パネル冒頭発言要旨
東京電力柏崎刈羽原子力発電所
所長 出澤 正人
地元議会の誘致決議を受けて30年。柏崎刈羽原子力発電所は誘致決議で求められた使命をほぼ達成しつつある。発電所は一昨年に竣工し、15年に及ぶ運転実績においては累積平均84.3%、昨年度は86.8%の稼働率、現在では東京電力全体の電力需要の21%を賄い、わが国のエネルギーセキュリティー確保の一翼を担っている。また誘致当時の市長が国に求めた電源地域の支援策は電源三法交付金制度の創設により実現し、結果、地元のインフラや公共施設整備は極めて充実している。さらに、発電所の建設投資は新潟県経済の活性化にも貢献してきた。
しかしながら、いまだ「原子力発電所=迷惑施設」との意識が地元の方々に根強く残っている。この最大の理由は、原子力の持つ潜在的危険性の故に、原子力技術に関する非現実的な「完全性」が常に期待されることにある。トラブルの発生の度にこの「完全性」が損なわれ、重大問題という主旨の報道等により、一般住民の方々の意識に「不信・不安」が残るという構図がこれまで繰り返されてきた。
原子力発電所の安全性を実感していただくことは「完全性」への期待ではなく、原子力施設の安全理解の上で他の産業同様に「受け入れ可能なリスクレベルである」という認識が地元の方々に広く浸透することである。普通の産業として定着して行くためには、第三者による原子力施設運用の安全性に対する客観的評価と判断、また教育現場におけるバランスのとれた原子力教育の実践等が喫緊の課題と考えられる。