学生とシニアの「対話イン山形2010」報告書

平成22年8月31日

SNW運営委員 松永一郎・坪谷隆夫

s-集合写真(山形大)

1.            目的・概要

2005年度から続けている「学生とシニアの対話」活動の一環として、山形大学において学生との対話会を実施した。原子力学会シニア連絡会(SNW)による学生とシニアとの対話は今年度2回目、通算44回目である。

山形大学では4年前から教養課程の1年生を対象にして上期に15コマの放射線教育(担当:齋藤和男理学部教授)を実施している。その内、1コマを原子力の原理、もう1コマを高レベル放射性廃棄物に充て、齋藤教授と以前ガラス封じ込め研究を実施しておられた柳澤教授が担当していた。今年初めに、齋藤伸三SNW運営委員(当時、現副会長)から結城章夫学長を通じて理工学部系学生とシニアの対話会の開催を打診した。その結果、当該講座の13〜15コマ目をそれに充てること、13,14コマ目で「原子力発電」と「高レベル廃棄物」に関する講義をシニアの専門家から受けること、そしてその後に対話会を開催するのが適当であるとの齋藤和男教授のご判断により、山形大学で初の「学生とシニアの「対話イン山形2010」」を実施することになった。

 

2.            対話の実施

(1)       日時 平成22年7月17日() 10時から17時20分 

前日、7月16日18時30分から結城章夫学長の参加の下に山形大教員(3名)と参加シニア(9名)で懇親会を開催した。

(2)       場所 山形大学理学部大講義室、マルチメディア室他(小白川キャンパス)

(3)       参加者(添付資料1参照)

大学側 学生:理学部25名、工学部7名、農学部15名の教養課程1年生 47名

教官:斎藤和男教授(理学部地球環境学科)、小島典夫教授(研究プロジェクト戦略室)、乾技官

なお、授業および対話会には結城章夫学長が終始参加された。

シニア(敬称略)14名

SNW:齋藤伸三、竹内哲夫、西村章、小川博巳、加藤洋明、松永一郎、坪谷隆夫

SNW東北:菊地新喜、早坂明夫、岸 昭正、高橋弘道、馬場 礎、菅原剛彦、高橋謙治

(4)       プログラム

9:45       集合(大講義室) 総合司会:齋藤和男教授

10:00〜10:20 開会の挨拶   齋藤和男教授、齋藤伸三SNW副会長

シニア紹介(松永一郎SNW対話担当幹事)

10:20〜11:30 講義1. 原子力発電      齋藤伸三氏

11:30〜12:40 講義2. 高レベル廃棄物    坪谷隆夫氏

12:40〜12:45 対話方式説明−ファシリテーションについて−

(小川博巳SNW運営委員)

12:45〜13:45 昼食(グループ別)

13:45〜16:20 対話、PPTへまとめ   (各部屋に分かれて)

16:20〜16:30 休憩、大講義室へ移動

16:30〜17:10 発表

17:10〜17:25 講評1.竹内哲夫SNW前会長

            講評2.菅原剛彦SNW東北代表幹事

17:25〜17:30 閉会の挨拶 齋藤和男教授

(注)齋藤、坪谷両氏は山形大学の招聘講師の立場で参加

(5)       実施内容

@            開催趣旨(9時45分-10時)(斎藤和男教授)

・大講義室に学生およびシニアが全員集合した後、斎藤教授が開催趣旨を説明した。

A            開会挨拶およびシニア紹介(10時-10時20分)

(齋藤伸三SNW副会長および松永一郎SNW対話担当幹事)

      SNWを代表して斎藤副会長が、原子力学会SNW連絡会が実施している学生との対話の経緯などを参加学生に紹介すると共に山形大学関係者に謝意を表した。

      松永幹事からSNWから7名、SNW東北から参加した7名のシニアを紹介した。

B            講義1(10時20分−11時30分) 原子力発電 斎藤伸三氏(添付資料2参照)

C            講義2(11時30分−12時40分) 高レベル放射性廃棄物 坪谷隆夫氏(添付資料3 参照)

D            対話方式の説明(12時40分−12時45分)

      小川博巳SNW運営委員から、対話は事前アンケートにおける学生の希望でグループ分けし、グループごとにSNW対話イン山形2010ファシリテーション要領」(添付資料4)に基づいてファシリテーション方式で実施し、グループにはシニアを2名、うち1名はファシリテーター(FT)として対話を実りあるものにしたい旨説明した。

E            グループ対話と発表資料のまとめ(13時45分−16時20分)(添付資料8 参照)

      各グループごとにシニアと学生は昼食を共にした。シニアは、グループメンバーの緊張をほぐすよう心がけた。昼食後、割り当てられていた講義室などにおいて予め配置されたテーブルに着席した後グループの学生は、SNW ファシリテーション要領にそってシニアから事前に配布されたA4 紙に、今日の対話に期待すること、質問・疑問等を記入した。

      対話に期待することは、原子力発電の必要性・安全性、放射性廃棄物の管理など原子力について理解を増したいなど、原子力について学ぶ姿勢と共に対話会を通じて自分と異なる意見を聞きたいとする学生も多かった。

      質問・疑問は、午前中の講義の内容と重複するものもあったが、以下のようにグループのテーマに限定されることなく、また、技術に限定されることなく学生が抱いている幅広い項目で対話が進んだことが分かる。

グループ1 原子力発電の原理(原子力の必要性)加藤洋明氏(FT)、菊地新喜氏

原子炉の理論、仕組み、ウラン燃料は十分か、日本の原発は安全か、高レベル廃棄物の処理場所は在るか、火力、原子力はどちらが地球に優しいか、自分たちのやるべきことはなど。また、原子力発電について一般の住民がほとんど知らない事が話題となり、大学生が在学中に得た知識を、住民の方々に説明する必要があるとの意見がだされたが、その方法について今回は時間の関係から検討できず、今後の課題として残った。

グループ2 原子力発電の安全性(世界と日本の動向) 小川博巳氏(FT)、高橋謙治氏

プルトニウムの中性子吸収特性の温度依存性、放射性同位元素の放射線レベルとその持続性、万全な安全対策が取られているのに事故は起こり得るのか、事故防止・ミス防止対策、福島原発での金属ワレの報道の事実関係、原子力発電所がハッカー・クラッカーに攻撃される可能性、日本人の抱く放射能に対する必要以上の恐怖心への対策、世界と日本の原子力発電の動向、外国での国民感情・認識、就職に向けた準備。

グループ3 原子力と環境問題(他のエネルギーと原子力) 早坂明夫氏(FT)、竹内哲夫氏

環境問題、チェルノブイリ事故後の環境、原子力発電を選択する理由、放射性廃棄物処理の安全性、核融合研究の動向、原発周辺住民の声。

時間との兼ね合いで対話の対象を絞ることにし、すべての項目は環境問題に関連しているということで、環境問題を対話の中心に据えた。

グループ4 未来の原子力発電(原子力と環境問題) 西村 章氏(FT)、岸 昭正氏

現場で働いている人の声、例えば六ヶ所の施設の問題点・改善点、開発していたからこそ気がつく特徴・欠点、もんじゅのNa漏れの理由、廃炉における炉内水の処理、核融合の将来、将来の発電は今の技術が大幅に変わってゆくか、発展途上国に対してできることは、何故この職に就いたか。

学生からの質問は、原子力や放射線の基本的な事よりも、自分たちで勉強してある程度理解した上で更に実態がどうなのかを知りたいという感じのものが多かった。

グループ5 放射性廃棄物(原子力発電の安全性) 坪谷隆夫氏(FT)、馬場 礎氏

原子力発電の世界の規模、化石に代わるエネルギー源、放射線影響、増え続ける廃棄物によって日本で埋設する場所がなくなるか、最終施設の場所、処分場の大きさ、「廃棄物を根絶」できるかなど

グループ6 放射線の性質と利用(食品や医療、材料開発) 菅原剛彦氏(FT)、齋藤伸三氏

食品や医療,材料開発の放射線の利用など。

放射線利用と国民の理解についての対話が及んだ。

グループ7 原子力に関わる仕事(核燃料サイクル) 松永一郎氏(FT)、高橋弘道氏

放射線に関係する仕事にどのようなものがあるのか、原子力の仕事に着くのに家族の理解はあったか、女性の活躍できる場、プルサーマルについて、核燃料サイクルについて、核兵器開発、何故原子力を進めるのかなど。

発表資料のまとめは、各グループにおいて有志の学生によってそれぞれPPT4-7枚程度に整理された。まとめに20分程度を要しているグループが見られた。

F            グループ発表(16時30分−17時10分)(添付資料5参照)

7グループに分かれて実施した対話の結果をそれぞれのグループから発表した。それぞれ4−7枚程度のPPTにまとめていた。発表に際しては、「自分たちならこうしたい」との考えをまとめさせたが、以下印象的な記述にふれたい。

      原子力発電や放射線などに対して国民の理解が不足している

      原子力発電や放射線についてむやみに怖がらず正しく理解していきたい

      地球温暖化についても二酸化炭素ガスだけが原因だと決めつけず学んでいきたい

      メディアに惑わされることがない正しい知識を身につけていきたい。そのために海外の情報を入手する能力も持ちたい

G            指導講評(17時10分−17時25分)

竹内哲夫前SNW会長および菅原剛彦SNW東北代表幹事から指導講評を行った。

      まだ、就職活動の問題がなく、異なる学部から、明るく屈託のない清新な1年生と有意義な対話ができた

      直ぐ答案を書く、偏差値至上主義の教育で育てられ、ディベートになれていない姿が自分の参加したグループ3で現れた。

      ナイーブで純真な諸君が、これからも発展するように祈念する(竹内哲夫氏)

      自分たちも勉強できた。結城章夫学長および斎藤和男先生の尽力の賜と感謝したい

      今、10代の学生諸君は20年後社会の中核として活躍することになる。その頃には新興国のエネルギー需要はより現実のものとなっていよう

      本日の講義で原子力発電や高レベル放射性廃棄物の話が聞けたが、2050年ぐらいにはFBRやその先の核融合がみえているだろう。諸君達には子孫達に伝えていく責任と機会がある。

      皆さんの夢と希望をかなえる機会をあたえてくれるこのような国家的事業をにらんでこれからも勉学に励んで欲しい(菅原剛彦氏)。・

H            閉会挨拶(17時25分−17時30分)

斎藤和男教授が女川発電所見学も視野に入れて来年も開催したい旨の閉会挨拶を行った。

 

3.    学生事前アンケート結果の概要(添付資料6参照)

提出者46名からのアンケートを分類し、従来の質問−回答で対応できるものと、新規に回答を作るものに分け、21項目について回答書を作成した。なお、日本原子力学会シニアネットワーク連絡会HPの「対話報告書―よくある質問への回答」に掲載している。 

 

4.    学生事後アンケート結果の概要(添付資料7参照)

47名の参加者のうち提出者46名のアンケート結果(回収率98%)を分類し円形グラフ化するなど対話会の成果として活用できる形に整理した。

結果概要

希望進路は 就職(希望未定):14%進学:59無回答:17

@     講演内容

講演1.とても満足:54%  ある程度満足:46%  やや不満:0%  不満0%

講演2.とても満足:50%  ある程度満足:46%  やや不満:4%  不満0%

殆どの学生が満足している。

A     対話内容

とても満足:65% ある程度満足:31% やや不満:4%  

殆どの学生が満足している。

B     事前に聞きたいことが聞けたか

十分に聞けた:28% 聞けた46% あまり聞けなかった:22% 全く聞けなかった:4%

十分に聞けた74%であったが、26%はあまり聞けなかったようである。

C     対話の必要性 

非常にある:70%  ある:30%  あまりない0%  ない0%

殆どすべての学生が必要性を感じている。

D     対話へ 再度対話に参加したいか

参加したい:9% もっと知識を増やしてから参加したい:65% もうよい:15%  その他、無回答11%

殆どの学生がもっと知識を増やしてから参加したいと回答

E     エネルギー危機に対する認識の変化

大いに変化:13% 変化した:43% あまり変化せず:26% 変化せず:9%  無回答:9%

変化した者が56%いるが、しない者も35%いる。

これはすでにエネルギー危機を認識している者が多くなっているためではないかとおもわれる

F     原子力に対するイメージの変化

大いに変化:41% 変化した:41% あまり変化せず:4% 変化せず:7%

無回答:7%

82%の者は変化した。原子力の話をここまで深く聞くのは初めての様であり、そのために認識が変わったものと思われる

G     将来放射線・原子力関係の仕事に就きたいか

    就きたい:9%  できれば就きたい:37% あまり就きたくない:32%

    就きたくない:11% 無回答:11%

就きたいというものが46%。あまり就きたくないのが43%とほぼ半々

対話に出て、就きたくなったものがかなりある。就きたくない理由は「他にしたい仕事がある」など。

H     原子力に対する関心の低い10代、20代の若年層に対する原子力広報活動はどんな方法が良いか(記述式)。省略

I     本企画をとおしての全体の感想・意見(記述式)

とても楽しかった、非常に勉強になった。もっとシニアと議論したい。という意見が多い

 

5.     学生の感想

「対話イン山形2010」が斎藤和男先生の授業の一環として実施されたことから、対話後に先生が提出させた学生のレポートからは、今回の対話を学生が真剣に取り組んだことが伺われる。また、極めて新鮮な感想が多く見受けられた。ここに、特にSNWとの対話を中心に記述された学生の感想を引用させて頂き掲載する。

「シニアの方達との対話を通して、放射線・原子力を今までとは違った観点からとらえることができて非常に有意義であった。それと同時に自分自身がもっと様々な分野の学問を学ばなければならないと痛切に感じた。

シニアの方々は原子力の基本的な内容から発電のメカニズム・放射性廃棄物に至るまで多岐にわたる説明をしてくださり、今まで学んだ分野の確認をするとともに、パンフレットを読んだだけでは理解しきれなかった内容をきちんと理解することが出来た。原子力発電は個人的には難しい分野の話のように思われて、取っつきにくい印象を抱いていたのだが、話が進むにつれてそういった感情もなくなっていき、原子力発電は現代において必要不可欠なもの、身近なものであるという認識に変わっていった。特に原子力発電が発電過程で二酸化炭素や硫黄酸化物などを排出しないということと、発電原価が他の方法に比べても最も安価であるということから、現代社会に適合した発電法であると知り、驚いた。

また、その後行われたグループ別のファシリテーションでは、専門的な観点から私たちの疑問に答えていただくことが出来て、多くのものを得ることが出来たと感じている。私のグループでは原子力発電そのものの安全性と、世界的に見た原子力発電の動向について扱った。学生自身も学部や原子力についての知識量もバラバラであり、そこにシニアの方が加わることで、全く異なった視点の意見が生まれて面白かった。例えば、原子力発電所の建設に関わったお話であるとか実際に稼働していく中での工夫などは現場にいらっしゃった方からしか聞けない貴重なものであると感じたし、ただ単に発電のメカニズムだけではなく、その裏でどのような取り組みが行われてきたかというのは興味深いものであった。グループ内で出た話の中では特に、日本と外国との原子力に対する認識の違いが印象に残るものである。日本人の放射線アレルギーは講義の中でも扱ったものでもあるが、海外の原子力発電に対するメディアの報道などを見ているうちに、日本人はいかに情報が乏しい中で原子力と向き合っているのかということが浮きぼりになった。日本ほど原子力・放射線といったキーワードが一人歩きしている国はない。この講義を受け始める前の私自身もそうであったように、何も知らないで忌み嫌う節がある。しかし、それでは何も進まない。シニアの方達が話していたように、正しい知識を教育・マスメディアから得ることによって、原子力を初めて受け入れることになるのである。正しい情報を正しい解釈で理解することこそ、今の日本人に必要とされていることであり、それによって日本と原子力の関係は発展していくはずである」。

6.    シニアの感想(添付資料8参照)

@ 全体 全体的印象として,対話実現にむけて斎藤伸三副会長の働きかけに対し,山形大学結城章夫学長が前向きに応じ,学長の意向を汲んだ斎藤和男教授が当日及び前後を含めキチンと采配していただいたので,極めて円滑に有意義な対話交流が出来た。来年度以降の道筋が出来たように思われる。なお,今回の学生は教養課程の中で斎藤教授の教課をとった理学,農学,工学各学部の1年生47名で,将来の希望はあるにしても就活が迫っていないので,企業が求める人材像,能力(英語の能力の必要性は出た)に関して,あるいは,企業の人材育成,配属の考え方などの議論は出なかった。

大学1年生ながら,皆さんしっかりしており,レベルの高いプレゼンテーションや難解な問題にキチンと向き合おうとする意欲的な姿勢を感じた。

A 各グループからの感想

      グループ1 初めての大学であったのと、学生が全部1年生でかつ理・農・工学部の混成部隊であったことなどから新鮮な気持ちで対話に臨むことができた。午前中の、原子力発電、高レベル廃棄物の講義は学生の理解を助けるのに適した内容であったと思うが、どこまで理解が進んだかは対話の中でもあまり判然としないところがあったように思う。学部1年生にはあまり多くを期待してはいけないのかも知れない。「自分たちの役割として、原子力を十分に勉強して国民に説明していく責任がある」と結論付けたのは大変立派であると思う。

今回の対話集会については、対象が一年生ということで少し心配でしたが、参加者全員が積極的で、パワーポイント作成者、発表者とも自ら志望し、結果の発表も内容を理解した堂々としたものであり、感銘を受けました。反省点としては、何時も言われるように、対話中のシニアの説明が長くなりがちで、もう少し学生の発言の機会を増やすよう努力する必要があると思った。

      グループ2 学生の感想文をよみ、原子力につき正しく理解を深め、チャレンジに応じてかなり真摯に応えて呉れている手応えが読み取れた。学生の一人は「自分の子供が出来たら、自分の理解したことを正しく伝えてやりたい」との発言があったことを付記する。

午前中の講義が1 年生の学生にとってこれまで学んだことのない「原子力発電」や「高レベル放射性廃棄物」のテーマであったことを考えると、全ての学生が集中を切らさず、熱心に講義や対話に参加していたことを考えると、学生たちのその真面目さとその真摯さに大いに感心させられました。

対話については、ファシリテータ方式は、学生自身の「理解しがたい部分」と「議論を深めたい部分」など自身で書いていくことと、他の人のそれらを目で確認していくことができることから、自分の思考と他の人の思考を目で確認しつつ、比較思考していくことができるように思われ大変有効であると考えます。今回の対話の対象がまだ1年生であり、初回であったことからシニアに対する遠慮があってか、学生からの「疑問の提起」が弱かったように思います。是非、この対話をきっかけに、大いに疑問を持ってもらい、今後の学生同士の議論と、またの機会のシニアとの議論を重ねて、「大きな疑問」の中から、「本当の真実」を探し求めてもらいたいと思います。

      グループ3 SNWの4年間の多くの大学で延べ30回を越える学生対話で今回の山形大は極めてフレッシュだった。これまで殆どの対話会は参加学生が高年次であり、さらに原子力、環境問題の講義履修をした若者だった事、もう一点は理、工、農と幅広で専門専攻をまだ決めていない、ほやほやの新入生だった事、 この2点が強く印象つけられる。学生のまだこの種の問題に基礎的な知識がないだけに、旺盛に知識欲で知りたがっている姿は若さと意欲を感じてすがすがしかった。この反面に、受験勉強の延長線のような知識欲の吸収の仕方が気になった。今の受験は知識で「知っていれば良い」スタイルの、偏差値教育型で、自分の意見、信条を作るような議論をしたがらない。これが気になった。なお、テーマが「原子力と環境」というような大括りの議論では、短い時間の議論では集中できずに、散漫な対話になったのは、反省事項である。

まとめの学生のグループ発表を聞くと、まだまだ対話の意図がつかみ切れていないようでした。今回の対話活動において、シニアと学生間の対話をもっと意義あるものにするためには、チームテーチング授業のように、シニア同士の打ち合わせも必要ではないかと感じた。

      グループ4 基調講演は私にも興味深くためになる内容だったが、学生には尚一層新鮮な内容だったと思われる。大講義室で居眠りする人が見られなかったのは嬉しいことだ。学生達は既に齋藤和男先生の講義を受けておられるようで、原子力や放射線の基礎的な知識はかなりしっかりと持っておられるように見受けられた。今回の学生さんが1年生主体で、僅か3ヶ月程度しか授業を受けていないことを考えると、短期間でよくもここまでと、先生方のご功績の大きさに敬意を表する。

学生の中には、例えば、放射線の食品照射がどうして一般社会に素直に受け入れられないのかを、はがゆい思いで見ているようなところもあった。

      グループ5 2時間程度の時間が与えられたグループ対話が、シニア2名、参加学生7名の構成で実施されたことは参加者に多くの発言の機会を与えられ適切なグループであったと思う。まえに、グループ参加者が3名の時があったが対話を続けることに苦慮したことがある。予め実施された事前アンケート、において質問関心事項が整理されそれに沿って学生がグループに分けられていたため対話がスムースに進行できた。斎藤和男先生のご努力に深く感謝したい。このようなアンケート、午前中の原子力発電、高レベル放射性廃棄物の授業、対話において参考配布されたパンフレットなど多くの情報が提供されても、対話を通じて学生がやはり基本的な質問・疑問を持ち続けていることがわかる。フェイスツーフェイスで対話を継続的に実施することの重要性が改めて認識された。山形大学に在学する優秀な学生達が、しかも総じて10代の学生が、原子力について対話ができることに深い感慨をおぼえると共に日本の将来に大きな希望を抱くことがで。

     グループ6 全体に「放射線の利用」に非常に興味を持っていて,好感の持てる反応だった.学生の指摘にある通り,対話というより,一方的な知識や情報の提供になったかもしれない。

      グループ7 午前の二つの講義「原子力発電」「高レベル廃棄物」は齋藤和男先生の授業の延長線上にあり、建前としては午後の「学生とシニアの対話」の7つのグループの対話のテーマと切り離されたものであった。通常の対話では、学生の知識レベル、興味レベルに合わせて基調講演の内容を講演者が決め、対話テーマもそれに関連したものとするのであるが、今回の場合にはそれができなかったので、各グループとも学生からの比較的プリミティブな質問に対して、シニアが一方的に説明する講義的なものになったことは否めないと考えられる。来年度も実施するなら、そのことも考慮して基調講演テーマ=授業講義テーマを事前に調整する必要があろう。学生は皆まじめであり、こちらの説明をよく聞いていたが、知識不足のためか一つの質問から関連する他の問題への波及がなく、スポット的な対話になりがちであった。「原子力に関わる仕事」がテーマであったが、1年生ということもあり、原子力というよりも、仕事そのものや、どのような職種があるのかという具体的なイメージがまだ浮かばないというのが実情で、これも仕方がないことかと思われる。慣れない諸準備を長期にわたって行われた齋藤和男教授、乾技官以下関係された皆様に深甚なる感謝の意を表します。

学生自体非常に素直で真摯に疑問を投げかけ、論議する姿に感心するとともに、原子力に対する見方が正しい方向に向いたものと感じられた。

 

7.            まとめ

学生とシニアの「対話イン山形2010」は、結城章夫学長と斎藤和男教授の協力を頂き、シニアにとっても有意義な対話の機会を持てた。

@     対話会が山形大学において初めて開催できることになったのは、結城章夫学長の理科教育-放射線・原子力教育についての熱意が具体化したものと言える。

A     対話会の設営などは、1年生対象の教養教育科目「放射能 こわい?こわくない?」を担当されている斎藤先生ら大学関係者とSNW対話担当幹事松永一郎氏、SNW東北の高橋弘道氏らの連携と周到な準備のもとに用意され快適であった。

B     竹内哲夫前SNW会長ほかのシニアの感想にあるようにこのたびの対話会は極めて「フレッシュ」であった。すなわち、今までほとんどの対話会は参加学生が高年次であり、さらに、原子力、環境問題を履修しているのに対し、理・工・農と幅広で就職までまだ間がある本年3月までは高校生であった1年生であったこと。

C     学生は、メディアなどからしかエネルギー・地球環境などの情報を得ていないようであり、シニアの経験に基づく生の知識にたいして強い知識欲を感じた。

D     このような知識欲・吸収力の強い学生たちには、メディアを鵜呑みにしないリテラシーを身につけること、また、シニアも質問・疑問に対して正確で偏りのない知識をもとに対話が進むように心がける必要がある。

 

添付資料(クリックすると参照できます)

1.  参加シニア一覧PDF)

2.  斎藤伸三氏講義資料 「原子力発電」PDF)

3.  坪谷隆夫氏講義資料「高レベル放射性廃棄物」PDF

4.  学生とシニアの対話イン山形2010 ファシリテーション要領PDF)

5.  グループ発表PPTPDF)

6.  学生事前アンケート用紙および結果PDF)

7.  学生事後アンケート結果PDF)

8.  グループ分け、グループ別概要、およびシニアの感想PDF)

 

(対話写真)

 

 

齋藤伸三氏の講義

坪谷隆夫氏の講義

 

 

学生とシニアの合同昼食風景

G1の対話 

 

 

G2の対話

G3の対話

 

 

G4の対話

G5の対話

 

 

 

G6の対話

G7の対話

 

 

 

学生発表


 


 

竹内哲夫氏の講評

菅原剛彦氏の講評