第3回研究会

講演4<講演資料>
  講演タイトル:化学除染後の再汚染抑制技術の開発状況
        日立GEニュークリア・エナジー(株) 長瀬誠 氏

講演概要:BWRの一次系配管を化学除染すると,プラントによって差はあるが1年運転後の配管表面線量率は化学除染前の線量率を上回ることがあり,この「再汚染」を抑制する技術が必要となっている。配管表面の線量率抑制対策としては大気酸化処理やアルカリプレフィルミング等があるが,いずれも化学除染後の表面処理方法としては問題があるため,新しい技術を開発した。化学除染直後にギ酸第一鉄の溶液を系統に導入し,その後に過酸化水素とヒドラジンを添加することにより配管内面に緻密なフェライト(Fe3O4)を生成させる。これによりCoを取り込み易い内層酸化皮膜(クロマイト)の形成を阻害する。皮膜生成温度は90℃である。ラボ試験により生成したフェライトの粒子径は0.2μm以下で,皮膜厚さは0.5μm以下であった。このフェライト皮膜を付けた試験片を,Co-60を含むBWR条件の高温水に3000時間浸漬した後のCo-60の付着量は,皮膜処理しない試験片の約1/5に抑制できた。この間6回の昇温・降温を経験したが効果は持続し,皮膜の安定性を確認した。実機の施工では,既存の化学除染設備に薬液注入装置を追設するだけで,既存の設備を最大限活用可能である。使用薬剤はプラントで実績のあるもののみであるとともに,分解可能であり二次廃棄物の発生も少ない。SCC等のプラントへの影響も無いと評価された。この技術を,島根原子力発電所1号機の再循環系配管の化学除染を実施した際に適用した。ギ酸第一鉄とヒドラジン濃度はほぼ目標濃度範囲に制御できた。フェライト皮膜の生成は除染装置内の循環系に設けた試験片の分析により確認した。生成された皮膜厚さは0.45μm(約270μg/cm2)であり,目標値の0.1μm(60μg/cm2)以上を達成できた。
会場から,皮膜厚さが増すと皮膜にクラックが入りやすくなるのではないか,Fe3O4は90℃という比較的低温では生成しにくいということはないか,BWR条件ではFe3O4は不安定でFe2O3に変化することはないか,との質問があった。皮膜クラックについては試験した厚さ範囲内ではSEMによる表面観察から問題となっていないこと,Fe3O4についてはレーザラマン法により同定していること,BWR条件ではFe2O3に変化する可能性はあるが変化しても緻密さは維持できているとの回答があった。