平成21年6月17日

SNW会員 路次安憲

 

SNW学生とシニアの対話イン愛知教育大学2009

報告書

 

 

T.概  要

 

日本原子力学会シニアネットワーク(SNW)では、2005年以来4年間に亘り次世代を担う原子力系学生、工学部系学生、教育学部系学生に原子力OBであるシニアと対話する機会を提供し、シニアの知識や経験、気概を伝える活動を続けてきているが、とくに最近では将来を託す子供たちを教育することになる教育学部系学生及び現役の先生方とのコミュニケーションが重要と認識している。

 

今回の愛知教育大学での対話活動は、平成19年12月8日、平成20年5月31日に続き3回目であるが、最近はESD(Education For Sustainable Development : 持続可能な発展のための教育)が注目され、環境、エネルギー、資源などを総合的に学ぶプログラム開発が必要とされていることから時宜に適した活動でもあったと考えている。

 

前回の経験を踏まえ、学生に加えて小中高校の現役の先生方に本格的に参加いただくとともに、静岡大学からも教員が体験参加された。

 

以下に示す日程、内容で実施したが、結果は参加者の感想に見られるように以前にも増して効果的で、この活動を継続するとともに、静岡大学始め他大学へも展開を図ることで計画を進める予定である。

 

 

U.プログラム等

 

1.日時 ; 平成21年5月30日(土)10:30〜19:30

2.場所 ; 愛知県刈谷市 愛知教育大学自然科学棟2階

3.参加者;45名

(1) 愛知教育大学

*吉田淳教授(理科)、平野俊英准教授及び学生15名(うち院生3名)

*附属中学、高校現職教員6名(総合教育センター含む)

(2) その他大学、小中学校

*名古屋大学院生1名

*小中学校現職教員7名

(3) SNWシニア12名

伊藤睦、犬飼英吉、金氏顕、竹内哲夫、田中隆一、坪谷隆夫、西村章、古田富彦、益田恭尚、松永一郎、路次安憲、渡辺泰臣、

(4) オブザーバ

*熊野善介;静岡大学教育学部教授、付属静岡中学校校長、pH.D

*大津浩一;愛知県立熱田高等学校理科教諭

 

(全参加者の氏名は「添付―1 グループ討議及び発表内容」に掲載)

 

 

4.当日のスケジュール

 

10:30〜11:00 開会挨拶、参加シニア&オブザーバー紹介、事務事項伝達

11:00〜12:30 基調講演「これからのエネルギーの課題」

12:40〜15:40 5グループに分かれての、シニアとの対話

15:40〜17:00 グループ別成果発表・質疑

17:00〜17:30 指導・講評&閉会挨拶

17:45〜19:30 懇親会(先生(院生含む)、シニア、オブザーバー参加)

 

 

V.実施内容

 

1.開会挨拶

 

吉田教授;社会の第一線で活躍されていたシニアとじっくり対話できるのは素晴らしい機会だと考えて、今日一日楽しみながらしっかりと学んでほしい。

 

竹内会長;原子力や放射線がこれだけ使われている時代に、学校教育の中で原子力、放射線に関する話がほとんど無いというのは奇異な感じだ。

学習指導要領が変ったので期待しているが、先生を教える先生がいない。愛知教育大学が橋頭堡的な存在となっていることに敬意を表し、我々も参画させていただく。実験工房だ。

 

2.シニア、オブザーバーの紹介

 

金氏代表幹事より参加シニアとオブザーバーの紹介が行われた。

 

3.基調講演、「これからのエネルギーの課題」

 

SNW代表幹事 金氏顕氏より、「本日のグループ対話のためのイントロである」との前置きで講演が行われた。主要な内容、特徴は以下のとおり(講演資料はHP上に別途掲載)。

なお、要所要所で質問を用意し受講者を指名して答えてもらう方式をとったので、適度な緊張感が持続する講演であったと考える。

 

*COと地球環境の関連が学問的に完全に解明されているわけではないが、人間が管理できるのはCOのみ。IPCCも予防原則としてCOの抑制を謳っている。

*石油は1990年以降、新たに発見される量を消費が上回っていることから、枯渇は現実味を帯びつつある。

*原子力発電は燃料が3年間使えること、少量の燃料で大量のエネルギーが得られるため備蓄が容易であること、さらにリサイクル可能であることから準国産エネルギーと呼ばれている。

*太陽光、風力等の自然エネルギーを増やす努力は必要だが、供給安定性、コスト、各国による条件の相違(土地取得の容易性等)を正確に知った上でどの程度の増加が好ましいか判断することが必要。

*バイオマスなどを有望視する議論もあるが、農業自体が石油に大きく依存していることも理解する必要がある。

*同じく、原子力の光と影も正確に理解すること。

 

最後に「原子力の10の疑問、質問に答える」の中で、受講者の希望が多かった、@高レベル放射性廃棄物の地層処分、A使用済みウラン燃料のリサイクル、B原子力の社会的受容性の背景、について説明があった。

 

4.グループ討議及び発表会

 

事前アンケート方式により、疑問、質問、討議したい事項等を収集し、それを基に下表に示すような5つのテーマ別グループに分けて実施した。

また、事前アンケートに対するシニアからの回答及び補足事項を全員に配布した。

 

テーマ別グループ編成表

 

Gr.

テーマ

参加シニア・オブザーバー氏名

原子力発電の必要性

西村章(FT)、伊藤睦、

 

日本と世界の原子力発電の動向

渡辺泰臣

原子力発電の安全性

路次安憲(FT)、益田恭尚

 

環境問題

 

他のエネルギーと原子力エネルギー

松永一郎(FT)、竹内哲夫

 

原子力に関する仕事

 

放射線の性質と利用

坪田隆夫(FT)、田中隆一

 

放射性廃棄物

 

小・中・高等学校におけるエネルギー教育

金氏顕(FT)、古田富彦、

 

 

犬飼英吉、熊野善介、大津浩一

(注)FTはファシリテータ役を示す

 

今回のグループ討議の特徴

 

@各グループ(7人〜10人)とも学生、現職教員、シニアをバランスよく配置。

(Aグループは学生に急な欠席者がでてバランスが崩れたが)

A討議時間をできるだけ永く確保するために、食事を採りながら自己紹介等から開始した。

Bファシリテーション方式を取り入れた。

これは、シニアの一人をファシリテータ(FT)として、個々の議論を発展させながら参加者全員ができるだけ満遍なく発言するように仕向けるとともに、全体の議論を収束・集約させる役割を負うものである。また、議論の過程でポストイット等を有効に活用するものとした。

C発表に向けてグループ討議の結果をどのような観点で纏めるべきかの指標とするため、かつ発表用のPPT作成時間を短縮できるように、PCにテンプレートを搭載した。また、予めPPT作成者、発表者(複数可)を決めてスタートした。

 

グループ討議及び発表内容の詳細は「添付―1 グループ討議及び発表」参照。

 

シニアからの今後に向けての意見

 

対話会全体に関するシニアの感想は「添付―2 各シニアの感想」に示すが、グループ討議に係る今後に向けての主な提案/意見は以下のとおり。

 

@昼食の時間も活用してできるだけ対話の時間を多く取ったが、それでも時間が不足したとの意見が多い。テーマをひとつに絞る、知識の取得については別途の講義、講演で行う等の検討が必要。

A黒板のない実験室で実施したグループからは、黒板が必要との意見があった。

B学生の急な欠席でメンバーのバランスが崩れたグループがあったが、臨機応変にメンバーを組み変える等の対応が必要と。

CFTは今回が初めての適用なので性急な評価はできないが、望ましい方向なので今後も活用しながら改善していくべしとの意見が多数。

 

 

5.講評

 

全体の発表終了後、シニアから代表3名が講評を行った。

 

古田;FTを初めて取り入れたが、おおむね効果的であったと思う。リスクについても話し合われたので少しコメントしておく。受け入れ不可能なリスクが無いことが安心に繋がる。一方、安全は許容可能なリスクということで線を引いている。

それらは社会が決めることだが、自分で選択できない(自分にとって直接的で無いベネフィットに対応した)リスク内容は認識しにくいのが問題。

 

犬飼;科学的・合理的に考えることは重要なことである。「子供にどう教えたらよいか」という観点で考えるのは理解が深まる基で、さすが教育系の学生だと感じた。

マスコミ報道を鵜呑みにしないためにはリテラシーが必要で、逆説的になるが人をあまり信用しないことも身につける必要がある。

 

益田;有益な対話ができた。みなさんが「今日得たことを生徒にどのように伝えようか」と考えながら聞いているからだろう。

エネルギーという言葉の意味も広いが、今日議論したのは人間が使えるエネルギー、豊富で安くていつでも使えるエネルギーという意味である。

 

 

6.閉会にあたって

 

松永;シニア、先生方、学生とバランスよく対話ができた。すばらしい“エネルギー”だった。これを子供たちに伝えてほしい。

 

熊野;最近浜岡原発の管理区域に入って原子炉の近くまで行ったことがあるが、原子力発電はこういうものかと初めて認識できた。どういう実践的な教材でどのような教育をするのがいいのか常に考えてほしい。何が安全で何が危険なのかを冷静に判断できる国民を育ててほしい。学長から静岡大学でもやろうといわれているので、次は静岡で会いましょう。

 

吉田;店へ入ると商品は見ることができるが、それがどのように開発・製作され、どのような流通経路を経てそこにあるのかはなかなか想像できない。電気で言えばコンセントの向こう側を見る力をつけさせることが重要。
未来に向かって持続的な教育が必要。まさしくESDだ。

 


追記
6月30日、学生と小中高校の先生の見学会を実施した。同行記を添付ー6に掲載する。
 

添付資料

 

添付―1 ; グループ討議及び発表

添付―2 ; 各シニアの感想

添付―3 ; 事前アンケートと回答(準備中)

添付―4 ; 事後アンケート結果(準備中)

添付―5 ; グループ別学生発表資料PDF)(クリックして参照)
添付―6 ; 浜岡原子力発電所見学同行記(クリックして参照)



 

添付―1 グループ討議及び発表内容

 

 

Aグループ(原子力発電の必要性、日本と世界の原子力発電の動向)

 

グループA 分子科学学生実験室

原子力発電所の必要性

日本世界の原子力発電の動向

杉本正樹

吉田研4年、発表

鈴木友理美

澤研4年(欠席)

伊達貴人

化学3年(欠席)

平野俊英

理科教育講座

加藤透

愛教大附属高校

櫛田敏宏

総合教育センター

渡辺泰臣

SNWシニア

伊藤睦

SNWシニア

西村章

SNWシニア、FT

 

1.グループ対話

(1) 方法等

*学生メンバーは3名が予定されていたが急遽2名欠席となり1名だけとなってしまった。このため、議論と発表準備が集中し、参加された学生さんにとっては、気の毒なことになってしまった。

*最初に紙に「氏名」、「期待」と「質問、要望」を書き順次発表(以下、各グループとも共通にこの方式で実施)。

2名の先生が、発表するそばからポストイットに質問内容を記録し、そのポストイットを黒板に貼り付けて議論の見通しを良くするようにした。

*出された質問、疑問は、「原子力発電の必要性」「安全性」「教育」の3分野に分類できた。

質問の分野に従って、シニアが回答や解説を行い、さらにそれに対する質問という形で対話を進めた。

*できるだけ対話する人が片寄らないように、FT(西村)が話す人を適宜指名しながら進めた。

 

(2) 対話の概要

*日本の高い技術を資金の無い国々へどう貢献できるのか。

*原子力発電所へのテロや航空機が飛び込んだりしたらどうなるのか。

*原子力技術の日本の地位、米国との比較ではどうか。

*これからも原子力発電所を増やす必要があるのか。

*原爆への技術転用は可能か。

*現在の物理の学校教育では殆ど原子力は出てこない。少し記述があっても核分裂が入試にのらないこともあって、実際教える時間は取れていない。

 

2.発表概要

PPTまとめ、発表;杉本正樹(4年))

*原子力発電は安全に徹して対策が取られている。マスメディアや教育が誤解を生む原因を作っている。

*将来化石燃料が枯渇すること、自然エネルギーも十分ではないことを考えると原子力は必要。

*原子力の良さを理解してもらえるような教育をして行きたい。

 

フロアからは、「操作する部分のセキュリティ」という表現は、フェールセーフとかDefense in Depthとか言う表現の方が良いとのコメントがあった。

 

 

Bグループ(原子力発電の安全性、環境問題)

 

グループB 化学物理系理科実験準備室

原子力発電所の安全性

環境問題

 

漆畑文哉

吉田研4年

中村咲子

理科教育3年、発表

森彰宏

森田研4年

長谷川裕子

名古屋大学M2

中村直美

愛教大附属名古屋中学校講師

古池秀行

名古屋市立鳴海東部小、発表

小島有里絵

名古屋市立若水中学校

益田恭尚

SNWシニア

路次安憲

SNWシニア,FT

 

1.グループ対話

(1) 方法等

*学生4名、先生3名、シニア2名のバランスの良い構成であった。

*緊張をほぐす意味もあって、食事をしながらシニアが自己紹介、経験談等を披露。

FT(路次)がポストイットを黒板に貼り付けながら分類し、討議のテーマとして、「原子力発電所や廃棄物地層処分における耐震安全性」及び「エネルギー問題と原子力教育」に絞った。

 

(2) 対話の概要

*耐震安全性については、学生、先生方共に当初漠然とした不安を抱いていた。

*耐震安全性について理解するには、原子力施設の耐震性がどのような考え方の下に、どのような設計・検証を経て実施されているかを理解することが不可欠であることから、シニアが地質調査から建屋設計、機器の設計・検証の概要を説明し、FTが黒板に箇条書きしながら進めた。結果、かなり理解が進んだようである。

*エネルギー問題と原子力教育については、範囲が広いことと時間が足りなくなったことからあまり煮詰められなかったが、子供たちが地に足の付いた、科学的・合理的に考える力を身につけられるよう指導する必要があることで一致した。

 

2.発表概要

PPTまとめ;漆畑文哉(4年)、発表;中村咲子(3年)、古池秀行(先生))

耐震については、科学的な調査に基づく設計が行われているとともに、設計には余裕を持たせている。

*エネルギーは人類が生存するのに不可欠であり、子供たちには「もし電気がないとどうなるか」から考えさせるのが良い。科学的・合理的に原子力を考える必要がある。

*報道に流されずに自分の頭で考えることが重要。

 

フロアからは、マスコミ報道に流されないためには、事象や記事を批判的に見る力をつけること、つけさせることが重要とのコメントがあった。

 

 

Cグループ(他のエネルギーと原子力エネルギー、原子力に関する仕事)

 

グループC 化学系理科実験実習室

他のエネルギーと原子力エネルギー

原子力に関する仕事

柳本祐吾

平野研M1、発表

高橋真世

理科教育3年

光成太輔

渡辺研3年

今泉直己

鳳来中部小学校

天野祐貴

小牧市立桃陵中学校

稲垣直美

名古屋市立若葉中学校

林田香織

愛教大附属高校

竹内哲夫

SNWシニア

松永一郎

SNWシニア,FT

 

1.グループ対話

(1) 方法等

*学生3名、先生4名、シニア2名でバランスはとれていた。

*長方形の実験机の両側に対面する形で並んだ。FT(松永)は全員が見えるように机の片端に着席した。

FT(松永)が一人ずつ指名し、出た質問、疑問をポストイットに書くとともに、その場で類別。(ポストイットを貼り付けるような場所(黒板等)が無かったのは残念)

*意見の集約も類別しながら行なっていった。

*最後に林田先生が本日のテーマについて、極めて明快な解答を出された。

 

(2) 対話の概要

*先生として、原子力エネルギーについて実感できるような実験道具がほしい。

*原子力は大きなエネルギーで教室の中で簡単に実験で分かるようなものではない。

*実感できないエネルギーなので安心できない。できればないほうがよい。

*安心は「好き−嫌い」と同じ。原子力エネルギーは「必要−不要」の話。嫌いだから必要ないということにはできない。

*50年先でも原子力無しではやっていけないということであれば、そのときのことを考えて、今、しっかりと現実を理解し、どうしたらより安全になるのか考えて、対策をとっていく必要がある。

 

2.発表概要

PPTまとめ、発表;柳本祐吾(M1)

*子供達にどのようにして原子力について教えていったらよいのかという観点から対話した。

*直接的な教材は霧箱、はかるくんといったものしかないので、教師がしっかりとした知識をもち、発電所見学のような体験をして、自信をつけて教えるのがよい。原子力に誘導する必要はない。

フロアからは、「林田先生の明快な解答とはどんなものか。説明して欲しい」との声があり、林田先生から上記の1.(2)を説明した。

 

 

Dグループ(放射線の性質と利用、放射性廃棄物)

 

グループD 化学系理科実験実習室

放射線の性質と利用

 

放射性廃棄物

 

彦坂訓宏

遠西研M1

鈴木杏里

市橋研4年

戸谷元一

渡辺研3年

滝川民子

川上研M1、発表

野村友美

清州市立清洲東小

長谷川悟

愛教大附属名古屋中学校

梶田知佐

名古屋市立伊勢山中学校

吉田淳

愛知教育大学

田中隆一

SNWシニア

坪谷隆夫

SNWシニア,FT

 

1.グループ対話

(1) 方法等

学生4名、うち1名は米国駐在経験のある社会経験20年、その経験を生かして理科・数学系を学ぶという女性の院生。小・中教員3名。シニア2名

FT(坪谷)が口火を切って昼食時にアイスブレーキング。

*この対話における期待と質問をあらかじめ指定された方式で記述し、それに沿って各人がスピーチ。FT、シニアから期待・質問内容に沿って参加者に均等に発言する機会を与えた。

*「学生は90分が持続する限度だ」とのことで途中吉田先生がブレークに入らないとそのまま意見交換が続くような盛り上がりを見せた。

*あらかじめ配布されたポストイットおよびマジックインキが活用できなかったことは反省点である

 

(2) 対話の概要

*参加者が提出した成果や感想を見ても「無知では駄目。リスクを含めてもっと学びたい」との嬉しい反応が得られた一方、やっぱり原子力発電も資源に頼っているのだと分かって疑問が増えた、環境問題の解決に原子力発電が貢献するのか、ほかの立場の人の意見も聞きたいなどとの意見もあった。

*エネルギー問題を取り上げているが教師に何を期待するのかアジェンダを絞って欲しいとの発言も首肯できるものであった。

 

2.発表概要

PPTまとめ、発表;彦坂訓宏(M1)、滝川民子(M1)

放射線の性質と利用、放射性廃棄物について多くのことを学んだとの発表。

*ただ、このグループのPPTは「疑問、質問、意見など、および分かったこと」が15葉に時系列的に羅列したもの。発表者のスピーチが折角のPPTとずれて発表者の理解に基づく内容となった(聞き手の立場から要点の整理が不十分であり、対話のなかで時間をかけて整理し情報を共有できるようにするべきであった)。

 

Eグループ(小・中・高等学校におけるエネルギー教育)

 

グループE 理科教育授業研究室

小・中・高等学校における

エネルギー教育

 

河野雄太

吉田研4年、発表

竹下希望

理科教育3年

大木章子

理科教育3年

遠藤勝也

遠西研M1

羽澄大介

愛教大附属名古屋中学校

大津浩一

愛知県立熱田高等学校

熊野善介

静岡大学

犬飼英吉

SNWシニア

古田富彦

SNWシニア

金氏顕

SNWシニア,FT

 

1.グループ対話

(1) 方法等

参加者は大学の現役・元教授・講師、小中高の現役教員、教員志望学生と、このテーマには理想的な組み合わせであった。

*進め方は基本的に他のグループと同様。

 

(2) 対話の概要

*参加者の質問は殆どがテーマに直接関連した、小中高でエネルギー教育をどういう内容(段階的な)、時間、教材・器材、評価方法などで行うべきか提起され、また参考として他の学校では?諸外国は?の話も。

*それぞれが自分の経験、知識をまず披露し、情報交換/意見交換を活発に行うことが出来、特に教員の方々は大変満足された。

*学生3名のうち女子学生2名(理科3年)からは原子力の安全性、具体的には飛行機衝突時の耐久性、テロ対策、耐震性など、また発電所から放射能が出ているのか?近くの住民の気持ちは?といった質問があり一通り説明したが時間不足、物足りなかったようだ。彼女らが自ら勉強することを期待したい。

 

2.発表概要

PPTまとめ、発表;河野雄太(4年))

先進的原子力教育(美浜町、大洗町)参考にしたエネルギー教育のあり方が学べたこと、専門知識を持った教員の養成が必要であり、今回の学習指導要領改訂は大きな第一歩であること等が発表された。

 

フロアから、美浜町のエネルギー環境境教育の内容について質問があり、美浜町と地元の研究所、関西電力等が協力して小学校1年から中学3年まで体系的な教育が行われているとしてカリキュラムを披露した。

 


学生発表資料はココをクリックする参照できますPDF)

 

 

 

添付―2 各シニアの感想

 

参加したシニア12名及びオブザーバとして参加された大津浩一氏の感想を以下に示す。

 

 

伊藤 睦

 

@基調講演について

    内容、話し方、など完璧でいうことなし。

    最後の10の質問は事前アンケートの質問を参照してやると更に効果的でしょう

    事前質問に対して作った回答書をリファーすれば、時間の節約に繋がるし、折角作ってくれたSNWのメンバーの面子も立つ。回答書の必要がなければ今後回答書の作成は止めた方が良い。

 

A対話について

    FT方式は良い面と悪い面があるが、今回はまずは良い面が多かったと感じた。即ち、対話の焦点が絞れたこと、タイムキープが出来たことです。ただ、対話の中身が薄くなる欠点はいかんともし難い。(書かれた質問に応えるのが精一杯で、深い討論が出来なかった。)

    たまたま、学生2名がドタキャンのためグループに学生が1名しか居らず、ちょっと淋しい感じであった。臨機応変に他のグループから回して欲しかった。

 

B対話の準備など

    大学側の準備は申し分なし。

    シニア側については、シニアの役割分担決定が遅い。今回は5月25日と1週間前であったが、少なくとも2週間前には決めてほしい。

 

Cその他全般

    今回は、前2回に比べて、対話の内容(レベル)が高くなった印象を受けた。出席者の中にリピータがいた事、これまでの吉田先生の教育の効果があった所為であろうか。

    Aグル―プは現役の教官がメンバーであり、そこで教育現場の苦労話を聞けたのは良かった。

    後の懇親会を含めて、大変有意義な対話会でした。有難う御座いました。

 

犬飼英吉

 

@全体として、教育大学は、知識、情報を児童、生徒にどのように教えるかを常に念頭に置いているところが、一般大学とは違う。また、知識、情報を一般に浸透、拡散させる良い意味のマスディアの性格も備えていると思う。このよう観点から、今回、愛教大でシンボジウムを開催できた事は極めて意義深い。お骨折り頂いた吉田先生、金氏様他関係者に深く感謝する。

 

Aグループ対話では、どのように児童、生徒に理解させるか、教える内容も大切だが、それと同程度にその教育手法が非常に重視されていて、教育を受ける側の心理学的な見方等、我々が学ばなければならない点が多々ある。教育現場の雰囲気が少し分かったような気がした。

B最後の各グループの報告は、短時間でまとめる教育訓練、評価する側或いは評価される側に立ったりする教育訓練がよくなされており、教育大学ならではと感心した。

 

Cグループ対話は、時間が短くて突っ込んだ話が出来ない。基調講演を少し短くして、グループ対話を長くするとか、グループをもっと小分けした方が良い。

 

Dグループ対話は、時間不足で消化不良。

    例1、「チェルノブイリのような事故が日本の原発でも起こらないかと言う質問」

日本の原発では「チェルノブイリのような事故」が起こらないと言うハードの説明(図がないと、理解されにくい。配付資料「原子力2009」p.26の図解を使用すべきであった)も大切だが、質問者の「チェルノブイリのような事故の印象」は、多分マスコミ情報と風評により醸成されたものであろう。事故が現地の人に及ぼした心理的な影響、その後の社会的行動等の実態を時間を掛けて説明した方がよい。その方が原発に対する誇大な危険意識をなくす効果があると思う。特に女性の場合、本音を引き出すのに時間がかかる、ゆっくり話をする、話をつなぐ課程が大切である。先ず、チェルノブイリ事件の全貌をどの程度知っているかの質問から入った方が良かった。説明に十分な時間が得られず、質問者には、グループ対話の後、IAEA、WHO共催のチェルノブイリ20年総括会議に、日本代表として出席された長瀧重信先生から直接頂いた情報、分子放射線生物学の世界的権威の近藤宗平先生の講演からの情報によって作成した各スライドを手渡した。(貴重なスライドなので、皆さんに参考になるので、添付した)

    例2、現場の先生達は、学習指導要領により、がんじがらめに縛られている。今回、私が準備した九大工藤先生がまとめられた「新学習指導要領に基づく小・中・高学校教科書のエネルギー関連記述に関する提言」(原子力学会原子力教育・研究特別専門委員会の調査報告)は、具体的に不適切な記述が沢山指摘されており、現場教師にとって大変参考になると思い、全員に内容を紹介したかったが、時間が与えられず、隣席の熊野先生が、たまたま経産省からの委託で、別の観点から高校の学習指導要領の見直しをされていたので、工藤先生の調査資料を差し上げ、隣どうしの意見交換に止まった。

 

Eグループ対話に於けるファシリテーション手法の適用は、時間的制約が厳しいと、司会者はグループの意見集約に追われ、参加者全員で十分な意見交換が出来ず、「結論を出す必要がなく、自由な意見交換に意義のある懇談」にはなじまない。

 

F短時間で意見をまとめるファシリテーション手法は、時間に追われて質問の芽をつぶし、本音を引き出す事も、話のつながりもなくなり、ゆっくりと懇談できないので、生煮え状態で終わった感じ。放射性廃棄物の処理について、意見集約した崎田祐子氏が使った手法、「結論を出さず自由な意見交換の懇談の場とする方式(ワーキング・ショップ方式)」の方が、本音ベースの質疑応答が出来て良いと思う。

 

 

 

金氏 顕

 

@    基調講演について

講師から指名質問しながら話したのは聴くことに注力することになっただろうと自画自賛しています。

 

A    グループ対話について

参加メンバーがテーマにぴったりで理想的メンバーでした。ただ、学生は原子力の知識が乏しいので対話についてこられなかったのではないかと思います。しかし、これを機会に自ら勉強することを期待します。

 

B    グループ対話に”ファシリテーション手法”を用いた効果について

シニアがしゃべりすぎ、学生他が聞くのみ、というパターンは回避できたし、参加者皆が聞きたい、披露したいことは殆ど網羅できたと言う点で効果があった。しかし、学生からの安全性に関する質問に丁寧に答えようとして長時間かかりそうだったのでファシリテーターとして後は資料などで勉強して下さい、と遮ったことを説明者は不満に思った様子。知識の習得は講義、講演で、この対話は意見交換、気付くこと、好奇心や意欲、夢、目標を持たせることが主眼であることをもっと説明しておくべきであった。

 

C    準備や運営について

午前から行い十分時間はあったはずだが、時間に追われてしまった。特にグループ対話の結果をPCで纏めるところに随分時間がかかった。PPTテンプレートは役立ったと思うが、ファシリテーター役の他に、対話の最中に記録をPPTに書き込む役割の人も必要だろう。その他は吉田先生のご尽力で大変スムーズに運営できました。

 

D    その他

事務局業務を参加者全員で分担していただき感謝します。

 

 

 

竹内哲夫

 

0.一般事項

    本会の意義:今、教育指導要領の改訂が進められており、わが国教育で、原子力エネルギー、放射能の小中高教育でのこれまでの遅れ奪回が問題視されている。一部の原子力立地地域(美浜、茨城など)ではない一般の地域で、愛知教育大は、早くからこの問題に取り組み、教育ワークショプの形で既に3回目になるが、中心の吉田先生の発意指導の下に、これに呼応して地元教育現場の先生も参加するこの試みは今の日本での教育再生の橋頭堡的な意義がある。

    参加者の意欲:吉田先生はじめ今愛知県内で実際に教壇に立っている羽澄、大津、林田先生らの参加は、今後教壇に着く学生とともにシニアにとっても教育に当たっている方の想いを知る、双方向の対話の意義が大きい。

 

@基調講演について

    内容、話し方、など完璧で、金氏さんが学校の教壇風の講演に立派で完璧だった。だが、広範精緻すぎて受講者の学生は原子力系ではないのでこの短時間で理解浸透を図るには無理だったと思う。倍くらい時間をかけたらどうか?

    最後の10の質問は事前アンケートの質問であるが、班別ワークショップ(WS)の課題とリンクさせて、続く対話集会の課題にして答えを班別に回答を最後の発表でするような仕組みにすると、続くWSが盛り上がると思う。

    これに事前質問に対して作った回答書をリファーすれば、時間の節約と知識の理解が速められる。

 

A対話について(ファシリテーションFT方式も含め)

    FT方式はまだ不慣れだが、功罪両面がある。対話の焦点が絞れ、参加者に公平で時間キープに良いが、ただ、対話の中身が薄くなる欠点はいかんともし難い。一例が、高校教壇で教える林田先生からの質問で「高レベルの最終処分の目処が立たない間にも原発は運転し続ける危惧」のような議論はFTの場では長時間できない。極めて重要な心配指摘だが、「世の中に完全安全で初めて実用化したものは少ない」といった短い禅問答になる欠点がある。

    一般学生より高次元の悩みを持つ先生との対話の機会でもあるので、前後に先生方から突っ込んだ質問、現場の悩みを提示してもらって、シニア側はヒトを決めて回答、ないしは参考文献を送付して意見交換する仕組みを考えたらいかがかと思う。

 

B対話の感想、その他

    大学側の準備は申し分なし。

シニア側も個人個人で状況は異なるが準備不足は否めない。毎回の事ながら次回は更に改善という慙愧と後悔が残る。少なくとも、参加の現役先生方とはメール交信などで補って行きたい。

 

C懇親会で、拙宅で3年実施中のラドン熱気浴{ホルミシス}について質問と感心が多くありましたが、参加女性の先生のお名前アドレスも未確認でした。吉田先生に情報は一括届けておきます。(詳細はメール情報でお受けします)

 

 

田中隆一

 

@基調講演

    授業に生かせる豊富なデータをスムーズな流れに沿って示し、それから何を読めるかを平明な言葉で話しかけるようにわかりやすく説明したことがとてもよかったと思います。世界と日本のあからさまな姿を文字ではなく図を通して自然に納得できるように導かれるのに感心しました。

    わが国の生徒の弱点とも言われている時間・空間的な認識力を重視するPISA型学力を涵養するのに最適であると考えます。コンセントの向こうにある複雑な現実に対する客観認識をベースにコミュニケーション力やリスク認知力が高まっていくことが期待されます。

    60分程度の講演ですと、資料の数や1枚当たりの文字情報量をもう少し絞ったほうが効果的ではないかと思います。

 

Aグループ対話について

    参加者に発言を促すと、肩ひじ張らず、悪びれ過ぎることもなく、自分の持ち味を生かして、とても自然な乗りで発言していたことが、成功の要因だったと考えます。Dグループは学生、院生、先生のバランスが良かったと思います。各人がコミュニケーションの訓練がされていたためかもしれません。

    実験室の長いテーブルの端に座ったために、遠くの人の話が聞こえにくく、対話グループの一体感をとりにくいのを感じました。テーブルの形や座席の取り方も注意を払う必要があります。

 

Bグループ対話にファシリテーションを用いた効果について

    ファシリテーション法は氷解と参加意識の点で効果はあったと考えますが、テーマが広く、時間が短かったので、PPTに成果内容をまとめるには少し無理があったと考えます。しかし、まとめにくい内容であっても、自分の言葉で表現を工夫していたところがよかったと思います。

    いろいろな制約があることを考慮しますと、ファシリテーションの細部のテクニックにはあまりこだわらないほうがよいのではないかと思います。

 

Cその他全般

    愛教大は初めてですが、学生の社会的な参加意識が高いという印象を受けました。いまの子供たちに欠けがちの公共の精神がここでは生きているのかなと感じました。吉田先生のご努力に負うところが大きいのかもしれません。

    参加した学校の先生方と有益な対話やその後のメール交信などの機会を持てたことが、今後の活動のためにも良かったと考えます。

 

 

坪谷隆夫

 

@基調講演「これからのエネルギーの課題」について

    新学習指導要領を初等中等教育において実践していく教員を対象とする基調講演の事前配付資料PPT 57葉は幅広い課題を簡潔に示す(我々にとって)わかりやすい資料であった。

    参加者に対して適宜重要なポイントについて質問を行ったが参加意識を喚起し会場の和やかな雰囲気作りにも役立っていた。

    ただ、情報量があまりにも多すぎ参加者がフォローできたのか気になるところである。

 

Aグループ対話について

    参加者の関心に応じて5グループに分れたが、グループ発表の内容を見ても真剣に対話が行われてことが伺われる。

    筆者のグループ(グループD:放射線、放射性廃棄物)だけかもしれないが、放射線・放射能の性質と言う原子力の入り口部分と社会問題、いわば出口部分に関心があり、科学的・技術的な原理や設備の仕組みである「あんこの部分」が対話のなかで希薄になったが短時間の対話ではやむを得ない。

    理科の教員であっても、本人も子供達も、またお母さんがたも、原子力に対する不安の根強さが、このような原点の疑問・質問に現れているようである。また、この部分を通り過ぎない限り情報は参加者の頭の上を通り過ぎていくと思っている。

 

Bグループ対話に”ファシリテーション手法”を用いた効果について

    我々も講習会などで学習したばかりで、直ぐに試行錯誤で導入した割には大成功であったと思う。

    具体的には、WS方式が推奨されるポイントである参加者が自分の聞きたいことを「手で書く」「人前で話す」ことに直ぐになじんでくれたこと、特にあらかじめA4用紙に「期待すること」「質問したいこと」、対話のあとで「成果」「感想」を記述させる方式で参加意識を盛り上げることができた。

    率直な質問がでたなかで、質問に答える形で原子力技術は他の産業技術や科学的な課題同様にリスクの問題、不確実性の問題、情報の非対称性の問題があることを伝えることを試みたが、若干でも良いから知ってもらい現場教育に生かせてくれたらありがたい。このような知識についても、従来の形式の勉強会ではおそらく参加者の耳を右から左に抜けていくことかもしれない。

 

B準備や運営について

    現場の理科系教員15名を中心とした参加者構成をはじめ会場設営等をしっかり準備された吉田先生(愛教大)に敬意を表したい。

    真剣に学ぼうとする教員中心の参加者とファシリテーション方式導入とそれの円滑実施に向けた金氏代表幹事を中心とするSNW幹部の熱意が今回の成功の要因である。

 

 

西村 章

 

@基調講演について

    全体としては、構成的にも十分な内容になっており、良かったと思う。但し、全体としては、分量が多すぎの感がある。それぞれのスライドも情報量をもっと減らさないと特に後ろの席の人は見えづらい。

    アンケートにあるように、学生さんからしてみると、シニアの経験とか、これまでのどのような意気込みで、原子力に取り組んできたか等についても興味があるようで、原子力の歴史を話す部分でも、そのような観点を加えるのも一案かと思われた。

    最後の「10の疑問、質問に答える」は、事前の質問とか、その後の議論と関連付けるような工夫ができると良いかも知れない。質問に挙手で関心度を調べるのもそれなりに意義があったが、かなりの時間を取ってしまった。

 

Aグループ対話について

    今回参加したグループは学生さんがお一人で、あとは先生方とシニアという少々片寄った構成であった。学生さん二人が突然のキャンセルで欠席となったようだが、やはり、学生一人では無理がある。グループ編成のやり方を今後工夫する必要がある。

 

Bグループ対話に”ファシリテーション手法”を用いた効果について

    他グループの状況が良く分からないので断定的なことは言えないが、全体としては、もう少し続けてみないと効果の程は分からないのではと思う。ファシリテーションをやる人や、テーマ、グループの構成員によっても結果は変わってくるし、できるだけ学生さんに発言の機会を増やすという意味では効果が出たように思われる。

 

C準備や運営について

    吉田先生他の先生方、学生さん等のお陰で、準備や運営については申し分なし。

本当に感謝します。

 

Dその他

    2回目ともなると、前回学生さんとして参加して頂いた方が、今回は先生として現場の経験を積まれて参加してもらえ、参加者にとっても、内容的にも一段と厚みが加わった感がある。

    吉田先生他のお力もあり、中部地域の広範囲にわたって参加者が増え、全体として大きな影響力を持つような企画に発展してきたように感ずる。まさに継続は力なりという印象。関係者の御尽力に深く敬意を表する次第です。

 

 

古田富彦

 

@基調講演について

    講演の内容が充実しており、原子力の10の疑問、質問に答える章を設け、講師が 指名質問しながら話したのは効果的であった。全体として講演時間を少し短くしてグループ対話を長くする工夫はないか検討の余地がある。

 

Aグループ対話について

    エネルギー教育のあり方、目に見える教育の必要性について議題となり、福井県美 浜町の「エネルギー環境教育カリキュラム」、「エネルギー環境教育の理論と実践」(佐島群巳ら編、国土社)、九大工藤先生がまとめられた「新学習指導要領に基づく小中学校教科書のエネルギー関連記述に関する提言」(原子力学会原子力教育・研究特別専門委員会の調査報告)が紹介されたが、具体的な内容について検討する時間はなかった。一方、「エネルギー環境教育」を正規の教科とすることが提案されたが、教員免状、カリキュラム、教育現場の問題等いろいろな制約があることが羽澄先生から説明があり、簡単ではないことが判明した。当分はアウトソーシングによる教員養成、視聴覚に重点をおいた出前授業、見学会等が考えられるが、受講者のレポート提出は必須であると思われる。

    「チェルノブイリのような事故が日本の原発でも起こらないか」、「飛行機衝突時の耐久性、テロ対策、耐震性、事故時の発電所からの放出放射能」などの質問があり、一通り説明されたが時間不足で十分理解されたようではなかった。時間延長が望まれる。

 

Bグループ対話に“ファシリテーション手法”を用いた効果について

    特定の人に質問、回答、意見やコメントが偏らず万遍なく発言の機会が与えられ、議題が整理・集約されたことはよかった。一方、時間が足りなく議論の内容を深めるには今一の感があり、時間延長と今後の工夫・習熟が期待される。

 

C準備や運営について

    参加者から事前に質問を取り、回答集をまとめ配布したことは、時間の節約にもなり、SNWの熱意を示す証左であったと思う。3回目の対話会でもあり、吉田先生のご尽力で大変スムーズに運営されたと思う。

 

Dその他

    最後の各グループの報告は、短時間でまとめる教育訓練がよくなされており、教育大学ならではと感心した。

 

益田恭尚

 

愛教大での対話会は興味があるだけでなく、非常に有意義であると考え3回共参加させて頂いた。今回も吉田先生のご努力と、ご仁徳により先生方の参加が得られ、新たな経験を得ることができた。

@基調講演について

    PPをはじめ準備もよく、しゃべり方もゆっくりで、途中質問を入れるなど中々良かったと思う。最後に質問を用意しての説明も新方式で真似るべきだと考える。1時間と長めに時間が取ってあったが、やはりもう少し時間を取るか、内容を絞るかする必要がある。

Aグループ対話について

    今回我々の班の課題は「原子力発電所の安全性、環境問題」であったが、参加者は明日から児童・生徒にどう教えたらよいかということを常に考えていて、真剣味が違うように感じ好感が持てた。

    PPTを纏める能力も、発表の仕方も、日頃の訓練のためか要領がよく、エネルギー問題にしろ、放射線についても、耐震設計についても、マスコミ報道についてもよく理解して頂けたと安心した。

Bグループ対話に”ファシリテーション手法”を用いた効果について

    今回はファッシリテーションシステムの真似ごとを取り入れたが、期待する成果や、疑問点を紙に書いてもらうことは、質問者の考えが整理され、質問が明確になり、記録が残るという点だけでも非常に効果があると考える。ただ、耐震設計等複雑な問題がテーマで、質問者が内容について知識がない場合、やはり一応の説明が必要となり、あまりファッシリテーションシステムとはなじまない。

    黒板があったためファシリテーターが説明の内容を黒板に箇条書きで記載されたのは、理解してもらうという点では非常に効果があったと考える。

    必ずしも意見統一が第一義ではないので、今後ともファッシリテーションシステムの良いところを取り入れ、臨機応変のやり方で実施する方が良いのではないかと考える。ただ、ファシリテーターは皆に質問なり、意見なりを発言してもらうよう問いかけの努力が必要であると感じた。

D                 準備や運営について

    ないものねだりをしても仕方がない。午前中に時間をとり、食事の時間も有効に活用するなど非常に良かったと思う。

 

 

松永一郎

 

@基調講演について

    基調講演内容は全体的な話から始まって、エネルギー源の比較、世界のエネルギー事情、そして原子力へと構成がよいので原子力の重要性が自然に分かるようにできていると思う。

    適宜、質問を交えるのは印象を強くするのでよい方式かと思う。特に事前アンケートを出したものの中から該当者を選び指名して聞くのは、そのまま「質問なし」として次の質問にいくよりよい。

    最後の原子力の疑問、質問に関して、挙手により、「どの問題について聞きたいか」というのは項目別の関心の深さを知る上でよい方法かと思う。

 

Aグループ対話について

    どの発表グループも上手く説明しており、十分に理解していた事が感じられた。

    予めまとめのテンプレートを決めていたのはグループごとに「何を話し、どう疑問を解消し、自分達としてそのテーマにどう向き合うか」ということがクリアーになり、またグループ間のレベルに差がなくなるので、非常に良かった。

    Cグループは「他のエネルギーと原子力エネルギー、原子力に関する仕事」と言うテーマであったが対話の殆どは前半に集中した。先生として教える立場からは、前半のテーマが重要であり、後半のテーマは漠然としていて教育のテーマになりにくいためかもしれない。

 

Bグループ対話にファシリテーション手法を用いた効果について

    できるだけ全員に話をしてもらうと言う点では非常に良い方式である。

    Cグループは学生3人、先生4人、シニア2人の構成であった。学生を指名してもなかなか的確な答えが返らないので、つい先生方へ指名が多くなってしまったことは反省している。

    しかたがないことではあったが、机が実験台だったので2列に対面する形となり、参加者どうしで議論すると言うことがしにくい配置であった。またポストイットを広げることができず、それを囲んで皆で論点を集約化するという作業ができなかった。

 

C準備や運営について

    非常に行き届いており、特に言うことはありません。準備から終了までいろいろとご尽力された吉田先生他、関係者の方々に敬意を表します。

 

路次安憲

 

@基調講演について

    原子力を巡る世界的な話題/課題を豊富な図を用いて説明され、非常に立派なプレゼンテーションであったと思う。また、要所要所で設問を設け、会場の人たちを指名して回答を求めたのも、適度な緊張感を与えて良かったと考える。

    ただ、全体の分量が多いので駆け足の説明となり、基礎知識のない学生たちが本当のところどこまで理解してくれたかは気にかかるところである。

    最後の「10の疑問、質問に答える」は、後で読んでもらう観点から添付しておくのはいいが、今回の場合は伊藤さんが各シニアの回答を纏めていただいていたので、その資料の経緯と、どのような項目が触れられているかの説明に置き換えても良かったのではと考える。

    永井博士の話を入れられたのはヒットだと思います。我々の子供の頃は「偉人伝」を読んで将来を夢見たものだが、最近は学校教育でもそのような活動が少なくなっていると聞いている。このような立派な先人の感動的な話は是非小学生たちに教えてほしいものである。

 

Aグループ対話について

    我々のBグループは、学生4名、教員3名、シニア2名とバランスが良く、みなさん自然な形で発言していると感じた。

    “安全”と“環境”がこのグループのテーマであったので、「原子力の耐震安全性」と「エネルギー・環境問題と原子力教育」のふたつのテーマに取り組んだが、時間的な制約からとくに教育への提言は消化不良に終わった。実質2時間半程度ではひとつの話題に絞るべきだろう。

    「耐震安全性」は一番希望の多かったテーマだが、実際にどのような設計/対処がなされているのかについての知識はシニア以外の全員がほぼ皆無であったので、その説明と討議に時間をとった。幸い黒板のある教室だったので黒板に要点を書きながら説明できたのは基本的な理解増進に役立ったと思われる。

    単なる理想を求めるのではなく、地に足をつけて科学的/合理的に考え、考えさせる必要性について全員が共有できたのは良かった。

 

Bグループ対話に”ファシリテーション手法”を用いた効果について

    私がファシリテータを勤め、できるだけ全員に発言してもらうこと、議論を絞り込むことには注力したつもりだが、結局は普通の司会者以上ではなかったかも知れない。

むしろAでも記したように、ポストイットをグループ化しながら黒板に補足要点を書きつつ進めたのは、理解の共有化の観点で良かったと感じている。

    いずれにせよ、ファシリテーションを取り入れていくことの理念は良いことなので、経験を積みながら臨機応変に対応できるようになればと考える。

 

C準備や運営について

    愛知教育大での対話には初めて参加させていただいたが、立派な運営で申し分ないと思います。吉田先生を始めスタッフの皆様のご尽力の賜物でしょう。

 

Dその他

    現職の先生方が参加した対話はやはり地に足がついたというか、私にも参考になるところがあって非常に良かったと思います。

    学生さんたちも、自分が子供たちに教えるとすればどのようにしようかと考えながら質問しているようなところもあって、全般的にレベルの高い、いい対話ができたと考えている。

 

渡邉泰臣

 

@基調講演について

    原子力の必要性を重点に、石油代替エネルギーの現状と課題、原子力開発の歴史に触れられ、これからを考えて頂くにふさわしい、よく練られたご講演でよかったと思います。あれやこれやと思うところが多くなるのですが、最後の10の疑問質問を付けられたところは感服です。

    私どもで行っている学生対象の見学会でも、ご了解を得て、一部を活用させていただきたいと思いました。

    事前にご質問頂いた回答の解説をグループ対話の前に出来たら、共通の認識の土壌が出来やすいと思いましたが、なにせ遠方から集合し限られたこの時間ですから、悩ましい問題だと思いました。

 

A対話について

    FT方式は、皆さんが対話に参加しやすくし、論点を整理して進めるためにいい方式だと思います。

    A班は、学生さんが1名となってしまい、現役の先生3名とのグループですから、少々学生さんが気の毒に思いました。これからもいろんな場面があると思いますが、学生さんは出来ることなら2名以上にはしてあげたいと思いました。

 

B感想

    中原懇でも、学生の施設見学には力を入れておりますが、この機会(対話活動)を通じて、学生さんや現役の先生からの思いを聞くことは、大変勉強になっております。まず、聴き上手になって答えていきたいと思っております。

    次世代を担う学生さんへの活動を広げたいと思っております。ただ、中原懇のチャンネルはそう広くはありませんので、シニアの皆様への参加は、願ってもない機会とありがたく感謝しております。

    中部地区では、(私が転勤して2年経ちますが)年々、見学や出張授業への依頼が増えております。(19年度の見学会は年間50回でしたが、20年度は60回に、予算が悲鳴でしたが)昨年のガソリン値上げによる生活への切実な影響やその前の年の新潟地震など、よくも悪くもエネルギーに関心が向くきっかけにはなったのではないでしょうか。

    愛知教育大学の吉田先生をはじめ、シニアの皆様 大変ありがとうございました。

 

大津浩一

 

@基調講演について

    内容は面白く、語り口も良かったが、予備知識がない参加者には説明が早いかもしれません。特に、各スライドの説明が終わった後に、ひと呼吸おいてからスライドを進めると理解が深まると思います。内容を減らすのも一法かと思いました。

    教室最後部ではスクリーンが見にくいので、すべてのスライドの印刷がほしい。帰宅後に講演を見直すときも、あったほうが良い。逆に知識を十分持っている参加者のために、見ておいてくださいという詳細を説明するスライドは逆にあってもいいかと思います。

    永井博士の話を入れたのはとてもよかったと思います。修学旅行の事前学習でぜひ入れようと思います。午後の対話のことを考えると、リスクの評価のために年度と死者数のグラフを原子力発電、インフルエンザや自殺、交通事故、ガン等で示すのはどうでしょうか。

 

Aグループ対話について

    所属したグループでは学生数が3、それ以外が7だったのですが、学生は萎縮することなく、内2名は、原子力に否定的な思いを持って参加したとの表明もあり、深い対話ができたと思います。私も反省するところですが、つい、語ってしまうのを自己コントロールするのはむずかしいと感じています。

 

Bファシリテーション手法について

    ありったけの情報をすぐに伝えるのではなく、整理してからというのは、受け取る側が、自分が気が付いていなかった問題点も把握できる利点は大きいと思います。また、私を含め、つい語ってしまうシニア側の発言をコントロールすることで、学生側の発言時間が増えたとも思います。さらに、シニア側も自分自身の問題意識を再確認できるし、お互いに、どんな問題意識を持っているかを知ることも有意義でした。

 

C準備や運営について

    事前アンケートはとても有意義でした。また、回答集も充実していました。語り尽せなかった部分をだいぶカバーするかと思います。また、リピーターとなった出席者の考え方を抽出できるのも意義があると思います。アンケートをもとに、基調講演で意見を求めたのもよかったと思います。

 

Dその他

    ESD的な視点はもちろん含まれていたのですが、教員にとっての教育の根拠(錦の御旗)になる場合もあるので、ESDとしての意義も明確に示すことは意味があるかとも思います。放射線が指導要領に含まれたことをアピールするのは、自信を持って指導する根拠になってよかったと思います。配布資料が多すぎて、見てもらえるだろうかと思いました。

 

以上