再処理・リサイクル部会 設立趣旨
 
 我が国の再処理事業は、東海再処理工場本格操業開始の昭和56年1月(ウラン試験は昭和50年9月)に始まり、約20年の実績がある。六ヶ所再処理工場の建設が平成5年4月からはじまり、平成17年7月に運転を開始する予定である。その処理能力は日本の原子力発電所の使用済み燃料の大半を処理できる能力である。このことは、わが国の本格的なリサイクル路線の到来を意味し、将来のエネルギー危機に対する大きな備えが構築されることを意味する。
 現在、六ヶ所再処理施設への使用済燃料搬入も開始され、我が国の本格的な商業再処理が重要な段階にさしかかっている。
 一方で、オールジャパン体制でFBRサイクルの経済性向上を目指した調査研究(実用化調査研究)が1999年7月より推進され種々の次世代の再処理概念が検討評価されている。
 他方、六ヶ所再処理施設の次の再処理工場の検討にあたっては、これまでの運転、補修および改善等の実績を十分反映することがまず必要である。更に、原子力燃料サイクルのトータルコスト低減、環境負荷の低減、固有の安全性の確保も不可欠であり、日本の国情に適合した燃料サイクルの確立が望まれる。

 JCO臨界事故発生の影響、放射性廃棄物の処理処分等の今後に残されている課題等から、再処理を取り巻く環境は厳しいものの、原子力発電は二酸化炭素放出抑制の観点から地球温暖化抑制の有力な手段として期待されている。更に有限な天然ウランはいずれ枯渇することに成り、エネルギーの大半を海外に依存するわが国として、その備えの手段(ウランをリサイクルするために再処理する)をもつことは必須である。

 今後の再処理プラント運転に伴う各種不具合を未然に防止する方策など、各種の具体的技術課題についても学会として客観的な立場から検討し、必要に応じて提案を行っていくべきである。
 更に、「六ヶ所再処理工場の進展」「実用化戦略調査研究の進展」「電中研の金属燃料再処理のプロジェクト化」「海外のハイブリッド再処理の研究開始」等の再処理技術を取り巻く大きな変化の流れを関係者各位が知見を共有し、議論を深める場が必要である。
 このような状況から、「再処理」並びにリサイクル技術に関し、蓄積した工学的経験、知見の整理・評価・適用、安全で信頼性、効率性のある管理手法の研究、安全性・リスク評価に関する更なる研究、設計から廃止措置にいたる間の望ましい規制システム、新しい再処理システムに関する研究等を活発化させ、国内に留まらず世界をリードすると共に、社会に発信し、産業活動と地球環境の調和に貢献するべく活動することは、原子力学会の使命と考える。
 すなわち、このような時期に、前述の活動の場として「部会」を設立することは、必須であると考える。
 一方、いまや中間貯蔵問題、プルサーマル再処理も含め、プル利用では炉とからめ広く議論する必要もある。
 すなわち再処理を中心に「部会」の活動を通し、外国の研究機関との連携、海外の学会への情報発信(国際学会の開催に合わせて、合同ミーテングの計画等)も含めて、過去の経験と最新技術開発動向を議論し、今後の再処理のあり方を提言していく。
 更に、長期にわたる研究開発が必要なリサイクル路線の中核を占める再処理分野も大学での活動が低下しており、大学の先生方に「部会」に積極的に関わって頂き、研究はもちろんのこと学生および国際会議等での情報発信や情報収集に期待するところである。
 再処理工場を建設している唯一の国としての日本は、純技術的な観点から国内外に情報発信する透明性が求められ、「部会」がその一翼を担うべきである。

 なお、本部会のメンバーは、日本原子力学会員で構成されるが、前述のように再処理技術はエネルギーセキュリテイを構築するリサイクル路線の中核をなすものであり、また今後は透明性を強く求められることから、広く外部に開かれたシンポジウム等を開催するなど、他の関連学協会との連携も推進することとする。

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