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日本原子力学会材料部会設立趣意書

人類社会を支える工学は、材料と設計と情報を主要な柱とする体系であると言われるように、材料が、工学体系を支える主要なディシプリンとしての地位を有しているとの認識はますます広く受けいられるようになっている。 多くの技術が、先端技術と既存技術とを問わず、結局材料問題でつまずいた例は枚挙にいとまがない。 原子力技術においても材料が本質的に重要である点は他の技術と同様、あるいはそれ以上ともいえよう。

原子力材料の範ちゅうに入るものとしては、核分裂炉材料、核燃料サイクル材料、核融合炉材料をまず挙げることができる。 さらに、各種加速器材料やビ-ム機器材料、また各種ビ-ムによる材料改質等も、原子力材料のカテゴリ-に包含するこができよう。

これらの材料は、多くの場合、高温高圧などの過酷な環境に加えて照射との複合環境条件下で使用されることが多く、そのため人類史上かつて経験したことのなかったような新たな、そして困難な材料学的問題に遭遇することもしばしば起こっている。 原子力事故の多くは、直接的、または間接的に、材料が関係していると言われる。原子力安全性を高めるために、材料学的研究をしっかり行うことが今後ますます重要となろう。 また、核融合炉では、将来の実用炉で使用可能なプラズマ対向材料、構造材料、さらにプランケット増殖材料は、まだ完成していないとも言われている。 これらの材料の開発には、大学、国公立研究所、民間企業が緊密な連携をとりつつ全日本的協力態勢を作って、先導的かつ戦略的に進めていくことが肝要であろう。また積極的に国際的協力を行うこともきわめて重要なことは論を持たない。

材料学に対しては、広凡な分野を横断的にまたがる関心の持ち方や、基礎学問的な興味の持ち方がある一方、個別材料的問題に対する関心も少なからず存在している。 後者についてはすでに発足している核融合炉工学や核燃料の部会で議論が進められているが、横断的、あるいは基礎的に広い視点からの材料を見直すことも重要と考えられる。  そこで、日本原子力学会において、これらの関心や問題意識を共有する研究者が集い、専門的、かつ学際的な研究と情報交換を行う場として材料部会を設置する。

本部会は、材料科学、材料工学の観点から見た原子力材料の特性や特質を理解するとともに、時代の要求に応える安全性の高い材料の創製や、戦略的な新材料の開発に向けてのリ-ダ-シップの発揮、また広く材料一般に関わる種々の問題への対応や解決を図るという観点から、材料に関心を有する学会員の交流と研究の場を提供する。

本部会のメンバ-は日本原子力学会員で構成されるが、研究対象の学際性を考慮すれば、材料に関する既存の部会との協力は言うに及ばず、外部との交流は必須であり、広く外部に開かれたシンポジウム等を開催するなど、他の関連学協会との連携も推進する。