「学生とシニアの対話」実施報告
−対話in北海道2009−
2009/08/03 若杉和彦
1.実施趣旨
2005年度から続けている「学生とシニアの対話」活動の一環として、北海道大学にて対話会を実施する。この活動は日本原子力学会のシニアネットワーク(SNW)と学生連絡会及びエネルギー問題に発言する会が共催で行うものであり、原子力に関心を示す学生と原子力を経験してきたシニアとの交流を図る。SNW主催の活動としては27回目の「対話」であるが、エネルギー問題に発言する会主催のものからの通算では33回目となる。北海道大学では2005年9月以来、4回目の対話となる。
2.対話の目的
学生とシニアの対話を通して、エネルギー問題に対する認識を新たにするとともに、このような大きな問題にいかなる態度で臨むべきかを一緒に議論することを目的とする。特に原子力の実務を経験してきたシニアの知恵と知識を、社会に出る前の学生が吸収し、その将来への自信に繋げてもらう。このため、対話会を実施する前に下記資料を学生に配布し、より深く理解してもらうよう配慮した。
−対話イン北海道2009事前アンケート質問事項への回答:編集 石井正則
−「対話会イン北海道2009」共通テーマに対するシニアの応答:編集 石井正則、伊藤睦
3.対話の実施
(1)日時 平成21年7月24日(金)
13:00〜17:30 (懇親会18:00〜19:30)
(2)場所 北海道大学 工学研究科 A棟1階(A1−17:物理工学系大会議室)
(3)参加者(敬称略)
@学生 北大35名、東大1名、計36名
M1:10名 M2:13名 B4:12名 D1:1名
Aシニア SNW会員13名
石井陽一郎、大橋弘士、小川博巳、岸本洋一郎、斎藤修、齋藤伸三、嶋田昭一郎、 土井彰、林勉、三谷信次、若杉和彦、石井正則、金氏顕
B教員 4名
島津洋一郎、奈良林直、杉山憲一郎(懇親会のみ)、佐藤正知(懇親会のみ)
C学生OB参加者 3名
錦見篤志、吉津達郎、平山聖
Dオブザーバ 2名
金刺秀明、大塚英司
(4)実施内容
a.基調講演 (13:10〜13:50)
「原子力の今後の課題にどう対処していくか」 林勉
b.ファシリテーションについての説明 (13:50〜14:00)
「ファシリテーションと対話への適用要領」 金氏顕
c.対話と講評 (13:10〜17:40)
対話のテーマを6つに選び(エネルギー危機意識、FBRと第4世代炉、反原発へのアプローチ、今後の原子力の見通し、プルトニウムと燃料サイクル、世界の原子力情勢)、各テーマにシニア2〜3名と学生6名ずつのグループに分け、対話を実施した。
テーマの選定とグループ分けについては、事前に学生とシニアからの希望を取り入れた。対話終了後に6つのグループから対話内容のまとめが報告され、最後にシニアを代表して齋藤伸三氏から対話の経験を今後の活動に生かしてほしい旨の講評が行われた。グループ編成とテーマの詳細は添付資料のとおり。
(5)事後アンケートの概要
(6)結果
学生とシニアとの対話はほぼスケジュール通り実施され、当初の目的を達成出来た。今回の対話会の特徴としては、@学生の事前準備が十分行われ、ファシリテーション手法の導入とあいまって、対話の内容が充実したものになった、A卒業後間もない若手のOBも参加したため、学生との意思疎通がより改善された、Bシニアからの体験に基づく会話が学生に大いに役立ったと考えられるが、やはりしゃべりすぎのきらいがあり、今後さらに学生側からの発言を促す方策が必要ではないかと考えられた。
4.まとめ
今年はポスト京都の地球温暖化対策として12月に国際会議(COP15)が開催されるため、CO2排出量削減に係る中期目標計画を政府が中心になってまとめている。中期目標計画策定に当たっては国民から意見が募集されており、新聞やTVを含めて全国民の関心が高まっている。このような環境下で、本来議論されるべき原子力やエネルギーついて将来を担う学生と対話することは大変意義のあることと考えられた。特に北海道大学にはエネルギー環境システム専攻の中に原子炉工学科があり、島津、奈良林先生他の指導の下、原子力に関心を持つ多くの学生が学んでおり、そのレベルは高く、エネルギー問題等に関してかなり突っ込んだ対話が展開された。
また、今回の対話会ではファシリテーションの技法が用いられ、従来より以上に、学生が中心になって対話の方向を決め、経験豊かなシニアから知識や知恵を引き出すことを指向した。さらに事前に「アンケート質問事項への回答」や学生時代にやっておくべきこと(英語以外)等の「共通テーマに対するシニアの回答」が配布されており、学生側の事前の準備が十分行われたため、これらが対話会の議論を深め、当初の目的を達成出来たと考える。
対話後は会場を工学部食堂に移して懇親会が開催され、学生の有志参加者の他、北大から杉山、佐藤両先生も参加され、相互に活発な歓談が交わされ、親睦を深めた。なお、対話会当日の午前中は北大低温科学研究所等の見学、翌日には希望者による北海道電力泊原子力発電所の見学がそれぞれ行われた。これらを含め、特に北大島津、奈良林先生と大学院生今村君、東大大学院嶋田君には大変お世話になり、心から感謝申し上げたい。
対話写真
添付資料
1.グループ編成とテーマ
2.シニア参加者リスト
3.シニア参加者の感想
4.グループ発表資料(PDF) (クリックして参照)
5.学生の事後アンケート結果
6.北大及び泊原子力発電所見学の概要
7.事前アンケート回答集 (タイトルをクリックして参照)
事前のアンケートにおける学生の共通テーマ、学生時代にやっておくべきこと(英語以外)、こんな部下がほしかった、よい会社・悪い会社(会社選びにポイント)に対する各シニアの回答
原子炉へのミサイル命中や核不拡散など、事前に学生から出された質問への回答。
対話写真
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基調講演 |
ファシリテーション説明 |
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対話風景 |
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発表風景 |
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講評 |
集合写真 |
添付資料1.グループ編成とテーマ
グループ別テーマ
グループ |
テーマ |
1 |
日本人全体のエネルギー危機意識を変えるためにはどうすべきか |
(教育) |
|
2 |
FBR及び第四世代炉の開発状況と今後の課題 |
(もんじゅ) |
|
3 |
原子力に対する根強い反対に対してどのようにアプローチすべきか |
(マスコミ対応・隠蔽体質) |
|
4 |
今後の原子力はどうなるか?短期・長期的にどうか? |
(他のエネルギー源との兼ね合い) |
|
5 |
プルトニウムの利用法と核燃料サイクルについて |
(核不拡散) |
|
6 |
世界の原子力情勢について |
(世界の原子力パワーバランス) |
共通テーマ
1.
“原子力村”と揶揄される原子力業界及び技術者の閉鎖的な体質について
l
このように言われてきて原子力業界(メーカー、電力など)の現在の姿は? 今後このような状況の打破のために若い技術者はどうして行けばよいか?
l
もし事故、不祥事隠しなどに将来直面したらどうすべきか? −技術者の意見が通る業界か?
l
シニアが現役の頃は実際どうであったか?
2.
就職活動について
l
学生時代にやっておくべきこと(英語以外)
l
こんな部下が欲しかった
l
よい会社・悪い会社(会社選びのポイント)
グループ1: 日本人全体のエネルギー危機意識を変えるためにはどうすべきか(教育)
シニア |
|
大橋 弘士 |
|
林 勉 |
|
学生 |
|
M2 |
今村 瑞 |
|
大竹 志朗 |
M1 |
高橋 令人 |
|
瀧谷 啓晃 |
B4 |
山崎 大地 |
|
横山 善章 |
例えばこんな話・・・
l
現在の教育現場へ原子力教育を要求できるか?
→義務教育、高等学校、大学…
l
何を教えるか?
→安全性、核拡散、資源量、発電効率、原理
l
メーカーや電力にはどのような活動が可能か?
→住民説明、キャンペーン
グループ2: FBR及び第四世代炉の開発状況と今後の課題(もんじゅ)
シニア |
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石井 陽一郎 |
|
岸本 洋一郎 |
|
学生 |
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M2 |
北村 拓 |
|
西崎 雅則 |
M1 |
工藤 秀行 |
|
知場 一訓 |
|
舟橋 佳孝 |
B4 |
高田 裕太 |
例えばこんな話・・・
l
第4世代の原子炉の開発計画について
→高速増殖炉が一歩リードしているように思えるが、他の原子炉に目はないのか?
→また、それぞれが抱えている問題点は何か?
→現在の原子力業界で、どの程度注目されているのか?
l
もんじゅはどうなっているのか?
→もんじゅの現状と見通し
グループ3: 原子力に対する根強い反対に対してどのようにアプローチすべきか
(マスコミ対応・隠蔽体質)
シニア |
|
金氏 顯 |
|
土井 彰 |
|
若杉 和彦 |
|
学生 |
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M2 |
後藤 直之 |
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吉 一仁 |
M1 |
東 侑麻 |
B4 |
ウィリアム・クー |
|
坂本 裕子 |
|
田島 悠介 |
例えばこんな話・・・
l
事故や災害(中越沖地震など)があったときのマスコミによる風評被害から地元をどう守るか?
l
なぜ隠蔽体質になってしまったのか?
→具体例やその改善への道
l
マスコミの報道姿勢について
→彼らは商業主義に走っているのではないか?
グループ4: 今後の原子力はどうなるか?短期・長期的にどうか?
(他のエネルギー源との兼ね合い)
シニア |
|
齋藤 伸三 |
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三谷 信次 |
|
学生 |
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D1 |
嶋田 和真 |
M2 |
奥村 基史 |
|
後藤 考裕 |
M1 |
春名 清志 |
B4 |
辻 貴行 |
|
平井 祐輔 |
例えばこんな話・・・
l
日本及び世界の原子力の発展について(短期的及び長期的)
→ 原子力が占めるエネルギー割合はどの程度になるか
→ 他のクリーンエネルギーはどうなのか?(風力、太陽光、地熱、核融合等)
l
国内メーカーの海外展開について
→ 本当に海外に原子力を建設することができるのか?(法律の違いや労働力の観点)
グループ5: プルトニウムの利用法と核燃料サイクルについて(核不拡散)
シニア |
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石井 正則 |
|
嶋田 昭一郎 |
|
学生 |
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M2 |
小池 隆太郎 |
|
佐藤 紘太郎 |
|
谷口 諒太郎 |
M1 |
竹山 大基 |
B4 |
千石 純 |
|
水谷 一貴 |
例えばこんな話・・・
l
プルサーマルの現状と今後の展望
→ 現状の軽水炉とのコストや安全性について
l
再処理の現状と今後の展望
→六ヶ所村の再処理施設について
→国内の再処理施設の候補地の確保について
(候補地はどの程度必要か? 国が提示するイニシアティブは十分か?)
グループ6: 世界の原子力情勢について(世界の原子力パワーバランス)
シニア |
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小川 博巳 |
|
斎藤 修 |
|
学生 |
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M2 |
上山 洋平 |
|
菊池 孝史 |
M1 |
岸田 耕一 |
|
横地 琢哉 |
B4 |
遊佐 恭平 |
|
吉田 篤郎 |
例えばこんな話・・・
l
発展途上国における原子力推進について
l
原子力発電の立場から見た他の発電、他の発電から見られた原子力発電
l
今後どのように変わるか、また過去から現在でどのように変わったか?
l
これからの日本人技術者の世界に対する役割は?
添付資料2.シニア・オブザーバー・学生連絡会参加者リスト
氏名 |
経歴 |
石井陽一郎 |
元東電原子力原子力開発研究所副所長 |
大橋弘士 |
北大名誉教授、元北大大学院教授(量子エネルギー工学) |
小川博巳 |
元東芝原子力事業部技監、元アイテル技術サービス専務 |
岸本洋一郎 |
日本原子力研究開発機構研究フェロー、元核燃料研究開発機構副理事長 |
斎藤 修 |
元東電保健安全センター所長 |
齋藤伸三 |
元原子力委員長代理、元日本原子力研究所理事長 |
嶋田昭一郎 |
元三菱重工原子力事業部炉心設計部長 |
土井 彰 |
元日立製作所理事・エネルギー研究所長 |
林 勉 |
元日立製作所理事原子力事業部長 |
三谷信次 |
JANES参与、元日立製作所 |
若杉和彦 |
元原子力安全委員会事務局技術参与、元JNF、東芝 |
石井正則 |
元IHIエネルギー技術本部技監 |
金氏 顯 |
三菱重工特別顧問、元常務取締役 |
学生連絡会 |
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嶋田和真 |
東京大学院 |
オブザーバー |
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金刺秀明 |
北海道電力(株)岩見沢支店長 |
大塚英司 |
北海道パワーエンジニアリング(株)技術部 原子力グループリーダ |
添付資料3.シニア参加者の感想(敬称略、順不同)
岸本洋一郎
グループ対話のテーマは「FBR及び第四世代炉の開発状況と今後の課題」であった。学生からは、もんじゅのナトリウム漏えい事故に対する評価やFBRの技術課題等、多数の質問が出され、まずは端的に答えることに努めたが、こうした質疑応答だけで相当の時間を費やす結果となった。
「もんじゅ」のナトリウム漏えい事故とは何であったか、・・・本件は、技術面、技術管理面、メディア対応及びリスクコミュニケーション面、立地コミュニケーション面のいずれにおいても多くの失敗経験と教訓を伴った事故・事件とみなせるもので、そうした本件の相貌や、故障が事故と見なされた背景が、多少なりとも学生諸君に伝わったのであれば幸いである。さらに、第4世代原子炉(発電、水素生産、プロセス熱利用など)の開発とも関連し、現在の我が国の原子力政策に対する学生の関心も高く、そうした点の説明も必要であった。
今回試みたファシリテーションについては、ファシリテータ役の学生のリーダーシップと参加者全員の協力のもと、準備されたA4の紙と発表ppt用テンプレートが活用され、限られた時間での対話と、とりまとめ発表を効率的に進めるのに役立ったのではないかと思う。ただし、各自に配られたA4の紙には、上段に氏名、中段に「今日の対話に期待すること」、下段に「今日聞きたい質問、疑問、要望など」が記入され、共通理解の促進に役立てられたが、知識の一方通行になることを極力避け、ダイアローグに近付けるために、下段には「質問、疑問」に加え、「関心のある点あるいは論点」を記してもらった方が良くはなかったか?また、集められた質問、疑問、関心事、論点のすべてを、限られた時間内で対話テーマとすることは不可能な場合もあるから、別途勉強してもらうべき質問、疑問への対応は簡単な説明で済ませ、取り上げるべき質問、疑問、関心事の論点は何か、各論点への関心度合い、優先順位はどうかを議論し、合意してから始める方が、時間切れの弊害や取り上げ方のアンバランスを緩和でき、一層効果的になるのではないか。これは、今回の方式を今後踏襲する場合には検討を要する点。
石井陽一郎
・今回はファシリテーション方式で,学生もそれなりの問題意識を持ってそれを紙の上で標記した(これが大切)。最後のまとめ方もかなり良かったと思う「FBRと第四世代炉」がわれわれのテーマである。盛りたくさんになったりあちこち派生はする、毎度そういうことが起こるがなにを考え、どう進むべきかより確かなものになったであろう。この一助として・・・どう考えるかを逆質問した。
「もんじゅ」の進捗にはやはり関心大、Na漏洩(二次系!)事故を事故と見るか、故障と見るか、日本ではこれを針小棒大に見る傾向がある。(臨時に同席された国際的フィクサーというべき黒井一生氏も肯定的熱弁)最高裁の判決,外国ではNaリーク多く、BN-600では20回を越えているが、稼働率は80%に達し,なお運転中。国情の差はあるので、そのまま受け入れるということではなく、頭の隅においてもらえばよい。FBRは中国、インドで熱心なこと、コストやNaの扱いなどでとかくネガチヴに扱われるが、どんな炉も一長一短ある。
NaFBRは安全上軽水炉と同等以上のものが要求されているが、Na炉の利点とともに、実証炉においてどう対応しているかHDCCにまで説明しておいた。
第W世代炉は現在中断状態であるが、環境問題が厳しくなるとともに、電力だけではCO2低減に量的な限界がある。水素の産業化、車など電化の進展―原子力が向いているーにいっそう注力することが求められる。 太陽光発電、風力は稼働率の悪いことと電力の質の保持のため火力発電によるCO2発生、または電池などの設備対応が必要なことを考えるべきだ。
エネルギー、環境、原子力(電気、熱、化学)でとりわけ日本での若者の活躍分野はたいへん広い、ことを強調した。以上
林 勉
私の感想を次の5点から述べます。
1.ファシリテーション方式の採用について
今回は学生側のファシリテータを事前に決めて、準備もしていたようで、まだ不慣れでもたついていた点もあったが、学生側の主体性がある程度実現できて胃腸成功であったと考える。シニア側としてはできるだけ発言を抑える努力はしたが、最低限の説明は必要であり、ある程度シニアの発言が多くなるのは避けられない。以前に比べると格段に学生側発言がおおく、率直な疑問、不安等を聞けたのはよかったと考える。
あくまでもともに考える場であることが望ましいわけで、学生、シニア共にこの視点をきちんと持って対応することが必要である。
2.意識調査について
今回始めての試みとして、対話集会の実施前、実施後の意識調査を行った。
結果を下記する。参加学生数は実施前36名であったが、実施後は退席した学生もかなりいた。挙手の数は22〜26名であった。
設問1:原子力発電の安全性をどう考えていますか?
安心:15(15)、何となく安心:10(11)、何となく不安:1(1)、不安:0(0)
設問2:原子力勉強している現実についてどう考えますか?
満足:5(10)、何となく満足:11(11)、何となく不満足:5(1)、不満足:1、(1)
設問3:社会に出てから原子力関係業務につきたいと思っていますか?
是非つきたい:16(16)、できればつきたい:9(6)、つきたくない:0(0)
この結果をどう考えるかいろいろ考えさせられる。
1.挙手数が少なかったのは、回答選択肢では答えられない、迷いの意識があったのか?
2.実施前後で変化が顕著だったのは、現在勉強していることの満足が5→10に倍層した点である。これは今回の対話を通じて原子力の役割を再認識して、自信が持てるようになったことを示唆していると思われる。
3.そのほかの項目では変化が認められない。これはすでに原子力を勉強しており、原子力に対して自分なりの考えを持っており、そう簡単にはかわらないということかも知れない。
3.基調講演について
今回基調講演を担当させていただいたが、学生さんたちは殆ど全員が原子力を勉強している方たちであることを意識して、基礎的なことは簡略にして、現在の問題点と今後の対応を重点に置いた説明としたが、やや消化不良であったかとも思われる。今後は原子力発電の安全対応等の話をきちんとした方が良いように感じた。
4.対話での感想
対話の中で、原子力発電の安全に対して、周囲の方たちに伝えるには自信がないとの発言があった。これは原子力発電の安全確保どのようにやっているかについて、体系的にきちんと理解していないからであると思われる。事実、「原子力発電の安全とはどういうことか」「安全確保のために国は何をやっているか」についてきちんと答えられなかった。多分学校でもこのことはきちんと伝えていないと思われる。この点はわれわれの基調講演や対話の中できちんと伝えるべきことであると感じた。
5.全体的印象
今回は先生方、学生幹事の方たちの事前準備のおかげで、新しいファシリテーション方式であったにもかかわらず、学生さんたちの発言も以前よりはずっと多く、学士さんたちの主体制が発揮できて成功であったと考える。今回の経験を基にしてより一層充実したものになることを期待する。
斎藤 修
1.ファシリテーション
今回初めてであったが、金氏さんが作成した適用要領に従って、自分の名前を書いたA4用紙をあらかじめ用意するなど学生側も積極的に対応していた。
学生側のリーダーも対話に参加が2回目のM2であり、ある程度様子がわかっていたようで、要領よく全体の進行に当たっていた。
各人の質問等はその場で、リーダーがポストイットに書き入れていたが、事前に用意しておくなどの工夫をすれば、時間の節約を図ることができるのではないか。
2.学生側のまとめ
時間の関係で多少話が中途半端値面もあったが、最後の発表は要領よくまとめており感心した。
3.博物館見学
前日に奈良林先生ご推奨の北大博物館を見学したが、札幌農学校の発足から始まる北大の歴史が良く分かり、大変参考になった。
クラークさんが農学校の基礎を築かれたといおう話は聞いていましたが、米国の大学の学長の地位にありながら、札幌の地まで来られ、1年間で農学校の基礎を築いて、再び米国の大学の学長に戻られたことを初めて知った。
クラークさんの言葉として、「Boys, be ambitious!」はつとに有名ですが、もう一つ「gentlemanであれ」という言葉が示され、それが校是になっていた事も知りました。また明治の初年から英語で授業をしたとのことです。
現在の佐伯学長は北大の理念として、「フロンティア精神」、「国際性の涵養」、「全人教育」をあげておられますが、クラークさんの築いた基礎がその根底にあると感じました。
以上
金氏 顯
1.北大では4回目であり私は今年も幸いに連続参加できたが、毎回進歩が見られるのが嬉しい。一つは会の運営であり、もう一つは参加する学生である。前者では、今回ファシリテーション方式を採用する要望を出し、学生がリードすることとなった。予め簡単な解説メモを送ったが、果たしてうまく行くか当日まで心配した。しかし杞憂であった、まず参加する学生全員がA4の紙に、対話への期待とテーマに関する疑問質問意見を用意してくれたことだ。そして各グループとも学生がファシリテーターを務めたがスムースではなかったが及第点だろう。是非次回につなげるよう大学内で伝承して改善していって欲しい。
2.2つ目の、”参加する学生の進歩”だが、私のグループのテーマであった「原子力への根強い反対やマスコミにどう対処するか?」については学生の問題認識がシニアとは異なる視点、即ち何故反対するのかを冷静に掘り下げ、そこに何かこれからの自分たちの思考や仕事への貢献が見えるのではないか、という前向きの思考が感じられた。願わくば身近な家族や友人に原子力を語ることを試みて、原子力とは?という社会的側面のことも体験を通じて会得して欲しい。そして”原子力ムラ”意識を若者とシニアの両方から打破しようではありませんか。
3.当日午前の大学内施設(超高圧電子顕微鏡、低温研究所)の見学での島津・奈良林両先生のアレンジ、対話会および懇親会の今村君他学生幹事のマネージメント、学生幹事OBの参加、翌日の泊3号見学(シースルー見学通路)の北電さんのアレンジ、ともに大変素晴らしかった。また極力大學側の自主性に任せようというSNW側世話役の石井正則様の配慮にも感謝します。
大塚英司
1.対話の成果を、各学生が良く取りまとめていたのに感心致しました。
2.グループ対話の際、各学生はあらかじめ「期待」、「質問、要望、疑問」を用意していたようです。これらを対話の2〜3日前にシニア・オブザーバに頂くことは可能でしょうか。そうすれば当日の回答や意見を一層効率的、かつ遺漏無く行えます。また、シニア・オブザーバが回答や意見を簡潔なメモにして配布できる可能性も出てきます。負担が少し大きくなりますが、メモ的なものでも、当日見てもらいながら対話することで、更に相互理解が深められる場になるように思います。
以上
嶋田昭一郎
私の北大での学生との対話参加は昨年に続き2度目である。我々のグループはM2、3名、M1、1名、B4、2名、今春卒業生で三菱重工業に就職している平山君が特別参加していた。シニアは石井正則氏と私であった。
M2の一人小池隆太郎君が当初の予定であった石井氏に代わりファシリテーターを勤めてくれた。彼の司会ぶりは見事で、学生も昨年に比べて発言が多く、おおむね成功であった。私は努めて話し過ぎないように心がけたつもりであるが、特別参加してくれた平山君の発言の機会が少なかったことが反省のひとつである。まとめに要する時間も昨年に比べて要領よく、準備の差を感じた。それでも対話時間はあっという間にすぎ時間不足を感じた。発表の時間も昨年よりは余裕があったが、グループ間の議論の時間が十分には取れず、やや不足であった。原子力専攻の学生が多い今回のような場合、基調講演が必要か疑問に思う。今回のようにB4からM2の学生を一緒にするのは次年度につなげる意味があると思うが、B4の学生はどうしても発言が少なかった。
懇親会ではできる限り、学生と話すことに努めた。昨年同じグループで懇親会では意気投合した学生が、今年も同じグループのM2学生の一人であり、懇親会でまた話し合うことができて楽しい思いをした。
齋藤 伸三
1.北海道大学とは回を重ねてきており、今回は学生側も各グループテーマに関し、質問事項、論点等についてそれなりの準備がされ、また、司会進行役の学生もその役割を認識していたので対話は効率的に進んだ。さらに、予めまとめ用にテンプレートを用意していたので、一般に盛り沢山の報告があった。小生の属したグループは、2名の修士の学生が対話後退席したので、報告が網羅的でなかったのは残念であった。学生が普段授業で得られないものが得られたとすれば成功と言って良いであろう。
2.社会人になって数年の先輩が参加したことは、学生に刺激を与え有意義であった。しかし、彼らがシニアと同じようなことを話そうとすると、その役割が不明瞭になる。本来は、学生とシニアの間をつなぐ、正にファシリテータの役目を果たすのが相当であると思う。また、修士の学生と学部学生の知識にギャップがあり、学部生は大人しくなってしまう。両者を分けるべきか、学部生は見習い期間と考えるか、学生の側でも検討しておく必要があろう。
3.グループ発表で「文部科学省は反原子力である」、「日本は技術は一流、規制、管理は三流」と言う報告がなされたが、シニアの説明は、事実関係を正しく把握、分析し、また、反原子力、三流とする立場にも思いをいたし、慎重かつ謙虚であるべきであろう。
石井正則
対話を始めて3年が経過した機会に、学生OB、指導教員、参加シニアからアンケートを募集したところ、シニアの発言が多く学生が聞きたいことが聞けなかった、時間が短かく充分な対話ができなかったといった意見が多かった。(この他、様々な意見が寄せられたが、詳細は中間報告書を参照されたい。)
今回はこの点を踏まえ、学生の期待に応えるよう、主に次の点を改めた。
@ 基調講演では、原子力系学生が主体であることを踏まえ、一般的な環境・エネルギー・原子力問題を総括するのではなく、焦点を絞り、中期目標の課題等を主体とした。
A 学生の期待学生リーダーが中心に対話を進めてもらった。このため、ファシリテーションの手法の応用し、学生OBにも参加願った。
B 発表の準備を短い時間に要領よく進めるため、あらかじめテンプレートを作成した。
この結果はおおむねうまくいったように感じる。
特に対話では、当初学生リーダーを補佐するため、シニア側もファシリテーター役を決めていたが、学生リーダーが事前に準備のうえファシリテーター役を務めてくれたおかげで、シニア側のファシリテーター補佐は不要であった。リーダーを務めた学生は、もとより、参加学生の質が優れていることを改めて実感した。M2をリーダーとし、M1、B4が適当なバランスで組み合わされており、継続して行く上でも、後継リーダーが更に進歩した対話にしていただけると確信した。
今回、学生OBにも参加していただいた。すでに業界の第一線で活躍しており、忙しいなかで参加していただきありがたかった。学生とシニアの中間で、学生に近い年代の原子力業界人として対話を促進していただくのに役立ったと思う。一層成果を出すには、参加シニアとOB(現役の原子力業界人)の役割をあらかじめ整理しておけばよかったと思っている。
全体のリーダーを務めた今村君、支援していただいた島津先生、奈良林先生のご尽力に感謝します。
小川 博巳
感想を3点に絞って、以下にメモします;
u 学生の事前準備に拍手!
既に30回を上回るシニアと学生の対話会を重ねてきたが、学生の事前準備の大切さとその効果を、改めて考えさせられた。グループ編成に於ける年次構成に配慮し、グループリーダ(ファシリテータ)を事前に指名し、学生毎に対話会に対する期待と質問事項を 事前に書かせ、発表のためのPPTのフォーマットを指定する等、学生幹事の配慮と事前準備のほどは見事であった。
参加学生が、シニアとの対話から何を掴み取ろうとするか、そのための最も大切な点は彼等の「心構え」であろう。自由で放任主義が大多数の学生の求める大学生活であろうが、そのような学生に、事前の準備事項を徹底させつつ、ひとり1人の学生に対話への心構えをさせるのは、並大抵ではあるまい。学生幹事からの指令を受けて、ホンのチョッとした事前検討であっても、予め心の準備が出来ていた学生と、心構えが必ずしも整っていなかった学生の間では、短い対話会ではあるが、掴み取ったものの差は「月とスッポン」程の差がありそうだ。
翻って、シニアのサイドはどうか? 若干の事前準備はした積りだが、短時間に手際よく質問に答え、シニアの思いを適確に伝えられたか、押し売り口調ではなかったかとの反省も頭をよぎる。学生諸君の厳しいご批判を期待したい。
u 学生のファシリテーションとリーダシップ
学生にファシリテータ役を担わせた初めてのケースだが、ほどほどにコナシテ、対話会を盛り上げて呉れた。原子力或は工学系学生との対話会では、ファシリテータとしての機能よりは、意識としては上級生・先輩としてのリーダシップが相応しいと思われる。
対話会の参加者が同じ仲間、或は先輩・後輩という構成の対話会では、今回の例に倣って上級生をグループリーダに指名し、予め若干の準備をさせて、対話の司会・進行をさせるのが適当だろう。学生時代のリーダシップ経験は、何物にも代え難い財産になる筈だ。
u 先輩卒業生の参加に拍手!
3人の卒業生が、忙しい日程を割いて参加され、学生と年齢差が少ない先輩の「生の声」を伝えたのは、出色の企画として評価したい。シニアとの年齢差がほぼ半世紀の学生にとって、兄貴分の先輩の生の声は、将に感覚的な翻訳機能を果したに違いあるまい。
卒業直後の若手社員とは言いながら、既にバリバリ活躍している先輩は、学生の目には眩しい存在であったろう。彼等の果たした役割は、極めて大きなものがあった筈だ。
次回からは、各グループに配属出来る人数の卒業生を、出来れば確保したいものだ。
若杉和彦
過去数回学生との対話会に参加させてもらっているが、今回が最も内容が充実し、レベルも高かったように思う。北大では過去に数回同様の対話会が開催され、既に全体の様子が関係者に知れていたことも考えられるが、特にファシリテーション手法を取り入れて学生に対話の方向付けを促したこと、事前に共通の質問事項や就活等に関する資料をシニア側から提供したこと等が相乗的に作用し、学生が事前に十分準備していたことによるものと考えられる。
私は第3グループに属し、「原子力に対する根強い反対に対してどのようにアプローチすべきか(マスコミ対応・隠蔽体質)」のテーマの下に活発な対話が行われた。最後のグループ発表にもあるとおり、「これからは自分たちが原子力と日本のエネルギー分野に責任を持つこと」、「反対派を納得させるために十分な知識をつける」旨の決意表明があり、頼もしく感じた。ただ、北電を含めて、各電力会社からそれぞれホームページを通して種々の原子力情報が一般に発表されている事実を知らない学生が多く、この点は今後のコミュニケーションの取り方について電力会社自身も反省すべきことがあるように感じられた。
対話会当日の午前中は北大低温科学研究所を見学して、南極での氷層研究活動等の話を聞き、マイナス50度を体感した。対話会終了後は学生、先生を交えて歓談し親睦を深めた。これらの企画は北大島津、奈良林先生他の協力なくしては実現出来なかったことであり、関係者に厚く感謝申し上げたい。
以上
大橋 弘士
1. この対話集会が会を重ねる毎にシステマティックに、また実り多いものになって来ていることを喜んでいます。短時間に問題提起から始まり、討論を経て結論を導き出すまでのプロセスを消化できるように、ファシリテーションの導入やテンプレートの準備の他、学生諸君の周到な事前準備もあったことと敬服致しております。島津先生と奈良林先生のご指導の賜でもあったことと感謝しております。また多くの学生諸君が原子力分野に就職したいと思っていることを知り、頼もしく、また誇らしく感じました。
2. 修士学生と学部学生の知識のギャップが大きいことが問題になると思います。特に今年からは4年生諸君は機械工学等の学習がほとんどで、原子力についてはほとんど学んでおりません。修士学生と学部学生を分けてしまうと、4年生だけで原子力に関する対話集会を成立させることは難しいことと思います。やはり今まで通りに両者がともに参加することにして、4年生の諸君には原子力で重要な話題は何かとか、対話集会の企画・運営のやり方について片鱗にでも触れて頂けるだけでもよしとしては如何でしょうか。1年後、2年後には今年の4年生諸君が必ずや主体的に、また主導的に会を企画・運営できるようになるものと期待しております。
3. 「文部科学省は反原子力か?」という発言が私どものグループ1からの学生のまとめの中でありました。小・中・高校用の教科書レベルでの記述を意識しての発言ではありましたが、原子力の研究・開発や大学教育のレベルで文部科学省が長年に亘って多額の支出をして支援して来ている事実や副読本レベルでさまざまな取り組みがある事実についての情報をとっさに提供すべきでした。学生諸君に正確な情報をとっさに提供できなかったことを反省しております。
4. グループ4の発表で「ベストミックスが重要」という発言がありましたが、これは今までの通念にとらわれ過ぎているように思います。一次エネルギー供給について言えば、現在は化石燃料の比率が高すぎるかもしれませんが、2050年には化石燃料と原子力、自然エネルギーの間にベストミックスが成立するということができるかもしれません。電源構成で言えば、現在は、自然エネルギーは別としてベストミックスに近いかもしれませんが、2050年に近づくにつれてベストミックスというよりは原子力が主電源にならざるを得ないことになります。
5. したがって、原子力分野に身を置くわれわれの務めは、原子力発電の安全運転実績を積み重ねて行くこと、ウラン濃縮、再処理、高レベル廃棄物処分を含めた燃料サイクル技術の確立、海水からのウラン回収技術や高速炉技術の確立、原子力の新たな応用分野の開拓に一層の努力を続けて行くことでしょう。原子力分野が今でも若い諸君の活躍を待っているフロンティアであり、沃野であると確信しております。
三谷信次
北海道大学での対話は一昨年に引き続き2回目の参加でした。その時と比べると極めてスムースな進行に、先生方や学生達の周到な事前準備がうまく行ったものと推定されます。
以下私の感想と提案です。
今回は学生によるファシリテーター方式を取り入れて速やかな進行となったが、私がこれまで短期間に学んだファシリテーションメソッドと比べて見ると、若干の違和感を憶えました。知りたい事が多くてそれをシニアから聞きたがっている学生側と、話したい事が多くてうずうずしているシニア側の相対する両者をうまく調整して進行させるという事は、シニアでも並大抵ではないと思います。それを曲がりなりにも何とかやってのけた(進行させた)ファシリテーター役の学生諸君にまず敬意を表します。もともとこのような試みは、学生諸君の方からシニアに聞きたいことを積極的に述べてもらおうとして導入されたものと理解しています。そのためシニアをファシリテーターにもってくるより、学生に持ってきた方が、学生共通の時代的課題などについてうまくシニアに伝える議論が進むと考えられたからではないかと思います。しかし学年が違ったりしている関係上、普段余り話したことのない学生達が対話の場で初めて出会ったようにも見受けます。今後学生達に少しでも質問の背景など多く話してもらうために、学生達がシニアの前でお互い初対面とならないよう事前の15分位前に、学生ファシリテーターを中心に各班毎に事前作戦会議などして対話に臨まれたら更に盛り上がるのではないかと思ったりします。
北大は、メーカー出身の先生方が多いためか、学生達の原子力リテラシーは極めて高く
宇宙人の様な学生がいなかったことに感服致しました。教授陣が学生達に十分信頼されている証であると思いました。北大原子力のご発展を祈念致します。
土井 彰
北大に於ける学生との対話の感想を述べます。
1.
若い学生の物事に取り組む真摯な姿に触れることができ、とても気持ちがよかった。学生のレベルが揃っていたのは討論に有効であった。
2.
学生が考えている『自分はこのままでよいのか?』、『自分の人生で何が達成できるのか?』などの不安や疑問に対して分かりやすく話し合いをすることが重要と考える。
3.
若いが故に知識の範囲が狭く、その範囲ですべての物事を判断してしまおうとの傾向は見られるが、今後、知識や経験が広まるにつれ、原子力に対して技術者としての正しい判断ができるようになる。今後、若いオピニオンリーダーとして活躍することを期待したい。
4.
自分の意見と相反する意見の他人と意見を述べあって討論する習慣がない。討論を深める中で、問題を掘り下げてゆく訓練をしてほしい。
5.
自分の特徴、得意な分野は何かを常に考え、社会の中で、自分の特徴をどのように活用するかをさらに考えてほしい。
6.
学生から見ると、シニアは人生の大成功者に見える。ただでさえ威圧感を感じているが、今回新たに導入した討論の方式は学生の意見を引き出すのにも有効であった。
嶋田和真(学生連絡会、東大)
先ずは、修士論文の中間発表当日にも関わらず、対話幹事を全うした今村君に感謝の意を表したい。他にも修士2年生が忙しい中、多数参加してくれた。うれしい反面、申し訳ない気持ちもありました。
対話全体を通して、最後の発表が短くなってしまったのが残念である。その分、基調講演を減らすことも検討するべきである。また、基調講演では化石燃料の枯渇、地球温暖化の問題から原子力の必要性を訴えているが、このアプローチだけではもう不十分ではないかと感じた。地球温暖化に関しては、マスコミの影響も有ってかなり世間に浸透してきたように見える。今回の基調講演の内容は北大の原子力関係の学生なら知っていて当たり前の話だと思う。昼食直後ではあったが、眠そうにしていた学生が多数いた。次回は、エネルギーセキュリティの観点からの原子力の重要性を話して欲しい。なぜならば、マスコミを通じて中々聞くことが出来ないからである。原子力推進の建前として地球温暖化を出すのはいいが、シニアとの対話では是非とも本音を聞きたい。
個々のグループディスカッションでは、ファシリテーション方式により、初めにどの内容をどれだけ話すかを決め、広い議論が出来た。また、卒業生の若手社員の方々の現場の生の話がとても為になった。今後、若手と学生との対話も積極的に行ってゆきたい。
最後に、学部生と院生では専門知識に大きな差があることから、シニアとの対話にも差が出てしまっている。深い議論になると学部生はほとんど入って来られない。満足のいく対話を目指すならば、例え少数になったとしても学部生と院生は分けた方が良いと感じた。今後の東大での対話では十分検討したい。
島田氏の感想に関する補足説明
今回の基調講演は対話時間の時間を長くするため30分にしました。原子力系の学生であることを踏まえ、学生の知識がどの程度であるかをベースにシニアが何を発信したらよいかについて、林様にご配慮いただきました。
これは、これまで対話に参加した学生幹事OB(今回参加してくれた平山君や錦見君など)からいただいた、対話や発表の時間が短いこと、原子力系学生の場合原子力情報に接する機会が多いと言った意見を配慮したものです。
今回の講演で焦点をあてた中期目標を踏まえた原子力の役割は、シニア自身も関心のあるテーマであり(8月8日に行うSNWの第10回シンポジウムでも取り上げた)、学生に伝え、考えてもらう価値のある内容だと思います。
また、原子力系とはいえ参加学生の学年がB4からM2までと幅があり、学年知識に差があるので、最低限のフェーズあわせ(基礎知識の確認)も必用と思います。
対話会シニア世話役 石井正則
添付資料4.グループ発表の内容(パワーポイント)
ココをクリック(準備中)
添付資料5.学生の事後アンケート結果
(1) 学年、専攻、希望進路
学年 |
B4 |
M1 |
M2 |
|
|
|
10 |
8 |
11 |
|
|
専攻 |
原子力 |
非原子力 |
|
||
|
29 |
0 |
|
||
進路(就職) |
電力 |
原子力関連メーカー |
メーカー |
研究機関 |
その他 |
|
7 |
11 |
4 |
2 |
2 |
進路(進学) |
原子力分野 |
その他 |
|
||
|
9 |
1 |
|
(2) 講演の内容は満足のいくものでしたか?その理由は?
とても満足した |
ある程度満足した |
やや不満だ |
大いに不満だ |
7 |
15 |
3 |
4 |
理由
とても満足した:
l
様々な話題に関してお話を聞くことが出来た
l
自分の知らない内容を多少得ることが出来た
ある程度満足した:
l
新しい情報を聞けたが、知っていることも多かった
l
興味深かった
l
時間が短かった
l
内容は厳選されたものであったが、新たな知識は得られなかった
l
新たな情報も聞けたが、既知の内容が多かった
l
在り来たりの内容であった
やや不満だ:
l
目新しい情報がなかったのが残念
l
授業と同じであった
l
普通の原発の必要性についてであり、原子力関係者が集まってする内容ではない
大いに不満だ
l
聞いたことがある話しであった
l
聞いたことがあるような話しばかりであった
(3) 対話の内容は満足のいくものでしたか?その理由は?
とても満足した |
ある程度満足した |
やや不満だ |
大いに不満だ |
7 |
13 |
6 |
3 |
理由
とても満足した:
l
シニアの方の見解を知ることが出来、為になった
l
グループテーマだけではなく、エンジニアとしての姿勢や職種に限らず人としての在り方など、苦労を重ねた貴重な体験を聞くことができた
l
内容はともかく、対話をきっかけとして自分の考えが以前より深まり、シニアの方々の考えを知ることが出来、有意義であった
l
テーマを絞ることで論点が明確になり話やすかった
l
経験豊富なシニアの方々の話は為になる
ある程度満足した:
l
時間が足りない
l
対話の内容が発散したまま纏めきれなかった
l
シニアや他学生の考えを聞く良い機会であった
l
FTがもう少し機能すれば良い
l
知識が豊富なシニアの方の話は為になった
l
全体的にもっと掘り下げた話をしたかった
l
様々な話題について議論できたが、学生が押され気味であった
l
ファシリテーションが上手くいかなかった
やや不満だ :
l
例年と同じ結論に行き着くだけであった
l
そもそも対話ではなく、一方的に話を聞いただけであった
l
シニアの方が話す時間が長すぎた
l
議論自体は比較的できたと思うが、テーマからそれた話題にすぐに発散してしまった
大いに不満だ:
l
例年と同じであった
l
脱線しすぎた
(4) 事前に聞きたいと思っていたことは聞けましたか?
十分聞くことができた |
あまり聞けなかった |
全く聞けなかった |
19 |
6 |
4 |
理由
十分聞くことができた:
l
話の中心話題であったから
l
FTという立場を設けることで対話が潤滑に進み色々と聞くことが出来た
l
一つだけ聞きたいことがあったがそれに関する回答は得られなかった
l
特に聞きたいことはなかった
l
FTがうまく機能していてしっかりと聞けた
l
ほぼ回答いただけた
あまり聞けなかった:
l
十分聞くことはできなかったが、ある程度聞くことが出来た
l
せっかくの機会なので事前準備をしっかりすればと後悔した
l
シニアがしゃべりすぎ聞くことができなかった
l
シニアの方が説明する時間が長くなってしまい聞けなかった
l
主テーマに時間を割いたため、聞きたいことは聞けなかった
l
一つの話題が濃い
全く聞けなかった:
l
一方的に話を聞いているだけであった
l
質問と答えが一致していないことばかりであった
(5) 今回の対話で得られたことは何ですか?
l
一般の人の放射線に関する誤解とそのことが齎す影響
l
原子力業界の展望について
l
これから原子力分野で働く上での心構え
l
日本がトップでいるために必要な心構え、原子力の役割
l
自分の考えを人に伝えることの難しさと重要性
l
新しいものの考え方
l
リアルな体験談
l
普段聞けない話
l
特にない
l
忍耐力
l
原子力の知識
l
積極性、決断力の重要性
l
新しい見解、考え方
l
知識と経験
l
グループは個人の感情よりもそのグループとして向うべき方向に進むことを優先する厳しさが必要であること
l
学生側が提示した疑問に対する適切なアドバイス
l
技術者としての必要な能力
l
シニアの方は話好き
l
海外進出の心得
l
自分との考え方の違いを学ぶことができた
l
人付き合い
(6) 「学生とシニアの対話」の必要性についてどのように感じますか?その理由は?
非常にある |
ややある |
あまりない |
全くない |
8 |
14 |
4 |
3 |
理由
非常にある:
l
有意義であり、自身の見識が広がる
l
原子力についての考えを他人と比較できる
l
長年現場で原子力に携わっている方の話を聞く機会はめったに得られない
l
原子力について考えるきっかけになるので、原子力分野で働こうと考えている学生はもちろん、そうでない学生に対しても参加して損はない企画である
l
普段学生同士の議論で出ないような意見を聞くことができる
ややある:
l
経験談を聞くことが勉強になる
l
学生が考えや意見をぶつけ、掘り下げる場として有益である
l
原子力について、それ以外にも貴重な話が聞ける
l
こういう機会はめったになく、やれば為になる
l
知識量の差がある人達同士が一つの結論を導き出す事は、良い訓練となる
l
シニアの方がしゃべりすぎ
あまりない:
l
原子力業界についての実りある意見交換は望めない
l
目上の人との話し方を学ぶという点で役に立つ
l
対話という形式に拘る必要はない、講演等で十分
全くない:
l
特別得るものがない
(7) 今後,機会があれば再度シニアとの対話に参加したいと思いますか?
まだまだ話したりないので参加したい |
もっと知識を増やしてから参加したい |
十分話ができたからもういい |
二度も必要ないと思うからもういい |
その他 |
5 |
15 |
1 |
5 |
3 |
(8)エネルギー危機に対する認識に変化はありましたか?その理由は?
大いに変化した |
多少変化した |
あまり変化しなかった |
まったく変化しなかった |
2 |
5 |
15 |
7 |
理由
あまり変化しなかった:
l
新しいことがなかった
l
危機感を感じなかった
l
授業や講演でよく聞いている
l
講義等で学んでいる
l
以前と同様、エネルギー危機は深刻なものだという認識は変わらないが、解決方法は原子力だけでなく太陽光や風力と協力してエネルギーを生産していくべきだと考えるようになった
l
エネルギー状況を楽観視していない
まったく変化しなかった:
l
もともと危機意識をもっていたため
l
授業や講演でよく聞いている
l
既知の話ばかりであった
l
日頃からエネルギー危機について考えている
(9)原子力に対するイメージに変化はありましたか?その理由は?
大いに変化した |
多少変化した |
あまり変化しなかった |
まったく変化しなかった |
3 |
4 |
13 |
9 |
理由
多少変化した:
l
自分が知っている以上に情報発信していることを知ったから
l
原子力にもっと安心感を持っていいのだと確信することが出来た
l
教育広報の面で変化した
あまり変化しなかった:
l
新しい情報がなかった
l
授業等でよく聞いている
l
相変わらず原発への風当たりが強いが、一般の人への原子力への理解も深まっていると思う。今後はプロのシニアだけではなく一般の人が持っている原子力へのイメージを知る機会があってもいいと思う
まったく変化しなかった:
l
もともと悪いイメージはない
l
既知の話ばかりであった
l
原子力は日本の誇れる技術である
(10) 原子力に対する関心の低い10代、20代の若年層に対する原子力広報活動は どんな方法が良いと思いますか?
l
簡単な体験実験
l
エネルギーの必要性について発信する
l
原子力発電の原理よりもエネルギー負担率を知ることから始める
l
10代では講演や授業へ展開して地道にやる
l
CM等で分かりやすく紹介
l
テレビ・新聞の間違ったニュースを何とかする
l
教育
l
原子力を題材にエンターテインメント作品を作成
l
漫画
l
TV
l
義務教育の応用
l
講演会
l
Youtube、ニコニコ動画、CM等への情報発信
l
電気使用量明細書への原子力による発電量を記載
l
学校や身近なところで原子力について触れられる機会を作る(大学生や企業による課外授業等)
l
原子力萌えキャラクターの作成
l
弱年層は正しい講義、講演で考え方を比較的改めさせやすい
l
霧箱、発電所見学、教員への教育
l
ネットを中心とした活動
l
新エネルギーや関心のありそうなものと抱き合わせで教育
l
アイドルの活用
(11) 今回の対話で自分の学科との関連性を見出すことができましたか?その理由は?
見出せた |
どちらともいえない |
見出せなかった |
20 |
8 |
1 |
理由
見出せた:
l
原子力系の研究室であるから
l
エネルギー・原子力に関する話であったから
l
研究テーマと関連があり、もともと関連かある
どちらともいえない:
l
グループでの対話テーマとは離れていたため
(12) 対話の内容から将来のイメージができましたか?その理由は?
できた |
ある程度できた |
あまりできなかった |
全くできなかった |
6 |
16 |
2 |
5 |
理由
できた:
l
国民の意識を変えることが出来れば将来は明るい
ある程度できた:
l
日本国内の原子力発電の需要は再認識できた・海外の展開は若手次第
l
働く上での大変さを少しは知ることが出来た
l
原子力はこれから大きな柱となっていくと感じた
l
就職先に関する話を聞くことが出来た
l
選択肢を知ることが出来、イメージを膨らませることが出来た
l
あくまで専門性を有した人達での対話だったため
全くできなかった:
l
シニアの方に「自分たちの時代と君たちの時代は違う」と言われた
(13) 本企画を通して全体の感想・意見などがあれば自由に書いてください。
l
もう一度参加したいと思うようなイベントに改善すべきである
l
もう少しよりようがあると思われた
l
是非来年も企画して欲しいが、その時はシニアの方に加えて、原発近隣住民の方も呼ぶと面白い対話になると思う
l
もう少し時間が長くても良いのではないか・色々なテーマについて話をしたかった
l
参加する度に内容が深まっていっている感じがしたので、さらにこの会が発展していって欲しい
l
有意義な議論が出来たと思う
l
段取りが良く無駄な時間がなかった。準備の良さにビックリした
l
対話に積極的に参加できなかった。ファシリテーションが上手くいってなかった。学生OBである吉津さんの話が面白かった。
l
毎年同じ議論しか出ないので、隔年毎の開催でも十分である。
l
シニアの方が多すぎ。 1人/各Gr.が適切だと思います。
l
論点が定まっていなかった。学生側の聞きたいことが多すぎて、あの時間では全てに時間をかけて対応することができません。また各Gr.に与えられたテーマは、本当に学生側が聞きたかったことなのでしょうか?事前に学生側から聞きたいことを挙げてもらい、多かったテーマを1つ/各Gr.で議論するのがいいと思います。
l
積極的に参加しましょう。ずっと聞いているだけの学生がいました。
l
今回の対話では、ほとんどが原子力系の学生であり内輪の話であるとの印象が強かった。折角、シニアの方が来られているので、原子力だけではなく幅広い分野の学生を募集すべきだと思う。
l
シニアの方は開催時期をしっかりと選んで欲しいです。学生としては、7月下旬は試験や中間発表などがある特に忙しい時期であり、事前の準備をしっかりとすることできません。その結果として対話が上手くいかないのは、本末転倒であると思います。確かにシニアの方々にとっては、良い季節に北海道に来ることが出るかもしれませんが、そこはきちんと考えて欲しいと思います。
l
学生OBがいるグループといないグループがあったので、出来れば学生OBを全グループに割り振って頂きたいと思います。
l
三年間参加し続けたが似たような内容だった。この経験を踏まえると、三年に一度の開催にすればメンバーが入れ替わるのでそれで十分である。
l
シニアがしゃべることが非常に多いため、対話形式ではなく講演形式で良いのではないか。
l
わざわざ北海道までお越し頂きありがとうございます。しかし、シニアの方々もお忙しいことと思われますので、インターネットを用いたウェブ会議方式の方が効率が良いのではないでしょうか。
添付資料6.北大及び泊原子力発電所見学の概要
1.北海道大学見学
期日 2009年7月24日(金)
奈良林先生のお世話で、下記2施設を見学した。
見学施設
1)マルチビーム超高圧電子顕微鏡(9:00〜10:30)
参加者:齋藤伸三、林勉、嶋田昭一郎、斎藤修、金氏顕、三谷信次、石井正則(7名)
嶋田和真(学生連絡会)
2)低温科学研究所(11:00〜12:00)
参加者:上記の他、石井陽一郎、小川博巳、岸本洋一郎、若杉和彦(4名、計11名)
2.泊原子力発電所見学
北海道電力、石毛孝ニ様のお世話で、泊原子力発電所を見学した。
期日 : 2009年7月25日(土) 11:00〜14:00
参加者
シニア :齋藤伸三、斎藤修、嶋田昭一郎、石井陽一郎、金氏顕、石井正則(6名)
学生連絡会:嶋田和真(1名)
学生 :今村端、上山洋平、竹山大基、舟橋佳孝、東侑麻、千石純(6名)
見学施設 :3号機 中央制御室、タービン・発電機フロア等
概要
* 泊発電所では1、2号(各57.9万kW)が運転中、3号機(91.2万kW)が試運転中(100%出力試験)であった。3号機はこの後遮断試験を経て、今年末頃に営業運転開始の予定。
* 3号機が運転開始すると、北海道の電力は原子力40%、火力(石炭)35%、水力13%、火力(石油)9%、太陽・風力・バイオ2.2%となる。
以上