FBRサイクルシステムの構築に向けて

〜再処理技術を中心として実用化戦略調査研究の検討〜

核燃料サイクル開発機構  船坂 英之

はじめに

実用化戦略調査研究は、安全性の確保を前提に、軽水炉サイクル及びその他の電源と比肩する高速増殖炉(FBR)サイクルシステムを示し、将来の主要なエネルギー供給源の確立に資する技術体系の整備を目的として、電気事業者、電力中央研究所、日本原子力研究所等の関係機関の参画・協力を得たオール・ジャパン体制で、1999年7月から開始された。本研究の最初の約2年間(フェーズI)では、革新技術を採用した幅広い技術的選択肢の検討評価を行い、実用化戦略を明確にする上で必要となる判断材料を整備して、有望な実用化候補概念を抽出するとともに、その研究開発計画を提示することとし、2001年3月にその成果を取りまとめた 。本報告では、実用化戦略調査研究フェーズIの成果と、その後の研究開発の展開について紹介する。


実用化戦略調査研究の考え方とフェーズI検討結果

実用化戦略調査研究では、将来の社会の多様なニーズに柔軟に対応できることを念頭に開発目標を設定し、FBRサイクルが本来有する長所を最大限に活用してFBRと燃料サイクル(再処理と燃料製造をいう)の整合が図られたシステム概念を検討し、安全性、経済性、資源有効利用性、環境負荷低減性、核拡散抵抗性等の指標を用いて評価することで、有望な概念を抽出した。

燃料サイクルシステムの検討では、幅広く技術を調査・分析して、燃料形態との組合せを含むFBRサイクルへの適用性から対象とする技術を選定し、概念検討を行った。再処理システムについては、湿式法として、軽水炉燃料の再処理法として実績のあるPUREX法を改良した「先進湿式法」を、乾式法として、溶融塩中での電解を利用した「酸化物電解法」及び「金属電解法」、並びにフッ化物気体の生成し易さの違い等により燃料とFPを分離する「フッ化物揮発法」を検討するとともに、これらの再処理技術と整合が図られた燃料製造技術について検討し、以下の結果が得られた。


実用化戦略調査研究フェーズII検討の展開

実用化戦略調査研究では、フェーズIによる有望概念の抽出に引き続き、フェーズII(5年間程度)以降での工学的試験等を踏まえて、複数の実用化候補概念を絞込みむとともに、併せて必須の研究テーマを特定していくこととした。フェーズIIでは、各々の技術についてシステムと要素技術の連携を図りながら、可能な限り定量的な相互比較・評価を効率的に実施できるよう、中間まとめと最終まとめを実施する。

先進湿式法については、晶析技術、簡素化溶媒抽出技術(単サイクル低除染抽出)及びMA回収技術を中心としたプロセスと関連する機器開発について、代替補完技術の適用性確認も含めて実験研究を実施し、技術的成立性の評価を行う。

酸化物電解法と金属電解法については、国内のインフラの整備から開始する必要があるものの、類似の技術であることから共通課題も多く(脱被覆技術、塩処理技術、保障措置技術等)効率的に研究開発を実施するための計画を策定した。

酸化物電解法固有の技術開発については、塩素化溶解、MOX共析を中心としたプロセスの枢要技術を対象とし、海外協力を含めて技術的成立性を確認することとしている。金属電解法については、金属燃料サイクル技術の分野において経験を有する電力中央研究所との共同研究のもと、高レベル放射性物質研究施設(CPF)にPu試験用のグローブボックスを設置し、2002年度より電解、陰極処理、Li還元に関する小規模Pu試験を実施し、技術的成立性を確認することとしている。

また、これらの要素技術開発と並行して、試験成果を設計研究に取り込み、候補概念の具体化を図るとともに、可能な限り定量的な相互比較・評価を実施できるレベルまで設計研究を深める。


今後の展開

FBRサイクルシステムの構築に向けては、要素技術開発を個別に進めていくだけでは、システム全体の整合を図るという当初目標を十分に満足することはできない。このため、システム開発と要素技術開発、再処理技術と燃料製造技術、燃料サイクルシステムと炉システムといった相互の連携を図る必要があり、再処理と燃料製造を一貫したサイクル技術としてみた湿式法システム、酸化物電解法システム及び金属電解法システムの検討を行うとともに、炉技術との接点である燃料開発についても情報共有と開発計画の調整をはかっていく。また、FBRサイクルシステムの付加価値として、近年注目されている環境負荷低減性を中心に、従来の「必要なものを、きれいに取り出すサイクル」ではなく、「不要なものを最低限取除くサイクル」を目指した、革新的なリサイクル技術の検討も実施していく。

これらの検討を参考に技術開発をすすめ、フェーズII終了後の研究開発については、5年程度ごとにチェックアンドレビューを受けながら、ローリングプランで柔軟に計画を遂行することで、安全性の確保を前提として競争力のあるFBRサイクル技術体系を2015年頃に提示することとしている。

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