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部会長挨拶
核燃料部会長 尾形 孝成
(電力中央研究所)
「核燃料部会への期待〜ごあいさつに代えて」
2024 年度核燃料部会⻑に選任されました電中研の尾形孝成と申します。
核燃料部会では、大学または原子力機構から部会⻑を選任するというルールがありましたが、2021 年度の運営小委員会で「幅広い人材の活用を目的に産業界出身者も部会⻑候補になれるようにする方が良い」との意見が出て、部会⻑選任のルールが見直されました。私は、そのルールの下で初めて産業界から選任された部会⻑ということになります。実は、2024
年4 月に原子力機構に採用されたため、主たる所属は原子力機構ということになりますが、電中研の研究アドバイザーという名誉職のような肩書もございますので、学会活動では、これまでの経緯を踏まえて電中研の方を所属と致したいと思います。
さて、ごあいさつに代えて、核燃料分野の近況と今後の期待について申し上げたいと思います。
核燃料分野の縮小傾向は、年配の部会員ならば誰もが感じていることと思いますが、バブル崩壊とともに1990 年代から始まったように思います。原子力学会の年会・大会における発表件数も年々減少しているように感じます。この傾向は、我が国だけでなく米国にもあるようで、2007
年の国際会議で米国の知人も同様の感想を漏らしておりました。燃料デブリの研究や事故耐性燃料の研究開発によって一時期盛上りも見せましたが、再び縮小傾向に戻りつつあるようです。この傾向の原因にはいくつかあると思います。材料部会、再処理
・リサイクル部会、計算科学技術部会、新型炉部会、標準委員会など核燃料分野と重複する分野を持つ部会・委員会が立ち上がってきたこと、大学や研究機関で核燃料関連の研究に従事する方の数が減ってきたこと、などが考えられます。前者については、原子力学会の発展とともに新たな部会・委員会が立ち上がるのは自然の流れであり、古くに設立された核燃料部会が縮小していく傾向は致し方ないのかもしれません。後者については、様々な要因によって核燃料使用施設の維持が困難になってきたこと、軽水炉燃料の順調な運用実績や核燃料関連産業の成熟に伴い産業界や研究機関の採用や研究ニーズが減少してきたことなどに関係していると考えられます。
このような状況の中で、核燃料部会に期待されるものは何でしょうか。学会は、学術的な知見の共有の場であり、それを通じての研究者や技術者の交流の場であるので、核燃料部会の役割としては、核燃料分野の中でそのような場を提供していくこと、ということになるのでしょう。しかし、場の提供に留まって、核燃料分野の縮小傾向を放置して良いとも思えません。学会活動の発展とともに学術分野の細分化が起きることは必然であり、関連産業の成熟に伴う研究ニーズの低下も必然かもしれません。しかし、縮小傾向の放置はいずれは衰退と消滅につながることは自明ですので、発展を諦めてはならないと思います。
核燃料は、濃縮、燃料製造、原子炉の運用 ・安全評価、輸送・貯蔵、再処理等々、燃料サイクルのあらゆる局面における中心的なものであり、核燃料という学術分野が取り扱う範囲は本来的に大きな拡がりがあります。また、軽水炉、ガス炉、高速炉など様々な型式の原子炉には、各々特徴あるタイプの核燃料が使用されます。核燃料という切り口から改めて燃料サイクルや原子炉を俯瞰し、分析することで、学術的知見の総合化、研究のニーズとシーズの発掘、さらには新たな学術分野の創出の可能性が期待できるのではないでしょうか。学会というボランタリな場で、このようなことを行っていくことは大変かもしれませんが、明るい将来の姿を描いて、それに近づけるように少しずつ始めていくことはできるかもしれません。
このようなことを考えつつ、核燃料部会の運営を進めていきたいと思います。ご支援のほどよろしくお願い致します。