「サイクル機構における再処理技術開発の取り組み」 杉山俊英 

サイクル機構東海事業所再処理センター副センター長

 軽水炉燃料再処理技術開発として、東海再処理施設における運転・技術開発実績と今後の計画を報告し、続いて、高速炉燃料再処理技術開発の現状と計画について報告する。

 東海再処理施設は、我が国初の再処理工場として1977年のホット運転開始以来20余年、本年3月末までの累積処理量は約950トン(金属ウラン換算)、燃料集合体数にして約4,500体を再処理してきた。回収したプルトニウムは約6.5トンに上り、混合酸化物(MOX)燃料製造技術の開発や「もんじゅ」、「ふげん」等の新型炉開発にも大きく貢献してきた。

 東海再処理施設の使命は、国内再処理需要の一部を賄うと共に、パイロットプラントとして再処理技術の国内定着を図ることにあった。主工程の設計は海外技術に依存したが、許認可、建設、試運転を通じ、国内メーカも含め技術の咀嚼・習得に努めると共に、技術の改良・開発に取り組んだ。

 試運転以降、酸回収蒸発缶や溶解槽等、相次ぐ主要機器の腐食故障を経験し、材料開発や施工方法の改良等、国産技術によりこれらの困難を克服すると共に、高放射線量下における直接保守、間接保守の技術を蓄えてきた。また、我が国特有の事情に鑑み、環境保全のための放出放射能低減化、核不拡散に係るフルスコープ査察の受け入れや保障措置技術の開発、ウラン・プルトニウム混合転換技術の開発・実用化等、他に類を見ない技術開発にも取り組んできた。

 我が国の本格的な商用再処理工場である六ヶ所再処理工場については、東海再処理施設でこれまで蓄積してきた運転・保守データや技術的知見の提供はもとより、技術者の派遣、ホット・フィールドを活用しての試験の受託や研修生の受け入れ等を1980年代から継続してきている処である。

 今後の東海再処理施設の運転は、民間再処理事業者等に対する支援・協力を重視した研究開発を基本としている。具体的には、平成17年度頃までに電気事業者との既契約に基づく軽水炉使用済燃料及び「ふげん」使用済燃料の再処理を行い、それ以降は再処理技術の高度化に向けた研究開発として、「ふげん」使用済燃料の再処理と併せ高燃焼度燃料や軽水炉使用済MOX燃料の再処理を計画している。

 高速炉燃料再処理技術開発は、東海再処理工場の経験をベースに昭和50年から開始し、従来型PUREXで高速炉燃料も再処理できることをCPF(高レベル放射性物質研究施設)で実証した。また、レーザー解体機、連続溶解槽、遠心抽出器などの新型機器をリサイクル機器試験施設(RETF)でホット実証できるレベルまで開発した。以上から35万円/kgの処理コストが達成できる見通しを得た。

 サイクル機構では、現在FBRサイクル実用化戦略調査研究を実施中であり、革新的な技術を含め湿式法及び乾式法について幅広い開発を行っている。湿式法では、晶析法、単サイクル抽出、直接抽出法、イオン交換法等を視野に入れ、将来の軽水炉に匹敵する27万円/kgを目標としている。乾式法については、ロシア流及び米国流の溶融塩電解法をベースに、経済性、資源の有効利用性、環境負荷、核不拡散性の点でより良い、日本独自のプロセス構築を目指す。CPFでPu試験を電中研との共同研究で準備中。新しい再処理法の確立は一大事業であり、一歩ずつ着実に進めていく考えである。

 実用化戦略研究については、現在フェーズ1を終了したところであり、湿式法及び乾式法について実用化候補概念を抽出した。今後5年間のフェーズ2で要素技術開発を行いその結果をもとに湿式乾式各1つに候補技術を絞込み、将来の比較評価につなげる。

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