日本原子力学会シニアネットワーク連絡会
報告
学生・教員・市民とシニアの対話会

学生とシニアの対話
in 静岡大学静岡キャンパス学部学生との対話会 2025年度(第2回)報告書

日本原子力学会シニアネットワーク連絡会(SNW)
世話役:森本泰臣、デフランコ真子
報告書作成:2026年1月21日
静岡大学静岡キャンパス
概要
各テーマの中で学生の関心事を中心に対話会を実施した。
静岡大学対話会(後期静岡キャンパス)は、連続講義「エネルギーと環境」を受講する人文学部、教育学部、理学部、農学部の学生67名 (学部2年生:59名、3年生:6名、4年生:2名)を対象に実施した。
学生からは、対話会を通じて専門家・シニア世代の実体験に基づく話から新たな視点や考え方を得られたという評価が多数を占め、継続的な開催を望む意見が見られた。

1. 講演と対話会の概要

日時

基調講演:なし
対話会 :2026年1月5日 (月) 12:45~14:15

場所

静岡大学静岡キャンパス
理学部A棟2F小会議室、大会議室、A301、A304

参加者

大学側世話役の先生 
学術院理学領域 大矢恭久准教授
参加学生(講義「エネルギーと環境」の一環として参加) 
学部2年生(59名)、3年生(6名)、4年生(2名):67名
(人文学部:16名、教育学部:4名、理学部:33名、農学部:14名)
参加シニア : 8名(内、世話役2名を含む)
中江 延男、湯佐泰久、田中治邦、デフランコ真子(世話役兼)、森本泰臣(世話役兼)、星野知彦、
佐藤俊文、曽佐 豊

対話会の詳細

開会あいさつ
なし
(会場が複数にわたっていたため、対話会グループに分かれてシニアのファシリテーションのもとで個別に開始)
グループ対話の概要
静岡大学対話会(後期静岡キャンパス)は、連続講義「エネルギーと環境」を受講する人文学部、教育学部、理学部、農学部の学生67名 (学部2年生:59名、3年生:6名、4年生:2名)を対象に実施した。
静岡キャンパスの講義「エネルギーと環境」は10月から2月まで16回にわたって、エネルギー、環境、セキュリティ、地球温暖化、原子力発電、放射性廃棄物等の幅広い講義が行われている。今回の対話会もその一環として開催されており、対話のテーマは講義に関連する以下の計5テーマを8グループに分け実施した。
  1. グループ1-1、1-2:エネルギー・環境問題
  2. グループ2:エネルギーセキュリティー
  3. グループ3-1、3-2:核融合
  4. グループ4-1、4-2:原子力発電
  5. グループ5:原子力防災
対話では、対話概要のとりまとめと発表を行う学生を指名してスタートした。シニアはファシリテータとして学生の対話を促進した。
事前アンケートを通じて事前に興味、関心事を示してもらい、対話を通じて学生からさらなる関心事があるのか、何を意見交換したいのか等を提案。その中からいくつかの関心事に絞って対話を行った。
学生は関心事に関して自分の意見を述べ、相互の意見交換を行うことにより、自分の意見を明確にするとともに問題の理解をより深める等、一定の成果をあげることができた。
学生は関心事に関して自分の意見を述べ、相互の意見交換を行うことにより、自分の考えを明確にするとともに対話テーマを取巻く状況や課題等について理解をより深める等、一定の成果をあげることができた。

2.各班のテーマと講評

(1)グループ1-1:エネルギー・環境問題

参加者
学生:6名 人文社会科学部社会学科 2名、人文社会科学部経済学科 4名
シニア:1名 中江延男
会場
理学部 A棟 301 講義室
対話内容
ファシリテータ中江のもと、対話概要まとめ役を学生1名にお願いし、自己紹介(本テーマを選択した理由や知りたい点等の情報を含む)後対話会を進めた。
学生から出されたサブテーマ案を整理し、下記5項目をサブテーマとすることを参加した学生全員の合意により選定し対話した。
対話の結果概要は以下のとおり
  1. サブテーマ1 メガソーラーのメリット、デメリットについて
  2. 火力発電の依存度を下げることができ脱炭素に有効である。しかし、安定供給や環境破壊というデメリットがある。
  3. サブテーマ2 環境問題解決に向けて(自分たちが)取り組めることについて
  4. フードロスの削減、節電、リサイクルなど日頃できるアイデアが出され学生の意識は高かった。
  5. サブテーマ3 エネルギーベストミックスについて
  6. 再エネ、原子力、火力の全電力供給量に対する比率について第7次エネ基の報告値をシニアから紹介した上で学生に比率の提案とその理由について対話するよう呼びかけた。
    学生の多くは再エネ、原子力を支持し火力は支持しないという意見であった。
    再エネはメリットよりデメリットの要因(環境破壊、使用期間が短い、サプライチェーンを海外に依存している等)が大きいこと、原子力は福島事故以降安全性が見直されていること、安定供給が可能な電源であること、二酸化炭素の放出がなく環境に優しいこと、火力は温暖化の観点では減らすべきであるが安定して電源を供給することが理由として挙げられた
  7. サブテーマ4 新エネルギー(高速炉、核融合炉)に対する実現可能性と問題点について
  8. 学生らしく新エネルギーの発現を期待してのサブテーマ選定であった。
    新エネルギーとして高速増殖炉及び核融合炉を対象として対話するよう呼びかけた。
    その結果、高速炉増殖炉(高速炉サイクル)の実現性は見込めるが、核融合炉については発電できるようになるのはまだまだ先のように感じているとの考えが共通していた。
  9. サブテーマ5 環境保全の世界的取り組み(特に、米、中)を実現するための方策について
  10. 米、中のような大国と1:1で対等に議論・交渉するのは難しい。多国間でルールをつくり大国を包囲するのが良いのではないか。また、日本が環境保全にきちんと取り組むこと、そしてその姿勢を大国に見せることも重要である。
シニアからの感想
まず、エネルギー・環境問題に対する学生の意識が高く、多角的にこの問題を捉えているのだと感心した。
エネルギーベストミックスの対話では、原子力の比率を60%と発言する学生がいたことには驚いた。その学生は今後のエネルギー問題を解決するのは再エネではなく原子力であるとの考えを披露した。(それを実現する方策をシニアから簡単に説明しておいた。)
学生は多くのことを学習しようと考えているようであった。このため、もう少し時間をかければ対話の内容も充実し学生の理解が進み学生自らの考え方を確立するのに役立つのではないかと思われた。
大学にもよるが学生は非常に素直で新しい知識を柔軟に受け入れる。

(2) グループ1-2:エネルギー・環境問題

参加者
学生:10名(学部2年生)、理学部数学科1名、化学科2名、生物科学科1名、農学部生物資源科学科3名、応用生命科学科3名
シニア:湯佐 泰久
会場
理学部 A棟 301 講義室
対話内容
シニアがファシリテータを努めた。まず、全員の自己紹介のあと、各人が本テーマ選択の理由、そして、聴きたいことや疑問に思ったことなどを説明した。その後、対話のまとめ役と発表者を決めた。サブテーマ案を検討したがまとまらず、「各種発電方法とそれぞれの環境負荷」として対話をすすめることになった。対話概要は以下の通り。
    メガソーラーは土砂災害などのデメリットがある。地形や地盤などの諸条件に合わせて設置すべきである。例えば、若い樹木は光合成が盛んであるが、老木はそうでななく、一律に伐採するのも問題である。
    太陽光パネルも自然災害によって、有害金属を含んだ災害廃棄物になる。
    風力発電も、ヨーロッパのような適地は多くない。
    地熱発電をもっと進めるべきとの意見があるが、開発利用には多大の時間と費用がかかる。国立公園では直接、開発できず、温泉地は業者の反対もあって、進めにくい。
    再生可能エネルギーは、脱炭素に有効である。しかし、質・量ともに、安定していないというデメリットがある。
    火力発電についても、日本はエネルギー効率を高くする技術開発や二酸化炭素発生量を少なくする技術開発が進んでいる。このような技術を海外にも広めるべきである。
    結局、それぞれのメリット・デメリットを考慮して、各種の発電方法を適切に組みあわせるのが好ましい。
シニア所感
農学部の学生が6名で、環境問題に関心がある学生が多かった。一方、エネルギーの具体的な内容、例えば、高速増殖炉や核融合についての関心はないようで、発言はなかった。
今回の対話会がこのテーマに更に関心を持って、具体的に考えて欲しいとの感想を持った。 

(3)グループ2:エネルギーセキュリティー

参加者
学生:5名(学部2年生)教員養成学部数学専攻1名、人文社会科学部社会学科1名、法学科1名、経済学科1名、理学部 生物科学科1名
シニア: 田中 治邦
会場
理学部 A棟 304 講義室
対話内容
事前質問(当Gr.を選ぶに至った疑問)への回答と当Gr.のテーマを考える上での参考資料を最初に配布。この参考資料は主としてデータであり、議論の時間を失うのでいちいち説明はせずにざっと目を通すだけとし、ここまでで10分。その後1時間を意見交換。シニアから5つの論点を提示し全員に意見を言って貰ったので一人当たり5回発言。最後の15分で学生がまとめたが、議論の間にシニアが感じた印象的な意見は以下の通り。
  1. ① カーボンニュートラル
  2. GHG排出の多い米中と発展途上国とを一律の期間でCNさせるのは不可能
    日本経済のためにも欠かせず、早急に行うべき
  3. ② 日本の周辺リスク
  4. 国産エネルギー開発、エネルギー自給率向上などエネルギーセキュリティーが重要
  5. ③ 太陽光と風力
  6. 無尽蔵の太陽光に可能性を感じるが、パネルが海外製で最終処分にも心配あり
  7. ④ 火力発電用燃料の確保
  8. 暫くの間、火力は不可欠で不足分を補うという考えで利用
    調達先を広げ、備蓄を増やし、更にメタンハイドレードにも力を入れるべき
  9. ⑤ 原子力
  10. CNに対しては大きなメリットで安全性の確保を前提で利用するべき
    良いイメージを持って貰うことが必要
    政治で足が引っ張られているのは勿体無い
    管理に莫大な費用がかかるのではないか
学生所感
エネルギーについて考える際には、環境保護という視点だけでなく、政治や経済といった領域が深く関わっており、非常に複雑であると思った。
原子力発電について皆賛成の意見が多くて面白いと思った。再エネは意見がバラバラで実現の難しさを身近なところで体験できた。
エネルギー問題はメリットだけでなく、デメリットが思っていたよりも多く難しい問題だと感じた。
自分とは違う視点を持つ人の意見を交流できて新たな視点が得られた。エネルギーの経済か安定をとるかなどが難しく感じた。
他の人の持つ多様な意見について聞いた。話し合いの相手としては文系の人が多かったが、想像よりも原子力に対し肯定的な意見が多く、正しい知識を身につけ、ある意味正しく恐れるのは良いことだと思った。
シニア所感
参加学生全員が自分で考えそれぞれの意見を形成しそれを他の人と議論できるように、予め論点をリストアップした記入用紙を配布し考えを文字に起こすようにさせ、それに基づき意見を表明して貰った。これはSNW会員である幸浩子氏の実施される「みゆカフェ」方式の利点に少しでも近い効果を得る目的で試みたもの。
学生が記述した内容は、原子力については全員が肯定的であった。自分の考えを文字に書き出すことは確固たる意見の形成に役に立ち、それは将来の社会人生活の中に長く残るものとなったと期待した。

(4) グループ3-1:核融合

参加者
学生:9名(学部2年生および3年生)、人文社会科学部経済学科1名、教育学部教科教育専攻英語教育専修1名、理学部物理学科7名
シニア:デフランコ真子
会場
理学部 A棟 2F大会議室
対話内容
事前に学生さんが核融合について知りたいこととして挙げてくださった質問事項をテーマとして、出席者全員で話し合った。
テーマは大きく分けて以下のもの。
    核融合の技術に関する疑問(材料、炉型、トリチウム増殖など)
    核融合の技術開発状況、各国の戦略、核融合の課題と展望
    社会受容:原子力発電所、核融合発電所の近くに住んでも良いと考えるか?
    核融合発電、原子力発電の仕事と必要な知識・技術
    将来の電源構成、各自が考えるBEST MIXの割合
    エネルギーについて、もっと社会全体で考えていくにはどうすればよいか
学生の意見
    多岐にわたるテーマであったが、参加者一人一人が自分の考えをみんなに共有できる良い場となった。
    特に印象的だったのは、原子力発電所や核融合発電所の近くに住んでも良いかどうか、に関する考え。約半数が、手厚い福島事故対策の成果や地元貢献を理由に住んでも良いと回答、半数はやはりいざという時の被害が甚大なので住みたくないと率直な意見を共有してくれた。
    上記のような考えの違いはあるものの、50年後、100年後の未来で実現したい電源構成のBEST MIXについては、化石燃料での発電はやめて、地熱や水力などの電源をもっと有効活用するとともに、原子力発電や核融合発電も活用すべきとの考えを持っていた。
対話後の学生の感想
    核融合の具体的な計画、特に2039年に発電実証を目指している日本政府の計画に実感が持てた。この道に進むのも良いかなと思った。
    原子力、核融合について対話し、自分は将来研究者になりたいと思っているので、将来の進路を考えるうえでも参考になった。
    普段はこのようなことを友達同士で語り合わないが、みんなの意見を聞く良い機会であった。
    授業で教わったことも一部あったと思うが、忘れてしまっていたので、思い出す良いきっかけになった。もっとしっかり授業も聞かないといけない、と思った。
    核融合技術開発については難しく、文系の人財では貢献できないと思う、理系の皆さんに期待して頼っていくのだと思った。
    地震国の日本は原子力発電や核融合発電には向いていないと思っていたが、福島事故後の手厚い対策を知れてよかった。特に核融合の場合は固有の安全性もあり、魅力的だと思う。
    核融合はまだまだ先の話と思っていたが、2030年代に発電実証を目標としているなら、意外と進んでいると感じた。自分は材料の研究をしたいが、将来の選択肢にもなり得ると感じた。
    核分裂炉=原子力=危ないのイメージが払しょくできていないと思う。将来の電源構成で原子力、核融合をあげていくにはこれを払拭していくのが重要。
    核融合の安全性についてはもっと周知すべきと思う。
学生の代表1名が、参加者全員の意見を聞いた上で以下のとおり総括してくださった。
    核融合について、授業では勉強したものの、知識がまだ浅かったと思うが、技術的なことや将来展望など様々なことについて、この機会にいろいろ知ることができ、みんなと意見交換できたのが良かった。
    日本政府の具体的な計画、2030年代に発電実証というのは、そう遠くない未来だと思う。また諸外国も同様な戦略をもって開発をしていることが分かった。
    核融合の炉型や技術について、まだまだ課題が多々あるが、言い換えると発電炉として使用するために、自分たちの世代が解決して貢献できることがたくさんあるということでもある。
シニア所感
核融合は遠い未来というイメージが、日本政府や各国政府の2030年代発電実証という具体的な目標に触れて、少し近くに感じていただいたと思う。
理学部物理学科の学生さんも多く、将来の自分の仕事としての原子力・核融合という目線での質問もいくつかいただいた。大変心強く感じた。
核融合の課題は、技術課題、社会的な課題、コストの課題等まだまだ多々あるが、新しい世代にバトンを引き継ぎ、全世代一丸となって解決していくことで、核融合発電実現に向けて継続的に取り組めると良いと思う。

(5)グループ3-2:核融合

参加者
学生:8名(学部2年生および3年生)、理学部 物理学科1名、化学科4人、地球科学科3人
シニア: 森本 泰臣
会場
理学部 A棟 2F大会議室
対話内容
核融合の概要、政策、今後の課題について概要を説明し、社会実装を実現するために必要な要件について議論した。
核融合エネルギーの社会実装に必要な事項として、1) 技術課題の解決、2) 社会受容性が重要との認識に至った。
質疑応答および学生の意見を以下に示す。
    核融合発電の効率を上げる方法を考えたい。→ エネルギー増倍率(Q値)を増やす、発電方法(蒸気タービン、ガスタービン、等々)を選択する、方法がある。システムとしてどれが最適なのか、核融合発電の仕組みを作り上げていく必要がある。
    核融合実現に向け、今後必要な課題は何か → 社会実装に必要な事項として、例えば、規格・基準や規制の整備が挙げられる。産業団体も創設され、動き出したところ。
    核融合は未来のエネルギーのイメージがあり、現実感がない。必ずしも実現するかどうかわからない。実現するかどうかわからないエネルギーを受け入れられるかどうかわからない。
    社会受容性を向上させるための方策として、核融合のブランディングをどう確立していくか、が重要ではないか
    火力発電のように二酸化炭素を出さない、という点で核融合に期待はしているが、「核」、という点で不安が残る。「フュージョン」という言葉は、「核融合」よりかは受け入れやすい。
    核にネガティブなイメージを持っていない。ネガティブなイメージは原爆、福島事故であり、原子力発電、核融合には関係ないと考える。
    「核」のネガティブな部分にとらわれて、メリットを生かさないのはもったいない。福島のような事故を防ぐ、安全を考慮するための技術の開発も実施している状況下では、よりメリットを生かしていくことを考えた方がよい。
    核融合開発が進んでいるが、原子力発電との共同での運用で考えた場合、電気料金を考えれば、経済的視点が重要と思う。また、核融合を産業化していくための仕組みを作ることも必要になっている。
    核融合を導入するには、リスクをメリットが大きく上回る必要もあるはず。
学生所感(発言のまま記載)
化石燃料がなくなる、車がなくなるのは嫌だと思ったが、核融合が車にも使われる社会がよい。実現させていくのはまだ時間がかかると思ったが、就職において、核融合にも興味があるので、原子力関連企業、エネルギーの関連企業に就職して、貢献したいと思います。
核融合を産業化する、実用化を進めている、思ったよりも実用化がすすめられている印象がある。国の影響力は大きいと感じた。イメージ戦略が大事という話があったが、そこについても国が国民に働きかけ、発信していくことが重要と思う。
核融合を実用化するにあたって、社会実装、経済性検討も重要と認識した。核融合燃料である重水素とトリチウムの燃料価格も高そう。プラズマ発生させるエネルギーも必要。採算がとれるかどうか。既存のエネルギーよりも高いと意味がない。
ガンダムが好きであり、核融合が気になっていた。自分が生きている中で実現できるか?と思っていたが、学べば学ぶほど現実味を帯びているイメージがある。核融合に対して希望が持てた。一方で、「核」について知らない。自分の家族でさえ、放射線のイメージが悪い。実用化に向けて進んでいる中でもっと理解してもらいたい。
核融合は研究段階、実用化まで遠いと思っていたが、実用化に向けた規制も考え始めた状況というのを初めて知った。化石燃料は地球温暖化を引き起こす、再エネも限界にきている。フュージョンをうまく活用してほしい。
核融合の産業化が進んでいる。技術開発、法令の整備、サプライチェーン、コストに課題があると感じた。デメリットを上回るメリットを得られるようなことを考える必要がある。核にいいイメージを持っている人が少ないので、安全性を一番に考えて示していかないといけない。
核融合を実用化することを考えたときに、技術・開発が課題だと思う。実用するためには民間。全社が課題として大きい。すでに産業に向かっている。自分の認識と違っていた。いままでの発電技術に変わるもので、メリットが大きい。知識のない人に伝えるのに時間がかかる。
核融合は夢のような話だと思っていたが、実現したら無視できない存在になる。事故や災害があったとしても、それを乗り越えて実現を楽しみにしたい。
シニア所感
国の方針として発電実証が2030年代に行われる予定と核融合炉の社会実装のための動きが思った以上に速いとの驚きがあったように思う。
他方、核融合炉実現に向けて、技術的な課題だけでなく、社会的な課題、経済性、産業化、規制に代表されるような仕組みの整備も重要であると認識してくれたように思います。

(6)グループ4-1:原子力発電

参加者
学生:9名(学部2から4年生)、人文社会科学部(法学科)、教育学部(学校教育教員養成課程)、理学部(数学科、物理学科、化学科)
シニア:星野知彦
会場
理学部 A棟 2F大会議室
対話内容
対話時間が非常に短いため、冒頭ファシリテータから、対話の進め方と時間配分を説明した。
また、自分の考えを人に伝え、人の考えを理解するという心構えで対話することを、参加者全員の共通理解とした。
ファシリテータより学生の事前のアンケート回答から抽出したキーワードを紹介した後、各自自己紹介を兼ねながら本日のテーマの「原子力発電」からさらに深掘りしたサブテーマを提案し、対話のテーマを選定することとした。
さまざまなサブテーマが提案されたが、次の4点に集約された。
    化石燃料に代わる現実的なエネルギー源は何か?
    立地地域の皆さんに正しく原子力発電を理解してもらうにはどうすべきか?
    南海トラフ地震、富士山噴火のような大災害が起きたらどうなるのか?
    事故を未然に防ぐには?もし起きてしまったらどう対応できるのか?
サブテーマについて学生の議論の結果、「南海トラフ地震のような大災害が発生した時に自分の安全を確保するにはどうしたらよいか」に決定した。
約40分の対話で、グループとしてのアウトプットのイメージを共有するため、ファシリテータより次の2段階で対話を進めていくことを提案した。
  1. ① 災害の起きていない現時点で行うべきこと
  2. ② 実際に災害が発生した時に行うべきこと
対話では以下のような意見が述べられた。
  1. ① 災害の起きていない現時点で行うべきこと
    地震、津波、洪水など原子力事故を伴わない災害に対してもハザードマップを十分に把握していないので、確認しておきたい。
    近所の避難所に指定されている学校が大きな地震に耐えられるのかどうか不安、行政に確認してみたい。
    事故時に放出される放射能を予測したハザードマップが必要ではないか?
    発電所に近いところに住んでいる人や早期に避難すべき人から整然と避難する必要があることを若い世代は理解できると思うが、上の世代の方が言うことを聞かないと思う。世代ごとに適切な教育、訓練、周知が必要。
  2. ② 実際に災害が発生した時に行うべきこと。
    核シェルターのような地下施設に避難したい。
    屋内待機を求められても大地震で住居が危険な状態になってしまうのではないか?
まとめ
    災害の起きていない現時点で行うべきこととして、予めハザードマップや避難場所を確認し、不安がある場合は行政に尋ねてみるなどの行動をとる。
    実際に災害が発生した時に行うべきこととして、まずは、地震などの災害から身を守ることを優先し、原子力災害が重なった場合は、やみくもに避難するのではなく、屋内退避など国、自治体の指示に従い冷静な行動をとる。
シニアの感想
原子力発電というメインテーマであったが、キャンパスが発電所立地県でかつ南海トラフ地震が想定されているエリアにあるということで防災関連のサブテーマが選ばれた。学生の防災に対する関心の高さが窺われた。
一方で、ハザードマップをしっかりと見たことがないとか、避難場所の耐震強度などの情報に接していない学生がいた。
また、地震や津波被害が発生し、さらにそれに原子力事故が重畳した時にどう対応するべきかという議論では、浜岡から遠く離れた静岡市でも早急に地下シェルターに避難しなければならないと考えている学生もいた。核兵器による被害と誤解しているようだったので、新規制基準に基づく環境への放射能放出対策や、安全審査における避難の考え方についてファシリテータより補足した。
適切な教育を受ければ冷静に行動できるとの発言もあったので、いざという時の冷静な行動に支障が出ないよう、きちんとした防災教育の機会を与え、正しい知識に基づいた緊急時の冷静な判断を期待したい。

(7) グループ4-2:原子力発電

参加者
学生:9名(学部2年生)、理学部5名、農学部3名、人文社会科学部1名
シニア:佐藤 俊文
会場
理学部 A棟 2F大会議室
対話内容
シニアの自己紹介、学生の自己紹介をおこなった。
対話会のスケジュールを説明し、書記(PC入力者)と発表者を決めた。
順番に各学生から聞きたいこと、疑問に思ったことを発言してもらい、それに対して回答を含めてグループ内での対話を進めた。
    原子力の悪いイメージを払拭するための取り組みはどのように行っているのか。
    国民の原子力への不安を解消する取り組みはどのように行っているのか。
    フランスなどは原子力の比率が高いが、日本とどのような点が異なるのか。
    原子力発電所は、南海トラフ地震や富士山噴火などの想定される災害に耐えうる構造となっているのか。
    原子力発電所は、なぜ津波被害の可能性が高い沿岸部に建設するのか。
    原子力発電所は増やすべきか、減らすべきか。環境とのバランスはどうか。
    世界における日本のエネルギー状況はどうなっているのか。
    3.11後に原子力発電所の安全対策はどのようなものが実施されてきたか。
    対話会テーマは「原子力発電の安全性、印象」となり、グループ内で発表内容について議論した。
学生からは次の意見があった。
    3.11以降の原子力発電の安全性への取り組みや印象について議論したい。
    原子力発電の悪いイメージを払拭することができないか、考えてみたい。
    原子力発電の安全性への取り組みについて、広く伝える方法を議論したい。
    原子力発電所を実際に見学するのが早いと思うが、自発的に見てもらうのは難しいかもしれない。
    データセンターなどの建設でも反対運動が起きるとすれば、反対運動自体を無くすことは難しい。
    原子力発電所の再稼働は、地元民でも宿泊・飲食業、タクシー運転手、作業員の方などメリットのある人と、まったく無い人がいる。
    電気などエネルギーの値段が高いと生活へのインパクトが大きく、また、日本の産業の衰退につながる。
    太陽光発電や風力発電などの再生エネルギー、LNG火力や石炭火力、水力や原子力、地熱発電などいずれの発電方式にもメリットとデメリットがあるので、バランスが必要。
    SNSでの発信は興味のある人にしか伝わらず、また、嘘やごまかしなど誤った情報が流れる可能性も高いため、情報リテラシーが重要かもしれない。正しい情報の発信が難しい。
    処理水の放出などでは、IAEAなど国際機関との連携が説得に有効だったように思われる。
シニア所感
参加した学生がそれぞれの意見を持ち、知識もあり、積極的に発言していた点が非常に良かった。
浜岡原子力発電所を見学した学生もいて、「防潮堤はとても高かったが更にかさ上げするとのことだった。実際に見ることでどれだけ安全対策を実施しているかを理解できた。」と発言していたことが興味深かった。

(8)グループ5:原子力防災

参加者
学生:11名(学部2年生)、人文社会学部・法学科2名、同・経済学科2名、教育学部・教科教育学1名、理学部・生物科学科1名、農学部・生物資源科学科3名、同・応用生命科学科2名
シニア:曽佐 豊
会場
理学部 A棟 2F小会議室
対話内容
参加学生の自己紹介と原子力防災で特に関心のある点について説明してもらった後、書記と発表者を決めた。
シニアからオリエンテーションとして福島第一発電所事故を踏まえて強化された新規制基準と原子力災害対策指針の概要を簡単な資料で紹介した。
司会を発表者にまかせ、全員が自分の意見を述べ合って、原子力防災グループとして以下のサブテーマで見解をまとめた。(以下、学生の発表から)
  1. ① どこまでを防災してとらえるのか
  2. ② 原子力を他人事ではなく自分ごとで考えられるようにするには
  3. 少し地域が外れただけで実体験の感覚がなかったが災害地域に近づくのは躊躇った(注:福島県出身の学生)
    原発を増やしていくのは賛成
    数値を示すのも有効だけど安心感が得づらい
    体験として理解できると安心しやすい
    原発がある地域、ない地域で意識に差があるので全体に危機感を与えていく必要がある
    学校教育で早い段階から取り組んでいくことで子供達に意識を高める
    大人がよく触れるものに原発防災に関する情報を入れて大人の意識を改善する(注:子供・学生は学校の授業で原子力防災を学ぶ機会があるが大人には機会がないため知識が不足しているとの問題意識)
    予算を増やして被害を減らす用意をする
シニア所感
司会を任せた発表者のリードで参加者全員が活発に意見を出し合っているなかで終了させた。もう少し時間があればよかった。

3.学生アンケート結果の概要

(1)参加学生について
連続講義「エネルギーと環境」を受講する人文学部、教育学部、理学部、農学部の学生67名 (学部2年生:59名、3年生:6名、4年生:2名)を対象に実施した。
参加学生67名のうち65名が回答。回収率は97%。
回答者内訳:
理系(理学部、農学部)が46名、文系(人文学部、教育学部)は19名
進学希望者が34名、就職希望者が31名
(2)対話会について
対話内容の満足度について、「とても満足」「ある程度満足」が大多数を占め、全体的に高い満足度が確認された。主な理由として以下が挙げられる
    専門家・シニア世代からの実体験に基づく話を聞けたこと
    一方通行の講義ではなく、双方向での意見交換ができたこと
    普段触れることのない視点や考え方に触れられたこと
ただし、一部では「時間が足りなかった」「もう少し整理された進行がほしかった」といった運営面での課題も挙げられた。
事前に対話したいと思っていた内容への到達度については「十分対話できた」「ある程度対話できた」という肯定的回答が多数。少人数グループでの対話形式が、質問や意見表明のハードルを下げ、また、シニア側が学生の問いを受け止め丁寧に応答した点が評価されたと読み取れる。
対話を通じて得られたものとして、以下の回答傾向がみられた。単なる知識習得だけでなく、「考え方が変わった」「見方が広がった」という認知的変化を示す記述が多く見られた。
    新しい知識・視点の獲得
    メディア情報と現場・専門家の話との差異への気づき
    自身の理解の浅さ・前提の再認識
「学生とシニアの対話」の必要性に対する認識については、「非常に必要(75.4%)」「必要性を感じる(24.6%)」が占めた。その理由として、世代による経験・価値観の差が学びにつながる、同世代だけでは得られない判断材料が得られる、専門分野や職業的背景の違いが議論を深める、などの意見があった
今後の参加勧奨については、多くの学生が「友人や後輩に勧めたい」と回答。視野が広がる、正確で多面的な情報に触れられる、将来の進路や社会課題を考えるきっかけになる、などの理由が示された。
(3)放射線・エネルギー・環境に関する意識調査について
放射線・放射能の危険性に関する認識について、「日常的に浴びており、一定レベルまでは過度に恐れる必要はない」という理解が多数派でありながら、一方で「量に関係なく不安を感じる」とする回答も一定数存在。
放射線・放射能の生活における有用性について、ほぼ全員が「医療などで利用され、生活に役立っている」と認識。危険性と有用性を併存するものとして捉える、比較的バランスの取れた理解が見られる。
原子力発電に関する認識について、「再稼働を進めるべき」43.8%、「2030年目標達成」28.1%、「新増設・リプレース」26.6%、「早期撤退」1.6%。全体として前向きが多数。
再生可能エネルギーに関する認識として、利用拡大を進めるべき」63.1%、一方で「天候依存」や「自然環境破壊」を理由に約32%が、抑制的が望ましいと回答
カーボンニュートラルとエネルギーについて、関心度は「大いにある」46.2%、「少しある」50.8%、「あまりない」3.1%との回答。関心あるテーマの上位テーマとして、「エネルギー資源の確保」、「温暖化の影響と対策」、「我が国の環境・エネルギー政策」、「原子力・再エネの役割」、「技術開発・イノベーション」などが挙げられた
2050年脱炭素の実現可能性について、「実現するとは思えない」45.3%、「分からない」29.7%、「相当いいところまで到達する」25.0%との回答
望ましい電源構成として、「化石最小+原子力+再エネ」55.4%、「三電源ほぼ均等」33.8%で約9割を占めた。
高レベル放射性廃棄物の最終処分について、関心度は「大いにある」18.5%、「少しある」58.5%、「あまりない」23.1%、との回答。地域で計画が出た場合、「反対しないと思う」39.1%、「反対すると思う」39.1%、「分からない」21.9%。意見は拮抗だが、内訳として理系は原子力・地層処分に相対的に前向き、文系は反対比率が高い傾向が見られた。関心のある項目としては、技術が最も高く、66.2%となった。
(4)全体の感想・意見
対話会を通じて専門家・シニア世代の実体験に基づく話から新たな視点や考え方を得られたという評価が多数を占めた。
放射線やエネルギー問題を、単純な賛否ではなく条件やバランスを踏まえて考える姿勢へと意識が変化したとの声が多い。
その一方で、対話時間の不足や事前知識の必要性が課題として挙げられた。
また、継続的な開催を望む意見が見られた。

アンケート詳細については別添資料を参照下さい。

4.別添資料リスト

事後アンケート結果

(報告書作成:2025年1月13日)