日本原子力学会シニアネットワーク連絡会
報告
学生・教員・市民とシニアの対話会

SNW対話
イン九州工業大学2021 概要報告書

日本原子力学会シニアネットワーク連絡会(SNW)世話役 金氏顯
《正門、奥は辰野金吾設計の守衛室》
《旧本館跡地に建つ百周年中村記念館》
アクティブラーニングの実践イベントとして学生とシニアの対話を実施
九工大での対話会は大学側もアクティブラーニング実践イベントとして高く評価し積極的に対応。担当の先生は今回から交代し、基調講演として機械技術者が原子力開発に携わった体験談を要請されHTTR開発に従事した経験、ならびに今後の産業界にも大きな影響がある2050年カーボンニュートラルなどを対話に先立ち講演した。
またグループ対話のテーマには技術者の働き方など、技術的なテーマが多く、これまでとは一味異なる対話会となった。

まえがき

九工大での対話会は大学側もアクティブラーニング実践イベントとして高く評価し積極的に対応。今回10回目、奇数回は電気電子工学専攻「先端電気工学特論」、偶数回は機械知能工学専攻「エネルギー変換特論」、2単位。今年度は機械知能工学専攻で特論講座の一部ではなく、「学生とSNWとの対話会」単独イベントとして開催。
担当の先生は今回から交代し、基調講演として機械技術者が原子力開発に携わった体験談を要請されHTTR開発に従事した野村眞一さんにお願いし、また今後の産業界にも大きな影響がある2050年カーボンニュートラルなどを金氏が講師となって基調講演は2本立てとした。
基調講演内容が効を奏し、参加学生は45名(うち学部10名)になった。後で院生10名減。 基調講演―1,2とも録画し、学生もシニアにもURL配信、後日それぞれの都合良い時に視聴してもらったが、この方式は非常に便利で効果的だった。
またグループ対話のテーマには重工メーカーでの技術者の働き方など、技術的なテーマが多く、これまでとは一味異なる対話会となった。

1.講演と対話会の概要

1)日時
基調講演―1:令和3年11月2日(火) 13:00~14:30(録画)
基調講演―2:令和3年11月5日(金) 13:00~14:30(録画)
対話会 :令和3年12月7日(火) 13:00~17:30(ZOOM)
2)方式
リモートオンライン方式(使用するシステムは九工大採用ZOOM)
3)大学側世話役の先生
梅景 俊彦:機械知能工学研究系教授、河部 徹:同准教授
4)参加学生
機械知能工学系大学院生学生M1およびM2:25名、学部学生3.4年生:10名、合計35名
5)参加シニア:6グループ、14名
大野 崇、梶村順二、古藤健司、後藤 廣、西郷正雄、齋藤伸三、野村眞一、針山日出夫、 船橋俊博、牧 英夫、三谷信次、山内真一、笠 浩之、金氏 顯
6)基調講演1
テーマ:「次世代炉として期待される高温ガス炉について~原子力発電の基礎知識軽水炉との比較、そして機械技術者としての開発体験~」
講師:野村眞一
講演概要:原子力発電の核分裂、固有安全性、深層防護、放射線などの基礎知識を解説し、次に現在原子力発電の主流である第3世代大容量軽水炉(100万kW級)、更に第4世代炉として近年脚光を浴びている小型モジュール炉を(SMR)と高温ガス炉の特長を説明する。
そして最後に、高温ガス炉の実験研究炉として日本原子力研究所が茨城県大洗町に建設した「高温工学試験研究炉」 (HTTR)の設計建設に1988年~1999年にメーカーの機械技術者として携わった体験、特に冷却材温度950℃という類を見ない高温に特有の様々な問題を解決したエピソードなどを紹介した。
7)基調講演2
テーマ:「2050年カーボンニュートラルと原子力の役割」
講師:金氏 顯
講演概要:日本と世界のエネルギーの現状、特に化石燃料に85%以上も依存している現実を知った後、2050年カーボンニュートラルに向けての欧米の動向、日本の2030年、2050年に向けてのエネルギー基本計画の概要、課題と原子力の役割を述べる。最後に原子力発電を巡る諸課題のうち、40年を超える運転、福島第一トリチウム処理水海洋放出と風評被害、高レベル放射性廃棄物最終処分について現状と今後の展望を紹介した。

2.対話

会の詳細(全体司会進行:河部徹准教授)
1)開会あいさつ
【副工学研究院長:松田健次様】
原子力学会シニアネットワーク連絡会の皆様との対話会は今回で10回目とのことで、大変ありがたく思っております。本学はモノづくりを通じて社会に柔軟に対応する技術者を育成する教育を行っています。大学教育では限りがありますが、我が国の原子力界で活躍された皆様方のお話を聞き、また対話をする機会は学生たちにとって視野を広げる大変良い機会です。よろしくお願いいたします。
【SNW九州・会長:金氏 顯】
原子力学会シニアネットワーク連絡会(SNW)は2006年に設立し、以来15年間全国の大学・高専との対話会を行ってまいりました。私が2010年に約半世紀ぶりに故郷の北九州に帰ってきたときに、ぜひ九州工業大学でも対話会を行いたいと2011年福島事故の後でしたが、伝手を頼ってお願いに上がりましたら、実学を重視する大学の方針にも合致しているとのことで快く受け入れていただきました。以来、電気電子工学系と機械知能工学系を交互に開催し、今年は10回目で機械知能工学系の学生との対話会です。九州工業大学は1909年に明治専門学校として開学し、総裁であった山川健次郎の言葉である「技術に堪能(かんのう)なる士君子」となることを教育の基本としていると伺っています。今日はそういう「士君子」すなわち「ジェントルマン」の皆さんとの対話会を楽しみに、全国から14人のシニア技術者が参加しています。よろしくお願いします。
2)グループ対話の概要
学生の事前質問は各グループとも技術者らしい率直で本質的な質問が多かった。世話役から、シニアからの回答時に逆質問を必ず記載しておくよう各グループにお願いした。学生はこれらを12月7日の対話会の1週間以上前には入手し、事前に十分準備出来たものと思われる。
グループ対話はほぼ3時間あったので、事前回答の確認、逆質問への学生からの回答、また双方向のフリーディスカッションに十分な時間が取れたものと思われる。
学生の各グループ発表はどのグループとも大変要領よく、またシニアから聞いたことだけでなく学生としての意見や抱負なども交えて発表。シニアからは全くコメントなど無かった。
対面の対話会の場合は終了後に学生、先生、シニアが学内の“鳳龍会館”(九工大の学章から命名)でアルコールも入って交流、歓談するが、その代わりにZOOMを約1時間延長し両先生と参加シニア希望者から感想を一言ずつ述べていただき、良い交流になった。
以下、各グループ対話の概要である。
■グループA : テーマ『福島第一事故の原因・教訓と原子力発電をより安全にするには?』
学生:1名(研究室名:計算力学)+学部生2名=3名
シニア:*(ファシリテータ、以下同様)船橋俊博、斎藤伸三
報告:予め受け取った13件の質問中7件は標記のテーマとかけ離れたものであり、テーマとの関連性を危惧しつつ、それぞれに回答を用意した。
対話には、多くの学生が就職関連の用事があるとのことでM1、1名、学部2名の計3名であった。シニア2名とで計5名の少数グループとなったこともあり、和気藹々の中で、忌憚ない対話が出来た。学生側の準備も周到で、特に、M1の学生はまとめの発表をすることも決まっていたので、終始真剣に質問をしてきた。
上記のテーマに沿った質問としては、電源喪失による炉心冷却不能は如何に改善されたのかと言う真っ当なものから、新規制基準に沿うためには既設炉を廃止し原発を新設しないのかと言う経営の現実とかけ離れた質問まで種々あったのは、未だ社会に出る前の若者らしさかも知れない。また、原子力発電の発展(ママ)にあたって最も足りないものは何かとの質問について議論したが、学生の方から「世の中の人が理解すること、そのためにはエネルギー省を作る必要がある」との発言にはその鋭敏な感性に感銘を受けた。
■グループB:テーマ『技術的観点から見た資源・エネルギー供給政策と安全保障, 日本の特性,他国との比較,開発途上国の動向』
学生:6名(研究室名:混相流)+5名=11名
シニア:*三谷信次、山内真一、笠浩之
対話内容
オンライン方式でシニアと学生が順に自己紹介を行った後、11項目の事前質問への回答書に沿って対話を進めた。
「原子力発電の安全性に関する質問」と「再生エネルギー及びクリーンエネルギーに関する質問」に分けられ、原子力の安全性に関する質問は、廃棄物処理の地層処分とテロ対策に関する質問であり、他国の状況も交え、対話の内容もかなり具体的なものとなった。また、再生エネルギーに関する質問では、洋上風力などのエネルギー開発の現状から、再生可能エネルギー推進に関する矛盾、クリーンエネルギー資源の確保・輸送に至るまで、多岐にわたる内容となった。
現在の学生に、事業の費用対効果を求めるのは、将来の夢と希望を狭めることに繋がりかねない。何故?とか、どうして?とか、学生には何事にも疑問を持ってもらい、少しでも、その回答の手助けが出来ればと感じた。
■グループC:テーマ『再生可能エネルギー(太陽光、洋上風力など)は主力電源になりうるか?』
学生:大学院生(材料力学)M1 4名
シニア:*後藤 廣、古藤 健司
主な対話内容
学生からの事前質問を中心にシニアからの事前回答についてシニアが説明を行いつつ、派生する問題等を話題として取り上げ、相互に問答することによって共通の認識を確認し合うという形式で対話は進行した。学生諸君は予め「議論」の打ち合わせをしており、「まとめ」についての整理の仕方も検討していたように見受けられた。「クール」であった。
事前質問は ①「再生エネルギーの効率は今後原子力を上回ることはあるでしょうか?」②「再生エネルギーのコストは今後原子力を下回ることはあるのでしょうか?」③「今、最も有力な再生エネルギーは何が挙げられますか?」④「再生エネルギー発電所を建設する際の環境負荷は原子力と比較してどの程度なのでしょうか?」であった。
質問①②の再生エネルギー電源の効率とコスト(原子力発電との比較における)についての議論においては、「設備利用率」が重要なパラメータであり自然条件に依存する太陽光や風力発電では原子力発電の数分の1に留まること、総発電コストは電源別発電コスト(均等化発電原価)に「統合コスト」を加味して評価しなければならないこと、とまとめられた。
質問③④の最有力の再生エネルギーは?再生エネルギー発電所建設における環境負荷は?については、電中研・機械学会のデータを基に「安定再生エネ電源」は12%で「変動再生エネ電源」は40%と見積もられることを議論した。特に気象に左右させる「変動再生エネ電源」では大容量の蓄電システムが必要であることが発展のネックになっていることを再認識してもらった。
「変動再エネ(太陽光や風力)を日本で増やすためにどのようなアイデアがあるか?」「EUでは国際送電網を有して電力を融通し合っているが日本も海底ケーブル等で中国・韓国・ロシアなどと国際送電網を構築すべきか否か?」などを学生諸君に問い掛けた。技術的な問題や国際情勢・国政の違いなどにも思考が及んだ「対話」がなされた。
■グループD:テーマ『2050年カーボンニュートラル(脱炭素エネルギー)は可能か?』
学生: 6名 精密システム研究室 修士2年 2名、1年 1名、 学部4年 3名
シニア:3名 *針山日出夫、梶村順二、西郷正雄
主な対話内容
ファシリテータのシニア針山氏のもと、対話会を進めた。
シニア及び学生の自己紹介
ファシリテータからの順次指名により、学生たちの「原子力に対する考え」を確認
シニアへの開催前の質問に対して、シニアより順次回答
回答の中で、本テーマに係る「現時点でどれだけカーボンニュートラルは実現できているのか。」において、意見交換が集中的に行われ、「2050年カーボンニュートラル(CN) は可能か」へと対話が進展した。
学生たちとシニアの間でファクト事実を確認し、いくつかの課題を取り上げて意見交換を行った。
その結果、学生たちは、次の理由により「2050年カーボンニュートラル(CN) は不可能」と結論付けた。
  1. ① 世界各国が自国の経済活動を優先しているため、様々な対立構造があり世界全体で共通の方向に向かっていくのが難しい状況にある。
  2. ② 技術革新に頼らざるをえない。
  3. ③ 技術開発のための国からの支援金が少ない。
  4. ④ 大量消費国の賛同を得られていない。
  5. ⑤ 再生可能エネルギーの補助電力が考えられていない。
以上の対話会では、学生の中には、積極的に質問や意見を言うものもいたが、時間的に余裕もあり、ファシリテータの誘導もあって、他の学生たちも自分の意見をほぼ言うことができた。
■グループE:テーマ『重工メーカーでの技術者の働き方,解析技術の活用,外部企業も含めたチームでの仕事法 大型プラント設計の方法と工学シミュレーション技術』
学生:7名 塑性工学研究室
シニア:2名 *金氏 顯、牧 英夫
主な対話内容
ファシリテータ金氏氏のもと、対話会を始めた
学生側ファシリテータを柳田君に御願いすることとした。
自己紹介
事前質問は7件であったが、下記5件に集約して討議することとした。
テーマ1.重工メーカーでの技術者の働き方
テーマ2.解析技術の重要性(方法、実現象との摺合わせ、開発期間)
テーマ3.大型プラント設計と通常の小型製品設計との違い
テーマ4.外部企業とチームを組んで開発を行う場合の留意点
テーマ5.福島の事故前と事故後で、安全面においてプラントの設計やシミュレーションがどのように変化したか
上記テーマ毎に質問への回答を簡単にシニアが行い、それに対して当該テーマを提起した学生が口火を切る形で討議が進められた。学生側発言者指名は学生ファシリテータに一任した。
討議後、学生側から就職決定先、或いは、将来の就職希望先の紹介があった。
学生報告会では、テーマ提起者が交代でテーマ毎の総括を行なった。
テーマ1.重工メーカーでは最初の職種が生涯の仕事内容を決めることが多いので、希望先提示が重要である。また、モノづくりにおいてはPDCAの型が重要。
テーマ2.解析主導設計が現在のモノづくりの主流。実現象との摺合わせは欠かせない。
テーマ3.プロジェクトマネジメントが重要 (br>テーマ4.企業同士が相手側の文化を尊重することが重要。意見が違う場合は顧客の意見を聞く。
テーマ5.安全性は格段に高まった。その物差しはPRAである。
当グループの事前質問は原子力、エネルギー、に捕らわれず、モノづくりの核心に迫るテーマであり、時間が短すぎるほどの討議であった。
■グループF:テーマ『SMR開発の可能性と将来性は?』
学生3名(研究室名:熱デバイス)
シニア:*野村眞一、大野崇
報告:
同じ研究室の大学院生3名と対話の機会を得た。予め、質問をもらい回答を送っていたが、学生は皆事前によく読んでおり、追加質問を準備し、それに対する学生の考え、シニアの意見を述べ合うという形で進めた。
司会の学生はもっと研究がしたいということで博士課程へ、一人は日揮へ就職、一人はエネルギー関係の会社を希望、ということを語ってくれた。
SMRについての追加質問と学生の考えは以下であるが、対話は活気・積極的発言があり面白かった。
他国との共同開発の是非 ・コストが高い要因 ・火力発電の代替を考えた時、火力新規導入との得失
医療に特化した原子炉技術開発は、放射線研究なのか原子力の放射線の積極利用か
自然対流冷却時の冷却水・空気の流量は?
プールの中で緊急時冷却はどのように行われるのか
(大型軽水炉とSMRはどちらが良いかのシニア問に対し)地震に強い、台風などの災害時に独立分散は生き残りに有利なのでSMR
(高温ガス炉をどう思うかのシニア問に対し)高温ガス炉は日本の技術。開発を続けるべき
(何故軽水炉大国の米国がSMRを開発するのかのシニア問に対して)軽水炉は時代遅れの技術なので取り換えはSMR、大型軽水炉は審査や施工に時間がかかる。SMRはコストが抑えられる
SMRはいろいろなタイプがありカーボンニュートラルに適している
(SMRをやってみたいかのシニア質問に対して)自ら作ってみたい
最後に、学生の議事進行、取りまとめ・発表は見事で我々の学生時代と隔世の感を受けた。
また、司会学生からの、「考え方や考える上での姿勢が非常に勉強になりました」、「縁があったら技術者・研究者としての成長の姿を見て欲しい」との挨拶メールを戴き励みとなった。
3)講評
牧英夫
初めて学生諸君との対話会に出席いたしましたが、非常に楽しく、また、その重要性を痛感しました。開催にお骨折り戴いた皆様にお礼申し上げます。
私が工学部の学生だった60数年前と比較すると、モノづくりを取り巻く環境は極めて複雑になっています。その昔は品質と高いGDPだけを目指してモノづくりに集中すればよい環境でした。現在はSDGsの視点から何を造ればよいのかから始まって、品質は勿論、生産性、さらに、より少ない資源からより高い価値を産み出すモノづくりが求められるようになっています。
今回の対話会で学生諸君から出てきた質問の幅の広さ、質問の質、対話会での応答、対話会内容の纏め方等々、私共シニアの期待に十分応えてくれました。九工大の伝統とご指導の賜だと思います。
纏めの発表を聞いた感想ですが、シニアが自分達の意見を述べすぎていないか、その意見を学生諸君が素直に受け入れすぎていないか、という懸念です。答は出なくても、若い学生諸君の意見を聞くやり方もありそうな気がしました。
モノづくり企業にとって、技術者こそが宝物です。企業では大学のような教育はできません。そしてその基礎教育が極めて重要です。その基盤の上に立って企業ではモノづくり教育を積み上げます。何卒よろしくお願い致します。
齋藤 伸三
私は、グループAの皆さんと対話をさせて貰った訳ですが、今、他のグループの発表を聞いていても、皆さん事前にシニアから提出した回答を深く読み込んで、本日、参加されたことが分りました。従って、どのグループも対話が盛上がって大変有意義なものであったことと思います。
現在、原子力界は大変難しい状況にあり、我々シニアも将来の日本のエネルギー状況を慮って可能な限り原子力復活に努力しております。しかし、初代のシニアの会長が申されたように「シニア」は「死が近い」と解釈され、これからは皆さん方若い人に頑張って貰う以外ありません。どうか我が事として、日本のエネルギー、原子力利用を考えて頂ければ幸いです。
4)閉会の挨拶
対話会幹事:大野 崇
本日はどうもお疲れ様でした。
対話会幹事を務めます大野崇と申します。800㎞以上も離れているためなかなかお会いできませんでしたが、節目の10回目に、「機械知能工学研究系」の35名の多くの皆様と対話をする機会をいただき楽しみにしてまいりました。
九州工業大学について少し調べてみました。皆様の母校は歴史が旧く、今年で112年目を迎え、創業者は、日本の科学技術の基礎を築いた第二代東京帝国大学総長の山川健次郎、卒業生に竜巻研究で世界的権威を有する藤田哲也を排出したことを知りました。因みに、創業時の学校の本館は東京駅を設計した建築家の辰野金吾の手になるもので、藤田哲也博士記念会の会長は、今回の世話役の金氏顯氏が務めております。
今日は、こうした歴史を紡ぐ皆様のしっかりした考えや意見をお聞きし、技術者の世代はつながっているのだということを実感し嬉しく思いました。
我々も、半世紀前に原子力に足を踏み入れました。残念ながら、今は順風満帆というわけには参りませんが、日本にとってなくてはならないエネルギーです。今後、電力やメーカーに入って原子力に携わる方もおられると思いますが、国のエネルギーを担い一生の生業にするに値するというのが私の信念です。
私はメーカーに入りましたが、そこで感じたことは何事も「一所懸命」が大事であるということです。どんなに小さいことでも「一所懸命」に取り組むことが大事であるということです。
本日は、実のある活発な対話会を開催することができました。これも梅景先生、河部先生はじめ私共の世話役の金氏様の並々ならぬご尽力、ならびに学生諸君の熱意の賜物と感謝を申し上げます。ありがとうございました。
梅景俊彦教授
本日はSNWの皆様、長時間大変ありがとうございました。
グループ対話の最中にA~Fまで回りましたが、豊かな経験をお持ちのシニアの方との対話は大変迫力がありました。グループによって学生の人数にバラツキがありましたが、ファシリテータの上手な采配により、活発な対話を行うことができたと思います。エンジニアを目指す学生に生きた教育をする、またとない良い機会でした。原子力界を目指す人もいるのではないかと思います。基調講演は野村様と金氏様と2本立てのお話も貴重でした。また、重工メーカーでの技術者の働き方など、前例にないテーマもありました。
なお、日程の関係で就職活動と重複して参加人数が少なくなったのは残念でした。次回は開催時期をよく考えたいと思います。
本日は本当にありがとうございました。

3.参加の先生とシニアの感想

報告書参照

4.学生アンケート結果の概要

参加学生35人中、32人が回答、学部4年9人、修士1年16人、2年7人。
講演内容、対話内容にはどちらも30人が満足、2人が不満。不満の理由は「シニアが話し続けて脱線も多く対話しにくかった」は特定のシニアを指していると思われ、反省要。
対話の必要性に関し、「あまりない」が3人、「全くない」が2人。「全くない」の理由として「価値観の押し付けがある」との指摘は非常に問題。
原子力発電の必要性には29人が「必要で削減・撤退すべきでない」、2人が「必要だが早期に撤退」、一人がよくわからない。
自由意見の中に、「原子力発電の正しい知識が深まった」、「新たな知見も多かった」、「シニアから貴重な多くの意見を聞くことが出来た」、「シニアと話し発表する初めての機会は貴重な体験」、「学生の積極性が養われる良い企画」など大変好意的な意見が多かった。
しかし、その中に「放射性廃棄物の処分を未来に任せるのは問題」との指摘もあった。
カーボンニュートラルに関するアンケートでは、31人が「関心がある」、しかし30人が「友人同士では話ししない」。関心項目は多岐、生活や進路への影響の有無は半々、2050年CNの実現性は「実現できない」が半数、「良いところまで達成」と「分からない」が1/4づつ、エネルギー選択の重要性に関しては、「知っている」が25人、「勉強してもっと知りたい」が6人。
詳細は報告書参照

5.別添資料リスト

(報告書作成:金氏 顯 2022年2月12日)