原子力・放射線分野における進路選択、キャリア形成に関する意識調査
若手の進路選択においてどうすればもっと原子力や放射線分野に興味を持ってもらえるのか?
その要因を探るため2024年3月に日本原子力学会会員や学会イベント参加者に対して意識調査を実施しました
※関連記事は日本原子力学会学会誌「ATOMOΣ」2025年7月号(2025年7月1日発行)に掲載
調査対象
問1 性別
問2 年齢
問3 会員種別
年代別の会員の種別を示します。青色の丸が男性、緑色の丸が女性の数を示しています。
20代は学生会員とイベントに参加してくれた学生(非会員)に分布が分かれています。
30代以上は一般会員が大半になります。
問4 専門分野
年代別の専門分野を示します。青色の丸が男性、緑色の丸が女性の数を示しています。
今回の調査では原子力・放射線を専門としている方に多く回答していただきました。
調査結果
問5 原子力に興味を持ったのはいつですか?
原子力に興味を持った時期について年代別のグラフを示します。
注目すべき点は、50代の女性の多くが「就職後」に原子力に興味を持ったと回答しています。この結果は、大学進学時の進路選択において原子力に関しては関心がなかったが、就職後の業務を通じで興味を持つようになったと考えられます。
問6 あなたの所属する(卒業した)学科・専攻は原子力や放射線を専門に学ぶことができますか?
はい(163人) / いいえ(92人)
【「はい」と答えた方へ、その専攻を志望した理由は何ですか?】
・原子力が総合工学であるから
・エネルギー問題に取り組みたかったから
・原子力という学問に興味があったから
・ニュースで知って興味がわいたから
・仕事に魅力を感じたから、将来性を感じたから
・家の近くに施設があった、親戚が関わっていたから
その他、多くの回答をいただきました。多くの回答をAI分析した結果をこちらに示します。
【「いいえ」と答えた方へ、その専攻を志望しなかった理由は何ですか?】
・原子力や放射線以外の分野に興味があったkら、関係科目を履修していなかったから
・原子力や放射線を学ぶ機会が無かったから
・卒業後の仕事が想像できなかったから
・原子力や放射線に対して怖いイメージを持っていたから
問7 進路選択に際してあなたに影響を与えたこと(人)は何ですか?
進路選択における影響について年代別のグラフを示します。
50代の女性は、主に通勤のしやすさを重視して就職先として原子力・放射線分野を選択していることがわかります。
男性は、高校や大学時代に原子力に興味を持ち、進路選択には学校や企業の知名度が影響を与えたことがわかります。
問8 原子力産業界への就職を希望していますか?社会人の方は学生時代のことをご回答ください
はい(156人) / いいえ(55人) / わからない(44人)
AI分析結果
「原子力・放射線に興味を持った理由」についてのAI分析
「原子力・放射線に興味を持った理由」についてAI分析を行い、10個のキーワードを抽出しました。また、その抽出理由もAIに回答してもらいました。
1. エネルギー問題
多くの回答者が、エネルギーの安定供給やエネルギー問題の解決に関心を持ち、原子力分野に進む動機となっていました。
2. 原子核物理
原子核や素粒子に関する興味が、原子力・放射線分野を選択する大きな要因であり、物理学的な側面が強調されています。
3. 放射線物理
放射線に関する学問的な興味や、それを学ぶ環境が多くの回答者にとって重要な選択理由になっています。
4. 福島第一原子力発電所事故
2011年の福島第一原子力発電所の事故がきっかけで原子力に関心を持ったという回答が多く、事故の影響が進路選択に大きく影響していることが示されています。
5. 放射性廃棄物処理
放射性廃棄物の処理や管理に関する問題に関心を持つ回答者が多く、将来の課題に取り組みたいという意欲が表れています。
6. 核融合研究
核融合に対する期待や興味が強く、未来のエネルギー源としての可能性を追求する回答者が多く見られます。
7. 原子力の平和利用
原子力の平和利用に関する関心や、それを学びたいという動機が多くの回答者から示されています。
8. エネルギー安全保障
日本のエネルギー安全保障に貢献するため、原子力の役割に興味を持つ回答者が多いことから、このテーマが重要と判断しました。
9. 放射線利用
医療や産業での放射線利用に興味を持つ回答者が多く、放射線技術に対する実用的な関心が示されています。
10. 原子力発電
原子力発電そのものや、その技術に関わることを志望動機とする回答者が多く、エネルギー供給に関する直接的な関心が強調されています。
「原子力・放射線の魅力を伝えるには」についてのAI分析
アンケート結果を参考に、小中高生や大学生に、原子力や放射線分野の魅力を伝えるにはどのような対策やイベントを行ったら良いか、AIに考えてもらいました。
1. 科学的興味を引き出すプログラムの提供
アンケート結果から、多くの回答者が中学や高校時代に物理や化学への興味から原子力・放射線分野に進むことを決めたことがわかります。この興味を引き出すために、小中高生向けに以下のようなプログラムを提供してはどうでしょう?
・サイエンスキャンプやワークショップ:原子力や放射線に関する実験や観察ができるプログラムを提供し体験を通じて興味を喚起します。
・物理や科学の特別授業:中学校や高校で、専門家が原子力や放射線の基礎をわかりやすく教える特別講義を行います。
2. 将来のキャリアに結びつける説明
多くの回答者が、エネルギー問題や環境問題の解決に貢献したいと考えていたことが、原子力・放射線分野への進学を決めた理由として挙げられています。これを受けて、次のような取り組みが考えられます。
・キャリアガイダンス:原子力や放射線分野で働くことの意義や社会への貢献を伝えるキャリアガイダンスを提供し、具体的な職業への道筋を示します。
・業界の未来を見据えた講演会:エネルギー問題や環境問題に取り組む専門家の講演会を開催し、現実の課題解決に結びつくキャリアを強調します。
3. 見学会やインターンシップの提供
回答者の中には、実際に研究施設を見学したことがきっかけで原子力・放射線に興味を持った人が多くいます。これに基づき、次のような取り組みが有効です。
・研究施設見学会:原子力発電所や研究所の見学ツアーを開催し、現場のスケール感や技術の最前線を直接体験させます。
・インターンシッププログラム:大学生を対象に、研究施設や企業でのインターンシッププログラムを提供し、実際の仕事を体験させる機会を作ります。
4. メディアやSNSを活用した情報発信
多くの若者がSNSやインターネットを情報源としているため、これを活用した情報発信も重要です。
・SNSキャンペーン:若者向けにわかりやすく原子力・放射線の魅力を伝える動画やインフォグラフィックをSNSで発信し、拡散を狙います。
・オンラインイベント:専門家によるオンラインセミナーやQ&Aセッションを定期的に開催し、気軽に質問できる場を提供します。
5. 教育カリキュラムとの連携
教育機関と連携し、原子力・放射線に関する教育カリキュラムを充実させる取り組みも有効です。
・学校カリキュラムへの導入:物理や科学の授業に原子力や放射線に関する内容を取り入れるよう、教育委員会や学校に働きかけます。
・教師向け研修:教師を対象にした研修を行い、最新の原子力・放射線に関する知識を提供し、授業での指導に役立てます。


