【写真】2005年7月、武蔵工大(現東京都市大)における第1回対話会の集合写真
学生・市民との対話会
【熱い討論で始まった第1回対話会】
既に活動を開始していたシニア組織「エネルギー問題に発言する会」に、日本原子力学会(以降「学会」)からシニアの経験を活かして原子力を学ぶ学生を支援しないかとの相談があり、2005年に学生とシニアが進め方などについて熱い議論を交わして「学生とシニアの対話会」が発足しました。半年で4校の対話会が開催され、その意義が認められて翌2006年にこの活動を担う「シニアネットワーク連絡会(SNW)」が学会の下部組織として発足しました。
▶ 活動の場が原子力だけから理工系、教育系などへと拡大。 (クリックで展開)
活動も時代とともに原子力だけから理工系、法文系、さらには、教員を目指す教育系の学生へと拡大していきました。対話会も当初の「技術と経験の伝承」を超え、学生とシニアの心の交流へと進化しました。シニアにとってもエキサイティングな活動となっています。
【図】2005年の第1回学生とシニアによるグループ対話の状況
▶ 心の交流の場となった孫と爺の往復書簡
原子力の学生にとって将来がバラ色とは言えない時代を背景に、2009年に学生から原子力問題を深堀りしたいとの相談があり、学生から寄せられた疑問、悩みに対しシニアが返事を書くという往復書簡は、3年間にわたる学生とシニアの心と心の濃密な交流の場であり、「孫と爺のほほえましい問答集」でもありました。その後書簡は取りまとめられていますが、個人情報も含まれていることから公開はされていません。しかし、シニアにとっては活動の基盤となる貴重な資産となっています。
▶ とことん語る「福島事故と原子力の明日」
このような時期の2011年に福島第1原発の事故が発生し、これにどのように対処するかの往復書簡が再開され、取りまとめられて2012年に新書版として発刊されています。
【図】新書版となった往復書簡
▶ 学校もシニアは頑張ったコロナ禍中の開催
コロナ禍にあっても何としても対話会を継続したい、というのがシニアの総意で、結果的にリモート形式となりましたが、学生は学校に集まることとなるので、実施の実務の詰めで指導教官との調整が進められ、大学まで出向くこともありました。これにより、コロナまん延中の2021年においても17校での対話会が実施されています。
▶ 対話会20周年記念ワークショップの開催
2025年に20周年を記念してワークショップが第1回開催会場であった東京都市大学(前武蔵工業大学)で実施されました。対話会に参加するシニアも徐々に若返り、これからの時代を先導する対話会の進展または変身が期待されます。
【図】2025年の対話会20周年記念ワークショップの状況
【写真】記録に残る最初の第7回シンポジウムの会場風景(2008年)
シンポジウム
【2年間で9回開催の精力的立上げ】
2006年5月、SNWは設立2ヶ月後に第1回の「シンポジウム」を開催し、2年間で9回、開催場所も北海道、東京、名古屋、大阪と精力的に活動を開始しました。第1回のテーマは「石油を浪費しない社会の構築とシニアの役割」で、その後のSNWの活動の基軸ともなっています。参加者は約200名でほぼ満員だったとの記録も残っています。第10回以降は、継続実施を可能とする現在の年1回開催形式となっています。
▶ 事故5カ月後の原因調査と今後の対応
福島第1原発事故の直後の2011年8月に開催された第12回は、「福島第1原子力発電所事故を踏まえた我が国原子力の今後」のテーマで議論されました。原子力委員も参加し、事故直後としては深くかつ広く「事故の状況」「緊急安全対策」「避難地の復興について」「事故後の世界の原子力政策、日本のエネルギー政策」などのテーマで議論が行われました。
【写真】福島第1原発事故5ヶ月後のシンポジウムの様子
▶ JR東海会長 葛西敬之氏の迫力ある基調講演に感銘
原発事故から2年「原子力は信頼を回復できるか?」をテーマとした2013年(第14回)におけるJR東海会長の葛西敬之氏(上記写真)の基調講演は、国鉄民営化を主導した経営者として国レベルで物を考え、実現可能性と長期的持続可能性があるものを断固として実行する強いリーダーが必要と述べるなど、その見識と迫力に感銘を受けた基調講演でした。
▶ 原発20km圏内に取り残された患者に寄り添った女性医師の報告
原発事故から3年が過ぎて、相馬中央病院内科科長の越智小枝氏(写真)から震災当時、原発20km以内退避指示が出ても避難できない患者に寄り添う深刻で生々しい状況が報告されました。50km圏外に避難して無人となった酸素ボンベ工場から病院関係者が酸素ボンベを持ち出して患者の命をつないだこと、食料品がなくなって避難所に患者を送り届ける交通手段に大変苦労したなど、圏内に残る人だではどうしようもないことに向き合った胸の痛む多くの苦難の話が紹介されました。
▶ コロナ禍における所属にとらわれない自由な議論
2021年は経済産業省、電事連、三菱重工、日立、SNWそれぞれが自由に発言できる環境で見解を述べ、国の委員会とは趣の異なるシンポジウムとなりました。
▶ 会員によるエネルギーミックスの提案
2022年は、SNWの牧英夫氏が徹底的な調査とシミュレーションによる最適なエネルギーミックスを提案。2025年は東大医学部博士課程の学生もパネリストに加わり、将来の基盤確立に向けた土台つくりが行われました。
【写真】中長期のエネルギー政策は如何にあるべきか?のパネル討論の様子
【写真】2050年まで30基程度新規原発必要
提言活動
【経験と見識を活かした提案活動】
政府は2020年12月の「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略(GX実行会議)」においてチャレンジャブルな電力供給目標を提示しました。これを契機に、シニアネットワーク連絡会およびエネルギー問題に発言する会は、これまで蓄積してきた各会員の知識、経験および見識を最大限活用してこの目標達成に向けた提言を行うこととし、各人の自由な発想を基盤としつつ組織的な提言活動を開始しました。
(説明文中の例(teigen01)は提言番号01を示し、提言ホームページのトップの目次から「提言1」として検索できます。)
▶ 今も変わらない、再エネ、火力、原子力各1/3発電は最適な調和電ミックス提言
2021年の第1回および第2回提言(teigen01,teigen02)において、徹底的調査と詳細解析の裏付けに基づく、再生可能エネルギー、火力発電、原子力発電それぞれ1/3づつの電力を供給する調和電源ミックスを提案しました。ホルムズ海峡の封鎖により、国家安全保障にとってエネルギー資源の安定確保と安定供給の重要性が一層高まっています。最新の提言では、原子力発電だけも30~40%が必要であり、再生可能エネルギーと合わせて60%以上を国内で調達すべきことを強調しています。(teigen18)
▶2040年頃から新規原子炉運転開始しないとエネルギー安定確保間に合わない
第1回提案の「原発の40年運転制限を撤廃せよ」については実現して原発の自然死は免れたものの、現状の運転期間60年では2070年にほとんどの原発は停止します。原発の建設期間20年程度を考慮すると、原子力発電量が低減し始める2040年度初頭まで既に14年間となっており、最新の提言では、エネルギー安定確保の観点でから30基程度の新規増設方針を早期に決めて順次建設を開始する必要があることを強い危機感を持って示しています。(teigen18)
▶ 内閣総理大臣への提言
これまでの提言は国を挙げてのエネルギー安全保障の問題であり、国への提言が必須として、内閣総理大臣宛ての提言をいくつか実施しています。その集大成として高市総理大臣あてに行った(緊急政策提言)「今こそ責任あるエネルギー政策を!」(2026年2月teigen16)で「エネルギー緊急行動5カ年計画」を示しています。(1)原子力の司令塔機能の設置(2)原子力への信頼回復と国民理解獲得(3)再稼働の一層推進(4)六カ所再処理プラントの安定操業開始と使用済み燃料の処理(5)原発新設に係わる事業環境整備と専門人材の確保(6)高レベル放射性廃棄物(HLW)最終処分地選定に向けての国のより一層の関与(7)再エネ(太陽光、洋上風力)の現実路線への転換(8)重要鉱物並びに化石燃料資源のサプライチェーンの維持強化が含めれており、この提言は総理大臣に届いているとのことです。
▶ 原子力は、人材・サプライチェーンが残っている今が重要
第2回GX実行会議(2022年8月)での岸田首相の「次世代革新炉の開発・建設」を検討する方針を受け、2022年11月、新設原子力の投資環境や原子力規制環境は一変しており、新設プラントの設計・建設の体験を有する人材やサプライチェーンがまだ残っている今、革新軽水炉の初号機を2030年代半ばに運転開始することを目標として、関係機関の総力を結集し、即時着手する必要があるとの提言(teigen03)のほか、人材確保は「原子力の長期ビジョンの明確化」など環境整備より始めることなど根本的観点(teigen09)(teigen08)での提言を行っています。
▶高レベル放射性廃棄物の処分地選定に取り組め
2022年11月には「知事と国はWIN-WINの関係で高レベル放射性廃棄物の処分地選定に取り組め」(teigen05)また、2023年7月には、「最終処分地選定加速化に向けて」(teigen07)の提言を行っています。処分場の文献調査などにおいても国と地方自治体知事は、それぞれの目的が基本的に一致するはずであり、これを念頭に処分地選定を進めるべきとの提言などを行っています。




