第3回研究会
講演5<講演資料> 講演タイトル:高経年化BWRプラントの被ばく線源低減技術講演概要:高経年化プラントにおける水化学の主要目的は,放射線源の低減(作業環境線量率低減,廃棄物発生量低減)と安全性・信頼性の向上(材料健全性維持・向上,燃料健全性維持・向上)と考えている。特に高経年化BWRでは原子炉材料の耐SCC性の維持向上と補修工事の作業環境線量率の低減が重要である。高経年化BWRプラントでは,SCC抑制対策としての水素注入等を適用し低腐食電位環境にすると配管表面線量率が上昇したり,高線量領域の補修作業の被ばく低減のために行う化学除染の後に再汚染が進行して,化学除染前より高い線量率になる例が報告されている。特に,水素注入実施プラントにおいて化学除染の後の再汚染が加速される例がある。そこで,再汚染メカニズムを解明し,化学除染・予防保全水化学と放射能付着抑制を両立できる水化学制御技術を開発している。BWR模擬環境で腐食酸化物皮膜を生成させた試験片に対して,意図的に除染効率を変化させた除染処理を施した後にCo-60を含むBWR条件の高温水中に試験片を浸漬した結果,低除染効率の除染後に特に再汚染が加速するとの実機の事象を再現できた。低除染効率の除染後の表面には不均一に酸化物皮膜が残留し,その後の腐食を加速させるため,Co-60の付着が促進したものと考えている。従って,再汚染抑制のためには化学除染の除染効率(DF)を適切に制御することが効果的である。水化学制御技術として,亜鉛注入と酸化チタン処理の効果を確認した。前述の試験片にTiO2の皮膜を付与し亜鉛注入条件有無の水質条件でCo-60の付着試験を実施した。酸化チタン付与により,化学除染効率(DF)によらずCo-60付着量が低減され,亜鉛注入との相乗効果が大きいことが確認された。酸化チタンは腐食電位低減効果もあり,SCC抑制効果と線量低減効果が同時に得られる技術として期待できることがわかった。
会場から,低除染効率において再汚染が加速されるのは,不均一な皮膜が残存することにより表面にマイクロセルが生成し腐食反応が進行するのではないかとの指摘があった。