「湿式再処理技術の高度化」

核燃料サイクル開発機構 東海事業所 先進リサイクル研究開発部
青嶋 厚

1. はじめに

核燃料サイクル開発機構では、安全性、経済性、資源有効利用性、環境負荷低減性、核拡散抵抗性に優れたFBRサイクルシステム実用概念の構築と、実用化に向けた研究開発シナリオの策定を目的とした、実用化戦略調査研究を推進しており、2年間のPhase-Iの後、本年度よりPhase-II(5年間)を開始している。
先進湿式再処理技術開発においては、晶析法、簡素化PUREX法及びSETFICS/TRUEX法を組み合わせたプロセスをレファレンスとして開発を進めると共に、これに対して更に経済性等を向上させる可能性のある代替・補完技術の開発も進めている。
東海事業所においては、これらの技術開発をプロセス開発、機器開発及びプラント設計等の観点より総合的に進めており、その技術開発は、高レベル放射性物質試験施設(CPF)、応用試験棟(EDF-I、II)、実規模開発試験室(EDF-III)といったそれぞれ特徴を有する試験施設群において進めている。この内、CPFは実際の使用済燃料を用いた試験を行うための先進湿式再処理技術開発の要となる施設であり、平成8年より開始した改造工事を本年度中に完了し、来年度より試験を開始する予定である。
本発表においては、以上述べてきた東海事業所における先進湿式再処理技術開発の概要とCPFの改造工事の現状について紹介する。

2. 先進湿式再処理技術開発

現在開発を進めているレファレンス技術は、単サイクルのU/Pu/Npを共回収する簡素化PUREX法と抽出工程からのラフィネートからCMPO及びDTPAを用いてAm/Cm/Lnを回収・分離するSETFICS/TRUEX法を主軸とし、これにヘッドエンド部での晶析を組み合わせた構成としている。又、晶析法への高濃度溶解液フィードのために粉化燃料技術(燃料粉化・溶解技術)の適用を検討している。レファレンス技術については、その工学的フィジビリテイを確認するための試験を進めていく。
また、プロセス開発と並行して、遠心抽出器、改良型解体・せん断装置、機械式燃料粉化装置等の機器開発検討も合わせて実施していく。
一方、代替・補完技術としては、直接抽出法、アミン抽出法等の新しい技術についての検討を行っている。この内、直接抽出法には、超臨界抽出法と常温・常圧抽出法について検討を行っている。これら技術は、レファレンス技術に対して大幅な経済性向上の可能性を有するものであり、基本的なプロセスのフィジビリテイを確認するための試験を進めると共に、このような観点で今後も他の新技術についてもサーチ、検討を継続する。

3. CPFの改造

CPFの改造工事は、平成8年より開始したが、途中アスファルト施設の事故等があり大幅に遅れた。このため、平成11年より改造工事を本格的に開始し、現在、平成12年度内に完了する予定であり、工事終了に向けて作業を急ぐと共に、来年度からの施設利用についての検討を行っている。
改造工事は、大小多くの工事より成るが、主な改造工事としては、CA-3セルの改造、実験室Aの改造、分析室の改造、実験室Cの改造の4工事より成る。CA-3セルは、照射済み燃料を用いたホット試験を行うためのホットセルのうち、溶解槽、清澄機、抽出器を設置するメインセルであり、工事ではセル内の機器を全て撤去し、新たな設備を設置した。
分析室及び実験室Aには、新たにグローブボックス、フード等を設置し、主として前者はU/Pu回収技術開発に後者はMA回収技術開発に使用する。
実験室Cは、乾式再処理技術開発に使用するエリアであり、金属電解法による乾式再処理技術開発を行うためのグローブボックスを設置する。なお、本技術開発は(財)電力中央研究所との共同研究として実施する。

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