や、アブストラクトの翻訳を一部お借りして、出来るだけ報告者のストーリーに沿って纏めた。

 

【報告内容】

セッション: PIO-I, The Theory and Methods of Nuclear Communications

タイトル: Public Information and Outreach Regarding the Proposed Deployment of Toshiba ‘4S’ Liquid Metal Reactor in Galena, Alaska

     東芝4Sをアラスカ州ガラナに採用するための情報公開と広報

報告者/所属:Shaw Pittman LLP

 

本報告は、アラスカの地方都市ガレナにおいて、極北の厳しい環境下の地方都市への、新たなエネルギー源としての小型原子炉(東芝4S)の導入に向けたアプローチについてのものである。

ガレナはユーコン川中流域(河口から約100マイル上流)の人口約750人の小さな町で、ここには、世界教育センター、スズキ自動車およびGMの修理工場、および空軍関係施設がある。エネルギーインフラとしては、電力供給は6台のジーゼル発電機により4,300Wの発電をしていて、約8.7マイルの配電線を敷設している。また熱源は62%が灯油・ケロシンで31%が木材の燃焼である。このオイル類は、約200万ガロンが民生用で、1万ガロンが空軍用に消費されている。これらの油は、55ガロンドラムで、不凍結期間にバージで河川輸送される。このための燃料費は年間で焼く200万ドルを要している。また最近の環境の規制が厳しくなり、ジーゼルからの排気ガスの処理も課題になってきている。

このため、新規のエネルギー源の導入を検討し、そのための目標としては、小型で、自己完結型、外観も自然になじむもの、少ないエネルギー供給インフラ、などを設定し、具体的には発電コストは、0.2/Wh、運転・保守費として150万$/年(償却費を考えて現在並)を設定し、かつ新しい環境庁の規制基準をクリアーするという目標とした。

このための非原子力エネルギーの代替案としては、石炭流動床発電、新鋭石炭火力(MWe、カナダからの輸入)、浸漬式中小型水力発電、風力、太陽光、などを検討したが、経済性の評価では、0.2〜1$/Whと非常に高価になった。またシステムによっては環境基準にも問題があることがわかった。

そこで、候補として、東芝の4S型原子炉が候補として挙がってきた。この理由として、30年の燃料無交換、受動的安全性、地下設置可能、半組み立て品をバージで運搬可能で建設費が安価、などの特長を挙げることが出来る。

東芝4SSuper Safe Small & Simple)は、10MWe(30MWt)と50MWe(135MWt)の2種類があり、ナトリウム温度は、入り口355℃、出口510℃である。燃料形態は炭化水素系統である。また原子炉はプレハブ的(半組み立て品)な扱いで建設工期を大幅に短くすることが出来る。また水素製造も可能であるため、将来は現在のインフラを多少改造するだけで使うことが出来る。

社会受容の点では、上記の選考に関する情報を徹底的に開示し、自分自身の問題として議論を尽くすように仕向けてきた。特に、この選択は自分たちのエネルギーを自分自身で選択をし、かつ財源も自分で確保するという方式で進められた。またこれらの決定に関しては、従来のトップダウン方式での行政のメリットだけではなく、住民にも利益をもたらす、いわばWin-Winの関係を作ることに勢力を払った。特に社会・経済性の変化がもたらす住民の利便性である、暖房への油の利用から電力への移行、温暖化ガスの削減、下水処理の高度化、道路の融雪、などを実感して理解を進めることである。

また東芝の技術者を交えて、原子炉の安全問題、技術内容などを徹底的に議論をして技術問題の理解を深めた。

これらの対話では、住民サイドは草の根運動で環を広げ、行政サイドでは、自治体の運動をDOENRCが側面から支援し、環境問題と住民の将来の利益を確保できる事を相互に理解出来たことが将来にとって明るい材料である。

このプロジェクトは今後10年以内に実現をする事を目指していて、その間に、電力利用による、鉱山保安や漁業用の夏季の氷製造などの可能性についても議論を進めてゆく。

この例は、過疎の地域への原子力の導入についての好例であると言える。

(質疑応答)

Q:地域住民との討論会ではどのような質問が出たか?

A:出席者は50名程度であるが、4Sのもたらす利便性、コスト、燃料の調達と処理、規制問題、液体ナトリウムの安全性などの話題が取り上げられた。

                               

 

セッション: PIO-I, The Theory and Methods of Nuclear Communications

タイトル: A Cross-National Study on Scientific Literacy and Perception of Radiation Across Seven FNCA countries

FNCA参加国における放射線の受容と科学知識に関する 国際間調査研究

報告者/所属:田中靖政 学習院大学

 

本報告はFNCAthe Forum for Nuclear Cooperation in Asia)加盟国7カ国(中国、インドネシア、日本、韓国、フィリピン、タイ、ベトナム)で行われた科学知識と放射線に関する受容の意識調査の結果を分析したものである。

本研究では、コミュニケーションの要素である、WHO/WHAT/ToWhom/How/withWhat?を効果的に取り込んだ調査であり、システマテックな分析を取り込んだ研究である。FNCAでは11のプロジェクトに取り組んでいて、この研究はそのうちの1つである。

調査の対象は各国で首都圏から選出された高校の、男子生徒550名、女子生徒550名を抽出した。7ケ国合計では7,762名の高校生が参加した。

この調査では、放射線の必要性を科学的の選考に加えて傾向をつかむ事と、各国の男女差、情報入手の手段などについてアンケート方式を採った。その結果の特徴的な結果を紹介した。

まず、全ての対象国で科学の知識源として“テレビとインターネット”が最も多いことがわかった。中国、フィリピン、タイ、韓国では50%以上の生徒が“インターネット”を挙げた一方で、日本が最下位であった。また中国、インドネシア、日本、フィリピン、タイ、ベトナムでは50%以上が“新聞”を挙げた。購読書籍については、日本、韓国では“漫画”が好まれ、日本の特徴は科学雑誌の講読は大変少ないことであった。

 個人情報の入手場所では、日本では学校―>家庭―>友人の順番で、特に友人が最下位に来ているのは受験の影響であると分析している。

また次の知識レベルでの調査では、全ての参加国で、“レーザー”、“遺伝子”、“地球温暖化”といった科学用語の理解が充分でないことが分かった。例えば、“レーザーは音響波を集中させる”という説明に“間違いである”と正しく回答したのは平均で32%の生徒であった。放射線の利用に関する理解では、全ての参加国で50%以上の生徒が放射線から、“X線撮影”、“原子力エネルギー”、“医療用(含む癌治療)”、“手荷物検査”などが高く、農業利用についての理解は少ない。また、放射線への理解は、日本が最低であり、それらの情報を入手した先は、各国とも学校での教育を挙げている。さらに、放射線については自然放射線への知識は各国とも低く、逆に“広島、長崎、または核兵器”を高い割合で関連付けている。

この研究から得られた結果から、コミュニケーションについての要件として纏めると以下の5項目になる。

@定量的な多変量解析からの帰結は何か?

対話の仕方については戦略的なアプローチが必要で、誰が聞き手であるかをセグメンテーション化して分析し、夫々の相手に何を伝達するかを決めて、戦略的な対話を行う必要がある。

Aどのようにしてメッセージを送るべきか?

分かり易く、簡単な言葉によりメッセージを発信する事。例としては、漫画やコミック誌的な表現も検討をしてみる必要がある。

Bどのようなチャンネルを通してコミュニケーションを行うか?

マスコミ、仲間(友人)、家族、学校などが最も有効な方法で、インターパーソナルコミュニケーションとも言える方法である。

C誰が情報の送り手か?

送り手の条件は、信頼をされる事が必須で、“うそを言わない”情報の元が明確“、”公平“である事などを意識する必要がある。大学の教官はその意味で情報の送り手として望ましい。

D常に現状を把握した情報発信を!

米国NEIは優秀な調査の専門家がいて、継続的に、国民の原子力受容に関する同国調査をしていて、常に態度決定へ役立つ情報を発信している。この調査は食品や自動車などの販路分析とも類似な手法であるが、必要なことは継続して公衆の声を聞くことである。

(質疑応答)

QFNCAにはオーストラリアは入っていないのか?

A:加盟はしていますが、残念ながら、今回の調査には参加していないが、次回は参加すると思われる。

 

 

セッション: PIO-I, The Theory and Methods of Nuclear Communications

タイトル: Bottom Mounted Instrumentation (BMI) Issue: Communications Strategy

  原子炉容器底部からの漏洩問題:広報戦略

報告者/所属:M. Meler, Ed.Halpin S.Texas Project Nuclear Operating Co.

 

本報告は20034月に起きた、米国のSTPSouth Texas Project1号機(PWR)の原子炉圧力容器下部からの微量な冷却材漏洩が検知された時の戦略的な情報公開と他の機関や公衆とのコミュニケーションの経験から得られた知見をまとめたものである。

報告は下記の5項目にわたり、2人の広報担当者が交代でマイクなして、比較的フラットな英語を使ってプレゼンテーションを行った。

@STPの概要とコミュニケーション戦略

Aプラントマネジメントの内容と活動

B4月の7日間(異常発生からの1週間)

C2002年の65日(過去のSG事故の教訓)

D2002年の3ケ月、6ケ月の対応

以下、これらの報告の内容の主要な点を述べる。

@事故の内容とコミュニケーション

911日の同時多発テロ以降の対策と、デビルベッセやイリノイ電力でのトラブルに対応した6項目の基準を設定した矢先のトラブルであった。

2003412日、STP1号機の定期燃料交換のさい、微量の(約150mgr:アスピリン錠剤の約半分の重量))のホウ酸が原子炉圧力容器下部を貫通している計装管溶接シーム部で発見された。直ちに、関係者(ステークホルダー)に連絡を行った。勿論NRCにも土曜日であったが報告を行った。日曜日には早くもNucleonic Week から問い合わせの電話が入った。次の週に入り、水曜日には警察、NRCからは電話での確認、金曜日にはニューヨークタイムスやウォールストリィートジャーナル、などからの取材の申し込みがあった。

また社内には「安全第一」を掲げた検討委員会を設置してジャーナリスや市民対策に当たった。ここでは、メディアラッシュに備えた20分ルールを始とするコミュニケーション戦略を策定した。その内容の一部は、主要な関係者(ステークホルダー)のリストの作成(NRC,自治体、電力会社、・・・)、コミュニケーションプロセスの構築、壁紙を使うなどをした内部の意思疎通の徹底、メディアとのコミュニケーション内容の調整(信頼や良好な関係の維持)、コミュニケーターの役割の再認識、繰り返しの情報発信、などである。Aコミュニケーションの実施

 まずコミュニケーションスケジュールを、時間経過とともに、実施内容、オーナーとの調整担当者、コミュニケーション担当者、方法、頻度、などをテーブルに整理した。

また、ステークホルダーへの通報順序では、NRC−>発電所所有者−>従業員―>自治体―>メディアとした。またコミュニケーション手段としては、エンジニアリングフローチャート(現場で使うプロセスフロー図)や図面を出版物として編集し、一方原子炉圧力容器の底部のモックアップを急遽作成しメディアの理解促進とその後の事故修復のエンジニアリングにも利用した。

B成功の秘訣

まず、メディア対応では、「正しい報道は高い信頼を得る」という信念で対応する事とした。その理由は「新聞のヘッドラインで物事は大きく変わる」という経験側からの教訓である。

また今回の炉容器底部漏洩事故での対応が良好に行われた点をあげると以下のように項目が列挙される。

     コミュニケーション―コンサルタントによる担当者の指導

     プラントマネージャーがスポークスマン

     発電所所有者との密接なコンタクト

     現実の図面やモデルを使った論理的なメッセージ

     「スピリン錠剤の半分の重さの漏洩量」と表現をした判りやすい説明

     従業員への早めの情報の開示による協力の取り付け

     自治体からの支援

     NRCの前向きな発言

また、さらに次のようなことを改善出来ればさらにこのコミュニケーションがより効果的であったと評価している。

     全ての行動のタイミング

     NRCへの最初の報告書の内容と事前のメディア教育

     「正確な記録は間もなく出てくる」という潜在意識の存在

そしてこれらの教訓から“ベースになるコンセプトは「コミュニケーションは発電所の業務の中で一番上位に位置する行動」を共有化することである”と結論つけている。

(質疑応答)

Q:プラントマネージャーがスポークスマンの役目を果たしたとしているが技術的には問題がなかったか?

A:一般論としては、個人的な能力に依存するが、この背後には、「クライシスコミュニケーション」として上級管理職によるチームが出来ていて、訓練を受け、かつスポークスマンを支援する体制が出来ている。

Q:事故がおきた時誰がコミュニケーションプランを策定するのか?

A:プロジェクトが作成する。

Q:発表中で、情報公開の順番として、NRCOwnersEmployeesOfficialsMediaとあったが、これはどこでもやっているか?

A:規制や規模にもより順番は変わる。これが必ずしも最良の順番ではありません。但し、最初にMediaへと情報が伝わってしまうのは最悪のパターンで、我々はNRCから公衆に伝わる事が最良だと考えている。

Q:このプロジェクト全体を統括し、NRCへの連絡は誰がしたのか?

A:プロジェクトは技術チームと広報チームから構成されるが、広報チームを統括したのがMeler氏で、全体を統括したのがHalpin氏。スポークスマンはプロジェクト管理者である。

Q:リークが発見された後、何時ごろ修復が完了して運転再開がされたのか?

A4月から10月まで運転は停止され、その間コミュニケーショングループの役割が大きく、中でも技術専門家の活躍は大きかった。

                         

セッション: PIO-I, The Theory and Methods of Nuclear Communications

タイトル: Our Nuclear Communications

     我々の原子力広報

報告者/所属:水野正明 日本原子力発電

 

本報告は日本原子力発電(JAPC)の敦賀発電所の広報に携わり、地域住民とのコミュニケーションを通じて得た経験と教訓について纏めたもの。

日本には52基発電所があり、約35%の電力を供給している。その中で、計画中の発電所については約10基有るが、日本原電では、敦賀発電所3,4号機(それぞれ1,538Mwe)の建設が計画されていて、1993年に一度、地元住民と福井県知事の理解を得たものの、1995年の阪神淡路大震災、同年の高速増殖炉「もんじゅ」のナトリウム漏洩事故、さらに1999年のJCO臨界事故の影響でその認可が遅れている。阪神大震災は耐震性についての議論が高まり、原子力施設の事故は社会的な受容性に影響与え、JCO事故後は建設への賛成率は25%にも落ち込んだ。

行政からの指導により、敦賀発電所の建設の条件として、「原子力対話」などにより地元住民の理解を得ること専念した。1996年に福井県内で行った調査では、JAPCに対して好感を持つ人は原子力発電をより受け入れる傾向があるが、立地地域住民のJAPCに対するイメージは決して良いものではなかった。さらに、JAPCの従業員に対するイメージがJAPCそのもののイメージを大きく左右していたことも分かった。そこで、方針としては従業員が積極的に地域住民とコミュニケーションをとることで従業員の、そしてJAPCそのもののイメージ向上を図る計画を立てた。その活動内容は、住民との直接対話(従業員による全家庭の訪問)、情報公開の場を設ける(市町村訪問セミナーで35市町村を本門歯、2001年には2600名の参加を得ている)、地域の有力者やブロック会議の開催、マスメディアへの情報発信、新聞やテレビへのスポンサーや広告などであった。

中でも、メディアは原子力の情報に対しては敏感で、その実例として、19997月の格納容器内の水漏れ事故の時には大阪から(100kmは離れている)わざわざヘリコプターを飛ばして写真撮影に来たことなどの経験を踏まえ、常にメディアとの情報交換には努力を払っている。

従業員によるコミュニケーションは以下の点に気をつけて行った。まず、住民に分かりやすい情報を発信するだけでなく、住民の意見を注意深く聞くようにすることで、住民との関係改善を図った。また、会社のイメージは従業員のイメージに大きく左右されることから、従業員が積極的にコミュニケーションを図り、住民の理解が得られるように努力した。その結果、これらの活動により地域住民のJAPCに対するイメージが、199910月に敦賀発電所の建設に対して賛成と答えた人が25.5%であったのに対し、20018月には54%まで向上した。この結果、200212月に敦賀発電所の建設は福井県による承諾を得ることができた。最新の調査では、65.1%の住民が建設に賛成している。

(質疑応答)

Q:地域との共生の例を具体的に知りたい

A:季節ごとに行われる地域行事への参加や協賛をしている。

QJAPCではコミュニケーションに関する従業員の特別教育プログラムがあるか?

A:少しあります。また、マニュアルが整備されています。

Q:JAPCのコミュニケーションの組織と運営について知りたい

A:筆者が6年間これに従事してきた。広報の担当者をおき、従業員全員が広報担当

という意識で取り組んでいる。

 

セッション: PIO-I, The Theory and Methods of Nuclear Communications

タイトル: Safety, Security, and the Environment: Public Perceptions and Communications in the U.S.

   安全、安定供給、および環境問題への対応:米国における公衆の受容とコミュニケーション

報告者/所属:S. Peterson NEI

 

本報告は、米国で過去20年間に原子力発電に対する世論の変化についてのNEIの分析と、NEIによる原子力広報などの活動、考え方、今後の方針についてである。

NEIは1983年から年に2~6回、世論調査をしていて、その内容は原子力の便益、原子力エネルギーへの関心、規制の動向への意見、原子力開発プログラムなどへの内容を聞くことで、人々の原子力受容に関する態度を調べ、それによってコミュニケーションのあり方を検討してきている。

人々の原子力エネルギーに対する態度は個人的なセキュリティと家族のセキュリティに関連付けて考える事が出来る。セキュリティには3つの要素、すなわち、安全、セキュリティ、健康的な環境、そして快適な生活である。

原子力安全に対する世論は7段階の評価での調査をしているが、ここ20年間で徐々に増加し、昨年の10月の時点では66%が安全であると回答している。このような安全への受容の増加の理由として

―事業者による発電所のパフォーマンスの改善

―天然ガスの価格の上昇

―カリフォルニアの電力危機(昨年夏の東海岸の電力危機も影響しているかも知れない)―オピニオンリーダへの電力会社の支援(NEIを中心とした)

―メディアの原子力ルネッサンスへの理解などの好意的な反応をしていること

などを挙げる事が出来る。

また同時多発テロの問題は、多少原子力への心配の懸念もあったが、空港や化学工場などの対策にメディアの興味は動いていてその影響は少ないと考えられる。

原子力への好感度の向上は、“将来のエネルギー源としての原子力の必要性”と“クリーンな空気の維持する原子力”という利便性の説明が最も有効であり、“温暖化ガス(GHG)の放出の無い原子力”は受身の表現であり、あまり効果が無い。また従来の広報では、“クリーンな空気の恩恵については、あまり力を入れてこなかったがこれを使うことは大変効果があった。さらに広報用語については、GHGについての説明のなかで(「・・・を防ぐ」という表現より、「回避できる」あるいは「減らす事が出来る」という表現の方がより説得力があるという前向きな使い方をすることが有効である事も明らかになった。

ここでの、将来のエネルギーとして原子力エネルギーを選択を多くの人々がしている事は、生活上のセキュリティの維持にも繋がることである。

これらの全てのコンセプトはNEIの広報に組み込まれた“我々は21世紀に信頼できるエネルギー源が必要で、きれいな空気も必要だ。原子力エネルギーを用いれば両者が達成できる”と表現し、“安全”や“セキュリティ”という言葉は使わなくともNEIの意図は充分伝える事が出来たと考えている。

また最後に、原子力のオピニオンリーダはメディアのメッセージを増幅する手段としての期待できることを付記しておく。

(質疑応答)

Q:広報のための年間の予算はどれくらいか?

A:3M$くらいである。25名?の広報デザインスタッフの費用が主である。

Q:発電所では無いユッカマウンテンなどの核廃棄物に関してはどうか?人々は不安を持っているのでは?

A:現在はそれほど問題にはなっていない。しかし、処分に関する新たなニュースが出れば、また、人々の関心を集めることになると考えている。

Q:米国のNGOの活動はどうなっているか?

ANGOは次の2つの理由により、その影響力を失いつつある。一つ目は、より原子力広報が充実し、多くの情報がメディアを通して発信されていること。二つ目は、原子力業界のパフォーマンスが向上しており、NGOにより非難されるようなことがなくなってきていることである。

Q:広報を行う人としては誰が最も良いと思うか?

A:会社のCEOなどではなく、発電所の責任者や従業員が適していると思う。また、大学教授や、政府の専門家の発言力は大きい。

Q:発表中に、9.11以降、マスメディアの関心は原子力の安全性から空港や、公共の輸送機関、化学工場などに移行してきているという指摘があったが、核燃料の輸送はどうか?

A:確かに、核燃料の輸送、処分に関してテロの警戒は必要と考えているが、空港や電車など、安全対策が原子力と比較して遅れている分野に現在のメディアの関心はあるようだ。

Q:原子力の世論に対する広報については分かったが、発電所の地域に住む住民に対してはどうか?

A:ビジターセンターを電力会社が準備している。これが生徒の教育に使われている。また9.11以降、立地条件から閉鎖されていたビジターセンターなどを再開している。

Q:オピニオン・リーダの中には反原発の人も多いのではないか?

A:彼らと、良い関係を築いていくことで、これらの問題も解決できる。そのために、常に彼らには情報を供給し続け、さらに、これから起こる予定の事(良いニュースも含め)に関しても予め知らせて、注意を促しておくことが効果的。しかし、メディアとは一線を画しインシュレーションは考えておく必要はあると思う。

Q9.11以降、人々の意識の中で“safety”という言葉に代わって、“security”が支配的になってきていると思うがどう考えるか?

A:これら二つの言葉は、しばしば混同されて用いられていてこれらの間の境界線はあいまいになってきていると思う。MITの構築したプラントセキュリティについて、この内容を自治体に伝わるようにしている。

Q:メディアとの良好な関係の維持のための秘策は?

A:前向きなオープンの姿勢が必要なことと、地域別の「メディア ディレクター」を配置してそれに当たっている。企業の側の調整はNEIが行っている。

 

セッション: PIO-II, How to communicate with the public

タイトル: Enhancing Bi-Directional Communication with Focus on the Female Population

 女性に向けた双方向のコミュニケーションの強化

報告者/所属:高田香里 電事連

 

本報告は、一般女性の原子力に対する知識と理解の向上を目的としたFEPCを中心とした活動内容の紹介である。

意識調査の結果では、日本人の過半数は原子力発電の必要性を認識しているが、70%に近い女性は原子力技術の安全性やプルトニウムの安全性に懸念を持っている。2001年のた東京電力・柏崎刈羽原子力発電所の住民投票の結果では、反対が54%で過半数を占めたが、その内訳では女性の反対票が61%をしめ、MOX燃料使用計画(プルサーマル計画)は延期された。

このことから、電力会社では女性との相互コミュニケーションにより原子力の理解を得ることが必須と考え、電力会社の連合組織である、FEPCでは

@草の根レベルの活動の助成

Aオピニオン・リーダの育成

の活動を行っている。以下具体的な活動状況を紹介する。

@草の根レベルの活動

(@)福井県のWomen’s Energy Association (代表:Sumiko Masano):福井県内の35市町村の女性ネットワークにより構成され、エネルギー問題の自発的な勉強を目的としている。メンバーは330人おり、特に教育に力を入れており、メンバーを地域の小学校に派遣して、紙芝居により児童のエネルギー問題への理解と関心を深める活動を行っている

(A)ASGA Energy Forum(代表:Etsuko Akiba):このフォーラムは消費者と産業界、政府機関を結び活動をしていて、消費者生活アドバイザーの資格を持つ15人から構成される。このフォーラムでは、エネルギーの生産者と消費者間のコミュニケーションの必要性を認識して、“Think Together(共に考えよう)”というテーマもと、消費者レベルのセッションを開いている。このフォーラムは2003年に正式にNPOとして認められ、さらに活動範囲を広げている。

(B)電力会社のネットワーク・モニター

刈羽村での住民投票のさいには、日本全国からプルサーマル計画の反対運動家が集まり、地元住民と共に大規模な反対運動を行った。この結果先に述べた結果につながり、女性に対する第三者の視点を持つ人々による活動の必要性があることを示している。例えば、電力会社に協力をしている女性モニターをオピニオン・リーダとし、日本全国で彼女たちの交流を促進するようなネットワークの拡大を行う努力などである。

Aオピニオン・リーダの育成

FEPCTVやメディアへの高い露出度と同時に、一般の女性へのPR活動に定評がある。中でも日本の世論に大きな影響力を持つ国々に、女性の学生、著者、ジャーナリスト、広告クリエーター、TVコメンテーター、そして消費者生活アドバイザーらを派遣し、実態調査を広い視点から行った。これにより、様々な分野の活動を行う第三者オピニオン・リーダとしてのメンバー育成を行っている。

(@)ヨーロッパのエネルギー問題の実態調査(20021121日〜128日)

(A)米国のエネルギー問題の実態調査(20031022日〜127日)

消費者を代表する女性へのアプローチを強化することの重要性は言うまでもない。電力会社が直接行うアプローチよりも、消費者の視点からのアプローチの方が、より家庭に身近なものとして、エネルギー問題への関心と理解を高めることができる。また、第3者機関の活動はいつも、より信頼されるものである。この観点から、このようなアプローチ、PR活動に対する支援を今後も続けていくべきである。

(質疑応答)

Q:日本には規制当局を含め、コミュニケーションのガイドラインはあるにか?米国では規制側のものとして、NRCのガイドラインがある。

A:無いと思う。

 

 

セッション: PIO-II, How to communicate with the public

タイトル: Pubic Outreach Activities of Nuclear Power Plants in France for Local Professional Associations and Mass Media

 フランスにおける原子力発電所に対する地方の専門家集団やマスコミに対する広報活動

報告者/所属:Min Pan EdF

(口頭発表はなかった。以下に東京大学 山路氏による要旨訳文を記載する。)

 

Electric de FranceEDF)社では、フランス原子力プログラムが始まった1970年以来の長い原子力広報の経験を持っている。また、それは20基の原子炉が稼動の開始に伴い、より強化された。公衆の原子力に対する不信感は、EDF社の損失となることを認識し、1980年に同社は、情報公開を基本としたpro-active(活動に先立った)コミュニケーション(広報)理念を打ち出した。

広報プログラムは、メディア活動、出版、展示、community outreachなど、様々な活動により、異なる対象者に適したものとなっており、地元レベルでも強いサポートを得ている。

今日では、世論調査によれば、EDFはフランス国民の中で最も好感を持たれている会社である。しかし、これらの結果は、原子力の受け入れの問題となると、常に脆いもので、日々のフランス、そして世界の状況を注視して考慮されなければならない。

 

 

セッション: PIO-II, How to communicate with the public

タイトル: The Role of ANS as an instrument of Public Outreach

     原子力広報におけるANSの役割   

 報告者/所属:W. M. Diekman ANS

 

本報告は、米国原子力学会(American Nuclear Society: ANSが米国国民からの原子力に対する理解を得るための活動についてである。

ANSは設立以来、技術活動だけでなく公衆への働きかけについての活動も広げてきた。特にTMI事故のあとの1980年頃から社会教育などに原子力産業界などと共同で実施してきた。この活動は、ボランティアベースで、約10,500人の大学や企業に居る専門家により、実行されてきた。ここでの活動の戦略は、対象者を特定してメッセージを作成し、コミュニケーションを図ることにした点である。その対象は、労働者、政治家、教育者、学生、一般公衆である。この活動は、原子力に対する科学を基本とした理解を構築することにあり、主な内容は次の5点である。

1.草の根レベルのイニシアチブ:ANSのメンバーが各自で政策策定者(policymaker)などと連携していわゆる、“Technical Friends”となり、彼らが必要なときに原子力関する技術的な質問に対応できるようにしている。具体的には“Clear thinking on nuclear”(原子力に関しての明確な思考)を強調したパンフレットの作成を行っている。

2.Speakers Bureau(広報部)ANSのメンバーはいつでもボランティアとしてメディア、公衆、政治家、その他の人々と原子力の科学技術に関して議論に応じている。これらを行うリストには100名以上の名前がある。技術的な情報に関するリクエストは毎月30件以上あり、トピックとしては放射線の医療、食物、農作への利用、原子力エネルギー、核廃棄物やその貯蔵などである。

3.Focused Messages(集中的なメッセージ):原子力の科学技術に対するイメージを正しいものに変えてゆくための方策の構築をし、原子力に対して“Clear Thinking(明確な思考)”を促すようにメッセージを選んでいる。これらのメッセージはパンフレット、発表資料、その他のメディアで繰り返し用いて、一貫したメッセージを発信することで、原子力の科学技術とANSに対する認識の改善を図っている。

4.Educators Workshop(教育者の研修会)20年に及ぶK-12科学の教育者の教育実績があり、毎年25以上の研修会を開き、650以上の教育者が参加している。これらの研修会では、すぐに役立つ情報、学校のクラスで行える実験やプロジェクトを扱っている。また、“ReActions”というニュースレターを18,000人の教育者に無料で配布している。年間、80件以上のイベントも行っている。

5.学生への支援イベント:将来の原子力科学技術分野に新たな人材を育成し、将来の研究開発、原子力科学技術を進めていくためにも重要である。これまで、17のキャリア情報の展示会、14の科学フェア・プログラム、その他に40の様々なイベントを行ってきた。原子力キャリアに関する無料CDを学校、ANSメンバー、図書館に配布してきた。また、学生のための奨学金も$200,000用意している。また原子力科学技術の理解用の、スパークチェンバーなどの教材の提供もしたり、専門家による大学訪問制度がある。現在学生会員は約900名である。

以上の5項目の活動以外では、が外部機関との協力や支援がある。現在34の機関と連携をして財源の確保や共通の“Public Information & Outreach”の課題に取り組んでいる。

広報のための手段としては、「一般公衆に対するホームページ」があり、以下のサイトにあるhttp://www.aboutnuclear.org。また、メディアなどに対しては次のアドレスで情報発信しているhttp://www.ans.org/pi/。その他にも、学生に向けた原子力キャリアのCDROMや、“Clear Thinking on Nuclear”といったパンフレットを政策制作者(Policy Makers)に無料配布している。また学校などへの専門家派遣を戦略的に行う“Energy Coodnator”制度がある。

 以上を纏めると、ANSの活動は、4名の事務局スタッフにより、ボランティアベースによる活動の窓口として機能し、必要経費の確保をしながら、Webを始とする情報の発信ツールの充実に努力をしている。

(質疑応答)

Q:ANSの活動の中で、教師のワークショップの規模?

A:年間平均600名あまりの参加である。

Q:PIOのための外部からの寄付はあるのか?

A:ある。例えば、Entergy社から約1,000$の寄付があった。

 

セッション: PIO-II, How to communicate with the public

タイトル: Activities of Japan Opinion Group for Energy Issue

   エネルギー問題に発言する会の活動

報告者/所属:林 エネルギー課題に対する意見グループ

 

本報告は、日本において過去原子力に関係し引退した技術者から構成されるオピニオン・グループの原子力と社会のコミュニケーションへの貢献についての現状についてである。

@エネルギー問題に対する発言する会の役割:

まず第1に、大電力会社を始とする企業での管理者などは、組織の制約もあり、原子力トラブルや不祥事の起こった時、即座にメディア・レポーターの要望に応えることが出来ず、多くの場合、レポーターは反原発の人に頼らなければならない。その結果、ニュースの内容は大げさなになる。このような場合、発言する会のメンバーが(引退したエンジニア)が技術的な説明に対応出来る様にしたい。第の役割は、反対派などの意見報道の技術的な矛盾を指摘することである。第3の役割は技術的に正しいことの社会への発信である。

Aオピニオン・グループの主な活動

このグループは、2001年にボランティアとして発足した。ボランティアである理由は、その他の機関から独立した立場を確立するためである。現在160人のメンバーがおり、主に東京電力、関西電力、中部電力などの電力会社や、日立、東芝、三菱などの原子力メーカー、から引退した人で構成される。また、行政機関や研究所から引退した人もいる。幹事会が毎月行われており、これまで28回開催された。

その活動内容は以下のとおりである。

(1)   ホームページ(http://www.energy-sqr.com

主なコンテンツは“my opinion(私の意見)”、“theme discussion(テーマ・ディスカッション)”、そして“Technology explanation (技術的説明)”である。このホームページへのアクセスはすでに28,000件に及んでいる。

(2)   メディアとのコミュニケーション

登録された専門家の会員により、メディアからのQ&Aに対応している。すでに、何人かのメンバーは主要な新聞やNHKなどの要求に対応している。

(3)   新聞や雑誌への意見の投稿

(4)   行政の公衆からの意見(パブリックコメント)への対応

(5)   原子力を促進するその他の機関(原子力学会や原子力推進NPO)との協力

(6)   様々な原子力関連の会議での意見の発信

(質疑応答)

Q:原子力広報に関して日本ではボランティアなどにより精力的な活動が行われているようだが、行政/規制側の役割はどうなっているのか?

A:例えば原子力委員会による市民懇談会などが存在するものの、日本の規制・行政側による、原子力安全行政の結果を国民に周知する活動はそれほど活発ではない。

C:この点は非常に重要なことである。日本では規制側が公衆に対して話すことはほとんどないが、本来は規制側がやるべきことである。

QTEPCOのスキャンダルのとき、どのような対応をしたのか?

A:ホームページ上に電力の歴史や電力会社の風土、企業ガバナンスなどについての情報や意見を載せたり、記者の質問などに答えたりしたが、その他に特別なことは行わなかった。

セッション: PIO-II, How to communicate with the public

タイトル: The Role of Internet in Public Policy Making

 公衆の意思決定へのインターネットの役割

報告者/所属:C. Lemieux CAN-Canada

 

本報告は、カナダ原子力産業界がインターネットを利用した、公衆の原子力に対する理解向上についての現状の紹介である。

カナダの原子力関係の政策課題は、発電コスト、電力のセキュリティー、使用済み燃料の処理、公衆の原子力への態度や受容性、原子力施設の安全とセキュリティー、などである。これらの背景にあるのは、新規発電プラントの増設やCOP-3対応の炭素税の設定に供えて、政策的な議論が必要になっているとも言える。なお、カナダの原子力の事業規模は年間50億$で、輸出は医療用のRIの輸出などで12億$、直接の従業員は21千人でかなり大きな産業である。

原子力広報については、1993年から2001年の間は予算の都合上、大々的な全国規模の原子力プロモーション(例えばTVの全国放送など)が行えなかったが、CNA(カナダ原子力協会)は2002年以降、原子力によるカナダ及び世界の将来の電力不足の解消、経済性、信頼性、安全性の優れたクリーンな発電への貢献についての政策について、政治家、オピニオン・リーダ、メディア、公衆で構成されるグループを対象にした宣伝活動をすることにした。具体的な手段として、コストが安いインターネットに着目し、この2年間カナダにおける最も権威ある新聞(Globe and Mail)の電子版に広告を掲載し続けたところ、300万人がこのサイトにアクセスした。この費用は約20万C$でありGlobe and Mail紙への接続料金も含まれる。

この結果、1998年に原子力賛成は62%(反対は37%)、2001年の終わりには賛成37%(反対は47%)、であった結果が、20037月には賛成50%(反対40%)に回復した。また最近のウエブによる調査でも賛成は54%と以前の状態に戻りつつある。

さらに、原子力の利便性について質問をしたところ、

―77%がカナダのエネルギーミックスに貢献する

―68%が原子力発電所の高度化や改造に賛成

―41%が新設に賛成

という好ましい結果も出ている。この背景にはオピニオン・リーダに、カナダ産業のホームページ、原子力とその利得などが宣伝され、原子力産業が公衆の情報公開に対する要求を重要視していることなどが効果を表してきた結果であると考えている。

具体的にはクリーンなエネルギー・電気(原子力エネルギーは zero air pollution”)、原子力を応用した医療・医薬品(コバルト60による癌治療はカナダで発明)、核廃棄物処理(核廃棄物は良好に管理されその量は少ない)、安全、セキュリティ(カナダは世界最大のウランや放射性同位元素の輸出国)、原子力発電の経済性、CANDU技術(10年間で7基のCANDU炉を輸出・建設)、将来的な水素経済への原子力の応用などのメッセージが作成され掲載された。

これらのメッセージと共に、最も効果的であったメッセージが、“我々は近い将来に電力不足に陥る可能性がある”というメッセージであった。また、ホームページでは、“Do you know ….?(あなたは...という事実を知っていましたか?”というように、アクセスしている人にエネルギーや環境問題のことについて問いかけることによって、エネルギー環境問題に対する一般の認識を高めるような試みを行っている。また、メッセージは常に更新し続けることが、重要で、毎日57つの新たな情報を更新している。

(質疑応答:東京大学 山路 氏の資料を転用、修正)

Q:公衆の原子力の懸念の中で、核拡散問題はどうか?

ACANDU炉の保有国でのインド、パキスタンの兵器への転用の例はあるが、電力のセキュリティが上回っている。

Q:核廃棄物の処分についての世論は?

A:一般的には、人々は核廃棄物の問題を知らない。2年前までは、“核=兵器”であったが、現在では“核=エネルギー”という意識を持つ人が多いようだ。また、廃棄物に関しては、情報事態は非常にオープンになっており、逆に人々の関心がなくなっているようだ。ただし今後、新たなプラントを建設する時期になると、この傾向は大きく変わる可能性がある。

Q:カナダでは、英語を話す人とフランス語を話す人がいると思うが、ホームページはどのようになっているのか?

A:それぞれの言語に対してホームページを作っている。バイリンガルなホームページ管理者と通訳を雇い、両方のホームページで同一の情報を発信できるようにしている。

Q:これらの情報を他の機関(行政や企業)と共有する予定はあるか?

A:全ての情報はホームページ上にあり、誰でも自由に扱って良い。情報だけでなく、スタッフも共有するべき時点に来ているのではないか?異なる国の多くの機関で集められ、発信されている情報をみると、その内容はほとんど同じもので、限られた人材、資金の中で最大限の効果を得るためにも、協力体制を築き上げていくべきだと思う。

 

 

セッション: PIO-III, Case Studies of Effective Communications

タイトル: Working to Build Trust in Nuclear Waste Regulation: Progress in Public Outreach

 廃棄物処理基準への信頼獲得への働きかけ:原子力広報の進展

報告者/所属:Janet P. Kotra 米国 NRC

 

本報告は、NRCNuclear Regulatory Commission)の核廃棄物の規制に関する公衆の理解を得るための活動とその効果につぃてである。

米国NRCの役割の1つは、公衆と規制との間の触媒であり、NRCの中にある、高レベル廃棄物グループもその方向で活動をしていて、ここではその経験からえられた広報のありかたについての個人的な分析(NRCとしての統一見解ではない)をのべる。

NRCの一般的な役割は、電力、公衆、議会、などへの情報発信とそれらのセクターからの意見を聴取して規制へ反映することである。NRCは独立した機関で、法律によりユッカマウンテンのプロジェクトでは、DOEは推進、NRCは規制で、そのための手法は、「公衆による立法化過程(Public Rule-making Process)である。具体例は、廃棄物の固体化などへの意見聴取のプロセスで使っている。以下に具体的なプログラムに沿った活動を紹介する。

ユッカマウンテンの規制問題の市民参加プログラムにおいてはでは、19992月の新しい基準に対してパブリックコメントを募集し、その3月には、ユッカマウンテンから300マイル離れたネバダ州のある町で廃棄物輸送に関する公開討論会(パブリックミーティング)が開かれ、60名ほどの参加があり、そこでは自治体やNRCはより詳細な分析を求められた。

次に、リスクコミュニケーションの専門家の養成プログラムでは、エージェンシー全体に亘る話題について、技術の破綻による病気の発生、聞き手の階層化、などを実例を基に教育をしている。

パブリックミーティングのフォーマットのプログラムでは、ファシリテーターの教育を中心進められ、その内容はレゼンテーション技法(分かりやすく、平易な言葉で、・・・・)、プレゼンテーション内容(オピニオンリーダには相手の立場を尊重した話の進め方、タイムリーな話題を盛り込む事、・・・)、そして注意事項(国の役人のような説明にならないように、安全の主張だけをしないように、諸外国の例を引く、技術内容は平易に、・・・)、そして最も重要なコーディネーション手法(要求されたトッピクスに忠実に従うこと、質問の予想、質疑応答や報告の間に“間”を取る事=>同じ話題には最大でも20分、・・・・)、さらには、日常の準備と姿勢(非定例の会議、定例の会議、のいずれにも対応できる姿勢―>通常は数ケ月の準備期間がある)などを教育している。

そして、NRCのアウトリーチのチームについて要求されることは、

@チームメンバーは工学技術と地理学、工学技術と経営管理学、工学技術と社会学、などの学際的な人間である事。

A規則的に、関係者と会合を持つようにすること。

Bはっきりとしたメッセージを発信すること。

C分かりやすい平易な言葉を使い、通訳の必要な時にはキーを明確にすること。

Dパブリックミーティングの準備が出来ること。

Eハンドアウト(手渡し)の資料の準備をすること(特に説明会では新しいニュースを取り入れたものを準備すること。

などである。

次に、NRCのパフォーマンス・アセスメント(業績評価)では、技術的な評価で使われていて、DOEも使っている手法を使っている。その手法の例を候補地選定について表してみると、調査(パラメータの収集)=>概念モデル構築=>数量化モデル構築=>モデルとの比較・決定=>(決定の無い場合)調査、というサイクルで行う。

このプロセスの中で、公衆との対話において、技術と政策の共有化、意味のある対話の実施、などが浮き彫りにされ、結論としては「説明せよ、説得するな」である。

これらのパブリックアウトリーチの活動によってNRCサイドの長期間に亘っての変化として、

@高レベル廃棄物の対話計画の策定(外部委員会との共同のタスクホースを結成による)

A国際的なフォーラムの開催

BNRCオフィースとステークホルダーの対話の仲介

CNRCのスタッフの意識の変化(部長間のコミュニケーションの定例化)

Dエージェンシーによるガイドラインの策定(NUREG/ BR0308)と冊子の配布

 

以上を纏めるとアウトリーチ活動による成果と今後の活動の動機付けとして、以下のように整理できる。

@過去の29回のパブリックミーテングは成功であったこと

A地方局からの力強い支援と激励の実績

BNRCの提案を多くのステークホルダーから多くの積極的なコメントの発せられ、それに対応できた

C公衆からのより多くのミーティングに対応して欲しいとの要求

(質疑応答)

Q:専門家のリスクコミュニケーションの研修にはどれくらいの費用がかかるか?

A:著名な講師を招く講習会の場合、1日あたり約$3,000かかる。

Q:ガイドラインであるNUREGは入手可能か?

A:コピーの入手は誰でも可能。DOEのユッカマウンテンについての計画、公衆の意見、など、カナダにも提供は可能である。

Q:公衆からのフィードバックが、実際にNRCの行う規制の決定に影響を及ぼした例は?

A:あるけれども、公衆からのフィードバックが我々の活動に貢献しているという事実は、あまり一般に知られていない。この点は今後、改善するべき項目である。

Q:論文要旨の冒頭にNRCは“Public servant”である、というポリシーが書いてあるが、これはNRC発足当初からか?

A:そうだ。しかし、いつも“How visible are we?”という問題がある。我々が公衆に対して透明性を持つようになったのは、ごく最近のことである。

(コメント)

     パブリックアウトリーチは何もないところから、始めた。しかし、これからはもっと関係機関や自治体と協力体制を強化していくべきだと考えている。

     公衆のNRCに持つイメージは、最初に接する人個人(例えば秘書)のイメージによって大きく左右されることがある

 

 

セッション: PIO-III, Case Studies of Effective Communications

タイトル: Radioactive Waste Management in Korea and Public Acceptance

  韓国における放射性廃棄物の管理と公衆受容

報告者/所属:C. S. Kang ソウル国立大学

(東京大学 山路氏 抄録に加筆・修正)

本報告は過去18年間に及ぶ韓国における低レベル放射線廃棄物処分の経験と現状についてである。

韓国では現在、使用済み核燃料の再処理をしないことになっている、低レベル放射性廃棄物の処分と、使用済み核燃料の中間貯蔵が行われている。このうち、使用済み核燃料の貯蔵量は、2006年から2008年にかけて発電所での貯蔵限界量に達する見込みである。

過去の経緯を振り返ると、1986年にMinistry of Science and Technology (MOST) の責任の下、Korea Atomic Energy Research Institute (KAERI) により、核廃棄物の処分場の選定に関する研究が開始された。しかしその後、異なる処分場候補地をめぐるフェーズ1から510年間の活動はいずれも失敗に終わっている。そこで、第6フェーズは2000年から担当機関をMOSTからMinistry of Commerce, Industry, and Energy (MOCIE) に、実施機関をKAERIからKorea Electric Power Corporation KEPCO)に移した。

1フェーズの失敗の要因はKAERIによる地層調査を行う事前の広報に公衆に対する透明性が欠如していたことにある。また、3つの候補地で、地元住民、地元と中央の行政間でコミュニケーション・協力が不充分であったことも失敗の要因である。

2フェーズは、自治体の対話で議会の協力が得られたが、意思決定プロセスに透明性が無かったために、地元住民が反対した。また、メディアと反原発グループの組織的な運動が始まった。これらの組織的な反対運動は第3,4フェーズでより、拡大され、広報活動が妨害された。 

3フェーズでは、第三者機関によって処分候補地が選定され、国立大学連合機関によって研究された。その内容は、社会学的なプロセスが必要で、これには大変長い時間が必要で、反対派とも仲良くし、廃棄物の処理技術についての透明性を高くするということであった。しかし、これらの活動にも関わらず、これら反対運動により失敗に終わった。

4フェーズでは、候補地に対する補償制度が整備された結果、住民の56%の賛成を得るに至ったが、地元住民の間で賛成派と反対派の激しい衝突が起き、結果的に失敗に終わっている。

5フェーズでは、内部的な協力体制を見直し、プロジェクトチームの発足、複数の部局間の連携、積極的な広報プログラムなど一定の成果をあげたが、候補地の技術的な問題により失敗に終わっている。

6フェーズ(2000年以降)ではMOCIF/KEPCOによって東河岸に試験的な、“Law of Solicitation, Law of Compensation, Law of Consent”などの法整備を行い、東西4つのサイトについて、200411月を期限として地方自治体を対象とした候補地の入札を行っている。

候補地の1つである、ブーアン県での例では、反対派が入り込んで住民を扇動し、政府へのモラル面での批判を高め、老人、夫人、学生を対象に、脅迫まがいの活動をした。その結果2004年初頭の住民投票で92%の住民が反対を表明した。

これらのことより、パブリックアクセプタンスでの重要な点は、これまでのやり方は、まず経済的な利便性の観点から専門家らによって決定された事項を、後に、説明、教育、公表するような公衆を説得する一方通行のコミュニケーションであった。しかし、このようなやり方では、公衆の不信感を招いてしまう。そこで、意思決定のプロセスの事後ではなく、そのプロセス中に公衆の意見を取り入れていく必要性を認識する必要がある。原子力関連の住民参加型意思決定のプロセスは5つのステップからなる。すなわち、プロジェクトの開始=>スクリーニング=>専門家と公衆の意見の集約=>公衆に対する公式な広報(communication)=>政策の実施、である。韓国ではこれまで、このうち、第4ステップのみを重要視していたが、これ以外にも公衆が参加できるステップが4つ存在することを認識しなくてはならない。そこで、今後の韓国における活動では特に、行政のコミュニケーションスキルの育成、双方向コミュニケーションの方式の確立、透明性の維持、共通の理解、などが課題で、公衆のヒアリング・システムと、原子力相談役(オンブズマン:補償制度を込みにした役割)の充実、に力を入れていく予定である。

(質疑応答)

Q:発表中で、候補地の選定までの期間が4年間とされていたが、それでは短すぎないか?そのような短期間で選定しようとすると、公衆の大きな反発を受けるのではないか?

A:実際には、状況は悪化してきてしまっている。我々も4年間で選定できるとは考えていない。うまくいけば、10年後までに候補地を選定したいと考えている。

Q:反対派の活動力の源はどこにあるのか?どんな資金源があるのか?

A:寄付や、地元住民からの徴収が資金源となっているようだ。また、社会主義的な投票が行われている。政治家などの活動も注視しなくてはならない。

Q:今後の予定として公衆のヒアリング・システムや原子力相談役(オンブズマン)などといった、素晴らしいアイディアがあったが、これに対する政府の反応はどうですか?

A:オンブズマンの効果についてはソウル大学で検討している段階である。これを導入するかどうかは決まっていない。今のところ、政府からは何の反応も得られていない。

Q:カナダでは、原子力以外のオプションを公衆に対して説明していることが、逆に原子力に対して有利に働いている。韓国では、他にどのようなプログラムがあるか?

A:韓国は90%が輸入エネルギーであると説明し、2015年までに発電量の40%を原子力で賄うということが決定されているが、現在の政権は原子力に対してあまり肯定的ではない。

 

 

 

セッション: PIO-III, Case Studies of Effective Communications

タイトル: Underground Research Laboratory Program of Japan

  日本の地下研究所のプログラム

報告者/所属:山崎眞一 JNC

(東京大学 山路氏草稿、JNC山崎氏のコメント、に一部加筆、修正)

本報告は、日本における高レベル放射性廃棄物の地層処分の研究に関する地元住民との対話などの活動についてである。

日本の高レベル廃棄物の処分についての戦略は、H20報告として纏められ、2000年にNUMOが設立され、2030年までに埋設サイトが決まる事になっている。研究開発の役割を担う核燃料サイクル開発機構(JNC)は,現在,茨城県の東海事業所の室内実験施設,および北海道の幌延深地層研究センター(幌延URL)と岐阜県の東濃地科学センターにおける深地層の研究施設において研究開発を進めている。

幌延市は人口約2,800名、で畜産(牛約1万頭)の町であり、そこに研究所を設置して研究を開始した。幌延深地層研究計画は,堆積岩,塩水系地下水を対象としており,以下の3つの目標がある。まず技術的目標として、1つは幌延を例とした地表から地下深部までの具体的な地質環境を提示すること。他の1つは、地質環境調査技術、地層処分の工学技術、安全評価手法のといった地層処分技術の実際の地質環境への適用による信頼性の確認をすることである。3つ目は、社会的な目標として、一般の人も実際に地下に案内し、深地層を体験してもらい、地層処分研究開発ひいては地層処分に対して理解を得られるようにする、というものである。

2001年に研究所の開設以来、2002年に住民に対して建設の通告をし建設に着手し、研究施設の完成は2006年である。研究施設周辺の住民の懸念は牛の騒音に対する影響であったが事件で何も無い事が確認されている。

この計画では3メートル直径、長さ500メートルの立坑が掘られる予定である。

この幌延URLプロジェクトに先立って、ガラス固化された高レベル放射性廃棄物(HLW)の中間貯蔵、低レベル放射性廃棄物(LLW)の貯蔵、及びURLからなる幌延Storage Engineering Center(SEC)計画があったが、10年以上にわたり公衆の受容が得られない状態にあった。

その後、1998年に、当時の科学技術庁によって幌延SEC計画が取り下げられ、新に幌延URLプロジェクト(幌延深地層研究センター)が提案された。これを受けて、JNCによって具体的なURL計画が申し入れられ、北海道庁による2年間の検討の結果、200年に以下の内容の協定が北海道、幌延、JNCの間で協定が結ばれプロジェクトが発足した。

その内容とは

@JNCはプロジェクトのために、HLWを研究センターに持ち込まない。

AJNCは研究センターを地層処分の実施機関であるNuclear Waste Management Organization (NUMO)に貸さない、譲渡しない。

BJNCはプロジェクト終了後、研究センターを閉鎖し、埋め戻す。

CJNCは研究センターを核廃棄物の貯蔵地にしない、また、幌延に核廃棄物の中間貯蔵施設を持ち込まない。

これらの協定内容は、幌延の住民への配慮からである。

また、このほかにもURLもしくはその地域が核廃棄物の貯蔵地や処分場にならないような、様々な制度的な枠組みが採られている。

@JNCの設立に関する法律では、HLWに関わる活動は研究開発のみである。

A特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律(2000)により核廃棄物の地層処分の実施はNUMOのみが行うと定めている

B2度の原子力長期計画(19942000)ではURLプロジェクトは廃棄物処分場と明確に区別するとしている

C20005月に制定された幌延町の条例では幌延への核廃棄物の持ち込みを禁じている

D200010月に北海道によって制定された条例では、北海道はHLWの地層処分技術がまだ確立されておらず、そのような状況ではHLWの北海道への持ち込みは受け入れがたいと表明している

E北海道、幌延、JNC間の協定書。

プロジェクトの開始後、現在は地表の地質環境調査が主として行われている。町全体の調査結果に基づき、サイトとして調査される地域が選定され、研究センターの建設に必要な土地が取得され、建設用の造成工事が昨年(2003年)年から開始されており、地下施設の建設は2005年から開始される予定である。

このプロジェクトを進めていくためには、情報と施設の公開によって公衆との健全な関係を築くことが重要と考えている。また地元住民のURLに対する心配や意見はHLWの地層処分に対する公衆の信頼を得るための重要なヒントを与えるものと考えている。

そこで、幌延URLプロジェクトでは次のようなことに力を入れている。まず、地域に開かれたプロジェクトを目指し、情報・研究状況・施設を常に地域に開かれたものとする。研究者は広く国内外から集い、設備を学術的・産業的研究に提供する。そして、地域社会との協力に力を入れている。地域社会とのコミュニケーションは、幌延町、幌延町の周辺町村、そして北海道に対してである。

幌延町に対しては、これまでの結果やこれからの計画について説明し、全ての活動について報告している。また、新聞広告によるPR、地域行事への参加、個々の農業者への訪問を行っている。周辺町村に対しては、プロジェクトの進行状況の説明、新聞広告・ラジオによるPR、ホームページによる情報公開を行っている。また毎年、子供を見学会に招待している。

北海道に対しては、これまでの結果とこれからの計画を北海道庁に対して説明し、プロジェクトのPRを新聞広告、雑誌、テレビ広告を通じて行っている。また、札幌でこれまでの結果とこれからの計画を説明するフォーラムを開いている。

情報開示に関しては、専門の部署を設け、マスメディアに対して情報を提供、教育している。また、全ての技術的な情報は報告書とホームページで公開している。サイトや研究活動は全て開示しており、要求に応じてプロジェクトの結果や計画について説明、ディスカッションできるようにしている。

その他の活動としては、動植物の生態系、河川の水質、騒音や振動といった環境モニタリングを行っている。今後の予定としては、深地層に通じるシャフトやトンネルへの公衆の立ち入りを通じて地下の研究開発の状況を開示する。また、地下の研究を説明した見学施設を建設するといった予定がある。

 

これら、一連の活動から学んだ地域交流に関する教訓は以下のようなものである。

@悪い印象は長い期間持続してしまう。

A町役場との交流は不可欠。

B草の根運動的なBottom-upの関係を築くことが重要である。

Cメディアを用いた情報の発信が重要で、メディア自身の教育を行うことも重要である。D新聞やテレビはインターネットよりもはるかに効果的である。

E若い世代に対して活動することは、将来の安定的な発展を達成するために重要である。

F公衆の信頼を得るために、最も重要なのは日々の安全実績の積み重ねである。

(質疑応答)

Q:核廃棄物は幌延には将来、持ち込まないと言うが、幌延で得られる情報をどうやって、他の処分地に利用するのか?幌延の地質は日本におけるそれの一般的なものなのか?

A:現段階では、我々は地下がどうなっているのか充分には分かっていない状況にある。

また、少なくとも地層処分技術の実際ある地質環境への適用性や信頼性を知る必要があると考えている。

 

 

セッション: PIO-III, Case Studies of Effective Communications

タイトル: Uranium Mining and Environmental Issues in Australia

        オーストラリアにおけるウラン鉱山の環境問題

報告者/所属:Clarence J. Hardy ANA(オーストラリア)

 

本報告は、ウラン資源に豊富なオーストラリアにおいてウラン生産量が低い要因となっている政治問題、環境問題などと広報に関する実態について紹介である。

オーストラリアには$40/kgのコストで採取可能なウランが689,000トンある。これは、世界のウラン資源の44%を占める。これと比較して、カザフスタンには世界資源の20%、カナダに18%、南アフリカに8%、その他の国々に10%である。

しかし、2003年のオーストラリアのウラン生産量は世界シェアの19%であった。これは、同カナダの32%、アフリカの18%、カザフスタンの8%、その他の国々の23%と比較して、資源量を考慮すると低い生産量であるといえる。この要因の一部は、過去30年間のオーストラリアにおける政治問題、環境問題、社会問題にある。

オーストラリアでは、1967年の発見以来、他の鉱山と同様公害の問題が提起されてきた。同の鉱山の場合は、漁業への影響などで反対が起こり、中でもウランについては、規制と環境問題が強化された。

規制については、核不拡散の問題から、労働者の健康問題や周辺地域の汚染に関して法律が作られてきた。具体的には3箇所のウラン採掘所について、大規模な環境負荷の評価、公衆との協議会の開催、そして日常のモニタリングについてである。

Ranger鉱山のケースでは、自然保護のために、鉱山の稼動認可の事前に、大規模な環境調査が行われた。これは、この地域の周辺に世界遺産のKakadu国立公園があったためである。鉱山の稼動による公衆の放射能汚染として考えられる主な経路は、ウラン系列の長寿命各種の地表水による鉱山からの輸送と、気体のラドンや短寿命娘各種およびほこりに含まれるウラン系列の長寿命各種の大気拡散である。そのため、Commonwealth Government ERISSEnvironmental Research Institute of the Supervising Scientist)により、公衆の被曝線量が評価され、ICRPInternational Commission of Radiological Protection)による制限値と比較された。その結果はERISSによって毎年公開されており、全ての年においてICRPの定める上限値の1/20以下となっている。その他にも化学的、生物学的調査が行われており、全ての調査結果はKakadu国立公園に有害な影響が及ぼされていないことが判明している。

政府、ウラン採掘会社、そしてAustralian Nuclear Associationは、これらの問題で教育が重要であるという認識を持っており、ウランや原子力の平和利用に関する情報を公衆や学校に供給している。教科書には燃料サイクルから発電までのいわゆる核燃料サイクルについての記述を取り入れ、研究炉(ANSTO)の公開、などを行っている。研究所の公開には多くの反対派も訪れるが、技術的な説明を正確にすることを実行している。

結論としては、30年にわたり、住民には環境問題に興味を持ち、行政や企業には継続的な監視や管理を求めているが、これらへの忠実な対応をし、学会は情報の発信(ウランの課題、利便性など)をして、公衆との関係は良好な状況である。

(質疑応答)

Q::社会受容のためのWeb Site はあるか?

A:有るけれど内容は充実していない。

Q:鉱山周辺の住民や一般市民の反対の状況はどうか?

A:オーストラリア人は放射線には神経質である。また放射線関係に反対をする特別なグループがいる。砂漠の中に低レベル放射性廃棄物の処分場の計画に対して、政府と州の主催で、フォーラムを開催し、2日間で700名が参加した。一方反対するグルーンピースの集会には70名程度でありそれによる影響はあまり強くなかった。

Q:何故反対運動が起こっているのか?

A1957年に200km 北方の海で原水爆実験が行われ、それによって漁場が汚染され、結果として、魚が汚染され、社会問題になった。これが大きく影響をして居る。

C:これに関してエピソードがある。砂漠の真中に例レベル放射性廃棄物を持ち込む計画に対して反対する老齢の女性に何故反対なのかと質問すると、「私には1950年代の核爆弾の大気実験の悲惨な記憶がある。そのような悲劇を二度と繰り返してもらいたくないから、反対しているのです。」つまり、彼女たちにとってみれば、サッカー場程度の広さの場所に放射能レベルの低い核廃棄物を持ち込むことと、原爆実験は同じである。

Q:市民の反対で閉鎖された鉱山の再開について知りたい。

A1970年代の後半に環境問題で閉鎖されていた鉱山を3年前に再開した。大企業が環境規制をクリアーするように対策をし、政府もこれを支援している。

 

 

セッション: PIO-III, Case Studies of Effective Communications

タイトル: The NIMBY Syndrome in the Waste Management in the United States and Some Suggested Solutions

  アメリカにおける廃棄物処理のNIMBY症候群といくつかの解決策の提案

報告者/所属:J. Scott Peterson Nuclear Energy Institute (NEI)

 

本報告は、米国における核廃棄物の処分をめぐるいわゆる“NIMBY症候群”の現状と、この問題に対する解決策の提案である。

not-in-my-backyard(私の近くにはやめて)”という主張は米国におけるほとんど全ての核廃棄物処分場の選定プロセスで顕著になっている。NIMBYとは、その施設や技術などの必要性などは認める一方で、自分の周りにそれらが来ることに対しては反対するという姿勢である。しかし、これは原子力に限ったものではない。一般的に公衆は新しい施設に対して抵抗感を示すことが多い。例えば、米国では過去数週間の間でも、EurekaLNGターミナル計画(1B$の規模)、Mendocinoの生物科学技術に関する計画や、ディズニーランドの建設計画なども地域住民などの反対により取り消されている。

原子力プロジェクト、特に核廃棄物に関連するプロジェクトは、しばしば、関連施設や輸送経路の周辺の住民、学校、その他の公的機関が反対を表明する。しかし、多くの大部分の社会が核廃棄物を受け入れることに反対しているからといって、全ての社会が反対しているのではないということを分からなくてはならない。最近の研究結果が示すように、ほんのいくつかの地域が核廃棄物の受け入れに賛同すれば、これらの処分場の選定を行うのには充分であるからである。

一方で、米国における原子力をとりまく環境は、改善の風潮がある。特に、最近のエネルギー不足(実際には、電力送電システムのトラブル)などを受けて、公衆や政策決定者らの原子力に対する支援が増しており、中間貯蔵所の新設や既存の原子力発電所のライセンス更新などに対しても好意的である。最近の調査では、原子力への賛成は全体で63%で、このうちプラントオペレーターは69%が賛成している。またプラントを地元に受け入れるという人々も全米平均で55%あり、オペレターでは55%にも達している。

核関連施設の場所の選定を行う“魔法の方程式”は存在しない。これらのプロジェクトはその背景を広く考慮して行わなくてはならない。正当な判断に至るには、公平な手続きのもとに情報開示をし、人々の同意を得ることである。世論の完全な同意を得ることは不可能だとしても、早い段階での公衆の政策決定プロセスへの参加は、情報を発展させ解析し、同意に至るフォーラムの開催を可能にする。

米国の原子力産業界は最近では、発電所内の使用済み燃料貯蔵施設の拡張やネバダ州のユッカマウンテンの使用済み核燃料及び高レベル放射性廃棄物の処分場の選定に関して成功を収めている。このような成功には、産業界と政府によるリーダーシップの発揮と系統的な計画を立てることが重要であった。NEIはこれらの全ての活動において、政策を導くために産業界の資源を合わせ、中央政府、有力者、地元レベルでの活動を行って、中心的な役割を果した。

これらの活動を具体的に紹介すると、以下のようになる。

@ユッカマウンテンのプロジェクトの社会受容に関する経緯

約4B$の技術開発をネバダサイトで行うことに、住民は不安を持ち、ネバダ州も反対した。

そのため関連企業は地方の大学との連携をして、地域住民への説明を分かりやすくする方法などについて検討を始めた。

Aユッカマウンテンプロジェクトに対する企業のゴール

サイト決定への、ブッシュ大統領の決定をうけ、アブラハムDOE長官の生命や議会の議決によって、後ろ盾を得て、このプロジェクトはネバダ州による建設の推進が決められた。そのため、NEIは企業のリーダーとして、政策プログラムの策定、連携プログラムの策定、メディア対応、ネバダプログラム、DOE支援などを行うことにしている。

Bロビー活動

このプログラムに影響力のある議員(ポートランド、ワシントン、フロリダ、ジョージア、ミュージャージーなどの各州)への説明や輸送や発電所のある州の有力議員、3,000人以上の船舶労働者を把握する議員などに、処分場についての分かりやすいパンフレットを作成し、12百万部を発行した。また、ウォールストリートジャーナル、ワシントンポスト、ニューヨークタイムス、などの上院の選挙に連動させて意見広告や広報宣伝を行った。また下院の選挙にも関連させる予定である。

Cネバダ住民とのかかわり

 施設の建設には社会受容は必須で、市民はその利便性と安全性についての理解を促進しなければならず、それには関連機器の製造プロセスから理解をもとめ、Win−Winの関係を持つための対話を進める必要がある。

DNIMBY問題の克服

まず、必要なのは、強いリーダーシップとシステマチックな計画であり、これは発電所の建設にも共通する事柄である。そのための内容は、継続的な市民意識の調査の実施、メディアとのコミュニケーション、多くのステークホルダーとの連携の開発、地方の支援者の活用、などである。

また毎日が事業者や行政は信頼の獲得のための活動の場であり、政府関係者は特に住民対話に参加して、信頼できる人は誰かという事をはっきりさせること注意をはらう必要がある。

 

地方のリーダーとの対話ではNEIの経済性の評価や防災対策、あるいは地方自治体にとってのメリットを強調するような内容で促進することが効果的であるとしている。

(質疑応答)

Q:NEIの社会調査からNIMBYの傾向をどのように把握しているのか?

A:NEIにデータベースがあり、そこから導かれる。

Q:我々の行った調査では、電気の主な源となるエネルギー源の上位3つをほとんどの人が知らないということが分かった。つまりエネルギーと電気の関係をほとんどの人が認識していないということである。どうやって電気と廃棄物を関連付ければ良いと思うか?

A:まさにそこが、我々NEIが着目した点。公衆に対して電気を作るためには廃棄物も扱わなければならないということを説明してきた。電気の必要性は誰もが認識していることであり、その点を公衆が再認識することで、廃棄物の問題をより、建設的に考える風潮が生まれた。

Q:ヨーロッパの国では市民の選択するエネルギーは原子力ではない。これについてはどう思うか?

A:ユッカマウンテンのステークホルダーの中には原子力はいやだ。石炭にしたいという人もいる。

 

 

セッション: PIO-III, Case Studies of Effective Communications

タイトル: Lessons Learned from the TEPCO Nuclear Power Scandal

  東電不祥事の教訓

報告者/所属:Hiroyuki Kuroda TEPCO  (安橋氏代理発表)

 

本報告は、昨年の東京電力による原子力発電のスキャンダルの背景とそこから得られた教訓について纏めたものである。

2000年MITIから、「GE社元社員からの内部告発により、東電で不適切な行為があることが指摘された」ことに関して東電に質問があり、2002年8月に社内調査の結果をMITIに報告し、それが公表された。この件は、BWRのシュラウドの検査や点検についての不適切な行為という内容であったが、その後、20029月には漏洩試験のデータ記載に不適切な点が指摘され、この2つの不祥事から原子力に関しての社会からの信頼が失墜した。

ドキュメントの改竄についての背景には、主要機器でない部品の欠陥などについて報告の必要性の有無に関する基準がなかったこと、技術的な判断基準として建設時の未使用の状態の基準が用いられており、運転保守の基準としては適切でなかったこと、技術者の間で安全が確保されていれば政府への報告をする必要がないという意識があったことなどである。

この不祥事の発覚は東電に対する国民の信用を傷つけただけでなく、日本の原子力政策に対する国外の機関や個人らの不信感を招くこととなった。また、このことが原因で17基の発電所が停止され、2003年の夏には関東地方の停電が社会問題になった。

これらの状況に対応して東京電力は次のような対応をした。

A:再発防止人向けての対応

@正直に事故や故障を報告しよう

AQ/Aシステムを改善(社長直轄の担当部門の新設とQ/A会議の設立)

B倫理教育と企業文化の見直し

B:信頼回復

@地方リエゾン会議の設立

福島発電所と柏崎刈羽発電所のある地域で“Regional Information Meeting”を開き、地元住民の意見を聞き、また情報を伝えるようにした。この会議には反対派も含め開催している。

A情報公開の原則の見直し

事故・故障などのプラントの問題を公式に発表に関する基準が設けられ、多くの情報がメディアに供給されるようにし、また、ホームページでも公開されるようにした。このため、新聞発表は以前の3〜5倍にもなり、情報の開示は着実に進んでいる。

B適正な活動が可能となるような環境作り

各原子力発電所で“Compliance Committee”が設けられ、規則違反の例が同定された。また、“Business Ethics Consulting Office”が設けられ、会社内からの問い合わせに対応している。

Cより厳格な原子力発電部の内部検査の実施と閉鎖的な体質の改善

原子力発電部の“Quality Assurance System”が構築され、その他の部との人事の交換が行われている。またステークホルダーへの詳しい情報の開示もタイムリーに行うようにしている。

                                     以上







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