「再処理に関する原研の研究活動」 藤根幸雄 

原研燃料サイクル安全工学部長


 原研は、その設立理念において、「将来におけるエネルギー資源を確保し、学術の進歩と産業の振興とを図り、もって人類の福祉と国民生活の水準向上に寄与する」としております。エネルギー分野においては、長期的な原子力エネルギー利用を推進する観点から、原子力安全技術、革新的原子力技術などの研究開発を推進するとともに、物質・材料科学、環境科学など21世紀の科学技術を先導する原子力科学技術研究に取り組み、その成果を社会に還元し、社会に受容される科学技術の発展に努力していくこととしております。

 再処理に関しましては、長期的原子力エネルギー利用を推進する研究開発を行うという観点から、また、21世紀の科学技術を先導する原子力科学技術という観点から、将来の社会的ニーズの多様性を考慮して、原子炉や核燃料サイクルに関して、幅広い選択肢を検討し、柔軟に研究開発に取り組むこととしております。具体的には、ピュレックスプロセスの基礎研究、TRU高温化学研究、新規抽出剤の研究開発、超臨界二酸化炭素による分離研究、溶液燃料の臨界安全性研究、再処理耐食材料の研究などのテーマを、それぞれの観点に位置付けて、積極的に研究を進めております。

 ピュレックス分離プロセスの基礎研究については、NUCEFαγセル内の再処理プロセス試験装置において、燃焼度45,000MWd/tの使用済み燃料を用いたフローシート試験を行っております。TRU高温化学研究では、原電との共同研究として、NUCEFに鉄セルから成る研究施設を整備しております。新規抽出剤としては、U、Puのみならず、Np、Am、Cmなどのアクチノイドに対して、硝酸濃度が高い条件でも分配係数が大きい抽出剤の開発を行っております。先進基礎研究として、超臨界二酸化炭素によるU、Puの分離回収技術の基礎研究を行っており、将来の可能性を探っております。再処理施設の安全性研究としては、耐硝酸性機器の防食技術の開発研究を行っております。臨界安全性に関する研究については、STACY、TRACYなどのNUCEFの実験施設を用いて、再処理施設を想定した硝酸溶液に対して、定常臨界特性研究、超臨界事象研究などを実施しております。

 NUCEF(燃料サイクル安全工学研究施設)では、これらの研究のうち、放射性物質を用いたホット実験の多くの部分を行っております。原研は、NUCEFなどの大型研究施設を中心として、大学、国内関連研究機関、産業界、さらに海外の研究機関と連携し、これらの分野に関する安全性の向上、科学技術の発展、人材の育成などを図り、技術基盤の強化に貢献して参ります。このような観点から、今回設立された本部会の活動に貢献して行けるものと考えております。

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