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部会長挨拶
絶滅危惧種から未来を切り拓く

核燃料部会長 黒﨑 健
(京都大学)
(注)本文章は部会報「核燃料」No.61-2 2026年7月発行の巻頭言で私が述べたものをHPの挨拶用に端的にまとめなおしたものです。
「核燃料分野は絶滅危惧種である。」
部会長就任にあたり、あえてこのような刺激的な言葉から書き始めたいと思います。もちろん、核燃料という技術がなくなるという意味ではありません。しかし、大学において核燃料を専門とする教育・研究基盤という観点では、危機的な状況にあることは間違いありません。現在、国内で核燃料そのものを対象として研究を続けている大学の研究室は、片手で数えられるほどです。
その一方で、原子力を取り巻く環境は大きく変わりつつあります。福島第一原子力発電所事故から15年が経過し、第7次エネルギー基本計画では「原子力の最大限活用」が明確に位置付けられました。エネルギー安全保障やGX、AIの普及に伴う電力需要の増大などを背景に、原子力には新たな追い風が吹いています。
この流れを持続的な発展につなげるために重要なのが、人材育成と研究開発です。しかし核燃料分野では、核燃料が国際規制物資であると同時に放射性物質でもあるという特殊性から、研究・教育を行うための環境を維持すること自体が容易ではありません。
研究開発についても、核燃料分野では「ゼロから一を生み出す」よりも、「95を96へと高める」ような着実な研究が多く、その重要性に比べて新規性や独創性が見えにくいという側面があります。若い研究者が魅力を感じ、挑戦できる研究領域をいかにつくるかが重要です。
しかし、私はこの分野に大きな可能性も感じています。
人材については、福島第一原子力発電所事故を経験した世代の中に、「自分たちの世代で原子力の課題を解決したい」という強い使命感を持ってこの分野を志す若者がいます。燃料デブリの取り出しに代表される、世界でも前例のない長期的な国家プロジェクトは、こうした若者の志を受け止める重要な舞台となるでしょう。
研究についても、AI・データサイエンスやマテリアルズ・インフォマティクスという新しい研究手法が大きな可能性を開きつつあります。核燃料そのものを扱うには高度な施設が必要ですが、これらの手法は必ずしも特殊な研究環境を必要とせず、アイデアと知識から新しい研究を切り拓くことができます。実際、私の研究室でもマテリアルズ・インフォマティクスを志望する学生が増えています。
「絶滅危惧種」という言葉を、悲観のために使いたいのではありません。現状を直視し、そこから未来を切り拓くための言葉として捉えています。
人を育て、新しい研究を生み、次の世代へ技術をつないでいく。核燃料部会がその中心となり、核燃料分野を「絶滅危惧種」から「未来を切り拓く分野」へと変えていけるよう、皆様とともに取り組んでまいりたいと思います。
(2026年9月16日記)
