先進的燃料サイクル −乾式技術−

(財)電力中央研究所
金属燃料・乾式リサイクルプロジェクトリーダー
井上 正

将来にわたり原子力発電を我が国の基幹エネルギーとして利用していくためには、核燃料サイクルの確立が不可欠であり、その燃料サイクルには経済性のみならず、環境負荷の低減や強い核拡散抵抗性などの要件が求められる。この燃料サイクルの要となるのが使用済み燃料のリサイクル技術である。リサイクル技術には、湿式法である従来のピューレックス法を簡素化する方法に加え,これまで実用的な面からは開発がなされなかった乾式法がある。しかし、簡単なプロセスで目的とするアクチニド元素が分離できることや、これまでと異なり核拡散抵抗性のうえで低除染燃料が好ましいなどの面から乾式技術が注目されている。

乾式技術には、溶融塩を用いて電気化学的にアクチニド元素を分離する金属電解法や酸化物電解法、および蒸気圧の差を利用して分離するフッカ物揮発法などがある。これらの研究は1950年代、60年代から米、露で続けられてきたが、我が国でもその利点に着目して1980年代前半から精力的に研究開発が開始された。本部会ではこの中で金属電解法ならびに酸化物電解法を中心に技術の特徴、分離の原理、研究開発状況や今後の開発課題について紹介する。

一方、現在の余剰プルトニウムの処理や、効率的な廃棄物処分を狙って、使用済み燃料を処分する前の処理技術、さらにプルトニウムも含めて超ウラン元素(TRU)を短寿命核種にするためのTRUの燃焼システムにおいて乾式技術が中核技術として組み込まれている。このような乾式技術を巡る国際的な状況についても紹介する。

新しい原子力システムでは、炉、燃料形態、リサイクルシステムが効率的に整合性を持ったシステムとして構築されていることが必要であるとともに、原子力シナリオを柔軟に運用するためには核燃料サイクルに複数の選択肢を持っておくことが必要である。このような中、乾式技術が実用化できれば、今後の原子力システムにおいて重要な役割を果たすことが期待できる。

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