2009/07/20

石井正則

対話イン北海道2009事前アンケート質問事項への回答

 

1.             原子炉にミサイルが命中したらどうなるか?(原子力安全工学B4平井)

回答

ミサイル等の武力攻撃については、外交努力等により対処すべき問題であり、設計基準は設けられていない。万が一、我が国に対して武力攻撃が行われた場合は、国民保護法に基づき対応がなされる。その際、原子力施設で災害が発生した場合は、内閣総理大臣を本部長とする対策本部が設置され、政府を挙げて、災害に関する情報の収集や分析、災害の拡大防止や応急・復旧のための対策を講じられる。

補足

(1)   原子力発電所等のテロ対策については、2001年9月の米国同時多発テロ事件以降、事業者に対して自主的な警備強化を指示するとともに、特別の警察部隊や海上保安庁の巡視船艇による24時間体制での警備が実施されている。加えて、我が国の原子力施設への妨害破壊行為等に対する防護水準を国際的に見ても最先端のレベルに引き上げるため、原子炉等規制法が改正され(2005年12月施行)、事業者の防護措置を国が検査する制度や機密情報に関与する者の守秘義務などの措置が導入されている。

(2)   航空機による災害を防止するため、民間機と自衛隊機はともにできる限りその上空の飛行を行わないこととするとともに、その付近における一定高度(航空法に基づく最低安全高度)以下の飛行が許可されない。このように,原子力施設に航空機が墜落するような事態が発生しないような措置が講じられている。

一方,原子力施設の設置許可申請等を受けてその安全性を審査するに当たっては,原子力施設への航空機の墜落についても検討が行われている。具体的には,周辺の飛行場の状況,定期航空路の有無等から,必要があれば原子力施設への航空機の墜落確率の評価を行い,その結果墜落する可能性が十分低いことを確認できれば,設計上航空機の墜落を考慮する必要はないと判断している。航空機の墜落が想定される場合には,原子力施設への航空機の墜落の影響に対して当該施設の安全上重要な機器等の安全機能が保持され,重大な事故に至ることがないことについても審査が行われる。

(石井正則)

現在の原子力発電所の設計では、ミサイル攻撃対策は特別に考えていません。また、ミサイル攻撃と言っても大、中、小あり、問題なのはその尖端にどのような弾頭を具備しているかです。特別な弾頭を付けず、小型なものであれば炉心まで破壊されることはなく、原子炉の停止と崩壊熱の除去が行えれば大したことはないでしょう。

戦争状態等になり、本気で対策を考えなければならない場合は、9.11テロ後米国で検討されているように原子力発電所の近傍に地対空ミサイルを配備することです。

(齋藤伸三)

 

原子力発電所のテロ攻撃対応については、石井様の回答に言を挟むつもりはないが、別の視点に付き一言だけ付け加えたい。

原子炉によるミサイル攻撃は、単なるテロ行為の範疇を超え、国家に対する戦闘行為として捉えるべきだ。ミサイルを駆使する敵は、原子炉だけを攻撃するのみでなく、人口密集地の首都圏の攻撃など一挙に戦果を挙げ得る戦略を取る筈であり、将に日本に対する宣戦布告そのものだ。この場合の日本の対応は、原子炉の安全性もさることながら、先ず国民の安全、国の防護が最優先となる。わが国は第二次世界大戦に敗れ、悲惨な戦争体験を反省して、平和憲法を制定した。平和憲法は、日本の国内統治の理念を謳っているが、わが国の安全を脅かす他国の存在をどの様に捉え、どの様に国民を守り、国防戦線を如何に構築するかは、平和憲法だけでは達成できまい。わが国を脅かす“敵国”を作らぬために、弛まざる国際連携と外交努力が求められる所以である。

次世代を背負って立つ諸君は、「原子炉にミサイルが命中したらどうなるか?」との工学的な視点を超えて、“国家”の在り様についても真剣に考えて貰いたい。わが国を取り巻く東アジアの地政学的な環境、日米安保をはじめとする国際社会における日本の立場などについては、次項“核不拡散”問題も含めて、この際、諸君の真摯な検討と議論を願ってやまない。

(小川 博巳)

 

2.             核不拡散についてどのように考えているか? 日本は、核を持つべきか?核を持つ技術能力はあるのか?(原子炉工学M2上山)(原子炉工学M2北村)

回答

結論から言うと日本が取るべき最も賢明な道は、ウラン濃縮と再処理を国際的に認められている唯一の非核兵器国として、非核三原則を堅持し続け、同時に原子力の平和利用を推進し続けることであろうと思う。そのために日本は、国際的にも国内的にもこれまで様々な努力を積み重ねてきたし、今後もなお一層の努力を続ける必要がある。

(1)   核不拡散についてどのように考えているか?

誰がどのような立場で考えるかによって答え方は変わるが、歴史的に見て大多数の国は「核兵器の拡散は防止しなければならない、拡散につながる行為に対しては対抗措置を講じなければならない」と考え、国際的に協力・協調してきている。

こうした動きに端緒を開いたのは、1953年国連総会でのアイゼンハワー大統領の演説(「Atoms for Peace」)であるが、その後1957年に、原子力の平和的利用を促進するとともに、原子力が平和的利用から軍事的利用に転用されることを防止することを目的とする国際原子力機関(IAEA)が設立され、平和利用促進の活動と並行して、軍事転用防止のための保障措置等、様々な活動が開始された。

IAEAによる保障措置は、1970年以降は、非核兵器国に対し、IAEAとの間で、平和的原子力活動に係るすべての核物質を対象とする包括的保障措置協定を締結するよう義務付けた核拡散防止条約(NPT)に基づき実施されている。また、輸出管理に関しては、原子力供給国グループ(NSG:46ヶ国参加)のガイドラインにより、濃縮及び再処理に関する技術、資機材及び施設の移転に係る輸出規制が各国で恒常的に行われている。

しかし、こうした努力にも拘わらず、一部の国で進められる核兵器開発を効果的に防止出来ていないのも現実である。国連による拡散防止のための措置行動の最近の例としては、5月25日に行われた北朝鮮の核実験に対する国連安全保障理事会の制裁決議(6月12日:決議1874)がある。北朝鮮の核開発、ミサイル開発をどうしたら止められるか、我が国の貢献も含め、チャレンジの続く課題である。

(2)   日本は、核を持つべきか?

最近は色々な論調が国内でもあるが、やはり1971年以来何度か国会で決議されている「非核三原則を堅持する」ことが答えであろう。問題は、我々を取り巻く様々な脅威に対して、どうやって安全・安心な状態を確保するかということであり、近隣に存在する核兵器の脅威も、そうした様々な脅威のひとつとして存在するが、日本は、非核三原則を堅持し、周辺との緊張を高めることなしに、総合的な安全保障戦略を追求すべき立場にあると言えるのではないか。エネルギー資源に乏しく、ウラン濃縮技術や再処理技術を必要とする我が国においては、平和利用に徹してエネルギーの自給率向上による安全保障を求める立場を維持することの方が、核の脅威に自前の核で対抗するといった核戦略エスカレートの道をとるよりも、国民の安全と福祉にとって遥かに重要であるということでもある。

(3)   核を持つ技術能力はあるのか?

戦後の日本の急速な産業復興と発展を踏まえ、かなり早い段階から日本にはその能力ありと見なしてきた国はあるようだ。しかし、日本自身がその能力があると公に言ったことはないのではないか。非核三原則の「持たず、作らず、持ち込ませず」の表現には、その能力ありという気持ちが込められていると見ることも出来るかも知れないが、公にそう解説した政治家もいないのではないかと思う。

当然のことながら、「核を持つ技術能力」としてどのような技術資源をどのくらい必要とするか、検討する能力を我々は持っていると言えるかもしれないが、検討するならその結果は公表されるべきであり、今日までに公表されたものはないと思う。戦後、原子力の平和利用のための研究開発の開始に当たり、1955年に制定された原子力基本法には、基本方針として、いわゆる「自主、民主、公開の三原則」[1]を謳っている。わが国で原子力の開発、利用に携わる者は、この方針を堅持し続けるべきであろう。

改めて日本における原子力の今日的役割はと問われれば、原子力の開発利用を、安全に、効率的に、かつ平和利用に徹して行うこと、そして、省エネ、新エネ、原子力の開発利用を一層推進することにより、エネルギー安全保障と気候変動に対応することであろう。

(岸本洋一郎)

補足意見

日本は「核」ー核兵器を持つべきではない。今日の我国の繁栄の一つは原子力平和利用を根底としているからです。いや世界が20世紀にような大戦争が巻き起こる要素がありそうもないことの一つに核兵器使用が自他ともに破滅にみちびくものであるとの意識があることにほかならない。これがなければ、我国での原発建設、再処理、ウラン濃縮は米国等の圧力もあり、ほとんど成り立たなかったでしょう。今後も同じです。

この点を端的にあらわしているものが「核時計」とかいうもので、あと何年で地球上のどこかで、戦争目的で「核」爆発するといったものです。

事実として1946年以後、使用する危機が何度かありました。幸い使われずにすみました。最近はこの時計があまり言われなくなった背景には、世界的に人から物からすべてを破壊するものであることへの忌避感、使うことが身の破滅、が共有されてきた。さらに情報化[査察、衛星その他による監視]の発達があると思います。

にもかかわらず、核兵器使用を強行するかの構えのある国にどう対処すべきか。これには「専守防衛」に尽きると考えます。監視防衛能力を高めることです。「拉致」問題再発防止もあります。何がどうかということは憶測であり、国益を損ねますからいうつもりはありません、

しかし「情報化」の発達は先進国だけの専売ではない。この点は認識しておくことです。「核兵器」をもつことではないと考えます。

国によっては[核」保有が大いなる目標に見えるところがあります。米、ロ六カ国を認めているのにといったダブルスタンダードが根底にありそうです。しかしながら米国オバマ大統領は最近プラハで核拡散防止、に関し歴史的表明をおこないました。ロシアとタイアップして核兵器を段階的に減らすという協力体制はその顕われとみてよいでしょう。

エネルギー面ではわずか4%の自給率しかありませんが、原子力を二次的な国産エネルギーとみれば20%に達しているのです。しかし大事なことはこれだけにとどまらない。

「環境]「共生」はこれからの基本理念と考えたい。我国はその点でおおいに世界貢献することができると考えます。

(石井陽一郎)

 

3.             原子力が社会に受け入れられるようにするにはメディア対応では、今後どのようにすべきなのか?(原子炉工学M2上山)マスコミはなぜトヨタのように圧力をかけないのか?(原子力安全工学M1春名)(一部意味不明)

回答案

参考資料 SNW7回シンポジウム報告書(特に新井氏、桝本氏、竹内氏の講演資料等)(http://wwwsoc.nii.ac.jp/aesj/snw/ 「活動報告」)

 

(1)   メディアの特性

日本の記者は早いと3か月、長くて2年ほどで担当を交代する。この点は欧米と異なるようで、専門的な知識が蓄えられない現実がある(特に社会部)。

例えば、中越沖地震の際、フランスのルモンド紙の報道は、「止める」「冷やす」「閉じ込める」安全システムが作用、変圧器の火災は初期鎮火、漏れた放射能は微量という内容であった。国内各紙の報道ぶりと比較すると格段の差がある。

また、原子力に対する姿勢は記者個人の考えもあり一律にはいえないが、雰囲気的に各社の方針のようなものもある。単純ではないが、読売・サンケイは「原子力支持」、日経は「その時々に」、朝日・毎日・東京は「反対」。

このような状況を見ると、社会の木鐸として正義や公平正確な情報を提供、国民を啓蒙するという役割は薄くなっているのが現実であろう。

(2)   対応の仕方

“理屈で理解させよう”、“力任せの説得”ではなく、相手の疑問や不安を十分理解し、“共感”を得て“納得”していただくという心構えが必要。これには説明する側の人格も試されることになる。

具体的には、透明性のある単純でわかり易い内容を迅速かつ正確に報道すること。この場合、迅速性を優先し、不正確であれば後で修正するなどに心がける必要があろう。更に、プレスの見学会や正確な情報の継続的な発信、また地方議員や学校などに多角的に発信することが、国民に浸透するために重要であろう。

(以上若杉氏のコメントを踏まえ石井が作成)

メディア対応にも色々あるが、取材に対応する場合のポイントは、取材する記者やカメラマンに対して対応するというよりも、その向こうにいる一般の視聴者や読者に対して対応するという意識が大切。端的に言うと、記者に向かって話すのではなく、一般の方々と面と向かっているつもりで話すということ。そしてメディアの特性は、社会部の記者に典型的に見られるように、多かれ少なかれ「事件性」を求めて取材をしており、当事者がどう思っているかを嘘偽りなく知りたいという一般の方々と必ずしも同じポジションではない。記者の質問に対しては、その点に気をつけて、あくまで一般の方々に対するよう対応することが肝要。こうした対応は、メディア・トレーニングとして各社で取り組まれている。

原子力の現場の皆さんがメディアを通じ社会に接する機会を増やしていくことはこれから益々重要になる。現場の皆さんが信頼されれば、そのことが原子力そのものへの信頼の大きな部分を形成することになるからである。勿論、原子力を担当する様々な組織の幹部の皆さんが、メディアを通じての対応も含め、適切に社会に発信し、対応することが前提である。こうした努力が各所で重ねられているのが現状。

誤った報道や、不適切な報道がなされた場合には、必ずクレームをつけるべき。これは、訂正報道への期待というよりも、同じ記者による次の報道への反映の期待。

(以上追記―岸本)

 

4.             仕事で女性社員とコミュニケーションを取る際に、女性社員に望むことを教えて欲しい。(原子炉工学B4坂本)

回答

男女間で差別すべきでないが、あえて言うならば、常に冷静に、意見が相違することがあっても、感情を露わにせず、論理的に対応することが大切。

(若杉)

どこの会社や組織でも原子力の職場には男性が多く女性が少ないこともあって、益々重要となる男女均等の社会とのコミュニケーションの場面には、女性の職員/社員による説明や対応が期待されることが比較的多くあるのではないかと思う。

社会一般から見れば、男女を問わず「専門家」として期待するわけなので、仕事を通じ、専門家としての能力を磨くことは当然であるが、専門的な仕事に限らず、幅広く与えられる仕事に正面から取り組み、あるいは与えられた機会をできるだけ活かす努力が必要である。特に女性にと望まれる仕事は、それなりのニーズがあるはずなので、積極的に取り組まれたら良いと思う。

(岸本洋一郎)

質問の趣旨がよく理解できないが、女性社員からに質問として回答する。私は課長時代かなり技術系の女性が多い状態であった。そのとき悩まされたことは、女性社員同士のいじめであった。女性同士で足の引っ張り合いをしないこと、仕事では性別を無視して仕事をする意気込みがほしい。

嶋田昭一郎

(1)   人の喜びや悲しみ(喜怒哀楽)はすべてコミュニケーション、すなわちよきコミュニケーション、不全なコミュニケーションの結果のように思います。そういう意味でもコミュニケーションは大切です。しかし女性社員であるからといって特別なことはないように思います。女性であろうと男性であろうと、報・連・相(報告・連絡・相談)をしっかりやって欲しい。報・連・相は組織におけるコミュニケーションのベースになると思います。

(2)   コミュニケーションがうまく行かないときには、「他人と過去は変えられない。自分と未来は変えられる。」と三回唱えて、創意・工夫して解決策を考え出して下さい。

(3)   岡本正・井口不二男(編著)「経営品質向上テキスト」(生産性出版,20042100円)を社会人になる前に読んでおくことは何かと役に立つかもしれません。よきコミュニケーションは、まずは気づくこと、自分を知ることから始まります。

(大橋弘士)

私が現役技術屋であった時代、今から20年以上前、には女性技術職はわずかでした。その頃の経験では、女性技術職は技術的知識能力は、例えば高校や大学では優秀な成績であり、全く男性社員に勝るとも劣らないのに、結局はシステム開発など狭く特殊な分野を除き大きな仕事の成果を挙げることが難しかったようです。設計部門でしたから研究部門と違って社外(電力会社、協力会社など)、社内他部門(営業、製造建設現場など)との会議、折衝など、自分の意見を言い人の話も良く聴いて正解のない問題、課題を纏めて行く、そういう人的な関係がうまく取りにくいのではないか、と思いました。すなわちコミュニケーション能力の涵養が重要ではないでしょうか。そのためには学生時代から積極的にグループ活動などに参加し、集団の中で自分を磨くこと、専門分野の深堀りとともに広い知識教養経験、人間的魅力の涵養、即ち、T型人間、Π(パイ)型人間、が男女を問わずですが特に女性には大事でしょう。

(金氏顕)

 

5.             将来、技術者としてどのように考え行動し、仲間と仕事をしていくべきか?(原子炉工学B4坂本)

回答

好奇心を持つこと、時々仲間や仕事全体をマクロに見て、必要な軌道修正をすることが大切。

(若杉)

どんな企業や組織に勤めようが、与えられる仕事に真摯に、誠実に、正面から取り組むことが先ずは大切なことであろう。

技術者の仕事について言うと、新人であれば先輩の経験、知識にはまずは敵わない、そうしたところから始まるということ、したがって、まずは与えられた仕事を通じて先輩の経験や知識の吸収に心掛け、自らの経験を積み知識を増やすことが必要になる。仲間とは、互いに協調し、共に勉強することもあれば、競争関係になることもあるが、いずれにせよあらゆる機会を通じ、真摯に技術の現場、現実の事物に学び、自らを鍛え磨くことが大切である。先輩がもしトラブルの経験や失敗談を語ってくれれば、それは貴重な経験談であり、どうしたら同じことを繰り返さないよう受け継げるか、自分たちのものと出来るかを考えることも必要になる。

人々が生み出した技術を人々が支えている現場と現実に気付くことが、職場のなかで技術者として真に成長するきっかけになるのではないかと思う。

(岸本洋一郎)

技術者倫理を備え、仕事に誇りを持って仕事をしてほしい。

(嶋田昭一郎)

(1)   論理的に考え、倫理的に行動して下さい。

(2)   仕事は体得して欲しい。知っていることをできることに変えて下さい。さらにできる人になるために知のレベルを高めて下さい。

(3)   チームワークと個人の創意・工夫は両立します。チームワークを重んじながらも、創意・工夫を心がけて下さい。何ごとにも主体的に取り組んで下さい。

(4)   世界と人間に興味を持って下さい。そして今ここで努力をし続けて下さい。

(大橋弘士)

担当となった仕事や製品、技術に対して高い目標、夢を持ち、その夢、目標を叶えるために、当面の課題をどう解決するかを考える。すなわち、大局観を持ちながら、小局に集中する。「細部に神が宿る」とも言います。

原子力は総合ハイテク技術の集積、何十万の部品から成るというように、何百人の人間、多くの組織が係わります。自分の担当の上流下流の工程、ソフト・ハード的に繋がっているものとの連携、タイムリーな情報交換が必要です。しかし、入社すぐにそのようなことは不可能。新入社員に必ず言ったこととして、一人前になるのは最低5年間かかる、1年目には先輩のやることをただ真似ろ(盗め)、批判や自分の考えなど出すな、2年目は自分だったらこうする、と考えろ、しかし口に出すな、3年目はそれを口に出せ、そして4年目は口に出してそのように行動しろ、5年目には口に出さずとも自分の考えで仕事をやって後輩を引っ張っていけ、と。先人の仕事のやり方には必ず何かある、まずそれを会得するのが先決です。

もう一つ、技術者として大事なことがあります。それは技術者倫理です。「会社の為に」という企業倫理は一昔前の倫理観です。今は技術者としてどうあるべきかを、企業倫理、組織倫理より優先させることが、特に原子力技術者には大事だと思います。

(金氏顕)

以上



[1]  原子力基本法第二条  原子力の研究、開発及び利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、その成果を公開し、進んで国際協力に資するものとする。