第3回研究会

講演6<講演資料>
  講演タイトル:溶存水素濃度最適化等のPWR被ばく低減技術の動向について
        三菱重工(株) 梅原隆司 氏

講演概要:PWRの水質面からの被ばく低減対策として,亜鉛注入,pH管理,濃縮B-10,高Li運転,溶存水素最適化を検討している。亜鉛注入は海外の21プラントで実施されている。我が国においても,NUPECでの研究や国内PWR電力共同研究にて検討してきており,実機亜鉛注入が開始され実用段階になっている。海外の例では5ppbの亜鉛濃度で年間約10〜15%の被ばく低減効果が見込まれている。NUPEC試験では蒸気発生器伝熱管がTT600のプラントで20%以上,MA600のプラントで40%以上の被ばく低減効果が得られると評価されている。pH管理については,NUPEC試験によりpH7.3の被ばく低減効果が実証されている。しかしながらLi濃度の上限値が3.5ppmであるため,B濃度が低くなるサイクル後半しかpH7.3の運転ができない。更なるpH最適化手段として濃縮B-10や高Li運転の適用性を評価している。ケミカルシムとして濃縮B-10(新設プラントでは90%濃縮)を適用すると,一次系冷却水中のBの濃度を1/5に下げることができ,プラント運転サイクル全期間に亘って被ばく低減上適切なpHに維持できる。既設プラントにおいては濃縮度30%の濃縮B-10を使うことにより高燃焼度・長期サイクル運転を実施した際の初期B濃度上昇を抑制できる。既設プラントにおいては,海外実績のある高Li運転(最大6ppmまでの実績がある)の適用も含めて,炉心の多様化に対応した水化学の適用が必要になるものと予想される。PWRでは水の放射線分解を抑制するために一次系に水素を添加しており,その濃度は1955年のデータに基づき15cc/kgを下限としているが,最近の評価では放射線分解の抑制には数cc/kg程度の水素で十分との結果が報告されている。また,低溶存水素では燃料表面のNi付着量が減少しCo-58生成量が減少する。一方,EPRIでは高溶存水素化が検討されており,最適溶存水素濃度の評価は今後の研究を待たなければならない。
会場から,低溶存水素では燃料表面クラッドがNiOとなるがZnについても検討する必要があること,AOAに対する影響を検討する必要があるとのコメントがあった。