PWRにおけるプルサーマルについて
桑原 茂(関西電力)





・世界のエネルギー需要は今後も増加。一方資源量には限界。
・日本の一次エネルギー自給率は19%。
・原子力のCO2発生量は0.022g/kWh。
・原子力発電→少量で発電。輸送・貯蔵が楽、CO2少。リサイクル可能。
・回収ウランリサイクルは日本で実現、Puリサイクルはまだ。
・燃焼前ウラン2354%、発電後FP5%、Pu、ウラン2351%ずつ。
・再利用できるウラン、Puを軽水炉で使うと、約25%の資源節約。廃棄物の取り扱いも楽に。
・海外再処理による回収Pu30トンは石油4500万トンに相当。
・高レベル廃棄物の発生量は1/10。日本人が一生の間に使う電力をすべて原子力でまかなったとしても、一人あたりゴルフボール3個くらい。
・プルサーマルの経済性→加工代高、天然ウラン、濃縮不要。トータルでやや高。
・原子力発電コストに占める燃料代は約3割、プルサーマル燃料は1/10しかないので、コストへの影響はほとんどない。
・MOX燃料使用→美浜1号で4体試験。フランスでは、157体中、48体の使用実績。高浜では157体中40体を計画。
・世界では、3000体以上を利用。日本では美浜で4体、敦賀1号で2体。
・燃料仕様→ウラン235が0.2%、Pu富化度6.1%、45000MWd/t。
・核特性→制御棒の効きが悪化、自己制御性高、集合体周辺の出力高
・制御棒の効き→MOX燃料を避けて制御棒を挿入
・ホウ素の効き→ホウ素濃度を上げる。
・自己制御性→安全性が高まる。
・ドップラー係数→安全性が高まる。
・周辺出力→集合体周辺にいくにつれて富化度が下がるようにピンを配置。
・Puの核分裂寄与割合→ウラン燃料は30%、MOXは50%。
・機械的特性→融点低下、ペレット温度上昇、ペレット中心部温度低、FPガスによる内圧上昇
・融点→Pu量が増えると、融点低下、熱伝導度低下。燃料設計基準:ウラン融点2800度、実際は2270度(異常時)、MOXは2730度、実際は2260度(異常時)。
・内圧→初期He圧を低下。
・輸送→SF輸送容器とほぼ同等。輸送船はMO基準をクリア。
・日本のプルサーマル→1961年の長計に記載。1972年にMOX仕様の設置許可取得。1986年〜1994年に少数体MOX試験・照射後試験。
・1999年MOX燃料輸送。1999年12月BNFLデータ改竄発覚。
・2002年7月〜9月高浜よりMOX燃料返送。
・2002年8月東電問題。新潟、福島事前了解白紙撤回。関電は燃料返送を第一ステップとして信頼回復につとめたい。
・1997年の計画では、2000年までに4基でプルサーマルが行われる予定だった。

(エネルギー政策研究所所長神田)プルサーマルの値段がインチキくさい。マルチサイクルに触れてないのはなぜ?言った方がよい。日米会議で、3サイクル目以降どうなるかの評価をしている。解体核を混ぜようという議論。マルチリサイクルはあたりまえとなっている。

(桑原)25%節約は1回リサイクルの場合。神田先生がおっしゃったのは、使用済MOXをどうするかという話。技術的な可能性としては、MOX燃料の方がPuをたくさん含んでいるので、再処理工場の稼働率が落ちる。フランスでは、通常燃料で薄めて再処理する方法を検討。もうひとつは高次Puができるという問題。現実的には、ウラン燃料9、MOX燃料1でしかないので、大きな影響はないのではないか。FBRになれば大丈夫では。

(神田)高速炉が実用になるまでは解体核を混ぜる、実用化されたら、Puがきれいになって返ってくるので、軽水炉にも使える。

(井上)MAが増えるので、遠隔操作にも影響があるのでは。

(三菱井上)高速炉立ち上げの時にはPuが大量に必要。MOXSFはPuストックとして利用できるのでは。

(東大山脇)MOX再処理を繰り返し、高次Puができて劣化していく。高速炉ができればいいが、先になるかもしれない。我々のグループでは、ハイドライドの形でプルサーマル利用することを検討している。

(神田)もう少し詳しく教えてください。

(山脇)東北大コナシ先生、東電、原燃工でいわきの学会で発表。もともとは高速炉利用のためにハイドライドを考えていたが、軽水炉の場合を計算してみたところ、効率がよかった。

(桑原)今の原子炉でいい?

(山脇)いい。ペレットをハイドライドにしたものを何本か混ぜるだけ。そうすると、高次Puの燃焼がよくなる。

(JNC前田)ふげんでは、少数体規模だが、MOXSFを再処理したものを再利用している。また、ふげんでは、700体以上のMOX燃料を使っている。これもPAに使ってほしい。

(梶川)関電として、今現在PAをどんどん進めているのか。いつの装荷を目指しているのか。2010年までに16〜18基もなるべく早く現実的な数字に変えるべきでは。

(桑原)理解活動は刈羽の住民投票以降、国と共同して全力。100万人キャンペーンを実施。装荷時期については、東電問題を受けて各電力会社が過去の自主点検結果の調査を実施しているところなので、それが終わらないとなんとも。16〜18についてはどうするか電力内で検討中。

(井上)プルサーマルの理解がなかなか得られないのはなぜだと考えるか。神田先生は?

(神田)プルサーマルについて知事たちと話していると、プルサーマルに対して何の見返りもないとの意見。技術的な問題で反対している自治体はほとんどないと思う。市町村も同じ。

(井上)学会レベルでどういうことができるか。

(神田)ふげんをMOXの例に上げないのはけしからん。日本にはMOX技術は十分ある、Pu燃焼量もちょっと増えるだけというと、相手から、技術の話はもう十分と言われる。

(桑原)電力が言うのと、神田先生が言うのは相手の受け取り方が違う。神田先生はPuを実際に取り扱っており、生身の感覚というのは非常に強い。

(原研?)プルサーマルの経済性のところは、10年前とあまり変わらない表現。学会では、技術的に詳しく説明してほしい。詳しくというと、いつもOECD/NEAの数字が出てくる。理屈としてどのくらいのコストがかかって、将来ウラン価格がどうなれば引き合うのか、といったデータを持つことが必要。

(桑原)電力としても、経済データに係る情報公開として昔よりずいぶん出しているが、現実のウラン代、加工費の数値は商機密上出せないことをご理解願いたい。

(原研?)MOX加工工場のコストを算定するための個別データを出してほしいということ。

(神田)コスト計算で、去年CDMの論文を書いたとき、コスト評価が甘いと言われた。中国にMOXを売って、日本のCO2を下げるというシナリオ。COGEMA、OECDはデータを出してくれた。電中研池本さんがトップで名前が出ている。

(東北大?)経済性について。プルサーマル、高速炉は次の100年を考えた資源の話。それが今の価格に反映してこない。例えば、原子力がなくなると石油の値段があがるはず。経済の話と資源の話を結びつけるようなやり方はないか。

(桑原)重要なこと。外部経済を内部コストに取り込む、例えば、植林にコストが100円かかって、110円で売るとする。植林は治山、治水にも役立つ。それをどう評価するかを形にしていかないといけないと考えている。

(JNC?)バックエンドのサイクルコスト計算をするとき、現在価値換算を一般的にするが、遠い将来の話だと、先送りすればよいという結論しか出てこない。