学生とシニアの対話
in 静岡大学浜松キャンパス 学部生とシニアの対話会 2026年度(第1回)報告書
日本原子力学会シニアネットワーク連絡会(SNW)
世話役:森本泰臣
報告書作成:2026年7月3日
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エネルギー・環境への理解深化と学生の主体的な意見形成に向けた対話を実施
各テーマの中で学生の関心事の対話を中心にグループごとに対話会を実施した。
- 静岡大学対話会(前期浜松キャンパス)は、連続講義「エネルギーと環境」を受講する工学部、情報学部の学生61名 (学部3年生:56名、4年生:5名)および社会人2名を対象に実施した。
- 「エネルギーと環境」は、エネルギー、環境、セキュリティ、地球温暖化、原子力発電、放射性廃棄物等の幅広い分野にわたって講義が行われている。今回の対話会もその一環として開催されており、対話のテーマは講義に関連するテーマとした。
- グループ1:エネルギー政策・行政、グループ2:エネルギー・環境問題、グループ3:エネルギーセキュリティ、グループ4:核融合、グループ5および6:原子力発電、グループ7:原子力防災、グループ8:放射性廃棄物処理・処分の計7テーマを8グループに分け実施した。
- 対話では、対話概要のとりまとめと発表を行う学生を指名してスタートした。シニアはファシリテータとして、学生の対話を促進した。
- まず、学生から対話テーマに関してどのような関心があるのか、何を意見交換したいのか等を提案してもらい、その中からいくつかの関心事に絞って対話を行った。
- 学生は、関心事に関して自分の意見を述べ、相互の意見交換を行うことにより、自分の意見を明確にするとともに、問題の理解をより深める等、一定の成果をあげることができた。
1. 講演と対話会の概要
日時
- 基調講演:なし
- 対話会 :2026年7月3日 10:20から11:50
場所
- 静岡大学 浜松キャンパス
参加者
- 静岡大学世話役:学術院理学領域 大矢恭久准教授
- 参加学生:「エネルギーと環境」を受講する工学部、情報学部
3、4年生 75名(応募時点)
- 対話会 参加シニア: 7名(世話役含む)
2. 対話会の概要
- 静岡大学対話会(前期浜松キャンパス)は、連続講義「エネルギーと環境」を受講する工学部および情報学部の学部3,4年生 75名を対象に実施した。
- 講義「エネルギーと環境」は4月から7月まで16回にわたって、エネルギー、環境、セキュリティ、地球温暖化、原子力発電、放射性廃棄物等の幅広い講義が行われている。今回の対話会もその一環として開催されており、対話のテーマは講義に関連する以下の7テーマを8グループに分け実施した。テーマと担当は下表のとおり
- 対話では、対話概要のとりまとめと発表を行う学生を決め、シニアをファシリテータとして学生の対話を促進して実施した。
- 事前アンケートを通じて事前に興味、関心事を示してもらい、対話を通じて学生からさらなる関心事があるのか、何を意見交換したいのか等を提案。その中からテーマを決め、対話を行った。
- 学生は関心事に関して自分の意見を述べ、また他者の意見を聞き、自分の考えを明確にするとともにテーマを取巻く状況や課題等について理解をより深める等、一定の成果をあげることができた。
- 対話会テーマと各担当
- Gr.1:エネルギー政策・行政(担当:中江延男 (SNW)、学生9名、工学部 5号館 5-22)
- Gr.2:エネルギー・環境問題(担当:中江延男 (SNW)、学生9名、工学部 5号館 5-22)
- Gr.3:エネルギーセキュリティ(担当:田中治邦 (SNW)、学生8名、工学部 5号館 5-23)
- Gr.4:核融合(担当:森本泰臣 (SNW)、学生10名、工学部 2号館 2-22)
- Gr.5:原子力発電(担当:佐藤俊文 (SNW)、学生10名、工学部 2号館 2-22)
- Gr.6:原子力発電(担当:星野知彦 (SNW)、学生11名、情報学部 2号館 23)
- Gr.7:原子力防災(担当:曽佐 豊 (SNW)、学生8名、共通講義棟51)
- Gr.8:放射性廃棄物処理・処分(担当:湯佐泰久 (SNW)、学生10名、共通講義棟51)
3. 各グループのテーマと講評
(1) エネルギー政策・行政
(2) エネルギー・環境問題
- 参加者
- Gr 1 学生:9名
情報学部 情報学科(2)、工学部 機械工学科(4)、工学部 電気電子工学科(1)、情報学部 情報社会学科(2)
- Gr 2 学生:9名
工学部 機械工学科(5)、学部 電気電子工学科(1)、工学部 化学バイオ工学科(1)、工学部 数理システム工学科(2)
- シニア:1名 中江延男(都合により、Gr 1とGr 2を担当、まとめて対話会を実施した)
- 対話内容
対話テーマについて
- Gr 1の参加者から次の2点について対話するよう要請があった。
- 原子力の再稼働
- 今後の原子力政策の在り方と見通し
- Gr 2の参加者から次の2点について対話するよう要請があった。
- 高レベル放射性廃棄物の処理・処分問題
- 環境問題と整合するエネルギーの選択
- ファシリテータ中江のもと、それぞれのグループの対話概要まとめ役を学生にお願いし、自己紹介(本テーマを選択した理由や知りたい点等の情報を含む)後、対話会を進めた。
- 学生から出されたサブテーマ案(上記)を選定することについて参加した学生全員の合意を得たのち対話した。
- ①サブテーマ1 原子力の再稼働
- ②サブテーマ2 今後の原子力政策の在り方と見通し
- ③サブテーマ3 高レベル放射性廃棄物の処理・処分問題
- ④サブテーマ4 環境問題と整合するエネルギーの選択
対話の結果概要
- サブテーマ1
- 原子力の再稼働はエネルギーセキュリティ確保の観点から必要である。しかし,原子力発電には廃棄物など良いイメージを持たれておらず再稼働について理解が十分には得られていないため,その点についての改善が今後の課題となる。
- サブテーマ2
- そもそも「現在の原子力政策とは何か」が明確には理解されていないようであったので、中心となる政策は2030年原子力発電の全発電量に占める割合を20%にするということが現時点の原子力政策であり、それに関連する燃料加工、再処理、廃棄物処理等を進めることであると説明した。その結果を踏まえて対話がなされた。
- 原子力であっても燃料となるウランは海外からの輸入に頼らざるを得ない状況である。このような状況を打破する方策として高速炉があると思っている。しかし、「もんじゅ」は廃炉となってしまった。原子力政策としてこの点どうするのか心配である。
- この心配する学生に対して2050年頃を目途に高速炉を運転するという計画で進められていると説明したところ安心した様子であった。他の参加者も高速炉サイクルの重要性を理解したようであった。
- サブテーマ3
- 処分地が決まってない状況下で原子力発電推進するのは如何なものかといった意見が出された。これに対して、最初から最後まで全てか決まった状態でないと技術開発や技術導入をやるべきではないというのは再考の余地があるのではないでしょうかとコメントした。
- 納得が得られたようで、使用済み燃料の再処理をどのように進めていけばよいのかといった意見が出された。そもそも再処理技術は日本にはあるのかといった意見もあった。
- 一方で、原子力は使わない方が良いと思うが、現実は他の発電(火力・再エネ)だけでは電力は足りない。したがって、火力発電などとバランスしていくべきとの意見も出された。
- サブテーマ4
- そもそも環境問題とは、何が問題と考えるべきかについての対話から始まった。参加者全員が二酸化炭素の排出に伴う地球温暖化を問題視すべきであるとのことで意見の一致が見られた。
- そのためにどうすべきかについて学生が考えた結果は、化石燃料をあまり使わない方向に進むべきである、再生可能エネルギーや原子力発電を進めるのも良い方向である、さらには新しいエネルギー源を探求するべきではないか、といった意見が出された。
- シニア所感
- エネルギー政策やエネルギー・環境問題に対する学生の意識が高く、多くの情報を得たいという気持ちが伝わってきた。
- 問題の本質をしっかりと捉えて物事を考えるという習慣を身につけるようになると原子力のような社会問題とつながりの深いものを正しく評価していくためには必須であると感じた。
- 高レベル放射性廃棄物は危険だと一般の人は言います。では何が危険なのですかと参加した学生に聞いてみた。答えは、「放射線が危険だから」でした。しかし、廃棄物からの放射線の影響を受けるには多くのハードルがありそれらが全て破られない限り放射線が危険だという状況にはならないのではと話したら納得されたようであった。
(3) エネルギーセキュリティー
- 参加者
- 学生 :8名
工学部 機械工学科4年1名、3年4名、電気電子工学科3年1名
情報学部 情報科学科3年2名
- シニア:1名 田中治邦
- 対話内容
(1)最初に全員から質問を受けた(発言順。全て回答済み)
- Y君; 太陽光と風力は出力調整できない。どうするのか。
- U君; 放射性廃棄物の処分場の安全性は大丈夫か。
- A君; 欧州は原子力を減らす方向であると理解しているが、どうか。
- O君; 六ヶ所のHLW貯蔵は期限付きであるが、間に合うか。
- I君; 仏国の真似をすれば良いのではないか。
- K君; 廃棄物処分は隔離型と管理型のどちらを使うか。
- U君; 再エネが出力調整できないとすれば、どんな発電割合が良いか。
- S君; メタンハイドレードは使えないのか。
- F君; 2050年カーボンニュートラルは実現できるか。
- O君; CO2地下貯蔵は気体で行うのか。
(2)次にテーマを変えつつ皆の意見を聴取した
- 学生たちの意見を纏めると以下の通り
- 日本の周辺リスクに対してどうしたら良いか。
- エネルギーセキュリティを高めつつ、安易に攻められないよう防衛力を増強。
- 友好国を増やし、諸外国も巻き込み相手と対話。
- カーボンニュートラルをどう考えるか
- 2050年の実現は非現実的だが、出来る限りの対応が大切で、原子力、核融合など。
- 途上国への資金援助は余裕が無く、途上国は遅れても良いから自分の力でやるべき。
- 太陽光、風力をどう考えるか
- 環境を破壊してしまう点から全然エコでないし、斜面設置は土砂災害の可能性を高める。天気任せで安定供給源にならず、そもそも効率が低く土地が狭い日本には向いていないし、コストもかかり、再エネの効果について点検が必要。
- CO2の地下貯蔵をどう考えるか
- CO2回収運搬に多大なコストがかかり、長期的には漏出の可能性もあり、安全性に不安が残る諸刃の剣で、結局はその場しのぎに過ぎないのではないか。
- 火力発電をどうすべきか
- 割合は2~3割程度に減らし、調整電力として使用継続し完全に無くすことは不可能。
- メタンハイドレードを経済的に採掘する方法の研究は必要。
- 原子力発電をどう考えるか
- 浜岡原発を見学した際に安全性やテロ対策が万全で、放射性廃棄物の危険性も大きくないと知った。福島原発事故はあったが安全性は大きく改善されていることや自給率の観点から必須であり、日本で再エネに頼るのが難しいことなどを踏まえると再稼働させ、さらにはどんどん規模を増やし今後の主要発電方法になるべきで、推進は急務だし、先ずは最終処分地を早急に決定することが必要。
- 一方、福島原発事故のインパクトの強さからその導入は世論を二分し、多くの人に不安感が残っていることから、安全性の説明を各方面から繰り返し行っていくこと、小中高でも原子力の安全性を教えることなどが必要。
- シニア所感
- 理系のためか原子力についてある程度の知識を持って質問して来るので充実した対話を行うことができた。特に学生達の意見は時代の変化を極めて良く反映しており、地政学的リスクに対するエネルギーセキュリティの重要性の認識、再エネへの疑問、カーボンニュートラルへの冷めた目、火力への現実的な理解、原子力への圧倒的な推進意見には驚かされるものがあった。意見を記述して貰うことで、全員が自分の頭で考えることに成功したと感じている。この思考経験は将来どの分野に進もうとも確固たる意見として残ることに期待感が持てた。
(4) 核融合
- 参加者
- 学生:10名
工学部機械工学科 (2)、工学部電気電子工学科 (4)、工学部化学バイオ工学科 (2)、工学部数理システム工学科 (1)、情報学部情報科学科 (1)
- シニア:1名 森本泰臣
- 対話内容
- シニアおよび学生の自己紹介を実施。その中で各自の興味・疑問についても発現
- 対話テーマを「核融合は本当に次世代のエネルギーになれるか?」と選定
- シニアからあらかじめ準備しておいた資料を用いて、核融合の概要(政策、技術、今後の課題等)を説明。これらの情報も参考にしながら対話を進めた。
- ① 会話テーマに基づく自分の意見グループ内で共有する、② 他者の意見を聞き再度考える、③ 所感を含め、テーマに対する自分の中で得た結論をグループ内で共有する、との方法で実施。シニアは学生の意見に対して、技術的な解説や講評を行った。
- 初期意見では、核融合は将来的に次世代エネルギーになり得るという期待が多く示された。
- 肯定的な理由として、技術進歩への期待、安全性、核分裂に比べた廃棄物面の利点が挙げられた。
- 一方で、プラズマ制御、発電効率、エネルギー回収、材料、装置変形、安定運転、コストなどの課題も指摘された。
- 日本で導入する場合には、地震や大雨などの災害リスク、立地選定、サイト選定の難しさも課題として挙げられた。
- 他者の意見を聞いた後は、AIの進歩が核融合の実現を加速する可能性に注目する意見が増えた。
- 当初は否定的だった学生の中にも、長期的には可能性がある、思っていたより早く実現するかもしれないと考えを変化させた例があった。
- 一方で、AIだけでは材料開発やリアルタイム計測などの課題を解決できない可能性があるとの慎重な意見も残った。
- 最終的に、核融合は将来的に有望であるが、短期的な解決策ではなく、技術開発、安全性、経済性、社会実装、他電源との併用を含めて長期的に考えるべき技術であるという理解が深まった。
- シニア所感
- 今回の対話では、学生が核融合を単なる先端技術としてではなく、技術課題、経済性、安全性、社会実装まで含めて多面的に考えていたことが印象的であった。
- また、議論を通じて当初の意見を見直し、他者の考えを踏まえて自らの考えを深めていく姿勢が見られた。特にAIの進歩と核融合開発の関係について活発な議論が行われ、多くの学生が将来の可能性を前向きに捉えるようになった。
- 一方で、AIだけでは解決できない課題や、材料・安全性・社会受容などの現実的な課題にも目が向けられており、技術を冷静かつ客観的に評価する視点が感じられた。
- 今回の対話を通じて、学生がエネルギーの将来について主体的に考え、多様な視点から議論する良い機会になったと感じた。将来を担う世代の柔軟な発想と探究心に大いに期待したい。
(5) 原子力発電
- 参加者
- 学生:9名(1名欠席)
工学部 機械工学科3年 4名、機械工学科M1 1名、電気電子工学科3年 1名、化学バイオ工学科3年 2名、情報学部 行動情報学科3年 1名
- シニア:1名 佐藤俊文
- 対話内容
- 最初に学生とシニアの自己紹介を行った。
- 佐藤が準備した資料を元に、原子力発電の状況、課題を説明した。
- 司会、書記を募り、グループ討議を開始した。
- 対話テーマ:「原子力発電を使うならどう使うのか?」
- サブテーマ1:「立地について」
- 立地では、南海トラフ、富士山の噴火等の地政学的リスクを考慮すべき
- 日本は圧力容器等を船で運ぶために海辺に作っているが、海外では陸送も可能であり、川を利用するなど、大陸内に建設される場合が多い。
- 原子力発電所は、地域にとってリスクがある一方で、経済効果もある。
- サブテーマ2:「安全対策について」
- 福島第一原発事故のフィードバックとして、地震・津波対策、電源対策、冷却対策、水素爆発防止、放射性物質拡散抑制、緊急時対応拠点などの安全対策を実施。
- 加振試験などかなりのマージンを確保して実施している。
- 全体の感想
- 自分一人では気づかないこと、新たな知識を得られて有意義だった。
- 報道では悪い情報が多いため、安全対策等の客観的な情報を得られて良かった。
- シニア所感
- 司会と書記の立候補者が出て、積極的な議論が進められてよかった。
- 正確な情報を伝えるように努めたが、実際に記録を見てみると、うまく伝わっていないことが分かってショックだった。今後は更に正確に伝えるように努力したい。
(6) 原子力発電
- 参加者
- 学生:9名
工学部 機械工学科3年6名、電気電子工学科3年1名、数理システム科2名
- シニア:1名 星野知彦
- 対話内容
- シニアより対話の進め方について説明し、レポート作成者が互選された後、自己紹介と話し合いたいサブテーマとその理由について各自発表した。
- 原子力発電の経済性、安全性、新規立地の課題、環境への負荷、廃棄物の最終処分問題など様々なサブテーマが提案されたが、それらの中から非常に独創的である「原子力発電を利用した自動車は実現できるか?」を選定した。
(補足:浜松市は自動車メーカースズキの本拠地である。)
- シニアから議論の参考情報として以下を紹介した。その後、学生はこれらも参考にしながら議論を進めた。
- 現在開発中の小型モジュール炉(SMR)は小型で工場生産が可能な原子炉で、安全性に優れ、発電だけでなく地域の熱供給や水素製造など多目的利用も目指していること。
- 原子力を動力源とする船や潜水艦は既に実用化されていること。
- 欧州の一部地域ではSMRによる熱供給を検討中で、化石燃料の依存度を減らし人口密集地での原子力利用という点で原子力自動車と共通点がありそう。
- ロールスロイスは自動車の他潜水艦用原子炉の製造実績がありSMRも開発中。
- まず、開発する意義の有無を確認するため期待されるメリットを抽出した。
- ガソリンと違い僅かな燃料で長期間運転でき実質燃料補給不要。
- 走行時のCO₂排出がなく、地球温暖化対策に貢献。
- モバイルの特性を活かし、災害時の非常用電源としての活躍を期待。
- 続いて、解決すべき課題について抽出した。(括弧内は課題に対する意見等)
- 事故リスクの考え方を整理する必要がある。(現在の交通事故リスクと同等を目指す、確率が低くても放射能漏れはゼロにすべき、など)
- 原子炉は起動停止に時間を要し、急速な出力変化が苦手。使いたい時に使えるような工夫が必要。(原子炉を停止させず待機状態にしておけばよい)
- 強固な原子炉容器、放射線遮へい、安全システムなどの車体へのコンパクトな収納設計が必要。(一般車両に適用する前に大型トレーナーや戦車などへの適用から考えるのがよい、など)
- 隣の家の駐車場に原子力自動車があることに対する不安感の払拭が必要。(原子力発電所の理解促進活動と同じだが、自動車のメリットは住民が直接的に享受できるので理解得やすいのでは?)
- 原子力発電所は様々な分野の技術者で運転される複雑な巨大技術であるが、エンジンの仕組みがわからなくても誰でもガソリン自動車を運転できるように、原子炉や放射線がわからなくても運転できるような設計が必要。
- 最後に、これまでの議論を以下の通り取りまとめた。
- 原子力自動車は環境や経済性の面で魅力があり、開発する意義はある。課題はあるものの、現在の原子力発電所が抱える課題の延長であり、将来的に実現しうると考えられる。
- ただし、ガソリン自動車のように一足飛びに普及を目指すのではなく、例えば、ガソリンスタンドのような機能を持つ超小型の原子力発電による電気自動車の電力補給所を設け、住民が徐々に受入れられるようステップを踏んでいくのが現実的な選択肢と考える。
- シニア所感
- 現状の原子力発電の抱える課題に関する対話ではなく、理系学生らしい将来に目を向けたテーマで、シニアとしても想像を働かせながらの対話を楽しむことができた。
- 実現性は未知数であるが、学生が抽出した姿・形のない原子力自動車のメリットや課題は、現在の原子力発電のそれらと多くの共通点があることは興味深い。(運転特性、CO2排出ゼロ、事故リスク、放射能、理解促進活動、巨大システム技術など)
- 自動車も原子炉も製造しているロールスロイス社は原子力自動車実現に最も近い企業かもしれない。静岡大学工学部と地元自動車メーカースズキとの連携による共同研究・開発も夢がある。
(7) 原子力防災
- 参加者
- 学生:6名
機械工学科 1名、電気電子工学科 2名、電子物質科学科 3名
- シニア:1名 曽佐 豊
- 対話内容
- ファシリテータ自己紹介の後、学生の自己紹介と発表者と記録担当を決め、各人に対話会で話したいテーマについて発表してもらい、対話を進めた。
- 対話のきっかけとして、参加者から事前質問があった、福島事故後の原子力災害対策及び原子力発電利用計画(第7次エネルギー基本計画の概要)をファシリテータが口頭で簡単に説明した。
- テーマ1 原子力災害対策についての主な議論
- 福島事故を受けて規制基準が強化され、津波対策、電源確保、フィルターベントなど原子力発電所の安全性が高まったとの認識
- それでも原子力発電所の近くに住みたくない。←安全は客観的リスクを減らす(ゼロにはならない)ことで高めることができるが、安心(不安)は感情的、主観的なもので安全と安心は別物とコメント。
- 原子力災害発生に備えて、避難計画が策定され訓練も実施されていることを理解したが、能登地震のような複合災害時に避難所が機能するか心配
- バス等で避難場所へ移動が計画されているが、車で各自移動して渋滞しないか
- テーマ2 原子力発電を増やすには
- 原子力発電の利用を拡大するために、立地地域の理解が必要で、委員会による検討、アンケート調査、対話会など実施している(柏崎の再稼働時)
- 新規立地として、住民のいない離島に発電所は作れないか?送電設備など経済性が問題。やはり今発電所があるサイトで建て替えるのが現実的
- 住民が安心できる発電所の運用実績積み重ね、信頼を得ることが大事
- 11:25 対話成果のまとめと発表
- 11:45~事務連絡とアンケート回答依頼、後片付け
- シニア所感
- 今回は参加者の自主的な発言が少ないため席順に発言してもらった。成果報告を見ると説明した内容が正しく理解されておらず、説明の難しさを感じた。
(8) 放射性廃棄物処理・処分
- 参加者
- 学生:9名
工学部の3年生
化学バイオ工学科1名、機械工学科3名、電気電子工学科3名、数理システム工学科2名
- シニア:1名 湯佐泰久
- 対話内容
- (テーマ選択の理由や知りたい点などの説明も含む)自己紹介の後、対話会を進めた。学生の関心は「放射性廃棄物処理・処分の問題は重要であり、もっと知りたい」とのことであった。
- シニアの方から、①放射性廃棄物には低レベルや高レベルなど様々な廃棄物があること、②処理と処分は異なる事、を説明した、今回は、議論の発散を避けるため、使用済み核燃料の再処理で発生する高レベル放射性廃棄物に特化することで皆の賛同をえた。処分についても管理と隔離があり、後者には宇宙処分、海洋処分、氷床処分、地層処分があり、それらの長所短所について簡単に説明した。
- サブテーマ1は「我が国での地層処分の安全性」、サブテーマ2は「地層処分プロセスと宇宙処分との比較」として、議論した。
- 対話の概要は以下のとおりである。
- サブテーマ1「我が国での地層処分の安全性」
- 地層処分地選定について地元が受け入れるか、との疑問がでた。シニアからは国が押し付けるものではなく、調査の3段階プロセス ➀文献調査⇒②概要調査⇒➂精密調査ごとに地元の了解を得ないと先に進めないこと、すなわち可逆性を、さらに、再取り出し性について説明したら、理解したようであった。
- サブテーマ2は地層処分プロセスと宇宙処分との比較
- 宇宙処分についてその長所短所について意見交換した。賛成意見として、成功したら、究極の地球圏からの離脱であり将来世代の負担が解消する、との意見があった。
- 一方、打上失敗時には地球全体や広範囲の汚染リスクがあること、宇宙で破壊されるとスペースデブリ問題などの宇宙開発の妨げが生じること、という反対する意見があった。将来、もし、完全で安全な宇宙への放出方法が成立した場合はともかく、現段階では地層処分の方が好ましい、との意見に落ち着いた。
- シニア所感
- この問題に対する意識が高く、知識を得たいという学生の気持ちが伝わってきた。シニアからは、まずは、様々な資料などで知識を入手する。そして、更に、具体的に検討したり調べたりするとよいと発言した。
- 高レベル放射性廃棄物の地層処分について「日本は地震が多く、危険」の意見があり、議論した。地表と異なり、地下は揺れない事、地下水の変化もほとんどないことの研究結果を説明したら、納得したようであった。
- 廃棄物の種類、対策とそれらの表現にはまだ整理して理解していないようで、シニアから少し説明した。処理と処分、処分方法については管理と隔離との違い、なども説明し、一応理解したようであったが、PPTの説明文には混乱した表現となっていた。理解には時間がかかることを痛感した。
4.学生アンケート結果の概要
- (1)参加学生について
- 対話会には、連続講義「エネルギーと環境」を受講する静岡大学浜松キャンパスの工学部および情報学部の学生が参加し、アンケート回答数は62名、参加者69名に対する回収率は約90%であった。
- 回答者は工学部が中心であり、情報学部の学生も含まれる。学年・文理区分等についてはフォーム入力項目の不備があり、一部の集計には正確性に留意が必要である。
- (2)対話会について
- 対話内容の満足度は、「とても満足」が66.7%、「ある程度満足」が25.4%であり、9割を超える学生が肯定的に評価した。
- 事前に対話したいと思っていた内容についても、「十分対話できた」が49.2%、「ある程度対話できた」が39.7%であり、学生の期待に概ね応える内容であった。
- 対話で得られたものとしては、「新しい知見」が59件と最も多く、シニアの現場経験や専門的知見に触れることが学生にとって大きな学習効果となった。
- 学生とシニアの対話の必要性については、「非常にある」が68.8%、「ややある」が31.3%で、否定的な回答は見られなかった。自由記述では、現場経験、専門家による疑問解消、多様な視点の獲得が高く評価された。
- 友人や後輩への参加勧奨については、「勧めたいと思う」が87.5%であり、対話会を有意義な学習機会として受け止めた学生が多かった。一方で、関心の有無や議論形式への向き不向きを踏まえた慎重な意見も一部見られた。
- (3)放射線・エネルギー・環境に関する意識調査について
- 放射線・放射能については、「日常的に浴びており、一定のレベルまでは過度に恐れる必要はない」とする回答が81.3%であり、危険性を認識しつつも、量や条件を踏まえて理解する姿勢が見られた。
- 放射線・放射能の有用性については、医療等で利用され生活に有用であるとの回答が96.9%を占め、放射線利用の社会的価値は広く認識されていた。
- 原子力発電については、再稼働を進めるべきとの回答が62.5%で最も多く、2030年目標の達成や新増設・リプレースを含めると、原子力の活用に前向きな回答が多数を占めた。
- 再生可能エネルギーについても、利用拡大を進めるべきとの回答が68.8%と高く、学生は原子力と再生可能エネルギーを対立的にではなく、現実的な電源の組み合わせとして捉える傾向が見られた。
- 脱炭素に向けた電源構成では、「化石燃料発電を最小とし、原子力発電と再生可能エネルギーを組み合わせる」考えが48.4%で最多であり、複数電源のバランスを重視する認識が示された。
- カーボンニュートラルへの関心は高く、「大いにある」と「少しある」を合わせてほぼ全員が関心を示した。一方で、2050年脱炭素社会の実現可能性については慎重な見方も多く、関心の高さと実現性への懸念が併存していた。
- 高レベル放射性廃棄物の地層処分については、約8割が関心を示した。居住地域や周辺地域で最終処分場計画が起きた場合は、「反対しないと思う」が48.4%、「分からない」が28.1%であり、技術的安全性や処分地選定プロセスへの理解ニーズが高いことがうかがえる。
- (4)全体の感想・意見
- 自由記述では、「有意義だった」「楽しく学べた」「新しい知見を得られた」「疑問を解決できた」といった肯定的な意見が多数を占めた。
- 特に、シニアの経験に基づく話、学生同士の意見交換、少人数で質問しやすい雰囲気が高く評価されており、講義だけでは得にくい実務的・現実的な視点に触れる機会となった。
- 原子力発電、核融合、放射性廃棄物、カーボンニュートラルなどについて、学生が自分の考えを発言し、他者の意見を聞きながら考えを深める契機になった。
- 一方で、「質問時間が欲しかった」「もっと技術的な話を聞きたかった」「もう少し話を聞く時間があるとよい」「学生間でうまく話し合えなかった」といった運営面の課題も挙げられた。今後は、時間配分、グループ人数、テーマとシニア専門性の整合、事前の問いの整理などを改善することで、対話会の学習効果をさらに高められると考えられる。
5.別添資料リスト
- 事後アンケート結果報告書
(報告書作成:2026年7月23日)