標準委員会 委員長挨拶

ご挨拶

一般社団法人 日本原子力学会 標準委員会(Standards Committee of AESJ)は,1999年9月22日に設置されました。
当委員会は,産業界と学界が共同して我が国の経済的,社会的環境,国民性,産業構造,技術の発達等を十分勘案し,市場における健全な製品を識別する基準を消費者に提供することを目指して,合意できるところを原子力標準として随時制定し,それを最新の知見を反映して改定していくことを使命にしています。
標準委員会では,原子力施設の安全性と信頼性を確保してその技術水準の維持・向上を図る観点から,原子力施設の設計・建設・運転・廃止措置などの活動において実現すべき技術のあり方を,原子力技術の提供者,利用者,専門家の有する最新の知見を踏まえ,影響を受ける可能性のある関係者の意見をパブリックコメントをも通じて聴取するなど公平,公正,公開の原則を遵守しながら審議し,合意したところを文書化しております。
これにより,消費者が当該技術についての最新の知見を迅速に利用することが可能になる一方,市場競争に参加している生産者は,当該技術が標準化されたことを前提として,比較優位性を生み出す技術領域の開発に努力を集中することが可能になります。
また,我が国においてはこれまで,国民の生活の質を確保し,経済社会の安定な発展を支えるため,国が規制行政活動の一部として所要の標準を国家標準として制定し,行政判断に使用してきましたが,技術革新のスピードが速く,新技術の利用範囲が連続的に拡大していく今日にあっては,技術の変化に合わせて国家標準を適正化していく作業が追いつかないため,国民が最新の技術知見の利益を享受するのに遅れを生じるおそれが指摘されていました。
しかしながら,このような委員会の活動が活発になされ,そこで国民の合意を得て制定されたいわゆるコンセンサス標準を国が行政ニーズに応じて利用していくことになれば,小さい行政コストで新しい技術的知見を迅速に国民の利用に供する環境が整備されることになります。
さらに,これを国際標準化していく努力を行うことも学会でこそ可能であり,これの実現は我が国の国際技術戦略上重要な貢献となるでしょう。
標準委員会は,専門家集団の果たすべきこのような役割と責任を意識しながら,ボランティア精神を基盤に,原子力施設において今後予想される上記のニーズに対応する標準策定活動を行うために,公平,公正,公開の原則に則って運営規約を定め,発電炉,原子燃料サイクル,研究炉の3分野で部会を設置して活動を行ってきましたが,2008年11月より専門部会組織を見直し,新たにリスク,システム安全,基盤・応用技術,原子燃料サイクルの4専門部会で活動の充実を図ることとしました。
なお,各標準の内容については原則として5年ごとに改定することとしておりますので,本委員会はこの標準の利用に際してのご質問や改定に向けてのご提案をいつでも歓迎します。

標準委員会 委員長 関村 直人(2014年12月)