update 2014/03/20
NDD
核データ部会

核データなんでも相談室 これまでに寄せられた質問とその回答

受付番号 2014-001
受付日 2014年2月22日
種別 質問
標題 福島第一汚染水からのベータ線によるX線についての質問
回答担当者 国枝賢、原田秀郎、中田哲夫
質問内容
福島第一原子力発電所の汚染水の報道が盛んに行われています。また、汚染水から発生したX線により、敷地境界の線量が年間1mSvを超えるという報道もあります。周辺住民にとっては不安です。

Q1 2月20日の東京電力の発表では、全ベータ: 240,000,000 Bq/Lとの測定値ですが、これは大部分はストロンチウム90と考えて良いのでしょうか?

Q2 もし、そうだとすると、半減期28.79Y、ベータ線エネルギー545.949±1.406 (keV)が周囲の汚染水の原子を電離・励起することにより発生するX線のエネルギースペクトルおよび強度はどの程度でしょうか?
回答内容
A1 ウラン等の核分裂では多くの中性子過剰核が生成され、それらはベータ崩壊をします。中でもSr-90は収率が大きく、半減期28.79Yとなっていますので、問題となる可能性は多いにあります。しかし、ベータ線放出核はSr-90だけではありません。実際にH6タンクエリアの漏洩水に含まれるベータ線源を特定する為には時間的条件や化学的条件等々さまざまな要因を考慮した総合的な解析が必要となります。お知らせいただいた東電のデータだけではSr-90が大部分であると結論するために十分な情報を有していないと考えられます。

A2 ベータ線による制動放射によるX線発生が全体のX線発生に大きく寄与します。エネルギースペクトルおよび強度の計算方法は、PHITS, EGS等のモンテカルロシミュレーションコードが一般的に適用できます。コードの入手方法及び具体的な使用方法につきましてはPHITS, EGS等の窓口にお問合わせください。なお、計算に当たっては、発生源となるベータ線のエネルギー分布を準備する必要があります。

なお、この件に関連する調査は国内の研究機関や企業で既に進められています情報および結果の提供に関しては核データなんでも相談室では応じかねますのでその旨ご理解頂きますよう宜しくお願い致します。

以下、御参考までにお知らせしておきます。
核分裂収率データhttp://wwwndc.jaea.go.jp/cgi-bin/FPYfig
β線スペクトルに関する情報http://ie.lbl.gov/education/isotopes.htm
受付番号 2012-004
受付日 2013年2月21日
種別 質問
標題 入射粒子 (陽子と重陽子) と原子核の反応形式や断面積等のデータ整備状況について
回答担当者 国枝 賢
質問内容
加速器BNCT照射システムの研究開発を進めて来ていますが、各システムの中性子 発生ターゲットの特性を比較検討したいと考えています。
そこで、入射する陽子や重陽子とターゲット物質と核反応の角度依存やエネルギー依存の反応断面積などのデータがまとめられているものがあれば、幅広い視点で比較検討が出来ますが、整備されたものがありますでしょうか?
現在までは、個別のデータ、例えばLi-7(p,n)Be-7、Be-9(p,n)等の反応形式のデータを知っていますが、入射エネルギー範囲が限られています。
入射粒子を陽子と重陽子の2つに絞って、データがあれば当面は検討できます。未整備であっても、現時点での全体像を掴めるようなデータがあれば幸いです。
回答内容
JAEAの核データ評価研究グループでは特殊目的ファイルとしてJENDL高エネルギーファイルを整備しております。最新版はJENDL/HE-2007です。その中に3 GeVまでの陽子入射核データを格納しております。以下のページをご参照ください。
http://wwwndc.jaea.go.jp/ftpnd/jendl/jendl-he-2007.html
JENDL/HE-2007では106核種に対する断面積や微分断面積が格納されています。ただし、LiやBe等に対する評価作業は遅れており、数値データは与えられておりません。少数核子系ですので通常の核反応モデルでは限界がある為です。データの必要性は当グループでも認識しており、現在、評価手法を検討している段階です。
重陽子に対するデータは残念ながら当グループでは扱っておりません。それなりに需要があるということであれば是非、今後整備・開発を検討させて頂きます。
以下、御参考までに海外の状況を2点ほどお知らせしておきます。

(1) 米国の核データENDF/B-VII.1
http://www.nndc.bnl.gov/endf/b7.1/
• 陽子:エネルギー上限を150MeVとする断面積データ (数十核種程度) です。
Liのエネルギー上限は5 MeV程度、測定データと厳密な共鳴理論により評価されています。Beの上限は約100 MeVですが、評価モデルに適用限界がありますのでご利用の際はご注意される必要があるでしょう。
• 重陽子:水素とLi同位体に対するデータ
測定データと厳密な共鳴理論により評価されています。ただしエネルギー領域は低エネルギーのみに限定されているようです。

(2) オランダのライブラリTENDL
http://www.talys.eu/
非常に多くの核種に対するデータが200 MeVを上限に格納されています。陽子、重陽子のデータもあります。ただし、評価されたデータというよりはむしろ系統的な計算値を格納したライブラリとなっています。Li、Beのデータも格納されていますが、計算手法には明らかに適用限界がありますので、特に低エネルギー (数十MeV以下の) 断面積データの利用には御注意頂くのがよろしいと思います。
受付番号 2012-003
受付日 2012年12月19日
種別 要望
標題 JENDL普及のためのNJOY・TRANSXに相当する国産コードの整備
回答担当者 深堀智生、石川 眞、横山賢治
質問内容 JENDL-4の公開版matxs-J4の改訂等を含めた今後の日本での遮へい計算の定数、コード整備などを働きかけていただけないかなと思っています。ただ、核データセンターなのか、JENDL委員会なのか、原子力標準ソフトウェア開発グループなのか、どこが責任を持ってやるかがよくわかりません。JENDLの普及を図るなら、NJOYに相当するコード、TRANSXに相当するコードの国産での整備も必要なのではと思っている次第です。ほとんど要望に近いですが、問題意識を共有して、今後に活かせればと思っています。ご検討をよろしくお願いいたします。
回答内容
いただいたご質問・要望について、原子力機構の核データ評価グループリーダー である深堀智生さんから、以下の回答をいただきました。よろしくご査収下さい。

「おっしゃる通り、JENDLの普及を図るなら、NJOYに相当するコードは必要であると認識しており、もし整備するのであれば原子力機構もしくはその委員会であるJENDL委員会での活動が必要なのではと思っております。これについては現在、NJOY代替コードを作成する方向で検討を進めておりますので、案をご提示できるようになるまで、少しだけお待ちください。」
受付番号 2012-002
受付日 2012年11月19日
種別 質問
標題 JENDL-4.0uのFSXLIB-J4等への反映について
回答担当者 須山賢也
質問内容 高速炉用炉定数ライブラリにはJENDL-4の編集上のエラーの修正がはいったものが作成、配布されたようですが、MCNP用のFSXLIB-J4は何かそれに相当するUpdateはあるでしょうか。MVP用LibやMatxsに関しても、もし発行予定があるようでしたら、ご教示いただければ幸いです。
回答内容
JENDL-4ベースの MCNP用ライブラリ (ACEフォーマットファイル) は、すでに作成されており、原子力機構での所外利用手続きを行っている最中です。それは、JENDL-4.0u に対応したものとなります。
MVPのライブラリですが、1月末を目途に作業をします。その後検証をしますので若干時間がかかると予想されております。
受付番号 2012-001
受付日 2012年10月9日
種別 質問
標題 遮へい定数における温度内挿について
回答担当者 石川 眞、今野 力
質問内容
以下の定数を使って、高速実験炉「常陽」の2次元RZ体系で各定数を常温と500°Cで計算しました。

(1) 公開されているJSSTDLを縮約して「常陽」n100群γ40群構造にしたもの
(2) JENDL-3.2をNJOYで処理して作成したn100群γ40群matxs-J32
(3) JENDL-4.0をNJOYで処理して作成したn100群γ40群matxs-J4

この結果、(1)の定数では、常温と500°Cの結果にほとんど差はありませんでした。(2)、(3)では、中性子はほとんど変わりませんが、γ線束は500°Cは常温の約1.1倍でした。この結果を分析するために、まずMACRO-JGで本当に温度内挿できているかソースコードを確認したところ、常に常温での計算になるような内容になっていると思われました。
疑問点は、

• MACRO-JGで温度内挿は本当に動いていたのか?
• matxs形式の計算結果で、γ線束だけが増加するのは妥当なのか?です。

有識者の方にお聞きしていただけますでしょうか。
回答内容
• ひとつ目の疑問点に対する回答
MACRO-JGコードは、旧原研で1987年からJSSTDLライブラリを処理するために開発されてきたものです。当方で1998年8月版のソースを見ましたが、温度内挿は、スプライン関数で行う意図でプログラムされているようです。
しかし、このプログラムでは、指定温度がf-tableの範囲を超えている場合や、f-tableがJSSTDLライブラリにない核種などの場合にはこの内挿をスキップしますので、実際の計算条件をチェックしないと、最終確認はできません。
ここで本当に申し訳ないのですが、現在の相談室メンバーの周りには遮蔽研究を行っている組織がないため、JAEA内で現在、MACRO-JGを使った遮蔽解析を行っている部署の連絡先をお伝えしますので、問いあわせていただけないでしょうか。 (その後、紹介した部署とのやりとりの結果、温度変化によって断面積が変わっていることが確認できた旨、質問者より連絡があった。)

• ふたつ目の疑問点に対する回答
質問者殿のご質問の2番目の「matxs形式の計算結果で、γ線束だけが増加するのは妥当なのか?」を検討しました。その結果、温度が複数あるMATXSファイルのデータの構成がTRANSXコードと整合性がとれていない箇所があることが判明しました。そのため、TRANSXで作ったMATXSファイルの最初の温度以外の温度の多群ライブラリの中性子群からγ線を生成する散乱マトリックスがあるエネルギー以下で倍程度になる場合があります。
質問者殿の計算された体系では、約40keV以下の中性子でこの問題が現れました。この問題を解決するためには、MATXSファイルを作成するNJOYコード、TRANSXコード、あるいはMATXSファイルを修正する必要があります。UPu体系内ではγ線束の増加が見られず、UPu+SUS体系内でのみγ線束の増加が見られた理由は、SUS等の中性子減速効果により、UPu+SUS体系内の40keV以下の中性子束がUPu体系内の40keV以下の中性子束に比べ何桁も増えたため、全中性子束では現れなかった、40keV以下の中性子束の温度による差が顕著になったためと考えられます。
MATXSファイルの問題を修正すると、UPu+SUS体系でも300Kと1200Kの温度での全γ線束の顕著な差はなくなりました。
検討結果の詳細についてはこちらをご参照下さい。
受付番号 2011-001
受付日 2011年6月17日
種別 質問
標題 超新星ニュートリノによるタンタル生成に関する追加情報
回答担当者 千葉 敏
質問内容 2011年5月12日の原研プレス発表があった超新星ニュートリノによるタンタル生成に関して更なる情報があれば教えて下さい。
回答内容 Phys.Rev.Cに掲載された論文、プレス発表等の情報を提供した。
受付番号 2010-009
受付日 2010年11月5日
種別 質問
標題 Pandemonium問題の解説記事
回答担当者 石川 眞
質問内容 核データ部会メールでPandemonium問題が解決したとの報告がありましたが、画期的な研究成果のようですので、解説記事を書いていただけないでしょうか。
回答内容 ご提案のとおり、この情報は、崩壊熱の評価に非常に重要だとのことで、2011年6月発行の核データニュースに、吉田先生に解説記事を執筆いただくことになっております。
受付番号 2010-008
受付日 2010年11月12日
種別 質問
標題 JENDL-4.0の引用文献
回答担当者 深堀 智生
質問内容 JENDL-4.0を利用する際の下記の引用文献の入手方法を教えて下さい。
「K. Shibata, O. Iwamoto, T. Nakagawa, N. Iwamoto, A. Ichihara, S. Kunieda, S. Chiba, K. Furutaka, N. Otuka, T. Ohsawa, T. Murata, H. Matsunobu, A. Zukeran,S. Kamada, and J. Katakura: "JENDL-4.0: A New Library for Nuclear Science and Engineering" (to be published to /J. Nucl. Sci. Technol./)」
回答内容 原子力学会英文論文誌の2011年1月号に掲載される予定となっております。
受付番号 2010-007
受付日 2010年11月5日
種別 質問
標題 Hf-181の吸収断面積測定値の信頼性向上
回答担当者 原田 秀郎
質問内容 ハフニウム182の断面積測定値の精度向上についての相談先を教えて下さい。
回答内容 原子炉を用いた放射化の中性子捕獲断面積測定は、私の所属するJAEAの応用核物理Grで実施しています。必要な調整をさせていただきます。
受付番号 2010-006
受付日 2010年8月3日
種別 質問
標題 JENDL-4のMVP用ライブラリの公開予定時期
回答担当者 横山 賢治
質問内容 JENDL-4のMVP用ライブラリの公開予定時期を教えてください。
回答内容 JENDL-4のMVP用ライブラリは今月 (8月) 末公開予定です。JAEAの担当者に状況を確認したところ、8/4現在、JAEA外部に配布できるようにするための手続きを進めているところとのことでした。ライブラリ作成、事務手続きともに順調に進んでいるようですので予定どおりに公開されると思います。(その後、8/27に公開予定時期だけでもアナウンスして欲しいという要望がありましたが、ほぼ準備が整っていることをお伝えしました。なお、JENDL-4のMVPライブラリの利用方法については、9/3にJAEAから核データ部会や炉物理部会のメーリングリスト等で公式なアナウンスがありました。)
受付番号 2010-005
受付日 2010年6月11日
種別 質問
標題 JENDL-4固有のNJOYコードのパッチの必要性と公開
回答担当者 片倉 純一
質問内容 NJOYでJENDL-4を処理してMCNP用のACE形式ライブラリを作成することができましたが、MCNP-5.1.30で使うとsegmentation faultで落ちてしまいます。U-238のみに問題があることが分かっていますが、原因がMCNP側にあるのかNJOY側にあるのかは不明でこの問題を解決できていません。他方、JAEA殿ではJENDL/ACからMCNP用のライブラリを作成された経験があり、公開報告書 (JAEA-Data/Code2008-029) にもそのことが記載されています。これらの状況を踏まえて質問ですが、
  • JENDL-4のnjoyでの処理でも何かJENDL-4固有のパッチが必要でしょうか?
  • そういうパッチがすでにあるなら公開の予定はございますでしょうか?
回答内容 JENDL-4 の NJOY の処理にはパッチは必要です。現在、機構において MCNP 用のライブラリ作成を行っており、そのためのパッチも合わせて用意することになりそうです。 8 月頃までには作業が行われる予定で、それまでにはパッチも準備することになります。ただ、NJOY の開発元でない機構から勝手にパッチを配布するという訳には行きませんので、どのようにするか検討中です。JENDL-4 を出来るだけ使って頂きたいと思っておりますが、ご理解頂きたいと思います。
受付番号 2010-004
受付日 2010年5月26日
種別 要望
標題 中性子ラジオグラフィのための核データ整備
回答担当者 千葉 敏
質問内容 多結晶鉛の熱中性子散乱則はありませんか?
回答内容 S(α,β)の整備状況を説明。現状ですぐに答えを出せる状況には無い。北大の鬼柳先生、京大の安部先生にも相談。鬼柳先生は何らかのアクションをしていただけそうな状況。質問者から、状況を納得し、今後、この分野の研究が進むことを期待するというメールを以て終了。
受付番号 2010-003
受付日 2010年4月28日
種別 質問
標題 インターネット経由で核データにアクセスする方法
回答担当者 千葉 敏
質問内容 表題の通り
回答内容 必要な物が核構造データだったので、LBNLのTable of IsotopesのHPを紹介した。
受付番号 2010-002
受付日 2010年4月27日
種別 要望
標題 核データ評価状況の情報発信
回答担当者 片倉 純一
質問内容 JAEAのシグマ委員会の先行きが不明ですので、学会として、このような情報交換の場 (核データなんでも相談室) が出来ることは、大変良いことだと思います。利用者の要求だけでなく、誰がどんな評価作業を行っているかも、作業予定や評価法などの情報も提供できると良いかと思います。これは評価だけでなく、実施• 予定中の実験についても言えることだと思いますが、如何でしょうか。
回答内容 おっしゃる通り、誰がどんな評価作業をやっているのかとかどんな測定をやっているのか等の情報の発信を考えることは学会としても適当と思います。将来は、核データ部会のホームページ等にそのようなページを設けることも一案かと思いますが、JAEAの主催するJENDL委員会でも、各WGの活動報告を議事メモの形で公開しておりますので、当面は、これをご覧いただくことで、各技術テーマ毎の我が国における核データ関連活動の概要はお分かりいただけるかもしれません。
http://wwwndc.jaea.go.jp/JENDL_Committee/
また、核データ関連活動については、核データニュースでも随時報告しています。
http://wwwndc.jaea.go.jp/JNDC/ND-news/index_J.html
受付番号 2010-001
受付日 2010年4月27日
種別 質問
標題 16O, 12C のshell structure
回答担当者 千葉 敏
質問内容 16O, 12C のshell structureはどこにあるのでしょうか
回答内容 質問者に質問の真意を尋ねたところ、ニュートリノと16O, 12Cの中性カレント相互作用の断面積をestimateするのにこれらの原子核の一粒子軌道のエネルギーを知りたいという質問であることが判明。それをするには質問にある16O, 12C のshell structureを知るだけでは不十分なので、回答者が関係した過去の論文[1][2]を紹介した。
[1] Neutrino Nucleus Reactions based on New Shell Model Hamiltonians T. Suzuki, S. Chiba, T. Yoshida, T. Kajino and T. Otsuka, Phys. Rev. C, 74(2006)034307
[2] Neutrino-nucleus Reaction Cross Sections for Light Element Synthesis in Supernova Explosions, T. Yoshida, T. Suzuki, S. Chiba, T. Kajino, H. Yokomakura, K. Kimura, A. Takamura and D.H. Hartmann, The Astrophysical Journal 646, 448-466(2008)
核データなんでも相談室
核データ部会